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23.モンスター大戦Ⅴ

 ご愛読ありがとうございます。

 とある地方で伴天連術師が陰謀を巡らせ、モンスタートレインを引き起こす。

 森の主のドラゴンを倒してひと安心の一行に、バフォメットが襲いかかる!

 ラスボスは西洋の悪魔だった。

 さあ、果たして勝負の行方は。

 クライマックス決戦編、ラストバトルを是非ご一読下さい。



 戦場の後始末は児雷也に任せてしまって、出雲貴志は2人の魔女を伴ってドラゴンの巣に来ていた。


 あの桜色ドラゴンは殆どここから動かなかった。ここに一体何があるのか?


 森の中央部で岩山が隣に控える場所だ。


 魔力は集まっているけれど、この場所から魔力が噴き出るという場所ではない。現状では魔力が増え続けている形跡もない。

 異国の術による魔力の暴走めいたものは、収まりつつあるようだ。


 しかし、集まっている魔力そのものは非常に濃い。


「ここにいると気分が悪くなるよね」


「魔力が濃い。濃すぎる魔力を体が受け切れていない」


「あなたの体は成長しきれていませんから、この濃すぎる魔力を受け付けないのです。

 魔法を扱うようになってから、余り年月の経っていないあなたにとってここの濃い魔力が馴染みにくいという事もある筈です」


 赤と青の魔女達が主の体調を気遣う。強力な魔法師であっても子供は子供。体力自体は大人とは比べものにならないのだろう。


 “ガアッ”


 “グオオッ”


 上空を旋回していた召喚獣のドラゴン達が俄かに殺気立ってきた。

 その体に闘気を纏い、激しい奔流となって魔力が溢れ出ている。


 左京が築いた祭壇は既に破壊してある。しかし、上空からドラゴン達が見ていたのはそれとは別に構成された五芒星だった。


 貴志の部下達が破壊した祭壇の外側に、更に巨大サイズの五芒星が構築されている。

 それぞれの頂点には特別な祭壇などはなく、地中から光が漏れだしている。


 貴志の部下達が破壊した五芒星は一度起動したことで魔力を集めて、その魔力の異様な高まりに影響されてモンスターは暴走した。

 いまや魔力を溜め込んだモンスター達が壊滅したことで、魔力は再度空中に解き放たれることになった。

 その解き放たれた魔力が集まった場所は森の中央部。桜色のドラゴンがいた場所だ。

 高まった魔力の強烈な渦に桜色ドラゴンは飲み込まれて暴走に至った。


 その桜色ドラゴンが倒されたことで、また魔力が解き放たれて、再度集まり出した。

 行く先を失った魔力は、破壊された祭壇の術式を自分自身で再構築して、さらに拡大しているのだ。

 魔術そのものが生きているかのように、自己修復して魔力を集めて自己拡大する。


 貴志達3人は気が付いていないが、上空から監視していたドラゴン達はそれに気が付いたのだ。


 魔力の高まりに反応するかのように、貴志達の目の前に魔法陣が構築されてくる。

 20m程はあるだろうか、強力な結界を伴う魔法陣が徐々に姿を現していく。


「嫌なカンジ!」

「離れましょう」

「早い方が良い」


 慌てて3人は上空へ退避して行く。


 上空からもはっきり見える魔法陣は見たことも無いような精密なものだった。

 やがて、その中心に異形の影が現れる。


 山羊の頭に、人間の女の胴体。

 その背中には黒い鳥の翼。

 下半身は毛むくじゃらで山羊のような蹄。

 全体のシルエットとしては非常に細身。そして色は漆黒だった。


 闇夜の烏ではないが、あからさまに闇夜の悪鬼という風情だ。


 現れた漆黒の悪鬼は上空のドラゴンを見上げると、何事かを呟いた。

 異界・異国の詠唱なのだろう。


 魔法陣がさらに光を増すと、空中には青い岩肌のような2mほどの悪鬼の群れが召喚されて来た。

 髪の無い頭には小さな角。耳は尖り、口は裂けて牙が生えている。蝙蝠の翼と細長い尻尾。

 それが100体近く。


 3人は知らないが、欧州の人間ならバフォメットとガーゴイルと呼んだ筈だ。

 但し、異国の知識がない3人の目には山羊の魔物と青鬼として認識されている。



「山羊の魔物と青鬼登場か。

 あの魔法陣で、地獄の釜の蓋が開いたのか?

