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42.黒船襲来!

 ご愛読ありがとうございます。

 ようやくと本題の勇者vs英雄の対決に突入開始です。

 攻める側、攻められる側。

 それぞれに準備万端相整い。

 イザ、決戦の始まり!



 ポルトガル軍の侵攻近し。


 本来なら侵攻軍の切り札になる筈だった少女達の寝返りによって、この情報を入手した王国首脳陣。


 幸いにして1ヶ月の猶予があるという。


 この間に出来る準備を済ませたいというのは当然の事。


 王宮での閣僚会議の席上、今後の計画が検討され配備計画が作成された。


 ◇戦力概況


 □兵力


・1ヶ月で40万人を超える兵力を動員可能。

・西洋の魔物対策済みの魔法師は1,200人。

・未対策の戦闘系魔法師で実戦可能な水準の者で900人弱。

・戦闘向きではない魔法師や隠居状態の高齢魔法師で1,500人。

・育成中で実戦未経験ながら実戦可能と思われる魔法師200人。


 □主戦兵器


・魔石の集積は十分で、2,000人の魔法師が使うには問題ない。

・火縄銃に関して使用可能な状態の物は30万丁を超える水準にある。-ただし、大半が20年以上前に製造されたもの。

・口径9cm程度の大砲が1,200門程度配備済み。

・火縄銃/大砲共に、弾薬の備蓄も十分に保有。

・焙烙玉―素焼きの小瓶に火薬を詰めた導火線付き手りゅう弾―を10万個以上投入可能。


 □船


・大型の安宅船20隻。

・より小型の関船約60隻。

・交易に使える朱印船約60隻。


 □特殊兵器


・ドラゴン魔石利用の王都結界。

・ドラゴン魔石利用の強力砲×2門。


 ◇総括


 □国内で防衛戦をやる限りにおいては、確実に数で押せる。


・兵力/火力共に問題なし。

・定数外戦力として、出雲のドラゴン×3、無数のゴーレム。児雷也の大ガマ、霧隠才三の大鷹、猿飛佐助の大猿。

・戦略級魔法師;レキュア、シェイラ、クルーガ、リューシャ、シオーヌ、シード。


 □遠征するには輸送力に課題。


・一度の船団では数十万規模の兵を運ぶことは不可能。

・遠征時には精鋭で臨む必要あり。


 ◇想定される敵勢力


 現在、アジア地域で行動しているポルトガルのガレオン船は10隻未満。

 欧州から遠征してくるガレオン船が15隻内外。

 それぞれに大砲を30~60門程度搭載の模様。

 搭載されている総兵力は25,000~30,000人と想定される。


 敵の魔法師には追討軍の小隊長を上回る実力を持つ者がいる。

 他に200名程の魔法師がいるが、こちらは大環精鋭には及ばない模様。


 想定侵攻地点


1.九州方面-博多方面。

2.江戸湾―王都直撃/安房/湘南方面。


 ◇王国軍配置


・九州方面軍―司令井伊直政。

 博多方面には、黒田、有馬、鍋島以下兵力10万。

 細川、島津は国元にて警戒、状況に応じて移動。


・王都方面軍―司令徳川家康。

 王都―近衛軍5万。

 安房-本多忠勝以下兵力10万。

 湘南方面―榊原康政以下兵力10万。


・マカオ侵攻部隊

 上杉、前田、九鬼、毛利、合計3万。

 動員艦船;伊呂波丸以下、安宅船10隻、関船30隻、朱印船30隻。



 ◇戦争方針


 □大目標


1.侵攻せる敵の確実なる排除。

2.マカオからのポルトガル勢力の排除。


 □ポルトガルへの講和条件

・大環王国に二度と侵攻せぬことを誓約させる。

・マラッカ以北への寄港禁止を承諾させる。

・賠償金ないし、物品における支払。


 □戦略


1.本土付近に先に相手に攻めさせてから反撃する。

・千里眼、遠視術に秀でた者による敵進路の確定次第、速やかに戦略魔法師を投入する。

・戦略魔法師は敵勇者を確認次第、これを撃破する。


2.撃退した後に、マカオへ侵攻し追い払う。

・マカオの街には極力損害を与えないことが望ましい。

・華帝国より大環王国が租借し、これをオランダ・イギリスに再租借する。


3.マラッカに一撃を加えた後に、マラッカ司令官と停戦交渉を行う。

・交渉に応じるまで交戦を許可するものとする。

・ただし、味方の増援は困難であることに、十分留意の事。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「千里眼、遠視術に秀でた者による敵進路の確定次第って、要するに僕に見つけろという事なのかな?」


