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49.房州騒乱

 ご愛読ありがとうございます。

 今回は博多から一転して房総半島での対決編。

 実は異世界の食い物だった“肉じゃが”が初披露。

 そして珍しく追い込まれる出雲軍!


 訂正です。

 館山に布陣しているのは最上・佐竹勢。

 富津に布陣しているのは武田勢です。

 文中で間違っていた部分がありましたので訂正しております。

 混乱した方には申し訳ありません。



 ポルトガル軍、3度の会戦の後に敗走。


 しかし、南方へは去らずに九州を迂回して北上中。


 太平洋岸に点在している拠点からは進行状態が報告されている。


 恐らく、ポルトガル軍は再度王都への侵攻を目指している。


 王宮ではそう分析している。問題は王都直下に直接来るか、それとも湘南か、房総か。


 こればかりは来てみないと分からない。


 敵のガレオン船は現在23隻に減っている。


 大環の安宅船よりも大きくて大砲も多い、そして速い。とにかく大環の船で追いかけっこをしたら絶対に勝てない、間違いなく逃げられる。


 最悪なのは一撃入れられて逃げ出されるケースになる。

 ポルトガル側の大砲は、大環が装備している物よりも遠くに飛ぶし威力もある。

 船に搭載している数にしても、依然として600~700門程度はある。

 それに魔物を相当数投入してくる。海上でグリフォンやキュマイラの空襲を受けるのは面白くないのだ。


 これに比べて兵員はどうやら23,000~24,000人程度。戦闘魔法師では200名弱という規模の模様だった。

 小隊長達3人組が捕獲した船で取り押さえた捕虜からの情報ではそうした話だ。


 この状況で考えるなら、洋上で戦闘するよりもどこかに上陸させた後から陸戦をやってしまった方が、兵力に勝る大環側には都合が良い。


 湘南にせよ、房総にせよ、敵の4倍の兵が待ち構えているのだから。


 但し、大環側の主戦魔法戦力の大半が博多に投入されていて、関東方面に魔法戦力は非常に少ないという問題はある。


 何しろ強力だといえども少女達の4人を主戦力というのだから、余りにも弱体に過ぎた。

 それに、いくら強いといっても11才や14才、それに16才の子供だ。

 これでは本土決戦をやるには、心細すぎた。


 だから、博多から魔法師だけでも戻そうという話になった。


 そうは言っても博多から王都である。

 敵の進撃状況だと2日後には、来襲が必至である。


 連れ戻したい魔法師は、王国軍直属の人間達。

 それに関東方面に配備している大名家の魔法師達。

 最低でも500名程である。


 問題は博多から王都までの距離だ。


 現地で一息に移動できるのは貴志と10名程の術者だけ。


 貴志の部下達は、博多~古都~那古屋~王都と休憩しながらの移動なら部隊単位で移動可能だった。


 これでは話にならぬとなって、結局は貴志のドラゴンに瞬間移動させようという事に落ち着いた。


 実の所は、関東で留守番をしている行者でも同じ事が出来そうな奴はいたのだ。

 だが、その男は千里眼の能力をいたく重宝がられていて、完全にグロッキー状態にあった。


 軍の情報部が頻繁に状況確認を求めて来るせいで、睡眠が不規則になってきて睡眠不足。

 千里眼とて使えば疲れてしまう訳で、2~3時間おきに“状況知らせ!”とやられて仮眠している所を叩き起こされると疲労の回復もままならない。


 軍部の重鎮たる本多、榊原、井伊といった連中が、王宮を離れて戦地にいる。

 王宮に残っている若手参謀連中が、ここで良い所を見せたいとばかりに逸って千里眼を頼るのだ。


 見かねたリューシャが家康に直接文句を言いに行く始末だった。

 どうせそんなに遠くない場所にいるのだから、普通の遠視術者でも召喚術者の従魔でも使えば状況くらい分かるだろう。こんな所で決戦兵器を潰してどうする気なのか!


