41.初遭遇
ご愛読ありがとうございます。
今回は勇者一行の決別。
そして女の子組の旅路です。
勇者が北から密航して、英雄と遭遇するお話。
締めは、また徳川家康公の御出馬であります。
これで、次回はまたまた大乱戦に移行いたします。
気が付けばダンジョンの第1階層にいた勇者の6人。
ボス戦で力尽きてダウンした後の事を大三郎から教えられる5人。
「波留がケルベロスと相打ちになって噛まれてさ。
慌てて助けに走った神楽耶がミノタウロスに蹴っ飛ばされて。
それから俺はミノタウロスとタイマンになってさ。目玉を潰して、アキレス腱を叩き斬って。
ミノタウロスの動きが止まったから、ケルベロスの胸を裂いて魔石を取り出して。その魔力を使ってやっと止めを刺した。
ラスボス戦が終わったら、ここの一階層に転送されて戻ったという感じ」
「やったのか・・・。ボロボロになったけれど、ダンジョン攻略成功って訳だな」
「宝物とかなかったのかな?ダンジョンのコアだとかさ?」
「終わったらここにいたというだけ。そう言えば何にも貰えてないよな。精々、魔石を入手したくらいか」
「無理な戦い方をして全滅寸前だったのだから、全員生き残っただけでも十分よ。
エルフの村で休憩しながら、安全にレベルアップをするべきだったわ。
あっさりと防壁が壊されるとは思いもよらなかった」
「そうね。治癒魔法が全然間に合っていなかった。理緒が毒蛇に噛まれた時や、波留がケルベロスに食われた時はどうしようかと思ったわよ・・・。
助かって本当によかった・・・。」
「あの時は痛みが酷かったのと息が出来ないので大変だった。神楽耶がいなければ死んでいたと思う。ありがとう神楽耶」
「僕も防壁が壊れて火炎を浴びた時に死ぬかと思ったよ。金子さんありがとう」
「オイ。最後に辻褄合わせたのは俺だぞ。俺。
なんか言う事あるだろう?」
「アンタの無謀のせいでこうなったのよ!今度から神楽耶の指示に従いなさい、この馬鹿」
「そう思うよ、無謀だったと思う。金子さんはちゃんと賢者向けスキルがあるのだしね」
「佐々木は反省すべき」
「大三郎はペナルティものよ」
「波留は味方だよ、なあ!?」
「・・・でっかいのに食われかかった記憶は、多分一生忘れねえと思う・・・」
実際の所、波留は出血多量で心停止状態だった。メフィストの処置が数分遅ければ、死んでしまってゾンビとして暮らす羽目になっていたかもしれない。
「なんだよ。俺のお蔭で助かったのにさ」
「だから、アンタの無謀で危機に陥ったの!」
「フケツ男は反省すべき」
「大三郎、無理してると死んじゃうよ。僕達は不死身ではないみたいだし」
「佐々木。あなたがこの異世界で無双して、女遊びして喜んでいたいというのなら付き合い切れない。私には大した武力はないけれど、洞察と策略がある。あなた無しでも元の世界に戻ってみせる」
「・・・だったら、俺はお前の力など無しに戻って見せる。覚えていろよ、金子!」
勇者一行が決裂状態に陥ったということなどお構いなく・・・。
勇者、ダンジョン攻略に成功。
この知らせは、敬虔王ジョアン3世を大いに喜ばせた。娘の命を代償にしてまでも求めた力は本物だった。これなら大丈夫、アジアへの布教の障害となっている大環王国を屈服させることは可能だ。
献上された巨大ミノタウロスを眺めながら、彼は確信した。
かくして、敬虔王ジョアン3世は、教王パウル3世に宣言した。今度こそ極東の魔王を征伐して、主の威光を世界に示すのだと。
ポルトガルの利権はアフリカからブラジルに奴隷を連れて行きプランテーションをやらせること。そして、インドから極東方面での香辛料交易などだ。
だから、大環への行程もそれに沿った物になる。
ポルトガルを出港して、アフリカ大陸に点在する拠点を経てインドへ。
そこからマラッカを経由してマカオを拠点として、大環との戦闘に備えるという概要になる。
この時代の欧州では遠距離航海にはガレオン船が主流になる。
海賊船のイメージを思い浮かべる時のそれになるが、太い安定性の高い船体を持つ帆船である。
本来なら足が遅い種類の船なのだが、そこは魔法の世界のこと。
