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20.モンスター大戦Ⅱ

 とある地方で伴天連術師が陰謀を巡らせ、モンスタートレインを引き起こす。

 無数の昆虫型モンスター、万余のオーク、オーガ。そして数百の下級竜の襲来。

 やがて、森の主のドラゴンも参戦して来て・・・。

 対策が遅れた公儀が派遣できたのは43人の戦闘集団のみ!

 決戦編第2弾です。


 実際には守ってもらうという自覚の無かった“進撃”メンバーの中途半端な行動で、“魔槍弓”の連携が乱れて警戒が荒くなっていたのだ。そしてメンバーの喪失によってさらに警戒が手薄になっている。


 最初から護衛を依頼してくるような商人なら護衛を捨て駒扱いするから、ハンター側も最初から割り切った対応ができる。

 今回は、レベルの低い“進撃”が半端に“魔槍弓”を手伝おうと出しゃばったのが運のつきだ。単にお客さん扱いして何もさせないのが正解だったのだが。


 恐怖の感情と血の匂いを漂わせている“魔槍弓”には、魔物の森の恐怖が迫る。

 恐怖の感情に捕らわれた不用意な行動や、血の匂いを撒きらしての活動ははより多くの血を招く。


 蜘蛛から離れたメンバーを待っていたのは沼地だった。

 もう一度戻って乾いた道を進むか。

 このまま沼地を行くのか。


 ひとまず水分を補給したいという乾いた体の欲求に勝てずに、水辺に進んだ一行。

 水を飲んで渇きを癒す。

 浅い場所を選んだから大型ワニはいない筈の場所だ。

 ひとます休憩してから普通の道に戻るか、沼地を抜けるか相談しようかとした時だ。


 水中から大ヘビの攻撃を受けてスミレが水中に引きずり込まれる。

 槍兵の2人が救出しようと飛び込むと、そこには1m程度のワニが周り一面に集まっていた。

 たちまちに襲いかかられる2人。

 足を噛まれ動きが鈍ると腹に食いつかれる。

 楓が弓で迎撃しようとするが、ワニが案外多くてすぐに矢が尽きてしまう。

 太助の電撃は水辺では使いにくい。敵が仲間に食いついている場面では仲間ごと痺れさせるしかないのだから。

 躊躇う間にも仲間は足を裂かれ、腹が裂かれて水場は真っ赤に染まっていく。


「・・・もう駄目だ、楓と逃げろ太助」


 そう言い残して槍兵の一人が沈んだ。もう一人は既に見えない。

 大ヘビもどこかに逃げていた。


「うわああっ」


 太助は楓の手を握って走り出した。

 方向も何も考えずに無我夢中で走り出した。

 ションベン漏らして、脱糞しながらも夢中で逃げた。


 ふと気が付くと引っ張っていた筈の楓が妙に軽い感じがした。

 しかし、手は握っている。


「楓?」


 太助が振り向くと楓の姿はなく。

 握っていたのは楓の肩から先の部分だけだった。


「ああっ、楓?どこだ、何処に行った楓!」


 慌てて走り回る太助。

 来た道すら覚えていないけれど、行き当たりばったりで走り回った。


 やがて大きな獣が闘争をしている気配に気が付いて近づいて行く太助。


 そこで見たのは、ティラノ10数頭の群れがローブを着た魔法師と思しき2人に襲い掛かっている光景だった。

 ローブの一人は小さくて子供らしい体格。もう一人はローブの上からも凹凸のわかるようなグラマラスな女性だ。

 先日ギルドにやって来た時に見かけた5人組の魔法師2人だった。


 戦闘は異様なものだった。


 女性魔法師は強力な障壁を張っているらしく、後方から側面にかけて2人には寄せ付けない。

 正面から近寄って来るティラノに対しては子供が飛んで、ティラノの巨大な首を一撃で斬り落とす。

 子供の手には何もない。けれども腕を上下させると確実に巨大な首は斬り落とされる。

 風魔法か何かなのだろう。


 戦闘するというよりも一方的に駆逐していくだけ。

 ティラノが子供に食いつこうとして口を開いて突き出してくるのは、断頭台に頭を乗せる行為に等しいようなものだった。


 ほんの数分間の戦闘だったはずだ。

 なにしろ子供が10数回見えない斬撃を叩き込んだだけなのだ。

 それだけのことで周囲には夥しいティラノのなれの果てが転がっている。


 “どうせ貴族のボンボンがカネで言う事を聞かせているに決まっている”