 寝耳に水だった家康、数少ない決戦用魔法師の激怒に慌てて調べた所、息子秀忠の側近連中が勝手にやっていたことが判明。

 かくして家康の勘気を蒙った秀忠は、この戦では閑職に回され出番ナシとなっている。


 散々苦労して北方領を安定させようというのに、その公爵当主を敵にしてこの馬鹿な倅は何をしたかったのか。

 挙句、陛下から“宰相殿には子息は何人いたかのう?”と暗に嫡子の資質を疑われては、後継者すら考え直さねばならぬかもしれぬと悩むことになった。


 決戦を前にして、足を引っ張るのが自分の馬鹿息子だという現実-宰相も楽ではなかった。

 それにリューシャは狡猾だった。


 文句を付けに来ただけではなく、実戦魔法師が不足しているのなら使える人間を50人ばかり出兵させると提案していたのだ。


 イルマータ領で白狐と仲良くなって、ソコソコ強力になった者が既に存在している。

 実戦で使える術者が不足しているのが問題なら、使えば良いではないかと。


 16才の小娘は自分の立場を理解していて、陛下が悩んでいた問題に短期間で成果を挙げている。対して、自分の倅と来た日には・・・。




 ともあれ、関東方面に不足していた実戦魔法師は結局600人にまで増強されていた。


 博多から急遽戻された魔法師500人。


 それに北方領から送り出された50人+50人。


 この+50人というのが面白い。


 隠居して久しい魔女達である。

 強力な魔法師は寿命が長い。そして経験の積み重ねで魔法師はより強力になって行く面がある。

 博多まで行くのは面倒で嫌だとしていた老女魔法師達が、若い女魔法師達が参戦すると聞いて表舞台に再び姿を現して来たのだ。


 彼女達の平均年齢は実に280才!