風が欲しいなら魔法で起こせばいい。
海流を変えたいのなら魔法で変えればいい。
結局、2ヶ月程で大三郎、波留、優人はマラッカに到着することになった。
何故、3人だけだったのか。
女子組が同行を嫌ったのだ。
リスボンは繁栄の時を謳歌している欧州有数の都である。
様々な国から様々な人種がやって来ては、盛んに交易を行っている。
当然ながら奴隷貿易も盛んな時代でもある。繁栄の陰には闇もある。
潔癖な年代の3人組の女子は、無数に運び込まれる奴隷を見て愕然としてしまったのである。
労働用の奴隷は鞭打たれ、娼婦用奴隷は悄然と連れ去られ。
それが極めて大規模に盛大に。
人が物として扱われる。
大三郎と波留などは、それをファンタジー世界の事だろうと喜んでいる。
挙句に、3銃士に伴われて娼館に行ってしまう。
彼女達の精神は、拒んだのだ。
もう、これ以上付き合っていられないと。
魔王を倒せば帰れるのだとしても、それはこの世界の不条理に付き合うという事とは違うだろうと。
元の世界に帰るのに必要なら、魔王を倒すには吝かではない。
しかし、この馬鹿らしい世界にはいたくないからそうするのだ。
断じてこの世界を守る為に魔王退治をしに行くのではない。
金子神楽耶は洞察と策略、そして実行の人である。
彼女は、女子組3名は北方ルートを採用すると宣言した。
ノルウエーからオロシア経由で大環を目指す事を画策。
敬虔王ジョアン3世から相応の支度金はもらっていたから、それを使ってノルウエー商館とオロシア商館に話をつけて、船出の早い商船に当たりをつけて早々に旅立って行ったのだ。
ポルトガル兵士を一切連れないままで。
オロシアと大環王国には公式な国交があるというのなら、その交易商人達なら行き方も知っている筈だ。
女の子だと舐めて掛って来た連中は、理緒がタコ殴りにして言う事を聞かせた。
どうせ勇者に対抗できるような奴など、この世界にはいないのだ。
更に幸いだったのがノルウエーに着いたときに、非公式ながら大環の北方領と交易をしているという自称バイキングの子孫だという商人達と知り合えた。
自分達の一族が過去に大環に渡って、今でも現地で暮らしているのだと言うのである。
正規な国交は無いけれど、年に数回非公式な交易は行われているのだという。
そして、丁度その交易船が出るタイミングだったらしい。
それならばと、同行させてもらうことにしたのだ。
自分達は魔法を使えるから、航海するために必要な風や海流操作はお手の物であると売り込んで。
商人達にとっても渡りに船とばかりに、この提案は受け入れられた。
神楽耶達はリスボンを出てから一月後には、大環王国の北方領に入港していたのである。
通常だと3ヶ月くらいかかるような行程が、実にあっさりと短縮されて大喜びの商人。
お礼にとルロイ・シグルという男宛ての紹介状を書いてくれた。
シグル一族というのは昔のバイキング王の宰相だった一族で、いまでは大環王国北方領最大の貴族家で家宰を務めているのだという。
ルロイというのは、その一族の者で商人との窓口を担っている男らしい。
イルマータ領は津軽海峡の一角に港を有している。商船はそこに入港して行った。
ルロイは港の交易事務所で面会に応じてくれた。
「はじめましてシグル卿様。
私は金子神楽耶と申します。こちらは三鷹理緒、こちらは井上樹里でございます。
お忙しい中お時間を頂きありがとうございます」
「昔馴染からの紹介状だからね。冷たくもできないさ。なんでも凄い魔法師だと、連中は随分と褒めていたからね。
この領地に強くなりたい魔法師が来るのは、慣れて来たけれど。外国から留学希望なのかな?」
「はい、魔法を上手くなりたいのですけれど、なかなか良い師に恵まれません。
こちらなら素晴らしい修行ができると噂を伺いまして。
外国人では教えを得ることは難しいでしょうか?」
「どうなんだろう。私は魔法についてはサッパリと門外漢なのでね。
魔法学校に問い合わせて貰うしかないだろうな。
この港から公都行の定期馬車があるから、それに乗って行ってもらった方が早いかな。
