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18.兄弟姉妹

 ご愛読ありがとうございます。

 徘徊する全長40mの牛鬼。対峙する大ガマ、大鷹、大猿。

 そして、デレるドラゴン!怪獣大戦争はまだ続く。

 後半は家族とホッコリです。


 想像して欲しいけれど、全長40m位の蜘蛛が群れでウロウロしている光景を。

 これは強烈なものでした。


 小隊長3人は大ガマ、大鷹、大猿を召喚して奮戦している。

 残る隊員達は総掛で1体を狙い撃ちしている。10人で一体なんてとても無理。


 佐助の大猿が様変わりしていた。

 そこらの山にいるような猿が大きくなったという風情の大猿だったのが、獅子みたいに頭から肩にかけて長い毛がふさふさしている。それに口先が狼みたいに突き出て尖がって牙が目立つようになった。顔そのものは赤くて、口先の両脇だけに白い筋が入って目立つ。

 猿と獅子の合いの子みたいになっている。

 山で木の実を食っている猿というよりも、獲物の肉を探して狩る獣という風情だ。


 戦況を見ていると旗色が悪い。

 蜘蛛の体をしているだけあって、ケツから糸を出して相手を拘束しようとする。

 粘つくようで、動きが悪くなるのは間違いない。


 児雷也のガマはサイズ的に牛鬼よりも小さい。ガマだから牙なんてない、攻撃は物を溶かす毒霧になるけれどこれが糸に邪魔されて蜘蛛本体まで届かない。

 どうにも相性が悪い相手みたい。


 才蔵の大鷹は高空から勢いをつけて降下して、爪と嘴攻撃を繰り出す。それに降下する時に凄い衝撃波を出す。牛鬼は吹き飛び、挙句につつかれる。

 攻撃は効いているのだけれど致命傷までは至らないという所か。


 佐助の大猿は牛相手に戦い慣れたか、素早く動いて角を躱して首筋に噛みつく。牙が大きくなったことで噛みつき攻撃は相当に効いているようだ。


 でも、相手が10数匹と言うあたりだとどうにも分が悪すぎた。油断するとあっと言う間に数で押し込まれてしまう。


 そこを隊員総出で支援する訳だけれど、せめて足の一つも捥いでやろうかというのが精一杯という調子だ。


 俺は遠慮なく50mドラゴンを召喚。


 蹴散らせ!

 殺せ!

 と命じる。


 “グオオッ”と腹の底に響くような雄たけびと共にドラゴンが出現。


 周囲に捲き散らず魔力が桁違いにデカイ。

 体のサイズ云々ではなく、存在感がまるで違う。

 この戦場は明らかにドラゴンの為にあるとすぐに納得させられてしまう。


 軽いブレス一発で半数以上の牛鬼は消え去る。

 ガマが苦戦している牛鬼にはヒョイと噛みつき、そのまま首をかみ砕く。

 大鷹が吹き飛ばした牛鬼は、ドラゴンの尻尾の一撃が入っただけで絶命だ。

 残った牛鬼が逃げようとしたところで、再度のブレス攻撃。


 戦闘というよりも、一瞬の殲滅。


 戦力の桁が違い過ぎる。

 格が違い過ぎる一方的な殺戮。

 残ったのは燃えカスの灰だけだ。



「お頭様、御着陣祝着至極に存じます」


「お頭様、助かりました」


「お頭様、ありがとうございます。ヤバかったっす」


「おう、お前らあんなの相手によく3日間持たせたな、エライ!」


「どうにもこうにも厄介でして」


「苦労してやっつけても、翌日にはまた出て来るんです」


「何度やってもダメで、すっかり疲れ果ててしまって」


「なんだ、それ?」


 話だと、祠のあったあたりから妙な霊気が零れていて、そこの霊気が牛鬼を生じさせているらしいと言う。

 怪我を負った牛鬼もその霊気に触れると回復するのだとか。

 お蔭で苦労惨憺の末に撃退させても、翌日には元気になって再侵攻してくると。


 元の祠はその霊気を封じたものだったということか。

 その祠を祀っていた連中が皆死んでしまって、封印を元に戻す方法がわからんというのが最悪だ。


 困った問題だ。

 いっそのこと、ドラゴンに霊気とやらを吹き飛ばさせるか?

 どんな影響があるかわからんけれど。


 そのドラゴンは霊気を美味そうに吸い上げている。

 何かの餌代わりにでもなるんだろうか?

 美味しいの?それってさ?