 それでいて見た目は30才代にしか見えないという物凄さ。

 文字通り魔女と言って差し支え無さそうな集団であった。


 そして、この魔女集団が断言するのだ。

 敵は館山から富津辺りに上陸して来ると。


 彼女達の予言と同じ頃。

 開国主神社の巫女達も神託を得ている。

 敵は安房に来ると。

 神託の巫女とは即ち十六夜と久遠である。



 600人の魔法師たちは、王都、湘南、房総に各200人を配備となったが、房総方面には出雲一党とイルマータ一党の両方が配備されることになった。


 実質的には房総勝負に賭けたということだ。

 魔女による占術と託宣の巫女の預言にはそれだけの価値が認められていたのだ。



 房州方面軍司令官は本多忠勝。

 浦賀水道での戦闘以降、彼は本陣を木更津に置いた。

 王都に侵入する敵に対する最終防衛拠点の予定だった。


 彼は木更津の他に富津と館山へも防衛陣地を設置した。


 彼の元には10万程の兵が与えられている。

 しかし、内情としては外様系の大名の寄せ集めが主力を占める。


 最大勢力は武田勢の2.5万人。

 陣幕には内藤昌秀、山県昌景、高坂昌信といった有力所が勢揃いしている。

 騎馬は8千に、鉄砲を3千丁ほど。

 これは目一杯奮発した戦力だ。川中島でもここまで奮発していない。

 武田家には外洋で戦う水軍などない。当然の話であるが、諏訪湖で使う船しかないのだ。

 上杉は半島まで討ち入ったが、武田にも陸戦で出番を寄越せと王宮に談じ込んで最大戦力を投入して来たのだ。


 そして、最上義光が1.5万人、佐竹義重が1万人といった所だ。

 彼らは家康に良い所を見せておきたい外様の宿命である。


 譜代系になると酒井家次、青山忠成、鳥居忠政、内藤政長といった辺りが忠勝の手足になって働くことになる。

 彼らは大砲と鉄砲をしっかりと装備している。


 魔法師軍団としては、出雲勢で40人、イルマータ勢で100人。

 武田勢で20人、最上勢10人、佐竹勢10人。そして、忠勝の直下に10人。


 敵兵24,000人で、魔法師200人程度ならいつでも来いという戦力である。





 さて、イルマータ勢の中には、金子神楽耶、井上樹里、三鷹理緒達の姿もあった。


 彼女達の自発的な参戦である。

 波留が討死したという話は聞かされている。

 断固、大三郎が魔王を討つと言い続けているらしいことも。


 それを説得したいという想いが彼女達にはある。

 こんな所で戦っても自分達は何も変わらない。

 魔王などいないし、魔王認定されている男を殺しても帰れないということを彼女達は理解していたのだ。


 彼女達の立場はイルマータ家の食客である。特に誰かの臣下という訳ではない。

 異世界からの召喚者などということは伏せられて、単純にリューシャ達の友人ということになっている。


 イルマータに縁の女魔法師であれば、滅多なことをする奴はいないだろうという読みだ。

 その彼女達はイルマータ領で保護されていた間、実に“未来的な料理”を振舞っていた。


 鹿肉の肉じゃが。

 そして、ポテトチップにフライドポテト。マヨネーズ・ベースのポテトサラダ。


 この時代の大環にもジャガイモはある-あったのだが、鑑賞用で食用には使われてはいなかった。

 日に当たって緑色になったらダメ、芽が出ていたらそこもダメという事が理解されていなかったのだ。


 市場でジャガイモを見た彼女達は、大いに喜んだ。ポルトガルにいた時には醤油や味噌が無かったから苦労した。


 でも、イルマータ領では米に醤油に味噌、味醂、酒、酢、砂糖が簡単に入手できた。

 それに、金時ニンジンと糸コンニャクは普通に存在している。


 イルマータ領というよりも北方領には結構な鹿が生息していて、猟師たちが普通に狩っている。食肉としては牛や豚よりも鹿が一般的だった。


 そうした食材を見て、彼女達は喜々とした。ポルトガルではダメだったけれど、大環でなら作れそうだと。


 かくして試作した鹿肉の肉じゃが。

 ちゃんと美味しく頂けるものが完成したのである。


 大成功に機嫌を良くした彼女達は、公爵一行に振舞ったら与楽が涙を流さんばかりに絶賛。


「こんな美味い物食べたことが無い」と大喜びだった。


 醤油と味醂で煮込むという味付けは近年の大環では一般的だったから、リューシャ達にも好評を以って迎えられた。


 彼女はジャガイモなら北方で作れるから本格的に栽培しましょうかと、大喜びであった。

 領地運営には良い物を見つけたという面でも喜んだ。


 北方の場合には、米ではなく小麦でパン食というケースも多い。

 そうした場合でも、フライドポテトやマヨネーズ・ベースのポテトサラダは非常に相性が良い。

 そして北方にはチーズを食べる文化は存在していたのだ。生憎とトマトが見つからなかったから普通のピザは作れなかったけれど、ポテトとマヨネーズ、チーズを使ってのピザもどきの制作にも成功している。