学校宛てには、こちらでは判断できないから学校で決めてくれという書状を書いておくよ。
ここでは何とも言えないなあ」
「ありがとうございます。
でも、外国人が公都に簡単に入っても良いものなのでしょうか?」
「本来はダメだねえ。そもそも、非公式の交易船に乗って来ているのだし、港町から中には入れられないのが決まり。
でもなあ、有能な女魔法師を僕が門前払いしたというのも、それはそれで叱られてしまうだろうしね。
公爵様は女魔法師の保護には熱心な方だからね。君達が受け入れられるかどうかは、半々だろうと思うよ」
「左様ですか。ご丁寧にありがとうございます」
かくして、公都城内に堂々と入り込んだ女勇者の一行。
公都城は巨大だった。ポルトガルの王城よりも巨大な構造物だった。
しかし、そこで彼女達は理解してしまった。ルロイという男が彼女達を簡単に通した理由を。
「なっ、私達位のステータスの魔法使いが大勢いるじゃない!」
「ビックリしたわね。これじゃ勇者なんてお題目だけよ!」
「これは壮観。みんな強力な魔法使い」
王立女子魔法学校を公爵領に誘致したから、公爵城内には相当数の女魔法師が存在しているのである。
しかも、その講師ともなれば・・・。
「あの銀髪の子なんて凄すぎるわね・・・。賢者スキルに、魔法と剣術で無双だわ」
神楽耶が呆然としているのは、シオーヌである。
勇者達には見えている彼女のステータスとしては。
シオーヌ
魔法騎士Lv90
スキル;魔法;地;Lv80、水;Lv90、風;Lv98、火;Lv90、空;Lv81。
仙術Lv40、剣術Lv90、槍術Lv75、乗馬Lv90。
洞察Lv38、策略Lv42、統率Lv40。
現在3人の女勇者達のステータスは概ねLv45内外である。
樹里なら魔法系のスキルだけ。
理緒なら武闘系のスキルだけ。
神楽耶は空魔法と洞察、策略、統率である。
3人がかりでもシオーヌという少女には勝てない。Lv98の風魔法を一発入れられたらひとたまりもない。
「ねえ、私達って一体何なのかしらね。勇者って言っても現地の魔法使いの方が圧倒的に強い。私達が召喚された意味なんてないじゃないの!」
「何故、私達は召喚されたの?」
「・・・もう、意味がわからないわね。
召還された事に意味自体なかったのよ。
酷い話だわ、あの王女様だって無意味な死だったということでしょうね。
多分、ポルトガルの王様は狂っているのよ。
魔王なんてこの国にはいない。
ノルウエーやオロシアの商館でも、大環で魔王が暴れているなんて話は無かったもの。
この世界で魔王が暴れているのなら、あんなにノンビリしている筈がないわ。
竜殺しの英雄というのがいるらしいけれど、この国では有名な伯爵らしいし。
困ったわね。
これじゃあ、私達の帰り方がわからない・・・」
「なんだか妙な話をしているね。
ポルトガルの王様が狂っているのかい?会ったことがあるの?」
「えっ・・・」
神楽耶は急に声を掛けられ驚いたのではない。
目に入った少年のステータスが異常だったので驚いたのである。
与楽
英雄Lv30、仙人Lv70、行者Lv90、退魔師Lv99+。
スキル;仙術Lv70、呪術Lv95、降魔調伏術Lv99+、祈祷Lv95、剣術Lv90、棒術Lv92、乗馬Lv60、洞察Lv99、策略Lv60。
「英雄で仙人って・・・」
「いや、仙人なんてやっていないよ。僕は行者ではあるけれどね。
英雄って言われたことは・・・ある。
君達は誰?いや、何者だい?妙なことを言うね」
「私達は・・・あの・・・」
「どうしたの、あなた?」
「不思議な人達でね。ポルトガル王と会ったことがあるらしい。狂っていたらしいけれどね」
「まあ、ポルトガルからいらしたの?」
登場してきたのは金髪の美しい少女である。仙人であり英雄とも言われた男の妻であるらしい。神楽耶はまた驚かされている。
リューシャ・イルマータ
巫女Lv88、魔法騎士Lv65
スキル;魔法;地;Lv85、水;Lv92、風;Lv89、火;Lv91、空;Lv85。
仙術Lv38、祈祷Lv88、剣術Lv65、槍術Lv65、乗馬Lv70。
洞察Lv80、策略Lv72、統率Lv90。