 “どこかの落ちぶれた貴族の末裔がお家再興を目指している”


 そんなのは嘘っぱちだ。

 太助は理解してしまった。

 その強力な武威故に自ずと従ってしまう者が存在しているのだと。


 何故理解できたのか、それは太助自身もそうしたいと願ったからだ。


 ヨロヨロと太助は子供に近づく。

 女性魔法師が警戒するが、子供が鷹揚に女性を制止する。


「お願いです。俺を弟子にしてください。俺は強くなりたい、仲間を見殺しにしなくても済むようになりたいです。お願いです、俺を鍛えてください。お願いします」


 土下座して額を地面に擦りつけて願う太助。


「お館様のご指導を受けるのなら、王都の学校で優秀な成績を取るか。

 それとも名門貴族のお抱えになって、弟子に推挙して貰うか。

 弱いハンター風情でご指導を仰ぐなんて100年早いわ。

 出直しなさいな」


 女性魔法師が冷たい蔑んだような眼差しで太助を見下す。


「・・・・ダメだな」


 やる気なさげに子供が言う。

 女性魔法師が子供を愛しそうに胸に抱きしめると、瞬間移動で去って行った。



 どうやって生還したものが、太助本人にもわからない。

 ただ生き延びていつかあの方の弟子になりたい、自分は強くならなければいけないのだと、その思いだけで生き延びたようなものだった。


 数日間、森を彷徨ってボロボロに成り果てて太助はギルドに生還。

 “進撃”と“魔槍弓”が壊滅し、生き残ったのが自分だけであると報告。


 この報告は、大きな衝撃をギルドに与えていた。

 最近、どうもモンスターが増えている。


 狩られているモンスターそのものも増えてはいるが、それでも追い付いていない程度には魔物が増えている。

 昼間の街道に堂々魔物が出没するのはどうにもおかしい。


 森の奥で何かが起きているのか。

 しかし、Aランク・パーティが簡単に壊滅するようでは、探索隊も不用意には出せない。

 高ランクのハンターは貴重なのだ。


 そこでギルド幹部の頭に浮かぶのが、流れてきた謎の集団である。


 まず、殆どハンター・ギルドに顔を出さない。

 しかし、狩った獲物は魔石を取り除いた残り部分だけを、たまにギルドに来て大量に売る。

 ギルド側では食肉に革、角などの貴重な素材が入手できればそれも構わない。

 ただ、この集団は薬草の採取には全く興味が無いようではあった。

 また、ランクを上げるという意思も無いようで、依頼など無視して素材を売りに来るだけだ。


 ただし、獲物を考えると間違いなく森の奥に行っている。

 大型モンスターだけを目標に狩りをするようで、売るのも大物だけだ。

 恐らくは全長10m以上の獲物を優先的に狩っている気配がある。


 住処は中古の貴族の空き家を購入して住み込んでいる。


 当主は子供で、付き従う大人の女性は妻とも保護者とも取れるような振る舞いだという。


 この地でコックとメイドを雇って、給金は良く貴族の屋敷並みの待遇。

 ただし、食事については味と量の両面で五月蠅いらしい。

 これは同居している主従の一致した性質のようだ。

 子分連中には食事と酒に関しては言いたい放題が許されているらしい。

 一部の食品と酒を扱う商人とは仲が良いらしく、美味いものには非常にカネをかける。

 高級食材や高級な酒は贅沢三昧に消費される。

 雇われたコックは毎日やりがいがあると喜んでいたが、メイド連中は苦笑いしている。


 実力があって、カネは稼ぐ。

 当主の子供は美味いメシにはカネを惜しまない。

 子分の飲む酒にも大金を支払う。


 付き従う女魔法師の顔を見たものは少ない。普段はベールをかけて目元だけしか見えない。

 ベールを取るだろう食事は個室で子供と二人でする。また、子供の面倒はすべてこの女がやっている。

 食事の準備と後始末、出かけている間に部屋の掃除、洗濯、日常生活品の調達。メイドに課せられる女からの要求は多いものでは無いという。

 そして、水とお湯は魔法で調達するお蔭で、使用人達の肉体労働は少ない。

 メイドとしては、手間のかからない楽な女主人であると好評だ。


 子分衆達は、酒は上等な奴を毎日好きなだけ飲んで、適当に女郎屋に行って結構自由らしい。

 武器の類には拘りが無いらしい。武器屋に出入りすることはまずない。

 ポージョン類を全く使わないらしく、薬屋にも出入りしない。

