表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/57

22.モンスター大戦Ⅳ

 ご愛読ありがとうございます。

 とある地方で伴天連術師が陰謀を巡らせ、モンスタートレインを引き起こす。

 数百の下級竜の襲来に対抗できない追討軍。

 敢然と立ち向かうは青と赤の魔女。はじめて見せる彼女達の本気。

 そして、森の主のドラゴンついに参戦!

 クライマックス決戦編、ご一読下さい。


 “こちら第1区、逃げ帰って来るオーガ集団と進撃してきたティラノ集団が進路上で交差。混乱しています。”


「まあ、そうなるのか」


 万単位で押し寄せたゴブリン、オーク、オーガ混成軍は、猛烈な魔法攻撃を受けて敗走。

 逃げ帰ったらそこにはティラノの群れが待ち構えていた。

 敗走中で怪我をして血を流していただろう混成軍は、血の匂いに刺激されて腹を空かせたティラノ集団に襲われて腹の中に納まりつつあるらしい。


「隊長様、こちらから打って出ないのですか?」


 藩兵の隊長が訝しげに児雷也に尋ねて来る。敵が混乱しているなら絶好の機会ではないかと言いたいのだ。


「30cmの魔石を担いで森を進軍するのは邪魔。これは平原での会戦専用なのだ。

 それに迂闊に森の中で大規模魔法を使うと、森が全部丸ごと火の海になりかねない。味方ごと火にまかれて死ぬことにもなる。

 そうかと言って大規模魔法無しでは、この少人数でモンスターの大軍の相手は願い下げだぞ」


「なるほど、そういうものでございますか。大魔法も大変なものでございますね」


 森で焼け死ぬのは御免だとばかりに首をすくめる藩兵である。



 “こちら第一区、ティラノがオークとオーガを襲って、貪り食っています。状況的には血の海です。”


「こりゃ、ティラノは腹を膨らまして、コッチには来ないかもな」


「第2区、状況を知らせ」


 “第2区、大鰐集団は進撃して来たティラノ集団と喧嘩してチリジリに敗走です。ガマとヘビは火の手を見て退避して行きました。”


「第3区、状況を知らせ」


 “大物が去って閑散としています。熊や狼が多少ざわついている程度です。”


「第4区、状況を知らせ」


 “現在は静かなものです”


「第5区、ワイバーンはどうしているか」


 “依然として大群を形成しています。殺気立っている。”


「第7区、状況を知らせ」


 “負傷したオーガやオークが少数単位で戻って来ています。再進撃は無理でしょう。”


「来るとしたらワイバーンかティラノか。如何にも俺達らしいじゃないか」


 児雷也の言葉に、隊員達は微妙な顔をする。

 訓練となれば、まずはワイバーンとティラノで肩慣らしをして。

 それがいつの間にか自分達の習慣である。

 最近では一人当たり6体位を相手にさせられているお馴染みの相手だ。


「さて、どうなるかな」



 “第5区、ワイバーンが出る。200体はたっぷりいるぞ。”


 “第1区、ティラノが100体前進を開始した!”


 ザワッとした声にならない動揺が走る。本日初めて緋色の陣羽織連中に恐怖の表情が現れた。


 城門で戦闘の見物人と化していた藩兵とハンター達は既に感覚が麻痺してしまって、今更100や200と言われてもピンと来ていない。


 “見物人”には、ついさっきまで万単位の敵を撃退していたではないかという程度の感覚だ。


「えっ、30人でティラノとワイバーンを300体まとめて相手か?実戦で??」


「お頭様、無理です」


「せめて第1小隊を」


「レキュア、シェイラ、ティラノを潰して。第2、3、4小隊は、ワイバーンを駆逐」


「はい、お館様」

「はい、あなた」

「「「応」」」


 隊員達が怯えているというのに、対応している子供らしき声の反応は醒めたものだった。


 どうやら、たった二人の応援を出すだけらしい。それも女の応援みたいだ。


 それなのに隊員達はすっかり落ち着いた。


 何が起きているのか、サッパリ理解できない見物人達には逆に動揺が走る。


 隊員達が動揺した理由の一つに、大威力魔法と言っても、ある程度の巨大サイズの敵では耐えてしまえることがある。


 群れで迫るティラノなどに大威力魔法をぶつけても、群れの前方にいる個体は倒せても中段以降にいるような個体はそのまま進撃するものがいる。


 実際に先程トリケラが少数ながら城門近くまで突破している。


 100体程度になって来ると一撃で倒すのは無理で、相当数の魔法弾を叩き込み続ける必要があって乱戦模様を想定しないといけない。


 それ故に時間の許す限り、事前にティラノ、トリケラ、大鰐といった大物は間引きを狙って狩り獲っていたのだ。敵を減らすと同時に魔力源である魔石を手元の集めておくのは、非常に大きい意味がある。