 ドラゴンの顔が少し笑った様な気がしたです。

 へえ、味があるんだ、霊気って。


「・・・まあ、俺達が悩んでも解決できそうにないな。

 こうなるとお坊さんとかにお願いするか?

 良いお坊さんに心当たりないかな?」


「叡山に頼むとか、高野山とか、でしょうかね」


「ちょっと、王宮行って相談してみるわ・・・」


 チョイと瞬間移動で王城へ。

 宰相閣下と本多様に頼み込んで、何とかできそうな誰かを出してくれるように依頼して、ついでに出雲の爺ちゃんに相談してみた。

 爺ちゃんは悩まず十六夜と久遠に見させろと言うんだな。


 危ない場所につれていくのは気乗りがしないけれど仕方がない。赤ん坊は側室二人に任せて十六夜と久遠を連れて行った。


「お役目をお手伝いできるは嬉しいです、あなた」


「久遠も、お兄様のお役に立てます!」


 なんだかノリノリの二人。

 出雲の巫女姫は超常のモノを見通すことが出来るそうだ。

 俺の嫁さんって実は凄いんだ・・・初めて知った。


 洞窟で俺の事を見た時なんかは、十六夜の目にはどう見えていたんだろうか?

 ただの人だったのかな?・・・妙に気になる。


「あら、龍脈に大きな穴が空いてしまっています」


「大きな岩で蓋をして、高位封印術を貼っておけば大丈夫です。お兄様♡」


「どんな岩でもいいの?高位封印術って何??」


「火山にあるような熱に強い岩がいいです。封印術は高位ドラゴンなら知っている筈です」


「そういうものなんだ・・・。それじゃ相方のドラゴンもおいで、急々如律令!チョイと岩を取って来ておくれ」


 20mドラゴンがどっかに飛んで行って、暫くしたら岩を抱えて戻って来ました。


「うんじゃ、後は封印ヨロシク」


 無責任に2体のドラゴンにお任せしてしまいます。


 50mドラゴンがナニヤラ詠唱したような気がしたけれど、よくわからん。

 魔法陣が宙に形成されて、そのまま徐々に地上に。

 岩が置かれた霊気が噴き出ているという場所に、魔法陣が降りたら、その場所が光り輝いて。


「もう大丈夫です、あなた」


「うん、ドラゴンさんって凄いの!」


 久遠ちゃんがトコトコと50mドラゴンに近寄って行きます。

 ドラゴンは久遠ちゃんを掌に乗せてご機嫌な様子。

 挙句、ドラゴンはヒゲをナデナデしてもらっています。


「あ、わたしも・・・」


 妻までヒゲをナデナデしています。

 ドラゴンってデレデレするもんだとは知らなかったな。


 20mドラゴンも触って欲しいみたいな顔してる。

 ドラゴンが「クーン」って鼻を鳴らすのはどうなのかと思うぞ、ワンコかお前は!


 出雲の巫女はドラゴン使いかい。

 恐るべし!

 2人にナデナデしてもらって満足したドラゴン達はお帰りになしました。

 俺が飼い主である気がしないのはなんだろうかorz。


 その後、寛長寺と天照宮からも人が来て、ナニヤラ儀式をやっています。

 天照宮の神職さんたちは妻姉妹を知っていたようで「手伝って~」と気楽にやっていましたっけ。


「ドラゴンの高位封印陣なんて初めて見ました」


「この魔法陣は除霊結界にも応用できそうですな、呪力が大変そうですが魔石で賄えるでしょう」


 神職さんとお坊さんは、なんか興味深そうです。


 一連の儀式が終えるまで5日間ほど。

 警戒名目でウチの隊も立ち会って。


 この間は相良の殿様にお世話になっています。元々あちらからの救援要請ですからね。

 九州の温泉に入って、おいしいお料理頂いて。


「ああ、他人の温泉は安らぐなあ」

 自分ちの温泉って油断していると大変な方々が攻めて来るから落着けない。

 何故こうなった。


「魚食い放題」


「酒飲み放題」


「ここは楽園」


 お前らそればっかだな。

 今回は頑張ったからいいけどさ。



「久遠と二人きりでゆっくりするのも久しぶりね」


「はい、お姉さま。いつも周りは賑やかですもの」


 2人きりの温泉入ってご満悦みたい。


 仲が良いんだなこの二人。久遠ちゃんはお姉ちゃん子みたいだ。


 そういえば八戸のお土産買ってないな俺。

 今になって気が付いた。

 どうでもいいけどな。


 後で十兵衛さんが教えてくれた話だと、八戸藩は隠れキリシタンの跳梁を許したことで王家からの賦役が非常に重くなる運びだそうだ。

 全国で一斉に隠れキリシタンを検挙していたのに、弛んでいるのはケシカランと但馬さんからガンガン怒られて改易にはならなかったものの、向こう数年間は足腰立たない程度に重労働させられるらしい。