「それは当然でしょう。この世の事なら見通せるのでしょうし」


 妙にうれしそうにリューシャは夫に応える。

 夫はそれが不思議という顔をしている。


「何で僕の配置には触れていないのかな?そもそもイルマータ軍という書き方なんてしていなくて、妻達だけ戦略級魔法師だなんて」


 そう、イルマータ公爵軍ではなく、あくまでも個人名を挙げての指名である。

 出雲の一党は特殊戦力として列挙されているのに、なぜか与楽の名前はどこにもないのである。


「だって、神出鬼没でどこにでも行けそうですもの。あなたには固定の配置場所なんて意味はないでしょう?イルマータ軍は北方の鎮護で動かせない。私達は魔法師ですけれど、あなたは魔法なんて使えないというから、戦略級魔法師ではないし?

 戦略級行者っていうもの変でしょうしね」


 どこにでも瞬時に行けるのなら、確かに配置場所などあってないような物だ。

 しかも、分身を使って同時に複数の場所に同時に存在するという、なんとも反則級の技である。

 どこに与楽を配属するのか?

 何処にでもいるのなら、全部の戦線ということになるのだろう。


 自分がヘンだと、散々言われていてもいまだに釈然としない与楽である。

 馬鹿らしくなって、話を変えようと思った与楽。


「なんか、結局僕のことは変人扱いなのか・・・。

 ねえ、リューシャ。君はなんだかとっても楽しそうに見えるのだけれど、良い事でもあったの?」


「そう見える?


 私はあなたと出会ってから、今まで一緒に色々な戦闘をして来た・・・。

 魔物が多いかったけれど、妖怪なんかとも。

 女の子に酷い事をする最低な奴をやっつけた。

 お父様の領地を滅茶苦茶にした叔父達も殺した。

 でも、今度の戦争はそうした物とは違う気がしているの。

 なんて言うのかしらね。


 今度の戦闘には情け容赦なんて要らない。赦したらこちらが生きる場所を失ってしまう。

 単純に領地が無くなるということではなく、私が私でいる場所が無くなってしまう。

 そういう事だと思うのよ。


 神龍まで使って、この国を焼き払おうとした敵。

 きっとこの国の人間なんて、敵にとってはどうでもいいのね。

 先ずこの土地が欲しい。

 ついでに、好き勝手に使える生き物がいるのならそれでもいい。


 交易したいなんて、嘘だわ。

 ただの略奪がしたいだけ。

 私達の土地を、私達の魂を。


 ここには私達が生きている。

 私達が私達として暮らしている。

 でも、そんな事に意味なんて無いと敵は言いたいのよ。


 ただ向こうの勝手な信仰を無理強いして、それを受け入れないのなら殺すだけ。

 私達という存在を人間だとは思わないのでしょうね。

 神楽耶達はアフリカから連れて来られた奴隷をリスボンで見て嫌になったみたいだけれど、私達はそんな身の上になんてならない。

 絶対に物になんてならない。私は人間でありたい。


 私達は私達。

 誰かに許されてここにいるのではないわ。

 ここは私達の生まれた国。

 私達の大切な場所。


 あなたがいる。

 クルーガいて、シオーヌがいて、シードがいる。

 私にとって大切な家族がいる。

 そうした場所に意味が無いなんて言わせない。


 私達は愛し合って今を生きている。

 外国人にそれに意味は無いなんて言わせないわ。


 私、自分の力で自分がここに生きているんだって敵に認めさせてやるの。


 これは、あなたがくれた力ですものね。

 あなたに出会えて本当によかった。


 愛しています、与楽様。

 心の底から、あなたのことを・・・」


 切ないまでの愛の告白。


 戦に敗れるならば全てを失うというこの時に。


 自らの力で全てを守り抜くと、愛しい妻は宣言する。


 ならば、夫はその愛しい妻を守らねばならぬ。



「ならば、僕は鬼になろう。


 この国に仇なす者には相応しい応報の因果を。

 悪しき因縁に終わりを告げよう。


 大力勇猛の神、大元帥明王の力を以って。


 最尊最上第一の者。

 大力勇猛の神。荒野鬼神大将、森林鬼神。


 我に国家護持の力を与え給え!