 そして自由に空を機動できるワイバーンも面倒な相手であるのだ。高速で3次元機動する敵は大規模魔法でも簡単には命中しない。対処には苦労せざるを得ない難敵なのだ。


 隊員達が嫌うのは、大型モンスターに地上と空中から同時に来られるのは非常に厄介だということ。

 戦闘訓練でも決して入門編ではなく、応用編の難題に相当する課題だ。


 ワイバーン、ティラノ、トリケラ、大鰐。こうした大物モンスターの混成群が迫って来るのは要注意。


 これに対して空中だけか、あるいは地上だけの敵に限定されるのなら、まだ多少なりとも対処はマシなものになる。


 隊員達が冷静になれた理由は、自分達は空中だけ対処すればいいと割り切れるからだ。

 赤と青の魔女が地上を受け持つなら任せておいて良い。なにも心配はいらない。




 いまだ炎が燻っている城門から5百m地点。


 闇夜に黒いローブ姿の魔法師が2人忽然と現れる。


 片方の全身が青い光で包まれると、前進して来るティラノの目前に巨大な水球が現れた。


 次いで、もう片方の全身が赤い光で包まれると、巨大な火柱が水球に向かって伸びて行く。


 火柱が水球に衝突すると、もの凄い勢いで水球が弾け飛んだ!


 轟!

 轟!

 轟!


 本日で一番大きい轟音を撒き散らして森の方向へ、水蒸気の渦が襲いかかる。


 渦は真横に進む竜巻のようにティラノの群れを包み込んでいく。


 夜の闇に輝く青と赤の輝き。


 横殴りの巨大な竜巻と飛び散る水蒸気と炎の煌めき。


 全てを蒸し殺して行く熱気、膨張する空気、吹き荒れる熱風の嵐。


 幻想的でありながら、撒き散らされる圧倒的な暴力。


 そして、竜巻が通り過ぎた後にはティラノの死体の山が出来上がっていた。


 悲鳴を上げる時間すら与えられることなく巨獣達は虚しく散って行ったのだ。


 手練れの隊員1人でなんとか6~7体を仕留めるのが精一杯。


 それなのに、たった2人で100体近いティラノを瞬殺。


 城門からでは見えていないが、森の第1区近辺に居合わせたモンスターにも甚大な損害を与えたはずだ。


 あまりにも壮絶な大魔法。


 かつて、人外として扱われていた魔女2人が初めて見せた実戦での本気。




「各隊、射撃用意。目標ワイバーン。

 雷撃魔法で空から地面に叩き落とす。

 距離千から射撃開始」


「距離1200」


「距離1100」


「第2小隊。射撃5秒前、4、3、2、1。攻撃!」


「第3小隊。射撃5秒前、4、3、2、1。殺せ!」


「第4小隊。射撃5秒前、4、3、2、1。撃て!」


「第2小隊。次だ、来るぞ!

 5、4、3、2、1。撃てや!」


「第3小隊、まだまだ!

 5、4、3、2、1。テッ」


「第4小隊。

 射撃5秒前、4、3、2、1。撃て!」


「撃ち方止め、敵は逃げたぞ。

 地上に墜ちた奴に止めを・・・刺す必要もないか」


 地上は大氷原と化していた。


 先程まで吹き荒れていた熱風の嵐など無かったかのような静寂たる氷の世界。


 炎は消えて、煙も消え去った白い静かな空間。


 地上にある物は悉く白い氷の彫刻のような有様だ。


 その白き世界に輝く青い一点の光。


 青き光が消えると赤い光が迸り、次の刹那には地上は色を取り戻した。


 血の色は赤く、焼け焦げた肉体は黒く。


 生き延びたモノなどいない死の世界の色ではあったけれど。



「第1区、状況を知らせ」


 “第1区担当、現在第2区に避難。あんなのを浴びて生きているモノなどいる訳ない。瞬間移動できないモノは全部茹で上がって死んでいるに決まっている!マジ、ヤバイって”


「その第2区の状況を知らせ」


 ”大きな群れは解消されて少数に分裂して散り始めています。”