 これは北方系の人間達には好評だった。特にシードがすっかりと嵌ったようだ彼女の琴線に触れたものらしい。

 あまり料理が上手くないシードが、必死にピザ生地の作り方を覚えようとしている光景は微笑ましいものだった。


 本来なら、この時代のこの国には無い料理である。

 彼女達の異世界人たる本領発揮という局面だった。


 ちなみに肉じゃがとジャガイモの味噌汁については、房総に着陣した本多勢と武田勢にも振舞われてこれまた大絶賛を浴びている。


 美味いし腹にたまるから実に宜しいと、軍事食としては好ましいと見られたようだ。


 肉体を酷使する業種だけに、しっかりとメシを食うのも仕事の内だった。


 これ以降、大環王国軍において定着して行き、家庭料理としても普及することになる。

 男の胃袋を掴むには肉じゃがであるという、女魔法師達には謎の伝説まで流布されるのだが・・・。


 北方からの謎のメシ。

 そして、北方からの女魔法師集団の参戦。

 房総方面軍の戦準備は着々と整って行った。








 そして、再度の黒船来襲の時を迎えた。


 ポルトガル勢は浦賀水道を全力で航行して、榊原勢が出していた警戒船を楽々と振り切ってのけた。


 全力で大環の警戒船を振り切って、突き当たった陸地。

 そこは館山だった。


 房総半島はそれ程高くも無いものの山が多い場所だ。

 海から見て多少なりとも平地がありそうな場所に、トリスタンは上陸したまでだった。


 本来なら大環側からすると海岸から敵が上陸するところを迎撃するのが楽だ。

 博多での第一ラウンドは、そうした局面を利用している。


 しかし、今度の戦闘では相手を上陸させて陸上で包囲殲滅することを狙っている。

 むしろ、上陸して貰わないと困るのだ。


 館山に陣を置いた佐竹・最上勢は、敵に軽くひと当てしたら附近の山へ退避。

 そのまま敵を富津附近に潜んでいる武田勢の所まで進撃させる。


 武田勢とポルトガル勢が衝突したら、最上・佐竹勢はポルトガル勢が乗って来た船を攻撃して移動できなくする。その後に武田勢と交戦しているポルトガル勢の背後を最上・佐竹勢が突くという作戦だ。


 もし、少数でも富津を突破する者がいても木更津に布陣した本多勢でこれを殲滅する。


 作戦は合理的なものだったし、兵士のやる気も装備も万全、指揮官も百戦錬磨。



 逆にポルトガル勢はトップのアルフォンソは焦っている。とにかく何らかの成果を挙げないことには政治的に帰れない。手ぶらで帰れば解任どころか処刑されかねない。


 副官のディエゴにしても、それは同じこと。


 魔法師トップのトリスタンはどちらかというと宗教的な熱狂をもって、この国への布教を願っている。ここで戦わずに逃げるという選択肢は彼には無い。


 もっとも、この3人揃って具体的にどこまで戦果をあげるのかという具体的なプランをこの段階で失っている。


 当初の計画ではできれば九州全部。ダメでも博多方面を中心に九州を拠点化する計画だったのだ。


 これが完全に崩れた。


 だから、王都に侵入して威嚇するといった程度の事しか念頭にはなかったのだ。


 大環側の戦力評価も誤っており、博多方面軍が大環の主力兵力であって王都方面は手薄になっているという判断を下している。


 10万単位の兵力を九州方面と離れた王都附近にも配備することは、国力的には無理だろうとポルトガル側では考えてしまっている。


 ディエゴの5隻程の船が全滅しないで逃れられたことからも、それほどの予備戦力などはないだろうという発想に囚われているということもある。


 だから、上陸戦にあたって得意のグリフォン、キュマイラ、ケルベロスを2万程でけしかけたら大環側が尻尾を巻いて逃げ出したのを見て、トップ3人衆は完全に安心してしまったのだ。


 佐竹と最上勢には、魔法師はそれぞれ10人しかいない。いきなり大量の魔物をけしかけられては対応に困るというのもある。


 だから、敵に2~3万近い魔物がいると武田と本多に通報して魔法師の増援を依頼。それまで後退していったのだ。


 “噂の出雲勢か、イルマータ勢のどちらかを増援に寄越せ!”