 愛しき妻を、


 愛しき国を、


 今こそ護らん」


 仏法を求めて来た男は、いま修羅の道を歩まんとする。


 いざ、戦場へ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 女子チームが逃げ出してしまって、すっかり取り残された男子チーム。


 優人はどちらかというと、男子チームからは浮いていた。


 昼間から酒を飲んで、港に着けば娼館に行ってという行動に着いて行けなかった。


 好きでもない女性と関係を結ぶというのが、純情な彼にはダメだった。


 そもそも、娼婦にしてもアフリカ大陸に侵攻していって捕まえたような連中である。日本人の感覚的には完全に不法な拉致監禁。挙句に行為の強要である。


 そうした暮らしにすっかりと馴染んでいく大三郎と波留に、優人は距離を感じ始めていた。


 もっとも、女子チームは優人のことなど顧みずもせずに、何処かに行ってしまった。完全に優人は見捨てられた状況だったから、否応なく航海に同行せざるを得なかったのだ。


 勇者として特別扱いされてこの時代を精一杯満喫している大三郎と波留。

 それを見ていると、余計に優人はストレスが溜まっていた。

 これはどうにも解消できそうにないものである。


 優人はすっかりと陰々滅々。

 対して、大三郎は絶好調であった。


 メフィストとの契約で魔王を殺せるだけの強さは身に着けた。

 後は倒して、元の世界に戻ればいい。


 ついでに、魔王との戦いで波留と優人のレベルアップをさせてしまって、最後にはメフィストを倒させてしまえばいい。自分ではメフィストに危害を加えられないとしても、波留や優人なら別だ。24年間も時間はあるのだ。じっくり構えても問題などない。


 必要なのは波留と優人のレベル上げ。

 精々、邪竜とやらにレベルアップに協力して貰おう。


 すっかりと、落ち着きを取り戻して異界の世界旅行を堪能し始めた大三郎であったのだ。


 そして、彼自身一つのアイデアを提案している。

 ポンポン船という物をご存じだろうか。

 金属パイプをコイル状にして、水を満たしておいてロウソクで温める。

 沸騰した水は外に飛び出して推進力になる。

 そして、空になったパイプの内部には吸引効果で冷たい水が入って来る。

 その冷たい水をまた温めて。

 これを繰り返して、進んで行くという玩具の船。


 玩具といっても、人間が乗れる程度のボートなら実際に作れるものだ。

 その仕組みをポルトガルのガレオン船に搭載させたのである。


 金属パイプは強化魔法で少々の事では壊れない程度にしておいて。

 ロウソクの代わりには魔石をエネルギー源にして。


 通常の帆船を魔法の風と海流操作で速度アップさせた上で、ポンポン船機関を装備したがガレオン船は異常な高速を発揮するものになっていった。


 大環側の大安宅船は船体の形状から水の抵抗は非常に大きい。

 ガレオン船もずっくりむっくりしている方ではあるが、それでも安宅船とは比べものにならない。

 魔法の世界であっても、物理的に物を動かすには物理法則には逆らえないのだ。

 千人単位で瞬間移動できるような魔法師などいないとなれば、この制約は大きい。


 かくして、数の上では劣勢ではあっても、速度という面ではポルトガル側の方が圧倒的に優位になったのである。


 侵攻船団の実質的な専横なる支配者に収まった大三郎は、大環の魔王を求めて少数部隊で王都に直撃を加える部隊と、別働隊として本体の大環侵攻部隊を博多へ進めさせた。


 大環側の主力を壊滅させない限りは、仮に王都を焼き払っても屈服などはしないだろうという考えだ。


 大三郎は王都へ魔王との小手調べに。

 波留と優人は博多で敵の主力を削らせておいてもらう。

 そう、大三郎は計画したのだ。



 双方の計画は、双方ともに考えることにある程度一致していた。


 侵攻側の思惑は守備側の計画に変更を余儀なくさせるような物はなかった。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 マニラから出港したポルトガル艦隊は結局33隻だった。