 ”こちら第5区、ワイバーンが10数体戻りました。怪我していない奴はほとんどいません。再進撃は無さそうです。”


 そこに突然と割り込んできた幼い声。


「第1小隊各員、監視任務を終了。全員森から離れろ、至急」


「あなた!?」

「お館様?」


「寝た子が起きた、これからは俺の仕事だ」


「「「「第1小隊、脱出します」」」」


 子供の声が冷静なのに対して、それに対応する大人の声には激しい動揺の色が浮かぶ。


 子供にとっては何度目かのドラゴンとの遭遇であっても、この場にいる大人達には召喚獣ではない野生のドラゴンとの戦闘など初めてのことなのだ。


 彼らの主が操るドラゴンなら何度も見ているし、戦闘も見たことはある。


 しかし、魔の森で主のドラゴンとの戦闘など見るのはこれが初めての事になる。


「こちら児雷也、ギルド支部長へ通達。これよりドラゴンとの戦闘になる。警戒を怠るな」


「りょ、了解です」


 児雷也の声も応答するギルド支部長の声も、緊張で上ずっている。


「児雷也より各小隊。各員魔法障壁を全開。何が起きるかわからんぞ」


「「了解」」


 何が起きるかわからない。

 しかし、一つだけ確かなのはドラゴン・ブレスに対処できるような魔法障壁や結界など人間では使えないということだけだ。

 炎で焼かれるか、電撃で殺されるか、凍りづけにされるか。

 それは何が起きるかわからない。

 児雷也の命令とはそうしたことだ。



 森から飛び上がる大きな影。


 勿論、森の主であるドラゴンだ。

 それに付き従うかのように小さな人影が飛び出してきた。


「トカゲの体に蝙蝠の羽、山羊の角を生やして。

 色は桜色で綺麗なものだ。

 これで長さ70m、翼長150mくらいのものかな。

 もうちょっと小さいと屋敷で飼っておいてもいいんだろうけれどな。

 お前はデカ過ぎだ。可愛くないな」


 “グルッ?シャア”


 巨大なドラゴンと余りにも小さな人間。

 そもそも子供だから人間としても小さい部類なのだ。


 それにも拘わらす態度は尊大。ドラゴン相手に恐れる気配はない。

 その態度がドラゴンを余計に怒らせるのだ。

 桜色のドラゴンは怒りに満ちたように全身に雷を纏う。


「おっ、お前は俺の言葉がわかるのかい?生意気に怒っているのか」


 “グワアアッ”


「折角なら人の言葉でも話せよ、なあおい」


 ”ガッ“


 宙に浮いたままどこまでも尊大な態度で憎まれ口を叩く人間。

 ドラゴンは自らの尊厳をかけて電撃を叩きつけた。


「ぬおおっ、やるもんだね。お前さんは電撃系が得意なのかい。

 まあ、このあたりの地形なら覚えたし、瞬間移動するのには困らないからいいけどさ」


 ドラゴンが発光する寸前に瞬間移動したらしく、宙にいた子供は地面に降り立っている。

 そこから逆に小さな電撃で、鬼さんコチラと言いたげに自らの存在を主張して挑発を繰り返す。


 “キュアア“


「ああ、何度もやらんでいいよ。一度見たら飽きる芸だな。

 急々如律令、やれ!」


 子供が桜色ドラゴンを殴るような素振りをした。


 “ぎゃああ“


 悲鳴を上げた森の主である桜色のドラゴン。

 その後頭部の付け根に、突然現れた別のドラゴンが食らいついた。

 子供は自らを囮にして、召喚獣による一撃に勝負をかけていたのだろう。


「ふふん、油断大敵だぜ。一つ覚え君。ドラゴンは君一匹じゃないと思うべきだぞ?

 まだまだ、それ急々如律令!」


 “フギャア”


 “グギイッ”


 “グオオッ”


 必死に突き放そうとあがく桜色のドラゴンに対して、更に3体目のドラゴンが登場。

 こちらは喉元に食らいついた!