 人吉藩の方はまじめに軍役に就いている間に陣借りに来ていた浪人者に襲撃されたことで同情されて、王家から見舞金が少し出たそうだ。


 十六夜と久遠も封印の手伝いしたことで、ご褒美に高級な反物を頂いています。

 何度も温泉でご接待しているから、その分の御礼もあるんだろうけれどね。


 俺達への褒美はというと、新しくお揃いで緋色の陣羽織を頂きました。

 俺のには“追討軍大将”とドラゴン模様を金糸で刺繍されている。

 その他には追討軍一番隊、二番隊、三番隊、四番隊とそれぞれ刺繍が施されている。

 緋色に金糸のドラゴン刺繍と相まってド派手。

 精鋭部隊の俺達がいることを、戦場で目立つようにしたいのだろう。

 それは望むところではある。


 へへっ、良いモン貰った。

 別宮の宝物殿に飾ってしまおうかな?だめ?


 アレ、もしかしたら大ガマ、大鷹、大猿といった化け物の飼い主を、遠くからでも分かり易くしておくだけというのは無いよねえ・・・。


 今回おカネにならなかったのは魔石が取れなかったからというのがある。

 ムササビは魔石が無かった。

 牛鬼はドラゴンが綺麗に炭にしてくれたから灰しか残らなかった。首をちぎった奴と尻尾で叩き殺した奴も最後は燃やしてしまっている。残念。


 魔石が無い巨大ムササビは何だろうかという事になるけれど、正体不明ということ。

 解らんモンは解らん、別にそれほど強いものではないし、役に立つようなものでもないからどうでもいいという結論。


 ちなみに俺は牛鬼の召喚が出来るようになりました。

 全長40m位の蜘蛛みたいな集団がウロウロ。

 これの後ろに身長30mの牛頭王と馬頭王を控えさせると、ちょっと見てくれ的に問題かもしれない。


 久遠ちゃんが見たら、怖がってベソかいちゃいました。

 こういうのって、見た目も大事なんだなあ。

 ごめんね、久遠ちゃん。


 埴輪軍団の後ろにドラゴンがデンと控えると妙にカッコイイというか、世間的には竜殺しのイメージはこれらしい。俺は見なかった例の劇でそんな演出していたそうだ。

 対して、蜘蛛の後ろに牛頭王と馬頭王を控えさせると久遠ちゃん泣く。

 両方とも俺の召喚獣だけどな・・・。



 何はともあれ、大乱の余波はこうして収束していったのですよ。

 ご公儀としてはキリシタンの探索は続くみたいだけれど、俺の所には暫く出動は掛かりませんでした。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 んで、話はガラリと変わって。


 出雲貴志さんってのは、元は斉木貴志さんだった。

 カワイイ嫁を貰う時に、俺が婿養子になって出雲姓になった。


 斉木家は当主のオヤジがいて、長兄貴彦(21歳)、次男貴臣(20歳)、長女(19歳既婚)、三男貴光(17歳)、二女(16歳既婚)、俺(12歳)という子供の構成だった。