イルマータと言えば、ここの領地の名前。そして、このハイスペック。
「り、領主様でいらっしゃいますか?」
「ええ、そうよ。どなたかしら?」
「私達はこの世界の人間ではありません。
ポルトガル王ジョアン3世により、この世界に召喚された者です。
お願いします、私達を助けてください・・・」
「一体どういうことかしら?落ち着いて聞いた方が良いみたいね。こちらにいらして」
案内された部屋は、いかにも貴族の部屋という豪華絢爛たる部屋であった。
上品さが漂うという意味では、悪趣味な豪華さのポルトガル王の部屋よりも好ましいと神楽耶は思う。
「黒髪の方だと緑茶の方が良いかしら、それとも紅茶がお好み?」
「お気遣いありがとうございます。それでは緑茶をお願いします。
・・・私は金子神楽耶と申します。こちらは三鷹理緒、こちらは井上樹里でございます。
2ヶ月程前になります。私達は6人でこちらの世界に召喚されました。
ポルトガルのベアトリス王女の魔法です。
そして、私達はこの世界の魔王を倒すように依頼されました。魔王とは大環王国の邪竜を使役する者。異国に攻め込んで街を焼き払っていて、このままでは世界が滅ぶ。
だから、勇者を召喚して邪竜を使役する魔王を倒して欲しい。そうすれば元の世界に戻れると。
私達、勇者として召喚された者は目の前にいる方の強さが数値として理解できます。
私達は45というレベル。領主様は88というレベル。ご夫君様は99というレベルの強さであるという具合にです。
この世界には私達などよりも強力な魔法使いがいる。本当にこの世界を破壊するような魔王がいたとしても、私達など必要ないのです。
そして、恐らくこの国に魔王などいないのです。
私達はポルトガル王の戯れで呼び出されただけ。
そして、元の世界に帰る方法がわからないのです。
ポルトガルでダンジョンに入った時に出会ったエルフが言うには、戻るべき世界を明確に規定できれば召喚魔法で帰れるのではないかと。でも、そんな高位の召喚魔法の使い手などいないとも。
戻る方法を私達は知りたいのです」
「あなた、今の話をどう思います」
「理解できないね。
いや、この世には3千世界があると仏は唱えるけれど、その世界を跨ぐことが出来るとするなら、それは魔法ではなくて神通力だろうね。
人間の使う召喚術なんかではダメだろうと思う。勿論、エルフでもだ。
3千世界があるとしたなら、無数にある世界の中から彼女達がやってきた世界を見つけ出して送り出せばいい。でも、僕達にはこの世界ではない世界という物を認識することができない。認識できない世界に召還魔法で送り出すのはあり得ないと思う。
そうした事ができるとしたら、それは超常の神々の御技である神通力しかない」
「あら、あなたも神通力が使えるのでしょう?」
「僕程度の力でダメだね。
僕はこの世界の事象しか見通せない。千里眼と言っても、この世界限定の物だからね。
もし、彼女達の世界を認識できるとしたなら、送ることも出来るだろう」
「ベアトリス王女が使った私達を召還した魔法についてご存知ありませんか?」
「それは簡単だろうと思う。
普通の召喚魔法というのは、要するに目の前に無い物を持ってくる術。
相手を問わずに、適当に強い奴を召喚するだけなら結構簡単なんじゃないかな。
例えば、出雲伯は具体的に個別のドラゴンを認識して召還しているけれど、ワイバーンなどを召喚する時には無差別にワイバーンという存在で召喚しているみたいに見える。
君達が無差別に召喚されたとしたなら、そういう術の使い方をしたのだと思う。
そうか、わかった。
君達自身が僕みたいに神足通を身に着ければ自力で戻れると思う!」
「それはどうやったら身に着くのでしょうか!」
「余りお勧めできないわね」
「いや、簡単だろう。ひたすら千日行だよ、10年ちょっとで身に着くんじゃないかな」
「それだと普通の人間は死んでしまうわよ!私やクルーガでも、死にかけたじゃない!」
「ええっと、どういう修行なのでしょうか?」
「毎日ひたすら山の中を歩いて、魔の物に出会ったら倒して進むのよ。毎日休まずにひたすらに何年も掛けて!