 それは最前線からの切実な通報だった。


 武田勢は出雲とは馴染だからと出雲勢を富津に持ってきた。

 だから、イルマータ勢が急遽館山に前進することになった。







 魔物を召喚して館山の大環勢を追い払って、ポルトガル勢が上陸して行くまでには2時間程だった。


 撤退する大環側では果敢に鉄砲や弓矢で撤退戦をやっていたからだ。


 魔物が寄って来ればまず鉄砲。もっと寄って来たら弓矢。

 魔物が火炎や雷撃攻撃をしそうになったら、サッサと逃げる。

 ここで無駄な抵抗はしない。


 そうした事を何度も繰り返して、やがて山中へと逃走。


 なかなか見事な逃げっぷりである。


 しかし、アルフォンソやディエゴはこれで納得したのだ、やはりそれほどの戦力はこの方面にはいないと。


 だから、彼らは安心して兵を上陸させた。

 今度は最初から魔法師を動員して足場の堅い場所へ鉄砲部隊を展開させた。

 鉄砲部隊が展開終えると、今度は大砲を揚陸させて。

 そうした作業と並行して歩兵部隊を上陸させていった。


 そして、一通りの戦力が展開可能になったら、即座に部隊を前進開始させた。

 彼らの発想としては博多にいた部隊を、こちらに移動させる前に王都を攻めたいと考えていたのだ。


 しかし、上陸地点から数十キロ進んだ小高い山に敵勢が布陣しているという報告が偵察部隊から送られてきた。


 3人組は現地側の有力な豪族だろうと考えていた。その抵抗線が王都方面の要諦なのだと。

 上陸地点では余り抵抗しなかったのは、要するに決戦の主力はそちらの敵ということだと。


 ポルトガル軍は魔獣を先頭に立てて、悠然と進軍を開始した。

 大砲が重いから、人力で運ぶ限り進撃速度は期待できないのだ。


 海岸線に沿って進撃すること暫し、トリスタンの目には小高い山に陣を構えた軍勢が目に入って来た。


 小さい菱形4つで大きな菱形を形作るマークを掲げている。

 それに漢字という華帝国でも使われている文字の旗もある。


 それが大環では敵を恐れさせる大軍団の旗であることをポルトガル勢は知らない。


 しかし、落ち着き払っている敵陣営の様子からして、この敵は先程の敵とは違って難敵なのだろうとは十分に予想できる。


 数の上からもどうやらポルトガル勢と似たような規模だ。


 アルフォンソはここが勝負どころだと理解した。

 トリスタンも、この敵が王都防衛を任された男なのだろうと考えた。


「トリスタンよ、ここが勝負どころだぞ。あの敵を何としてでも蹴散らして王都へ進撃だ!」


「そうだ、その意気だぞ。アルフォンソ、ここで勝負だ。こちらも全力で行こうじゃないか。


 魔法団諸君、ここは出し惜しみナシで行こう。全力で敵を潰すんだ」


 たちまち、ミノタウロスが6体程。

 そして無数かと思えるグリフォンとキュマイラ、ケルベロス。実数は23,000程だ。

 そして、海からはクラーケンが4体。


 ポルトガル側では、本当に無理しての限界一杯までの戦力を投下してきたようだ。







「ああ、博多で使った奴らをもう一回召喚したのか。タコも牛頭も増えているじゃないか。


 なんだろう、今度が本気だとでも言いたいのかな」


 大将閣下は既に見切れる敵に、大した感慨は無いようだった。


 この程度の敵なら脅威ではないと分かってしまう。


「信玄公、ひとまず怪獣退治はお任せ下さい。あの手合いなら、もう慣れました。ごゆるりと酒でも飲んでご観戦くださいませ」


「おおう、期待しておるぞ。出雲よ」


「おーし、野郎ども!今日も気合いれていくぞ!」


 ふふん、今度も信玄公からご褒美貰っちゃおうっと、内心密やかに狙う貴志。


 “おーう”


 “いざ”


 “また、タコ食い放題のチャンス!”


 “ケルベロスが不味い件について”


 “キュマイラも肉が臭い”


 “グリフォンの前半分は美味!”


 “グリフォン歓迎”


 “実は大牛こそ大歓迎。あれこそ王道。あれで肉じゃがを作って欲しい”


 “おお、それだよ!肉じゃがには大牛だよな”


 “著しく同意”



 どうやら新たなる料理は、精鋭部隊の士気向上には大いに貢献するようだ。


 ・・・それにしても、こいつらが最精鋭の部隊というのがどうしたものか。

 敵を恐れないのは良いが、全く食欲の対象としてしか認識していないらしい。







 魔法を使えるトリスタンの方が、アルフォンソよりも気が付くのは早かった。


 召喚した魔物達の前に進み出た派手な緋色の上着を着けている連中に見覚えがあることを!


 博多で中核になって指揮を執っていた連中が、戻って来ているのだと。


「魔王の部隊がいるぞ。油断をするな。


 アルフォンソ、通常部隊を迂回させて敵の本陣を襲撃するのだ。


 魔王軍相手は魔物か、魔法団しか対応できないぞ」



「わかった至急手配しよう。あいつらはマズイな」






 さて、戦場は博多での怪獣大決戦が再びという構図だ。


 今回は最初からケルベロスが参戦している点が、少々ことなってはいるけれど。


 大ガマと大蛇は喜々として、そのケルベロスに襲い掛かって捕食する。


 大鷹は上空でグリフォンと飛行キュマイラを追い回す。


 大猿は完全にミノタウロスをライバル認定しているようで、サッサと躍りかかって行った。


「なんだ、結局タコの相手を喜んでやるのは、俺の牛鬼だけなのか。


 牛頭と馬頭は先にミノタウロスの相手だろうしなあ。


 佐竹と最上が後ろから来るからドラゴンブレスを相手構わず使う訳にもいかないし・・・。


 まあ、暫くの辛抱かな」


 かくして、牛頭王と馬頭王。

 そして300程の牛鬼が召喚されて突撃が開始される。




「ふん、戦は数だぞ。魔王よ!