 どちらにしても異界の神様だよな、禍つ神にしか見えないけれど。

 開国主様に封じられた、服わぬ五月蠅なす八百万の神の一柱かな?」


「開国主様に成敗された禍つ神なら、生太刀と生弓矢が効くはずです!」


「心正しきものに癒しをもたらし、心悪しきものには死をもたらすご神具」


「ドラゴン2体を召喚していると、俺の呪力は限界一杯なんだけど・・・。

 仕方ないか、小ドラゴン帰還せよ。


 急々如律令!

 開国主の神恩は海の如し、生太刀と生弓矢を我に授け給え。

 神威を以て五月蠅なす禍つ神を常世に返さん」


 20mほどのドラゴンが消え去ると、貴志の腰には大太刀、腰の箙には矢、腕には長弓。

 上位ドラゴンに匹敵するだけの武威が、果たして太刀と弓矢に存在するのか。


 バフォメットは腕で合図を送ると、ガーゴイルが前進を開始する。

 空に散開しての進軍だ。


 貴志は一本の矢を取り出すと、ガーゴイルの中心あたりを狙って打ち放つ。

 放たれた矢は途中から幾つもに分かれて、何十ものガーゴイルに突き刺さる。


 “ウガッ”

 “ギャーッ”


 悲鳴と共にガーゴイルが10数体地上に落下する。

 地上に激突したガーゴイルはそのまま光となって消えて行く。


 それを3回程繰り返してガーゴイルの群れが少なくなったと実感できるようになると、バフォメットは何事かを呟く。


 すると残っているガーゴイルたちの手には金属の銛が現れた。

 先端は鋭く尖って大きいかえしが付いている。突き刺して使うことを前提としていて、切り裂くことは考慮していない武具だ。


 上空からガーゴイルたちは一斉に銛を投擲して来た。

 一度に60本を超える銛が頭上から落ちて来るのは、壮絶な光景ではある。

 それが自分目がけて飛んできているのでなければ、壮観な眺めに感心しているのだが、自分の命が的となればそうもいかない。


 貴志は矢を3本ほど取り出して、“やっ”と上空に打ち放つ。

 矢は上空でいくつもの塊に分裂して、片っ端から銛を撃ち落とす。


 続けざまに貴志は更に2本の矢を放つ。

 引き続き、ガーゴイル本体が落ちて来ては消えて行く。


 残るガーゴイルは2~30体という所だ。既に突撃を諦めたか、上空で遠巻きにするだけになり出している。


 表情の解らない山羊頭のバフォメットがまた何事かを呟く。


 今度は身の丈30mのミノタウロスが登場してきた。かつて、島原の乱でも登場した牛頭の巨獣。


 しかし、貴志は慌てない。

 ゆっくり構えて矢を放つ。


 矢はミノタウロスの右眼を貫通して、そのまま頭の奥まで突き刺さる。

 見事、脳まで貫通したのか。一撃でミノタウロスが消えて行く。


 芸は身を助ける。


 貴志は剣や槍の才能は至って凡庸である。達人級どころか、少し腕の立つような武芸者相手でも刀や槍では勝てない。

 しかし、弓矢だけは得意とする。仮に馬上からの射撃であっても苦としないだけの自信があった。

 威力絶大な神弓を使う限り、そう簡単には後れを取らない。


 忌々しい展開に痺れを切らしたか。

 表情が解らないまでも、明らかにイライラしている態度のバフォメットがまた何事かを呟く。


 今度はバフォメットの頭上に巨大な球状の雷が現れる。面倒になったバフォメットが一気に決着を望んできたのだろう。


 しかし、それを見逃すようなドラゴンではない。