 同業者との付き合いは殆どない。

 魔法や剣術の弟子にして欲しいという要望は完全に無視される。


「要するにカネ稼いで、贅沢して美味いもの食って、良い酒飲んでいるだけの事か」


 支部長と副支部長は報告書を読んで不思議になる。


「飲食以外は頓着せず。仲間以外の同業者にも興味なし。狩りの腕なら無双ですね。

 魔石を何に使うのか不明ですが、ギルドには売らない」


「魔法師が魔石を貯めることはおかしくないだろう。狩りをするのに魔力源として魔石を使う事は当たり前だ。

 ポージョン類を全く使わないのなら、それだけ治癒魔法を利用しているのかもしれない。そうなると、なおさら魔石が魔力源として必要になるだろう」


「しかし、これだけの腕があるなら、どこにでも仕官できる筈ですし」


「仕官するなら美味い飯も酒も自由にならんぞ、上司や周囲の目があるからな。

 そもそも仕官しても、そんなには稼げないだろう。下手な貴族の家だとあそこまで羽振り良くはないだろうからな」


「そうでしょうか?」


「伯爵の年収で精々ティラノ2体分くらいなものだぞ。あそこまで大物を好き放題狩れてしまうのなら、仕官するのはバカらしいだろうな」


「あれほどの腕前で、何故誰も知らないのでしょうか?今まで噂にならなかった方がおかしいのでは?」


「子供の親が有名なのかもしれんぞ。どこかのご落胤で名前が出るのは憚れるような事情でもあるとか。貴族子弟なのは自分で言ったんだろう?」


「はい、それは間違い無いようです」


「まあ、正体が何だろうが問題じゃない、森の奥を探索してくれるかどうかなんだけれど」


 支部長と副支部長は、ひとまずギルドに獲物を売りに来た時に、子分格の男を捕まえて森の奥の探索を依頼できないか打診してみた。


 興味のない事など受ける意思はないと、きっぱりと言い切られてしまう。

 元々ランクに拘らない自分達にとっては、獲物の素材を商人ギルドに流しても問題なくカネを稼げる。

 魔石に関しては王都に持ち帰れば、いくらでも王国軍が買ってくれる。

 正直な話として面倒事を言われるのならハンター・ギルドなどいつ辞めても構わないのだとまで言うのだ。


 元より魔物の森で狩りをするのに許可などいらない。弱い奴が行けば死ぬだけ、強い奴ならいくらでも稼げる。

 ギルドに加入するなら、初心者の教育をしてくれる。

 万一の際には一応探索くらいはして貰えることもある。

 ランクが上がればいい仕事を斡旋してくれる。

 名前が上がれば名門家に仕えることもできるかもしれない。

 また、引退後に仕事の世話をして貰える。

 互助会としてはこうしたものなのだが、純粋にカネを稼ぐことが目的なら、ギルドに加入していても、脱退しても余り意味はない。


 自由に生きたいのなら、自由に生きればいいのだ。


 交渉の余地が無いと理解した支部長と副支部長は溜め息をつくしかなかった。


 太助のように森の奥まで行くことが出来るようなレベルの者は多くない。

 しかし、皆無ということではなく、若手であるなら健太などもそうだ。

 ベテランのパーティでも3つくらいは存在している。

 しかし、万一何か起きた時を考えると、手元に温存しておきたい貴重な戦力でもある。


 支部長と副支部長は結局の所、幹線道路付近の警護は領主軍に警戒を任せて、Bランク以下のパーティに協力を依頼して森の警戒に当たることにした。

 また、王都のハンター・ギルド総本部に応援の依頼を求めた。

 ただ、総本部の対応は芳しいものでは無かった。

 具体的に何がどういった危機になるのか、細かな情報くらいは現地で調べろと当たり前のことを言われてしまっただけだった。


 ただ、幸いなことにハンターをやるような人間というのは基本的に血の気が多い。

 森の奥で何か異変が起きていないかギルドで情報を欲しいという噂が広がると、自ら志願してギルドに貸しを作ってランクアップしたがる奴が一定数存在する。


 名前を売りたがる奴というのは、無名ということであって、腕の方は期待できないということでもあるのだけれど。

 そう贅沢を言える状況でもなし、少々の無理は承知でとにかく調査させる方針で臨んだ。


 目撃情報としては、森の奥の方に出向いているのは、昔からのベテラン連中、謎の流れ者集団、そして意外にも領主である岩城氏のお抱え魔法師とその配下一行も頻繁に目撃されていた。