気が狂うか、体力が尽きるかね。常軌を逸した人間じゃないと無理よ」
「ひどいなあリューシャ。それじゃまるで僕が異常者みたいじゃないか」
「ねえ、あなた。
あなたはいい加減に“普通”の人間を理解すべきだと思うの。
あなたは強いわ。私やクルーガが足元にも及ばない程に。
それは断じて普通じゃないのよ・・・」
「う~ん・・・。そうなのかな・・・」
「領主様。
方法があるというだけでも救いです。今の私達では無理だとしても、いつかできるのかもしれない。
それは希望です。
私達には救いがあるのかもしれないという、微かであっても希望です。
それがあるなら生きていけます。
お願いします、私達をここで修業させていただけませんか」
「ポルトガルから来たとなれば、陛下の御許可を頂かないと駄目ね。
少しポルトガルの話を聞かせて頂戴。
宗冬、いるのでしょう?調書と取っておいて頂戴ね」
「御意」
「えっと、いつの間に。
凄い、魔法なしだけれど、兵法Lv92、剣術Lv96、忍術Lv92、仙術もある・・・」
「ゴホン。
しからば、ポルトガルの動向にござるな。
そも、奴らは戦争を仕掛ける気でござるか?」
「あ、はい。
私達は6人で召還されたのですが、男の3人は南回りでアフリカ、インド、マラッカを経由してマカオに来ます。そして、ポルトガルの魔法使い200人程と一緒です。
私達よりも一月位遅れると思います。
極東の魔王を倒して世界の平和を守るのだということになっていますが、実際には私達に大環の魔法師を殺させておいてこの国を占領する気なのだと思います。
教王もそれを後押ししています。
でも、3人の中では独りだけ強いのがいる他は私達と同じレベルが2人。
200人のポルトガル魔法使いは私達よりも随分弱いです。
1人だけレベル70。2人は私達同様にレベル45。200人はレベル25~30程度になります」
「れべるなるものでござるが、姫様が88で、与楽様が99という事で相違ござらぬか?」
「はい、間違いありません。お兄様は剣術96ですから剣の達人です!」
「それは嬉しゅうござるな。
して、どこをどう攻めるかお分かりですかな?」
「いいえ、マカオで聞く筈でした」
「ふむ、姫様。事は急を要します。至急、王都にご注進を」
「そうね、あなた。宗冬を連れて行って頂戴」
「ああ、丁度いい具合に但馬様は本多様と協議中みたいだね。ちょっと行ってくるよ」
スッと姿を消す与楽と宗冬。
「瞬間移動ですか。ここから王都は遠いのではありませんか」
「瞬間移動では無くて、神足通という神通力なのですって。あの技を身に付けろということよ。私にはできなかったけれど」
「そうですか。難しそうですね・・・」
「ねえ、陛下の御心次第だけれど。
許可をいただけたら学校で修業するのは構わないわよ。
余り無理な修行をして、命を落とすのでは意味などないでしょうし。
少しずつお稽古すればいいわ」
「ありがとうございます。このような異世界の怪しい者にご温情を頂き心より御礼申し上げます」
2時間後。
帰ってきた与楽と宗冬。
ついでに宰相閣下と軍務卿と但馬を連れて。
彼らは直接、神楽耶、理緒、樹里から、それぞれ個別に事情聴取を行った。
リスボンから出港した船の数や大きさ。兵員の数。
そこに積まれている大砲の大きさと数。積み込んでいた火薬の量。
魔法使いが持っていた武器の種類や数。
絵心のあった樹里がなかなか見事な船の絵を描いて宰相閣下を感心させたり、神楽耶の予想した魔法使いと大砲の連携など。
じっくりと事情聴取を終えた後、宰相徳川家康は告げた。
「王都にいると何かと騒ぐ者が出て来よう。
お主らはこの地で修業をするが良い。
生憎と異世界とやらに渡る術をワシらは知らぬ。与楽はお主ら自身が通力を得ればよいと申すが、それは容易なことではあるまい。
しかし、千里の道も一歩からじゃ。何もせぬなら、何も起こらぬ。
お主らが得心するまで、修行に励むが良い。
人の一生は重き荷物を背負うて行くが如きもの、急ぐべからず。」
律義者と言われる好々爺という顔で、家康は彼女達に通告した。
いや、男の旅路というのは書いていても面白くなかったので、女の子達の話にしてしまいました。
旅の港で男が酒飲んで娼館行ってという話も悪くないのかもしれないけれど、筆がサッパリと進まないのです。
さて次回ですが、黒船来襲ということになります。
王都に突然殴り込んでくるポルトガル船。
大環王国に交易を求めて、王都に砲撃を加えるというお話。
第4~5話で伏線張っていたアレの登場です。
さあ皆さん、血沸き肉躍る大決戦の幕が引かれます!
乞う、ご期待。