 ドラゴンブレス一発で球状の雷を吹き飛ばし、更にもう一撃をバフォメットに叩きこんでいく。


 バフォメットは防護障壁を展開するも、ドラゴンブレスはそれを突破してバフォメットに直撃して豪快に吹き飛ばす。

 強烈な火炎にまかれてガーゴイルは壊滅。

 炎が治まると辛うじてバフォメットは立ち上がる。


 綺麗な艶のある黒い翼や体毛が、いまや焦げて灰色になってしまった。

 それでも自力で立ち上がって、まだ何かの術を使おうとしている。


 傷ついたバフォメット足元から魔法陣が展開されて、召喚されて来たのは3体のミノタウロスとケルペロスの群れ約200体。

 そして、魔物の森にいた残存していたオーガがいつの間にか周囲に駆け参じている。おおよそ1千体くらいだろう。


 そして、バフォメットは自らを鼓舞するかのように“モゴーッ”と奇声をあげる。

 全身が燃えカスの灰のようになっていたバフォメットは、体の色が艶やかに戻り、そして身の丈2m程度から30m程度の巨体に変貌していく。


 これが山羊の魔物の切り札だと認識した貴志は弓矢と太刀を帰還させる。

 矢が尽きかけているし、太刀で戦うには貴志には苦手意識がある。


 敵が勝負にでるのなら、こちらも強力な手段で勝負に出ないと駄目だろう。

 貴志は埴輪で勝負をかける。

 埴輪はバフォメットより少し小さくて25mほどになる。しかし、25m埴輪は1千体程召喚されている。


 50mドラゴンがバフォメットを押さえている間に、雑魚集団を蹴散らすのは余裕で可能な戦力だろう。

 ちなみに、この森のオーガは10mにも満たない。それが1千体。

 対して、長大な矛から強力な魔法攻撃を放ってくる大型埴輪の集団は、ドラゴンすら屠る軍団なのだ。


 他ならぬ目の前の50mドラゴン自体が、かつて埴輪軍団の一斉射撃による一撃で頭を砕かれて殺された個体なのである。


 30mのミノタウロス3体に率いられた、10mの3頭犬200体とそれに続くやはり10mの大鬼1千体の軍団が地響きを上げて突進を開始する。


 “ブモッー”

 “ワオーン”

 “グオオッー”


 気勢と地響き、そして土煙が巻き上げながらの大進撃だった。


 対して、埴輪は声を出せない。全く無音のまま立ち尽くしている。

 但し、ドラゴンは別だ。

 “キュアアッ”と鋭い叫びと共に、前方にドラゴンブレスを放とうとする。


 ドラゴンと対決を望んだバフォメットは、そのドラゴンの正面で対峙しておりドラゴンの射撃準備を見て取るや、今度は全力で前方に分厚い魔法障壁を展開する。

 幾重にも重ねられた、見るからに分厚い強固そうな大障壁だ。


 ドラゴンブレスと埴輪軍団の電撃は同じタイミングで打ち出された。


 ドラゴンブレスは、ミノタウロスに率いられた魔物軍団に対して。

 埴輪軍団の雷撃は、バフォメットに対して。


 バフォメットは真正面に向けて全力を挙げて分厚い防護障壁を展開していたが、下方から撃ち上げられてきた強烈な電撃をまともに浴びる羽目になった。

 防護障壁のない下方からの直撃を受けて、バフォメットは四散した。


 同時に撃ちだされた攻撃でも、電撃は火炎よりも速度は遥かに速い。

 埴輪軍団の一斉射撃でバフォメットが四散して魔力が失せ、その身を守る筈の防護障壁が消え去った空間をドラゴンの放った本気の強力極まりないドラゴンブレスが通過して行く。