 ベテラン組と流れ者組は、単純に大物狙いしていることは間違いない。実際にそうした獲物を売って稼いでいるのだ。

 ベテラン組に言わせるとモンスターが増えているようには感じるけれど、具体的にどれくらい増えているのかと言われてもわからないという程度の認識。

 流れ者組はそもそも元の状況を知らない、この森は沢山獲物がいていい狩場だという程度の認識だ。

 両者ともに、異変というようなものは知らないという。


 ただし、領主のお抱え一行が何をしているのかサッパリわからない。

 収穫した素材を売りに来るわけでもなし、カネを稼ぐために森に行くわけではなさそうだとしか解らない。


 こうした状況の中で健太はCランク・パーティから、森の調査に行くに際しての援軍を求められて同行していた。

 Cランク・パーティ故に本気で奥の方までは行けないけれど、助っ人を頼って行ける所まで行ってみようということらしい。健太の腕便りという他人任せではあるけれど、行ってみて経験を積むだけでも悪くないだろうということだった。

 ソロである健太としても、無理させられないとしても、役割分担が出来ている5人組パーティに同行するのは悪くない話でもあった。

 斥候役兼弓兵1名、弓兵2名、槍兵2名という構成に、健太が戦闘魔法師という扱いになる。


 早朝から森に入って獲物を狙うのではなく、行ける所まで奥に行ってみるという方針の元でとにかく前進してみる。


 途中でオーガの群れを遠くから発見して、これを回避。

 回避した先は沼地であった。この沼地では大鰐に出くわす。やはり戦闘を回避しつつ先を急いだ。


 それなりに奥まで行くと噂の流れ者が2人一組で行動しているのに遭遇。

 2人でも問題なく森で行動できているのに驚く羽目になった。

 なにしろ10mを超えるような大鰐5体を当たり前のように狩っている。

 自分達の6人組では1体狩れたとしても、続けて5体というのは想定できない。

 健太の魔力が持たなくなるなら、途端にただのCランク・ハンターである。

 当然、健太の魔力は慎重に温存しておかないと、帰路に何かあった場合に対処できなくなってしまう。

 それなのにハンター登録したばかりという目の前にいる2人は、全く危なげなく狩りをしているではないか。

 2人組は20歳代後半くらいで30歳にはなっていない位だ。自分達6人とそう違わないだろう年代だ。

 何故こうも実力が違うものなのか?