「どうだい?確かにお前さん図体だけはデカイけれど、お前よりも小柄な奴でも2体相手はキツイだろう?」


 “きゃああ“


 首根っ子と喉元に食いつかれて苦しむ桜色ドラゴン。

 喉元を食らわれるのは本気で苦しそうだ。

 突然現れて襲って来たのは50m程と20m程の個体だった、桜色ドラゴンよりは小型だが、そこは相手もドラゴン。手強い敵であるのは間違いない。

 桜色ドラゴンは食らいつく2体の敵を振り払うのに必死で、既に子供を攻撃する意識が飛んでいる。

 一番脆いのは人間の子供なのに。


「簡単には殺さないさ。お前さんの死体からは良い素材が取れそうだ。綺麗な死体で殺さないと勿体ない」


 自分を殺して、死体を弄ぶのだと!ドラゴンは怒りというよりも自分の悲惨な将来を想像してしまった。

 己の肉体を辱めて弄ぶという人間の存在。

 本来、遥かに高位の存在である筈のドラゴンであるのに、確実に追い詰められているこの現実。

 あのまま静かにしていれば良かったのに、何故自分は飛び出してしまったのか!?

 周りの魔力が暴走したと思ったら、森の獣たちが狂ったように暴れ出して。

 その獣たちの狂った魔力が小さくなったと感じたら、今度は自分の魔力が暴走して収まらないような気分になってしまった。

 挙句に思わず飛び出した結果、こんな目に遭うことだとは!


 “あぎゃああ”


「そうかい、苦しいか。死にたければすぐに死んでも構わないんだぜ」


 ”ウゴッ・・・。・・・。“


 ああ、誰か助けて!声が出ない、息が苦しい。

 この子供を何とかして。

 この噛みついて離れない2体の同族を何とかして。

 誰かお願い!

 出なくなった声で、必死に誰かに縋る桜色のドラゴン。


「ふん、喉を破られて声も出ないか。精々血反吐を撒き散らしなよ。

 さて、そろそろ止めだ。首をへし折ってやれ」


 喉笛に食らいついているドラゴンが桜色のドラゴンの体を押さえつけ、頸部に食らいついているドラゴンは目一杯桜色ドラゴンの首をへし曲げる。


 ”むー、むー“


 痛い、嫌だ、止めて、助けて、誰かお願い。


 “ゴキッ”


 嫌な音を聞いたという記憶が、桜色ドラゴンの最後の記憶になった。


 全身の力が抜けてダラリとする桜色ドラゴン。それを抱えて2体のドラゴンがゆっくりと城壁までやって来る。

 

 地上に敗者の死体を降ろすと、勝者の勝鬨だとばかりに巨大な咆哮を上げる。


 “グオオーン”


 “グオオーン”


 暫し、咆哮を上げ続けたのち、満足したかのように光の粒と化して消えて行く2体のドラゴン。


 “えいえい、おーっ”


 “えいえい、おーっ”


 “えいえい、おーっ”


 城壁の守備兵から勝利の勝鬨が起こった。


 万余の森の魔物から生き延びた喜び。


 目の前でドラゴンが退治される光景を目の当たりにした奇跡への感謝。


 圧倒的な武力を持つ集団への畏敬の念。


 自分達とは異次元の力を持つ者への素直な尊敬。


 ドラゴンを相手にしていた子供は、黒いローブの2人に抱きしめられている。


 子供が着ている緋色の羽織には魔物追討軍大将の刺繍が誇らしげに輝いていた。



「あれが王都に迫った神龍を撃退したっていう英雄か」


「2体の・・・いや、たったいま3体目のドラゴンを屠った英雄だな」


「地位と名誉とカネ。そして青と赤の魔女を王家から下賜された男か」


「青いのと赤いのが使う魔法も尋常じゃなかった・・・」


「あの森一つくらいは凍らせそうな勢いだったぞ、あの凍結魔法は!」


「ティラノをまとめて蒸し焼きにした火炎魔法にしても凄いものだったぞ、もう人間の技には見えないな」


「王宮魔法師ってのは、あんなにスゲエもんなのか!」


「モンスター・ハンターごときが逆立ちしても、あんな戦い方はできねえな」


 城門の防衛に従事していた藩兵とハンター連中は、口々に感想を漏らす。


 何十年とモンスター・ハンターをやっていても、決して見ることが無いような壮絶な大魔法であり、人智を超えるドラゴン・スレイヤーなのだ。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 健太は城壁上の通路でへたり込んでいた。