 ドラゴンブレスが焼き払ったのはミノタウロスを先頭に駆けて来る3頭犬と大鬼集団だった。

 ドラゴンが首を少し振っただけで、進撃していた集団は丸ごと全部一瞬で焼き払われた。


 地上に上がる巨大な火柱。

 そして、炸裂した際の大音響

 最後に襲ってくる猛烈な爆炎の風。

 その一つ一つが、まるでスローモーションで展開されているようにすら感じられる。




 城門から出て魔物を解体し始めていた児雷也一行だったが、突然に森の方から嫌な殺気が充満して来るのを感じ。



 やがてドラゴンが騒いでいる気配を感じて。


 慌てて城門まで撤退してきたら、遠くからドラゴンブレスらしい閃光が見えて。

 次いで、強烈な大音響が鳴り響いて、最後に熱気を孕んだ旋風が吹き荒れてきた。


 荒事に慣れている隊員達ですら、神々の抗争でも始まったのかと本気で心配する始末だ。

 あれはとてもではないが、人間が介入するような戦いではない。


 しかし、それをやってしまうのが自分達の頭目であることを、知識としては理解できてしまう。感情としては到底人間技ではないとわかってはいるのだが。


 熱気は収まって、巻き上げられた土砂が上空からバラバラと落ちて来て。

 次第に周囲が落ち着いて来る。


 城壁にいる守備兵にも、なんとなく殺気めいた嫌な空気が薄れて行くのが分るようになって行く。

 魔法師でない者でさえ、吹いている風が穏やかなものに感じられるように。


 森の上空をゆったりと旋回していた巨大なドラゴンが、周回コースから外れてゆったりと城壁に近づいて来ている。

 どうやら今度こそ本当に戦闘終了なのだろう。


 もう1時間もすれば夜が明けてくるような時刻だった。


 貴志は戻るとドラゴンを帰還させ、替わりに15m級埴輪を大量に召喚して命じる。


「埴輪どもは、獲物を種類ごとに分けてまとめて集めておけ。

 児雷也、最小限の警戒を残して一端解散。

 仮眠して午後から本格的に解体。

 俺は疲れた、寝る」


「お、お頭様!あの敵の大将は一体何者だったのでしょうか?」


「児雷也ウルサイ、黙りなさい。お館様はお疲れです。

 ひとます柳生へは私が一報を入れておく。

 レキュア、お館様をお願い」


 赤い髪を風になびかせてシェイラは児雷也を睨みつけるや、瞬間移動で消えて行った。

 彼女は口頭で簡単な報告だけして、後の面倒事は全部まとめて柳生但馬に押し付ける気なのだろう。


「そうそう、児雷也は警備兵を編制しなさい。後は任せたわよ」


 残ったレキュアは貴志を抱きしめて、やはり瞬間移動で消えて行った。


「ああ、やれやれだな。

 もうすぐ夜明けか。


 各小隊3時間交代で監視任務にあたれ。

 4番隊から始めてくれ、俺は後始末の連絡をしとかなきゃいかん。


 藩兵の警戒態勢は現状を維持。

 夜が明けると商人の出入りも始まるだろう。

 ハンターどもは明日の昼に全員集合。一体どれだけ解体することになるのか想像もつかん・・・。

 商人や武器屋、肉屋でも、解体の手伝いできそうなものは片っ端から連れて来い。

 以上、解散。


 おいギルド支部長はいるか?

 あのな・・・・」


 結局、小隊長達は交代で寝るということは無かった。

 シェイラの一報を受けて、王都から検分の役人や桜色ドラゴンの遺体を回収に来るお抱え魔法師の研究職達やらが殺到。

 その相手をさせられる羽目になってしまった。


 森の中の様子の検分は第1小隊員に押し付けるとして、城壁での攻防や現場の検証などは児雷也が矢面に立たねばならない。こうした時に何気なく逃げる才覚に関して、才蔵と佐助は妙に優れているのだ。


 研究職の魔法師には高齢の者が多いのだが、ドラゴンの血液と脂、脳を使うならどうやら若返りの秘薬の可能性が高まっているらしく、50人程でやって来た連中は異様な熱意を以って解体を始めた。

 魔法高等学校の校長以下の教授連中も、勿論同行していてノリノリなのだ。

 城壁には防衛戦に使っていた30cm魔石が大量にあることを幸いに、それを魔力源として魔法をフル活用した解体作業を盛大に開始。

 夜明け前から始めて、昼頃にはおおよその解体が終了している。


「思ったよりもドラゴンよりも血が少ないのが残念。喉を食い破られて血が相当失われた後のようだ」


「しかし、前回より巨大なだけあって鱗も皮も分厚い。内臓も巨大なら骨も爪もすこぶる頑丈。当然肉も多い。それに眼球と脳は綺麗なまま。美しい桜色とあって、素材としては申し分なしの最上級品」