 俺は上の兄姉と微妙に年齢の断絶があって、仲が良いということでもない。

 十六夜と久遠ちゃんみたいな仲良し姉妹という雰囲気は全くない。

 長兄は軍学校卒業して軍で士官、次兄は王国学校を出て下級軍人。

 三兄は奨学金を得て法科学校に行っている。

 姉たちは普通に騎士爵家に嫁いでいる。


 次兄は島原に参戦していたそうだ。

 代官領で警備兵をやっていたそうで、反乱勃発に伴い島原への従軍命令を受けた。

 反乱兵を討ち取って追撃に移ろうとしたら首が3つある黒犬が出てきて腰を抜かした。

 そこに颯爽と10人組の精鋭が登場して黒犬を打倒してくれた。

 その魔物を叩き潰す精鋭部隊を指導したのが弟だったと後で知ってビックリ。

 最後に天草四郎から挑発されているのが弟だと、遠くから見てまたビックリ仰天という感じだったらしい。

 出雲に婿入りしてから、とんとん拍子に出世したのは噂では知っていたけれど、戦場で敵の大将から挑発されるまでとは理解できなかったそうだ。

 攻め手の大将である井伊様ではなく、自分の弟が敵の総大将から名指しで挑発される。

 ただの一兵卒に過ぎない自分と、すっかり立派になった弟。

 自分の身の上が恥ずかしいが、弟のことは誇りに思う。

 そんな内容の手紙を寄越してきた。


 コチラからは普通に頑張ってねという程度の返信をしておいたのだが、今度は長兄からも手紙が来た。


 内容は、次兄からすっかり出世したのは聞いた。地位が高まったのなら軍学校出の自分を引き立てて欲しいということだった。

 軍人として俺の部下になるなら魔法を使ってワイバーン5体位は瞬殺出来る必要がある。出雲の家臣になるのなら、上級貴族方をおもてなしできる程度には行儀作法に熟達していないと資格が無い。

 両方無いのなら普通に騎士爵としてのお役目を果たすべき。

 そんな味気ない返答を出しておいた。


 魔法が使えるくらいなら最初から年の離れた末弟など頼らない。

 貴族として出世したのなら、兄を引きたてて当然だろう。

 出雲の家臣ではなく、軍人として出世する口利きをしろ。


 引き続いて、こんな手紙が来た。


 出雲の義兄達には特別なことなどしたことが無い。高家の家柄であっても兄を引き立てるということではない。

 軍人として出世したいのなら実力は必要。

 軍学校の席次が10位以内で、俺の紹介状があれば、配属先の希望はある程度考慮して貰える可能性が高い。それでも配属前には人事担当の前で実力を試される。

 もし、実力が無いのなら文官でも目指してはどうか。


 ちょっと頭に来たような返答をしておく。


 それでもまだグズグズ言ってくる。

 面倒になったので執事に手紙を突っ返せと命じておいたら“正二位様に物を申すのなら、従五位以上の紹介者を介して申し入れるのが最低限度のマナー。無位無官の者が無礼を働くのであれば相応に対処する。”と強烈なことをやったみたい。


 出雲家臣にしてみると、自分達は王家に次ぐ古い家柄の高家に仕える身である。

 それに、竜殺しの正二位様にお仕えするということも、大きなステータス。なんせイザ有事ともなれば征夷大将軍を拝命できる身の上である。

 カネ回りは良いから待遇最高、ましてや高位魔法師の俺は200~300年位生きる筈で、家臣ともなれば孫子の代まで雇用は安心。

 貧乏騎士爵の小倅が兄の立場を利用して、どうしても出雲の家臣になりたいというのならまだ許せるとしても、出雲をバカにして軍人として出世させろとは無礼千万で許し難しということらしい。