 味方を巻き込むならドラゴンブレスなど簡単には使えまいよ。


 ミノタウロス6体とクラーケン4体で時間を稼げば、敵味方入り乱れての完全な乱戦になる。そうなればドラゴンは使えまい。


 後はグルフォンとキュマイラの数で押して行けばよい」



「その通りだ、アルフォンソ。今日の君には神のご加護があるようだね。


 あの敵陣に討ち入って乱戦に持ち込めばドラゴンは使えない。勝機はあるぞ」


 武田勢20人に出雲勢40人の魔法師では、確かに2万を超える魔物を退治し切るのは無理だ。


 大ガマやオロチでは精々100~200くらいの魔物を食べれば限界だろう。

 大鷹とて、敵の大軍に囲まれてしまっては動きが取れない。

 大猿にしても同じことだ。ミノタウロスを相手に連戦して連勝するのは困難な話。


 少数精鋭部隊ではあっても、正面から2万を超えるような魔物の大軍相手では及ばないのだ。


 ましてや、武田勢に迫りつつあるポルトガル勢との戦闘には介入する余裕など、出雲勢にはありはしなかったのである。



 余裕がある態度をしていた貴志の部下連中にしても、実際の所相当に厳しい戦場であることは認識しているのだった。


 だからこその強がり。

 そうでもしていないとやってはいられない。


 乱戦になるとドラゴンブレスが使い難いのと同様に、レキュアやシェイラの大規模魔法も迂闊には使えない。



 実際に目の前では上手くない事態が進行している。


 ミノタウロス6体に対して、牛頭王、馬頭王、そして大猿の3体で対峙する。


 1対1なら快勝という戦闘であっても、流石に2対1では分が悪い。


 クラーケンを早く始末して、加勢させたい所だった。


 大猿がミノタウロスの後ろから飛び掛かって首筋をガブリと噛む。


 しかし、その背後から別のミノタウロスが首を絞めて引きはがす。


 背後から首を締められる大猿に、先程噛みつかれたミノタウロスが金的にパンチ。


 思わず悲鳴をあげる大猿だが、喉には後ろからミノタウロスの太い指が食い込んでいる。


 必至でもがく大猿。


 しかし、金的攻撃の次は大猿の目を潰しに来た。

 大猿の両目に深々と突き刺さるミノタウロスの指先。


 博多戦での経験を活かしているのは、ポルトガルの術師も同じだった。単体では勝負にならないなら卑怯千万な手段でも使ってとにかく勝ちに行く。


 今日のポルトガル軍は指揮官も魔法団も背水の陣だったのだ。


 両目を潰された大猿は背後から首を絞めるミノタウロスを振り払うことも出来ずに、やがてグッタリとして消えて行った・・・。


 一方、牛頭王は幸先よくミノタウロスの一体を撃破していた。

 2体で掛って来るミノタウロスを上手くいなして戦っていたのだ。


 しかし、大猿を撃破した2体がそこに加勢に加わると、形成は一気に逆転してしまう。


 左右から両腕を押さえ付けられた所で、牛頭王は両目を潰され金的攻撃で泡を吹いて倒れてしまう。


 これで手空きになった3体のミノタウロスは、馬頭王に一気に襲いかかる。

 5対1の凄惨たるリンチに等しい戦いだった・・・。







 さて、次回はいよいよ大乱戦。

 男勇者vs女勇者の激突。

 武田軍vsポルトガル軍の激突。

 イルマータ女性魔法師達vs黒船の激突。

 それぞれの戦場でそれぞれの奮戦。


 そして、悲劇・・・。

 乞う、ご期待です。


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