 一度に出港するのではなく、港の設備の都合で4波に分かれて出港。


 先発した大三郎の王都侵攻部隊は5隻のみ。

 残る28隻は、洋上にて艦隊を集結させてからの移動になった。


 だから、与楽はまず5隻の船が移動しているのを発見。

 1日遅れて大艦隊が終結して一路向かって来るという光景だった。


 そして、敵の船が速いのである。

 どうやら、数日のうちに大環に押し寄せて来る気配だった。


 翌日には九州沖を大きく迂回して北上して来る5隻の船。


 そして、真っ直ぐに九州へ向かっているらしい大艦隊。


 先行する5隻の船は、あるいはポルトガルの正式な使者であるのかもしれない。

 与楽の報告を受けて王宮ではそうした判断も出始めていた。


 その場合には、王都ではなく長崎に向かう様に指示するという方針が宰相から打ち出された。

 事前の連絡も無いまま王都に乗り込むのは不遜だと面会を拒絶する構えだ。


 当然大人しく従う可能性は低く、そのまま戦闘に突入する可能性も高いと王宮では想定している。

 そうなれば余り江戸湾の奥には入らせずに、出来るだけ外側で対処しておいた方が良い。

 浦賀水道の外側に警戒ラインを設置して、そこで一当てする。


 かくして、家康から指示を受けた榊原康政は、与楽、リューシャ、クルーガ、シオーヌ、シードの支援を受けつつ侵攻する艦隊を待ち受けることとなった。


 巨大安宅船の伊呂波はそれぞれマニラ侵攻部隊に取られたから、康政は通常の5隻の安宅船と5隻の関船を率いていた。

 大砲と種子島を満載している。

 魔法師は船の運航要員を除いて、戦闘要員は与楽一家のみ。


 戦闘力の面では心配いらない。

 反面、公式の使者であるとした場合に、公爵程度の存在を送った方が良いだろうという判断だ。・・・曲がりなりにも国家間の公式な外交使節だとしたのならだが。


 ちなみに大環王国の外務卿たる福沢諭吉はマカオ侵攻部隊の艦隊に乗り込んでいる。

 マカオ制圧後の交渉事は、諭吉が担うのである。

 外務卿が不在であるからこそ、公爵を派遣せざるを得ないということでもあったのだ。


 そして、今回の魔法師戦力を与楽一家に限定した分。貴志の一党は博多への移動が命じられた。

 大規模戦闘が生じるのは博多だ。

 開戦劈頭でドラゴンブレスをかまして、艦隊を沈めてしまえ。マカオには予備戦力などほとんど無いに等しい。敵の主力を排除するなら、後は楽な戦闘になる。


 家康の戦闘指揮は手堅いものだったが、確実に勝てる手段でもあった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 大三郎の乗るガレオン船から目視できる範囲の向こう側。


 おおよそ距離40km。


 遠視の術の使い手により、大環艦隊が相対していることは確認が取れている。

 この時代の大砲だと1km以下の距離まで詰めて行かないと威力は発揮できない。

 魔法にしても2km以下ではないと、実用的ではない。


 だから、悩まずに大三郎は距離を詰めさせた。


 対する康政は与楽から真っ直ぐ敵が進んできていることを知らされている。

 一応、口上を聞くだけきいて。

 そこから先は戦闘だろうと腹を決めて、早々に配下に弾薬の用意をさせている。

 大環側の大砲も1kmを切る距離ではないとまともに当たらない。鉄砲なら100m程度の距離だ。


 ジリジリと過ぎて行く時間。


 お互いの戦意と殺気が海上に充満していく。


 こうした時の殺気めいた気配というのは、魔法師ではない普通の人間でも不思議と感じ取ることができる。


 肌を刺すような嫌な気配。


 高揚する者はいよいよ興奮し、冷静な者はひたすら神経を巡らせて敵を探る。



 やがて、大安宅船の櫓から水平線に見えて来るゴマ粒のような黒い物体。


 5つの黒い塊こそ、ポルトガル船であった。


 ポルトガル船は黒く塗られていたのだ。



 ポルトガル船の船上では、こうした会話が行われている。


「我がポルトガルのインド総督アフォンソ・デ・アルブケルケ様の副官である、このディエゴ様が公式使節として大環に対して開国と九州の租借を求める書状を手渡す。

 拒否してきたら、そこからは戦闘になる。

 いいか、勇者殿よ。

 いきなり仕掛けるのはダメだぞ。そこを弁えておけよ」


「ああ、何度も聞いたよ。俺にしてみれば、敵の魔王が出て来るかどうか。そこだけが問題なんだ。お前達のやる事自体には興味はない。

 まあ、国際社会の一員になって手広く交易した方が国は繁栄するのは間違いないけれどな。

 俺のいた国ではそうだった。

 鎖国していうようでは、先々ダメになるだけだな」


「ほう、まだ若いのに中々分かっているではないか。

 そうだ。この世界は我がポルトガルとスペインで分割されている。それが秩序なのだ。

 この秩序無しでは、この世界ではやっては行けぬよ。

 お主が魔王を倒せば、世界の秩序は守られる。お主には期待しておる」


「ああ、魔王を倒して俺は元の世界に戻る。そこは任せてくれ」


 口先だけはまともに答えたものの、内心ではアメリカとロシアで冷戦していた時代みたいだな。この世界の中国は清末期みたいなもんか。大環は幕末の日本なのかなとどうでもいい事を考えてしまう大三郎である。