「評価額としては確実に50mのドラゴン以上なのは間違いなし」


「血が全部残っていたら1千億環は超えただろうけれど、それでも700億環から上なのは間違いなし」


 起き出してきた本来の桜色ドラゴンの所有者が知らぬうちにすっかり解体され、評価額の査定は着々と進んでいた。


 愛妾と寝に帰ったと言われては誰も手出しできない脅威の竜殺しは、十分な睡眠を取った後から起き出して。


「700なら、もうそれでいいや。

 一応、ティラノ、ワイバーン、トリケラの魔石は全部ウチの部隊で接収。

 後は現地のハンターギルドと商人ギルドで好きにしてヨシ。

 ああ、隊員達も肉は好きに持って行っていいぞ」


 既に巨万の富を得ている子供は鷹揚なものだった。

 お蔭ですっかり後始末に疲れてしまった児雷也はほっとしつつ返答する。


「了解です、お頭様。

 正直な所あれだけ大量に魔物の死体があると始末に困ります。

 現地の人間に自由にさせてしまった方が、こちらも楽でいいでしょう。

 ティラノ、ワイバーン、トリケラだけでも400近い状況です。数千のオーガまでとなると、我が隊40人ではどうにもなりません。

 爆散して使い物にならない物は集めて燃やさせておきます」


「うん、よきに計らって。

 あとな、あのクラスのドラゴンだと若返りは無理だと思うぞ。

 魔法を使えない奴でも300年位生きる長寿薬や、10年経っても1歳位しか老化していないように見える程度の薬ならできるだろうけれどな・・・」


 あくびしながら何気なく言った言葉に反応したのは、挨拶に訪れていた王宮の長老魔法師と魔法学校の校長だった。


「長寿薬はやはり可能なのですか!」


「不老不死は不可能なのですか?」


「2千年は平気で生きて、うまくすると3千年位は生るようなドラゴンだよ。

 おこぼれに預かれば、魔力の無い普通の人間だって3百年位は頑張れるさ。

 それに、あのクラスのドラゴンだと不老不死ではない、その素材で不老不死なんて都合良すぎるでしょ?」


「長寿薬はどのように作ればよろしいのでしょうか?」


「普通にドラゴンの肉食って、血でも飲んでさ」


「人間の魔力受容能力はそれぞれ異なります。その人間が受容できる限度内まで月に一度くらい魔力を高めておけば、長寿には十分でしょう。体が受容できないほど多く摂取しても、体に留まらずに出て行ってしまうだけですわね。

 魔力のほとんどないような人間なら月に串焼き1本程度で十分でしょう。

 逆に魔力の多い強力な魔法師なら放っておいてもある程度長寿でしょうから、余り意味はありませんわね」


「ドラゴンの油脂を塗ると皺が無くなって若返ったという報告がありますが?」


「魔力の少ない魔法師だと、一時的にドラゴンの魔力で肉体が強化されて若返ったように見えることもあるでしょうね。

 霊脈にあるような温泉でも同じようなことはできましてよ。

 ドラゴンの血肉を摂取する。脂を塗る、食べる。骨で出汁を取ったスープでも、骨を粉末にしたものでもいいでしょう。

 ドラゴンの魔力を人間の肉体に直接取り込むようなことなら、何をしても同じ結果になるのではないかしら?」


「なるほど新鮮な血肉があるうちはそれを使って、保存の効きやすい骨などは保存しておけばよいということでしょうかな」


 いつの間にかレキュアが長老と校長の相手をしているが、元々レキュアは説明好きな方だ。分かり易い言葉で相手に説明してくれる。


「強力な魔法師で長寿の者がいる。

 一方で魔法師でも短命の者もいる。魔法が使えずに短命の者もいる。

 要するに魔力さえ高まればいいのでしょうか?」


 校長が素朴な質問をレキュアに始めた。彼は常日頃から魔法を使う者しか身の回りにいない特殊な環境で暮らす人物ではある。


「魔力を体に受容する能力と実際に保有している魔力量、それと実際に魔法を行使する能力はそれぞれ別のものです。

 自らの体に魔力がさほど受容できず、実際に保有する魔力量が少なくとも、魔石を使えば大魔法を使えるのがいい例です。

 逆に体質的に魔法を行使できないけれど、体に膨大な魔力を蓄えることが出来るという方も多いのですわよ。

 体質的に体が受容できる魔力が多くても、実際には魔力が少なくて満たされることが無い。そういった方が外部から魔力供給を受けるなら長寿化の道が開けることはありえるでしょう。

 また、体質的に魔力受容力が低い方で、しかも魔力も足りていないという方でも、自分に見合った魔力が提供され続けるなら徐々に魔力受容力も大きくなります。魔力受容力が増して魔力量も増加するなら長寿化の道が開けるでしょう」


「大きな甕でも水が半分しか入っていないのなら、月に一度は満たさせばよい。

 小さい水たまりでも、水を入れ続ければいつかは湖になるはずだと。

 つまりは、そういうことですな?」


「ええ、その通りですわ。

 人間の体に直接魔力を取り込むのなら食品として食べるのが一番楽で、ドラゴンの血肉ほどそれに相応しいものは無いと言えるでしょう。

 最初から魔力の受容力が高い人間になら、外部から魔法師が魔力を直接送り込むことも可能でしょうけれどね」


 人間の長寿への夢は尽きないようだった。



 現場でのドラゴン談義はとにかくとして。

 この日、前亀田藩主岩城伊予及び天草四郎の残党田崎重吉が、捕縛された由が柳生但馬より発表された。


 さて、次回は後始末の回、事件は会議室でも起きていたのです。

 そして衝撃の結末が貴志に襲い掛かる!

 乞う、ご期待!


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