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17.後始末の怪獣退治

 ご愛読ありがとうございます。

 今回は全長40mのムササビ怪獣vsドラゴン、ついでに埴輪型ゴーレム。

 湖を煮えたぎらすは、山を丸ごと氷漬けにするわ。周辺被害甚大ながらの大決戦!


 ゆっくりできた休暇中、俺は赤ん坊を相手に遊んでいた。ほっぺをツンツンしたり、おしめの交換のやり方覚えたり。


 おっぱいは3人の妻が交代であげていた。十六夜は魔法無しでも、普通に授乳している。赤ん坊を抱っこしてお乳をあげている妻たちはとても幸せそうな顔をしていた。


 おぎゃーと泣くと、そそくさと近寄って抱き上げる。「おなかがすきまちたねー」などと言いながら、ニコニコしながらお乳あげている。赤ん坊が満足して暫く「だーっ」とか「あうあう」とかやっているのを、ナデナデしてあやす。そして寝付いた後も、胸に抱いて嬉しそう。


 レキュアとシェイラも、実の子みたいに嬉しそうにあやしている。

 隙を見ては黒奈と里奈も赤ん坊を世話やきたがるし、妹の久遠ちゃんも離れにやってきてはキャイキャイと楽しそう。


 俺の子は女に愛される宿命にあるのだろうか。世話を焼いている女性軍が皆とっても幸せそうな顔をしている。


 でも、それを眺めている俺が一番幸せなんだろうと思うぞ。

 “15歳くらいから獲物を換金して、20歳前には大金持ちになって、豪邸買って、綺麗なお嫁さんを貰って。後は遊びほうければいいじゃないか!”と、そんなこと考えていたのがたったの1年前のことだ。

 13歳になって綺麗な嫁に囲まれて、義理の家族にも恵まれて、良い子分まで持って。

 伯爵で、正二位で、魔物討伐軍大将の役職まで持っている。

 何でこうも変わるものなのだろう?


 微妙な顔でもしていたのか。

 シェイラに赤ん坊を取られた十六夜が俺の横に来て、肩にもたれかかる。


「あなたにワイバーンから助けて頂いてから、もう1年も経つのですね。本当に沢山の出来事がありましたけれど、十六夜は今とても幸せです。ずっとあなたのお傍においてくださいませ」


「ただのハンターが十六夜に出合って。それから欲しいものが全部手に入った。

 本当にありがとう十六夜。ずっと俺の事を愛しておくれ、ずっと俺の妻でいておくれ」


 ギュッと腰を抱いて髪にスリスリする。


「はい、あなた」


 もう、かわいいったら!