 やがて、距離は縮まる。


 望遠鏡などなしでもお互いの顔が見えるようになっていく。


「ん?アレ、大環には金髪や銀髪がいるのか?黒髪ばかりだと思っていたけれど」


「ああ、北の方に行くとそうなるらしいぞ。大半はお主と同じ黒髪だがな」


「へえ、面白いのな。でも、なんでアッチの戦闘用の船に女が乗ってるんだ?」


「それは魔法師なのだろう。ワシらは航海が長いからな、女連れだと面倒事は起きるから連れて来ないだけだ」


「ふーん。あれが敵さんの魔法師って訳か。妙に綺麗なのがいるぜ」


「ふん、余計なことに気を取られると死ぬぞ。もうすぐ交渉だぞ」


「ああ、わかってる」




 与楽は千里眼の他に天耳通という、遠くのものを聞き取る力も持っている。


 だから、ポルトガルの先頭にいた船での会話も聞いていた。


「榊原様。敵さんは開国と九州の租借を求める書状を手渡してから、拒否したら戦闘だと言ってます。

 それに、噂の魔王を追っている勇者とやらも1人」


「ふん、九州の租借とは大きく出たな。オイ通信兵、王宮へ連絡いれておけ。

 最初からその気なら話は早いわ。

 イルマータ公爵様は天守で陣取っていてくだされ。味方の神輿になって頂きませんとな。

 戦闘開始になったら、遠慮はいらぬ。

 クルーガ殿、シオーヌ殿、シード殿。かような敵など魔法で沈めてしまえ!」


「ええ、遠慮なくやらせて頂きますわ」


「任せておけ」


「はーい。シー頑張る!」




 やがて、黒船からボートが降ろされて数名の男達が乗り込んでいった。


 そのボートは必死に漕いで、安宅船に近寄って行く。


 やがて、ボートから「ポルトガル王国の公式使節である。乗船を希望する!」と声が掛る。


 ボートに綱が投げられて、固定される。


 やがて、安宅船に乗り込んで来たのは良くに日焼けした身なりの良い中年男とその従者らしき2名。


 そして、黒髪の少年だった。


 口火を切ったのはこの男だった。


「我は湘南方面軍指揮官、榊原康政である。

 我が国は貴国との交易を望んではおらぬ。速やかに退去せよ」


「我はポルトガル王国よりの使者である。

 我らが偉大なる陛下はインド総督アフォンソ・デ・アルブケルケ様に貴国との交易と九州の租借をお命じになられた。ここに副官である、このディエゴを使者として書状を使わすものである。

 我が国は大環王国の開国と九州の租借を求めるものである」


「寝言は寝て言え。貴様らにくれてやる土地など我が国には寸土たりとも無い。

 そのような要求など交渉にすら値せぬわ」


「我が国は世界を制圧しておるぞ。辺境風情が泣きを見るだけだぞ。

 華帝国を見よ。

 マラッカ王国を見よ。

 インドを見よ。

 皆、我々にひれ伏しておるわ」


「我々はお主ら如き歯牙にもかけぬよ。

 勇者とやらを手に入れて有頂天のようだが、勇者とやらよりもワシらの魔法師の方が強い。

 博多でそれを思い知らせてくれようぞ。


 使者の用向き大義である。

 用事は済んだのだ。疾く去るがよいわ。

 博多にて我が同胞達がお主らの28隻の船を悉く沈めてくれよう!」


「ふん、精々後悔するがいい。今日の所は用が済んだ!

 おい、帰るぞ!」


 その時、大三郎は見惚れていた。


 何度となく女神と称賛された少女に・・・。

 やっと、メインテーマの戦争の始まりです。

 江戸湾でひとあてしてから、決戦の場所は博多へ。

 次回は大決戦。

 貴志が、レキュアが、シェイラが戦場を駆け巡る。

 そうそう、鬼からゲットしたお宝も登場です。


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