 戦闘で疲れたのではない、戦闘など何もしていない。見物していただけだ。


 あの時、ギルドで殴ろうとした相手は絶対的な強者だったのだ。

 従者が自分を殴りつけたのはお情けであって、あそこにいた全員が簡単に自分を殺せる実力の持ち主だった。

 ここで緋色の陣羽織を着ている者、誰一人とて自分では勝てない圧倒的な強者だ。

 強くなりたかった、自分も貴族になって権力を持ちたかった。でも、全然及んでいなかった。


 健太が12歳の時の事だ。

 幼馴染が無理やり領主の使いに連れて行かれて、半年後には奴隷として奴隷商人に売られて行った。

 子供のころから将来はお嫁さんになってあげると言ってくれた娘だった。

 他の奴隷と一緒に牢のような馬車に詰め込まれて彼女は連れて行かれた。

 健太は途中で襲ってやろうとして、奴隷商の雇っていた護衛のハンターに叩き伏せられた。

 泣きながら返せ!と叫ぶ健太に老齢のハンターが情けをかけたから、あの時には殺されずに済んだ。

 それ以来、健太は強くなろうとした。

 いつか領主や貴族に復讐してやろうと思った。

 権力を持ってみたかった。

 だから、必死に戦い方を覚えた、連日モンスターと戦った。

 いつしかAランク・ハンターとして、一目置かれるようになっていた。


 でも、目の前の連中には自分では足元にも及ばない。

 この連中は、遥かな高みに存在している。

 この連中が主と仰ぐ子供は、英雄と呼ばれた。

 ハンターとして一目置かれる自分とは、全く次元の違う存在だった。


 自分のやって来たことは無駄だった。この先、一体何を為すべきなのか?

 健太には、わからなくなっていた。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 同じく城壁にいた太助の頭には女魔法師の言葉が繰り返されていた。


「お館様のご指導を受けるのなら、王都の学校で優秀な成績を取るか。

 それとも名門貴族のお抱えになって、弟子に推挙して貰うか。

 弱いハンター風情でご指導を仰ぐなんて100年早いわ。

 出直しなさいな」


 そして、ギルドの受付での会話が一瞬よぎった。


「去年の卒業生筆頭と次席なんかは、二人そろって王国軍の誘いを蹴ってハンターになったぞ。」


「なんでもあの竜殺し様自ら稽古をつけた逸材がハンターになったと」


 つながった!


 強くなればいい、学校で首席になれる位ならあの御方が自ら稽古をつけて下さる。

 あの時の女魔法師は、あの青い光の魔女に違いない。

 王家から竜殺しに下賜されたという、青の魔女だったに違いない。


 俺は強くなりたい。

 仲間を殺されずに済むように。

 そうだ、まるで緋色の陣羽織を着ている連中のようにだ!


 決めた。

 俺は王都に行く。

 俺のいる場所はそこにある。

 俺はいつかあの緋色の陣羽織を着てみせる。


 太助は城壁を探した。

 オーガと遭遇した時にいた男達を。

 見つけた!間違いない。

 一番隊と刺繍された緋色の陣羽織を着ている、あの男達に間違いない。


「俺は王都の学校で修業したいです。どうやったら学校に入れますか?お願いします、教えて下さい」


 目の前に進み出て突然土下座する太助。


「うん?コイツどっかで会ったか?」


「ほれ、オーガに追っかけられていた奴らがいたろ?」


「ああ、あん時に妙な情けをかけていた奴か。Aランクだってな。

 未熟な連中に足を引っ張られて仲間を全部殺されたって話じゃないか」


「だからこそ修行しなおす必要があるだろうな」


「ふーん、そういう事か。

 ・・・確か、一発芸で校長を認めさせりゃ受講できるぞ?」


「そういや、そんな制度もあったか。正規の生徒じゃなく聴講生になる奴な」


「それよ、それだと入学時期関係なくいつでも受講できる」


「あ、ありがとうございます。お、俺必ず王都の学校に行きます!」


「それって、好き好んで地獄に行くようなもんだぞ?」


「ああ、ここらでノンビリ暮らした方が絶対に人生気楽だぞ?」



「おい、全員集合しろ!これより獲物の解体作業に入る・・・」



「おっと、児雷也小隊長のお呼びだ」


「お仕事、お仕事と。ホレ、お前も手伝えよ」


「は、はい!」


「しかし、万単位の獲物の解体かよ、本気か?」


「肉食い放題!」


「いや、暫く肉見たくねえよ」


 掛け合い漫才しながら歩く2人の後を太助は歩いて行った。




 レキュアとシェイラは強い、一国一城平気で落とせます。追討軍40人でも勝てません。

 さて、次回は異国の悪魔が登場してきての大一番。

 乞う、ご期待!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