 昼間は赤ん坊を構ってノンビリ。

 夜は3人の妻が交代で相手を務めてくれて。

 一緒に大人に成長していく十六夜と、大人として俺をリードして支えてくれるレキュアとシェイラの二人。

 俺には欠かせない3人なんだろう。

 愛しい気持ち。大切にしたいと本当に思う。


 珍しく一月の間はノンビリと幸せを噛みしめていました。



 んで、ゆるりと休んで業務再開となるのだけれど。

 ひとまず、魔法高等学校をどうしようかと。


 軍関連の受講生だった42名は富士の演習場では教官を務めていて、島原では精鋭特殊部隊要員として戦場で戦い抜いて死亡者なし。

 今更になって魔法学校で受講させる必要もない。

 本来の所属元にしても、手放せない基幹要員になってしまっている。

 少々早めだけれど悩むことなく単位所得という扱いにしておいておきましょう。

 成績は42名とも成績は特等扱い。

 席次としては柳生道場の師範代が筆頭、2席は尾張柳生という扱いです。

 学校で受講して、王宮魔法師の実質筆頭で戦闘集団の指揮官から良い評価を貰ったというのは先々の皆さんの軍歴に箔がつくでしょう。

 それに、喜んでくれてウチの部隊を志望してくれたら嬉しいし。


 王国軍の普通の部隊から転属して、ウチの部隊に来るのは紛れもなく出世扱いです。

 魔法を使う戦闘要員としての最精鋭部隊はウチなので、その所属員はエリートとして世間からは認識される。軍内部でも完全に尊敬される。

 この数カ月間の富士の演習の厳しさというのは軍内部で知らない者はいない。


 通常部隊で期待の星という扱いで教練に参加して、いきなりティラノの群れに追いかけられて泣き喚いてションベンちびる所から始まるというのはショッキングな現実。


 でも、それに耐えきった連中は実際に島原で血路を開く先頭になって活躍した。

 それを鍛えた教官連中というのは、完全に異質の存在だという風に軍内部では扱われる。


 王宮の廊下で通常部隊の士官が、ドラゴンをあしらった魔物追討軍の羽織を着るヒラ隊員とすれ違うと士官が道を譲り先に敬礼する。

 本来階級社会である軍隊ではありえないことであるけれど、何故か現実がそうなってしまっている。


 富士で精鋭部隊が教練をやる。

 派遣されて来た生徒は最初のうちは泣き喚いて、ションベン、脱糞当たり前。

 でも、それを指導する教官連中は、俺の手によって生徒の3~4倍のモンスターを相手に強制的に訓練させられる。

 それが卒業した生徒達の口から原隊復帰した後で語られていく。

 訓練の厳しさ故に精鋭は精鋭足り得る。

 真の地獄の訓練を耐えきる者だけがドラゴン羽織を着る資格を持つと。

 で、この現実を知っている者だと、ウチの訓練について行く自信が無くなってしまって中々転属を申し出る者もいない。

 結果的に、いつまで経っても隊員は増えてくれないと。


 で、酔狂にも魔法高等学校の生徒でしかないのに、俺の講座を受けに来てしまった在校生の12人。

 訓練期間は短いままで、こちらが実戦部隊の教練に掛りきりだったせいで構いもせず自然休講状態でした。

 授業の再開といっても、あと一月ほどで卒業になってしまうという間の悪さ。

 モンスター・ハンターとしてなら、既に実力的には問題なく十分に稼げる筈。


 当人達の希望進路は出来の良い2人はハンターとして荒稼ぎしたいという希望。

 他の10名はハンターよりもお抱え魔法師を希望したいが、身分が低いので貴族のお抱えは無理。名門だと採用試験すら受けられない。必然的に王国軍で出世するのが唯一の道なので3月の王国軍の採用試験待ちだという答え。