 誰も知らない斉木騎士爵家嫡男と正2位出雲伯爵家当主では、本来対等に付き合うことなどありえない。身の程を知れと家臣団としては怒る訳だ。


 そんなこんなをしていると、次兄からも便りが。


 島原では12名を率いる分隊長として敵兵15人を討ち取っていたけれど、その功績を認められて地方の代官領の警備隊から王都の輸送科に転属になるそうだ。

 代官領は地理的な戦略地を王家が抑えている場所。

 そうした場所には金山や銀山も含まれる。精錬した金銀を王都に持ち込んで硬貨にしているのだけれど、その輸送担当部隊が輸送科になる。

 兵士の食糧や武器輸送を担うのは運輸隊で、それは全く別の部門になる。

 輸送科というのは特に信頼が出来ると認定された連中が指名される部隊。武芸が達者ということよりも、絶対にインチキしないという素養が強く求められる部門。

 世間的には生真面目部隊の異名を持つ連中なのです。ようするに次兄はクソまじめだと上司に認定されたということらしい。

 それに王都への転属に合わせて、かねてから憧れていた上司の娘に求婚したら見事受けて貰えたそうだ。

 上司は代官の家臣で陪臣だそうな。騎士爵の次男坊としては特に身分的な問題は無しと。

 陪臣の次女と貴族の次男だと、独立すると貴族籍ではなくなるけれどお互いに納得できればそれもヨシということだった。

 こりゃ、めでたい話だとホクホクしていたら、義父ちゃんが折角だからウチの神社で式を挙げてやると言い出した。

 どうせなら相手さんの親族も王都観光がてらご招待したらどうかと。

 やけにノリノリなので、どうして?と聞いたら「最近はお相手するのが濃い方ばかりで肩が凝る。たまには普通の人を相手にしていたい・・・」


 御免なさい、イヤ本当に御免なさい。

 温泉掘って以降は特に付き合う相手の濃度が上がった。別宮に寄ってくるメンツは怖すぎる。

 しかも、奇襲でやって来るんだものなあ・・・。アレは心臓に悪いわ。


 俺が富士の演習で不在中などは、警備面で大変なことになってしまっている。

 側室の片方が必ずいるから、何とかなるようなものらしい。

 十兵衛さんと半蔵さんが愚痴っていた。

 ごめんな、義父ちゃん。お世話になるわ。


 貴臣あんちゃんに急いで連絡して、というか俺が代官屋敷までちょいと飛んで行って上司の親族少し借りるよと代官に引導渡して。

 そのまま上司氏とあんちゃん相手に日程を決めて、支度金を大目に渡してあげて。

 んじゃ、王都で待ってるよん!

 どこが正2位のやんごとない身の上の大貴族なんだろね。


 氏子総代家以上のやんごとない方々用、それ以下の貴族用、庶民用。

 客殿と湯殿などの設備は、それぞれ別物。

 面倒だけれど身分のやんごとない方々は隔離しておかないと、どうにも対処ができぬ。

 本来ならあんちゃん達は庶民用になるのだけれど、今回は低い方の貴族用を使う。

 これを依怙贔屓という。


 低い方の貴族用といっても辺境伯や伯爵あたりに相応しい作りだから、典型的な貴族仕様そのもの。豪商なんかにも貸している。

 素材も細工も、道具類全部“一流品の高級仕様”です。


 要するに騎士爵家や陪臣家などでは普通泊まれない部屋に宿泊させてしまう。

 一生に一度だけの思い出作りね。


 実際に案内してあげたら、あんちゃん目がテン。

 兄嫁さんの実家の皆さんも口あんぐり。

 普通ならお付の家臣団などは、当主と違って質素な部屋に案内される。

 ところが、今日ばかりは当主本人用設備に囲まれる。


「・・・・・」


 あんちゃん、凍り付いた。そんなに驚く所かな。


「このようなお部屋でよろしいのでしょうか・・・」


 兄嫁の実家の皆さん、絶句してしまいました。まあ、経験ないでしょう。一生に一度くらいはいいんじゃないですかね。


「・・・なあ、貴志。い、いや出雲伯様。普段からこんな暮らしなのか?」


「貴志でいいけどさ、あんちゃん。

 普段は神官の家らしい質素なカンジの内装の離れで暮らしている。警備だけは厳重で物々しいけどね。


 ここはこうした処遇をしておかないと駄目な人達用の部屋さ。

 “俺は伯爵だぞー”と言いたいような奴がここに来ると納得する訳だ。

 逆に、これで納得しちまうような奴は伯爵止まりだけれどな。

 ここには商人が取扱う中での高級品を集めてある。

 超一流の職人に依頼してカネ度外視して、特注で造らせたようなものは無い。

 いくらでも取り替えのできるようなものばかりさ。そう畏まらなくてもいい。


 湯水のごとくカネをかけて作った超高級品の本物の御殿には、やんごとない方々しかご案内していないよ。

 警備の都合もあるから非公開にしているしね」


 納得したのか、理解できなかったのか。

 それでも式は賑やかに挙行して、兄嫁の実家の皆さんは王都に10日程滞在して、楽しんで笑顔でお帰りになりました。


「出雲貴志は斉木貴志ではない。

 もう全く別の人間。

 俺達兄弟と同じ親から生まれたと考えるのは無理だ。

 既に竜殺しの英雄であって、国の誇るべき宝だ」


 後日、貴臣あんちゃんが長兄にそんな手書きを出したそうだ。

 俺には長兄から何も言って来ないようになって良かったけれどな。


 ちなみに、やんごとない方々仕様の方だと、端々に“超一流の職人さんの力作”による彫刻、金細工や襖絵などてんこ盛りになっており、細川家と京極家の監修でございます。

 市販の一流品と巨匠の逸品という違いで差別しております。

 やんごとない方が来るから超高級仕様でおもてなしするのか。超高級仕様でおもてなしするからやんごとない方が寄って来るのか。

 季節ごとに襖絵を替えると、それをまた楽しみにされたりして。


 次回はズバリ「モンスター大戦」です。

 万単位で押し寄せるモンスターの群れ。3頭のドラゴンが暴れ、未知なる異国のモンスターが暴れまわる大活劇!

 次回からは主人公視線ではなく、第三者視線の語りに変わります。主人公のいない場所でも事件は起きるのです。

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