 嫉妬心、反発心というようなものが健太たちの胸の奥底で目を覚まして行った。


 俺達だってやればできる筈だと。

 2人組の狩りを見届けると、彼らはさらに奥を目指した。


 そこで彼らが出合ったのは、領主の家紋を付けた装備に身を包んでいる10人組だった。

 いかにも高位魔法師らしい錦糸の刺繍が施されたローブを身に付けた男と、その護衛兵士という印象だ。


 健太は森の奥にいる兵士達から血の匂いがしない事に違和感を覚えた。

 兵士達の装備には返り血らしいものは付着しておらず、身綺麗なままなのだ。

 魔法を使えば返り血を浴びても消し去ることはできる。しかし、それでも多少なりとも戦闘の形跡らしいものはどこかに残るものだ。

 そうした気配が全く目の前の兵士には存在していない。

 健太の本能が違和感を、危険を知らせている。


 嫌な予感がして立ち去ろうかとした時に兵士達が近づいて来た。


「おい、貴様ら何をしている、身分証明書を見せろ」


「こんな森の奥でハンター相手に何をしているもないだろう。ギルドの依頼で森の調査をしているだけだ」


 いつもの貴族への反発心が思わず健太の口に出てしまう。


「つべこべ言うな!言われた通りにしろ」


 兵士たちが6人を取り囲んで槍を突きつけて来る。

 渋々とギルドカードを提示するメンバー達。


「ふん、最初から言う通りにしておけ愚民の分際で」


 名前を控えた後、カードを投げ返しながら兵士が言う。


「貴族の家臣は、貴族ではなかろうに」


「なんだと貴様。もう一度言ってみろ」


「ほう、貴方様は貴族様でございましたでしょうか?」


「ふざけるな!ひっ捕らえろ」


 兵士9人対ハンター6人の乱闘は、多勢に無勢で兵士側の勝利に終わる。

 健太が魔法を温存しているということもあったけれど、散々殴られて捕縛される6人。


「下らぬ。さっさと始末しておけ。どうせモンスターの餌になるだけだ、後始末は楽でいい」


 魔法師らしい男が兵士に指示すると、兵士は槍で刺し殺そうとする。


「こんな所で死んでたまるか!ふざけるな」


 咄嗟に健太は風魔法で仲間を捕縛していた縄を切り裂いて叫ぶ。


「サッサと逃げるぞ」


「ふん、下らんな。そんな遊びのような術など。エロイムエッサイム!我は求め訴えたり!」


 たちまちに黒き三頭犬が現れて、6人を追いかける。


「畜生、あの野郎は召喚術師かい!ケッ、これでも喰らいやがれ」


 健太は雷撃魔法で黒犬を牽制して仲間を逃がそうとする。


 しかし、牽制以上の効果はないらしく、黒犬は多少嫌がる程度だ。


 逃げる6人、追う黒犬。


 人間の逃げ足では8m近いような大型犬との追い駆けっこは無理がある。


 いくら健太が魔法で牽制していても、そう遅くないうちに殺されるという恐怖が6人を襲う。


 そんな時に木々の間から突然とティラノが5体ほど現れる。

 ティラノは食べ応えのありそうに見えたのか、一番大きい黒犬に狙いを付けて襲い掛かる。


 “グオオッ~”


 “ウオ~ン”


 黒犬は火炎攻撃をかけるが、ティラノは左右や後方からも襲撃する。


 “ギエエッ”


 “ウギィッ”


 血塗れの抗争の果てに、四方から襲われて3頭犬は全ての頭を食われて絶命する。


 “グオオッ~”


 勝利の凱歌とばかりに遠吠えを上げると、ティラノ達は黒犬の腹に食らいつき貪る。

 周囲に血の匂いが充満してくると、他のティラノ達も寄って来たようだ。


 “グオオッ~”


 “グッルウウ”


 “ガルウッ!”


 集まってくるティラノ達には、黒犬は餌としては小さ過ぎたようだ。

 餌の取り合いが激化していく。


 他に餌は無いのかと探すティラノ達の目に付いたのは兵士達だった。

 闘争本能に導かれて兵士を襲う巨獣達。


 “うわっ~”


 “助けてくれ”


 “道士様はどこだ!?“


 黒犬が負けた瞬間に魔法師は飛行術で脱出していた。

 残されているのは兵士達9人だけだ。

 いつの間にか数が増えているティラノ達の群れの前には、人間9人分の餌でも足りそうにはなかった。




 “多く召喚しすぎたかな”樹の陰で苦笑いする子供と、それを抱きしめる女の姿を見ることが出来た人間はその場にはいなかった。




 一方、健太達の一行はひたすら走った。

 気配を消す魔法と体力強化魔法と軽量化魔法を全員に使って、一心不乱にただ走った。


 領主の家紋を付けた不審な連中が、森の奥で何らかの魔法儀式を執り行っている。

 その情報は夕方には、ボロボロになっている6人組からギルドに伝えられた。


 “エロイムエッサイム!我は求め訴えたり!”と言う詠唱と共に3つ首の黒犬が現れた。


 健太は知らなかったが、この報告はギルド本部からすぐさま王宮にまで伝わった。


 もっとも、同じ情報はギルドを介さずに直接王宮まで一足先に伝えられていた。

 岩城氏改易すべしという意見も添えられて。


 その日のうちに子供の手勢は40人に増え、別途に公儀隠密衆も亀田藩まで瞬間移動を命じられている。



 飛行術で逃げた魔法師は左京を名乗っているが本名は田崎重吉。

 元は天草にいた隠れキリシタンの一人である。

 かつて、伴天連から異国の術を授けられたが余り強力な術師ではなかったので、正面戦闘要員からは外されて、後方攪乱要員として生き延びる事になった者だ。


 第2弾いかがでしたでようか。

 この「モンスター大戦」は6話続きます。

 引き続きお付き合いの程、宜しくお願いします。


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