 出雲のお抱えにしてくれないか?という奴もいたけれど、俺の家の場合は神社の警備員兼掃除係兼迷子預かり係であって、モンスターとの戦闘を前提としていない。

 それに神社の警備員といっても、たまにやんごとない方々が攻めて来る訳で妙な所で神経を使う。貴族相手の社会経験がない要員には向かないお仕事。


 それで王国軍の採用試験に先立って、俺からの推薦状を書いておきました。


 “王国軍筆頭 本多忠勝様

 魔法高等学校卒業予定の*****。

 この者は王国軍において即戦力として使える故ご配慮願いたく候。

 魔物追討軍 出雲貴志“


 10人分書くのも面倒だったけれど当人達の目の前で書いてあげて、全員願書と一緒に軍に届けろと。

 採用担当の役人は迷惑だろうが、無碍にはできない。軍としては使える奴が欲しいから試験で腕試しをする。

 そこに軍で一番キツイ教官が最初からお墨付きを与えてしまう訳です。


 翌日、10人で雁首揃えて軍に願書を提出しに行ったら、暫く待たされた後で教練場まで連れて行かれて、そのまま王宮騎士団の前で得意な魔法を披露させられたそうだ。


 んで、その場で全員即採用決定。


 戦闘魔法師の配属を希望するような部隊は山ほどあって、それに比べて配置できるような実戦レベルの魔法師は少ない。

 使えるとわかれば即採用。逆に魔法高等学校長宛てに即時卒業扱いにせよという命令書を持たされて帰って来たそうだ。


 採用の翌日から魔法師を希望する部隊で配属を巡る争いになるらしい。

 軍が“コイツは採用する!”と言うと魔法学校側では“毎度あり”で済んでしまう。

 使える奴を養成する学校なのだから、使えるとなれば教育は終了で構わないと。

 学校側としては、それが実績になるのだと校長は自慢する。


 この話が3年生以下にも伝わると、新年度にも講座はあるのかという問い合わせが殺到したそうな。

 生き残れる保証のない講座でも、生き残れたなら軍でエリート路線に乗れるかもしれない。切実な生徒が多いのだろうなあ・・・。


 採用の当日に家に帰ると、長尾一族でもある執事が「使える奴がいるなら先に言えよと、謙信公からのご伝言が届いております」だってさ。


 学生連中は身分が低くて名門では試験すら受けられないと嘆いて王国軍を志願した。


 で、それを何故か異常に早く知った謙信公がクレームを入れて来た。

「新年度からそうする、と答えておいて」と執事に命じておく。情報早すぎでしょう上杉家って。


 翌朝には武田家と前田家からも同じクレームが・・・。


 校長に愚痴ったら「学校としては青田買い大歓迎ですぞ、ほっほっほっ・・・」と高笑いしやがんの。

 ちなみに軍の採用担当の幹部から校長には感謝状が来たんだそうだ。そりゃ余裕だわな。


 新年度になったら4年生15名と3年生10名の受講希望者。

 初日に熊のモンスターを相手にさせても誰も怯まない。むしろ、少々怪我をしても突っ込んでいく。


「自分は子爵家の嫡男です。強くあらねば家を盛り立てられません」

「自分は男爵家ですが、事情は同じであります」


 悲壮な顔で言う2名の3年生の学生。熊に引っかかれて傷が少し。


「自分は魔法で食いたいです。教官殿、強くなりたいです」


 他の連中は、口ぐちに同じようなことを言うじゃないの。

 その心意気はヨシだけどね。実力的には去年の2人程突出した奴はいない。

 でも、ダメな奴もいない。一年かければモノになるだろうか。


 嫌いじゃないかな、こういう雰囲気って。


 学生が5人一組でワイバーンを倒せたのは3ヶ月後だった。

 去年よりは遅いけれど、これでも十分ハンターとしては一人前になったも同然です。

 この先、どうなって行くのか楽しみ。

 そう思うようなら教官らしくなった証拠かな。



 俺自身はゆったりしたペースで暮らしていた頃、世間的にはちょっとした問題があった。

 島原へ討伐軍を出した領主達は軍勢を率いて遠征する。

 この間、その領地は武力が低下する。

 治安が悪化することになる訳だ。


 普段なら余り表だって動けないような盗賊でも、大胆に行動出来てしまえたのです。

 戦争が終わって領主が軍勢を率いて戻れば対処も容易で、盗賊は討伐されていく。


 地方の盗賊退治などは俺には関係の無い話なので、ゆったりした暮らしが出来ていたのだけれど。

 妙な展開になって来た場所が少々。


 盗賊どもが古い結界を破壊して封じられていた太古の魔物が復活してしまったという報告と、盗賊といつの間にか逃走に成功したらしい隠れキリシタンの残党が結託して勢力を伸ばし始めた場所と。

 両方とも見たことが無いような魔物が脅威を奮っているらしい。


 片方の事情はこうした話だった。

 論功賞の後で領地に帰って盗賊退治をして、被害を確認していたら全く連絡の取れない村がいくつかあって。

 使いを出してみたら壊滅していた。

 それも巨大な何かに建物が叩き潰されたような形跡がいくつもある。

 慌てて広範囲に偵察部隊を派遣したら戻らない部隊が出て来た。

 更に探索を続けてみた所、どうやら巨大な蜘蛛の体に牛の顔を持つ魔物が暴れているのが遠くから見えた。

 意外に素早いので、迂闊に近づくと食われてしまうのでそれ以上は不明。

 姿形から古文書にある牛鬼ではないかと推測。

 付近にはその昔に旅の行者が牛鬼を封じたという伝承の祠があったそうだ。

 そして、村を丸ごと破壊されていて祠も破壊されていると。

 その領主は援軍の支援を王家に求めて来た。


 もう片方は盗賊と野合した隠れキリシタンの残党が、付近の村々から略奪の限りを尽くしている。その戦力の中心になっているのが巨大なムササビというのかヤマアラシとでも言うのか。ムササビのごとく空を飛ぶけれど、体中に針が生えていて普通の攻撃は無効化するような奴だという。

 並みの魔法師では魔石攻撃でも歯が立たないということで、王宮に泣きが入ったもの。


 ともに小領主なので、元からそれ程強力な軍事力など持っていないという背景も共通している。


 正体のよくわからんような魔物などは、俺の所に押し付けとけとばかりにノンビリした生活は終わりを告げた。


 また、面倒な話が来たものだ。二つ一緒じゃなくてもいいだろうにね。


 隠れキリシタンの残党を始末したいから本音としてはソッチを先に始末して欲しいけれど、牛鬼も被害甚大だけに放置も出来ぬと言う。

 両方まとめてなんとかしろという、酷い話に。


 仕方がないからムササビは俺が行って、牛鬼は小隊長連中に任せるかという事でなんとなく折り合いがついて。


 ムササビ狩りに行くのは予想外の東北にある八戸藩だった。

 隠れキリシタンの残党って言うからてっきり九州だと思ったら違った。

 九州から落ち延びた連中ではなく、当初の探索から逃れた連中みたいだ。


 夏だから寒くもなし、むしろ気持ちがいい気候だったのは嬉しい誤算か。

 八戸のお土産って何がいいんだろうねえ?


 ええっと、敵は山中を転々としながら、適当に気が向いたら村々を襲撃しているそうだ。

 現在地は相当に荒っぽい推定しかできていない。

 捜索の手不足なのか、敵が速いのか。


 ムササビは実の所、夜行性らしくて昼の間は滅多に出てこない。

 昼の間に盗賊退治すればいいと思うけれど、盗賊も昼は動かず、どこに隠れているのかも不明と。

 俺が来る以前にその辺りは調べておいて欲しかったかなあ、と思うぞ。

 公儀隠密何やっているのだろ、手抜きだぞ!

 これじゃ隠れキリシタン狩りなんて無理だわな。


 最近襲われた付近一帯に埴輪軍を派遣して空中から調査。

 洞穴にでも入っているのか上空からは見当たらず。

 餌は肉食らしく、牛馬、人間何でも食らうという報告だから早めに対処したいけれど、これでは相手が動かないとやりようがないか。


 警戒網はそのままに夜間を待つしかないか。

 毎日出て来るのでもないだろうけれど。

 待つこと3日間。

 飽き始めた頃にようやくと敵さんが動いてくれました。


 山に隠れていると思い込んでいたのが間違いで、湖に潜っていたという盲点。

 湖底から近くの山頂に駆け上り、そこから空中に飛びあがる。

 駆け上る山によって気流が違って飛んでいく方向も違うのだろう。


 どうやら、このムササビは盗賊に使役されている気配はない。

 ひょっとしてムササビが襲った村を盗賊が追いかけて金品を持ち去っているだけかも。

 ムササビは金品財産なんて目もくれずに、“肉”が欲しいだけだろう。

 肉なら牛でも馬でも人間でも構わずに、食らうだけという事かもしれない。


 ともあれ、やっと出てきてくれたのだからさっさと殺しておきたい所だ。

 最初から気合を入れて20mドラゴン召喚。


 で、すぐさま後悔。


 遠目に見て明らかにムササビの方が2倍以上はデカイ。

 50m以上あるような怪物だった。

 ムササビ侮りがたし!


 これが結構素早い。手足の間の膜を広げて飛んでいるだけ、それでも敏捷に方向転換して一定の方向になんて飛ばない。

 たまに地上に降りて走るわ、また飛び上がるわを繰り返す。


 何がやり難いといってもドラゴンブレスだと付近の田畑は全焼、山も丸焼けになる。

 相手が空にいる時に焼き払って消し炭にしてしまいたいのですね。


 でも、キビキビと動いて狙いを付けさせない。山影に隠れてしまったりもする。

 こちらには一切攻撃しないで逃げるだけに徹している。

 疲れないのかなと思うけれど、元気に動き続けているから始末が悪いな。


 恐らく上位ドラゴンの殺気というか、溢れる魔力に圧迫されてしまって、ひたすら恐慌状態で逃げ回っているのだろう。

 疲れて動きが鈍るのを待つしかないのか。

 それとも埴輪に切り替えて包囲してしまうか。

 正直悩んでます。


 延々と2時間程逃げ回った後で、元いた湖にドボンと逃げ込んだ。

 面倒だから湖ごとゆで上げてやろうかと思ったら、何故か近くに子供がいる。

 何やってんだろう?


 湖に近寄るのを怖がる役人を脅かしてさっさと子供を退去させる。

 子供曰くは、あれは付近で信仰される荒吐という神様で殺さないで欲しいのだという。

 それを聞いた領主も何となく殺さないで欲しいというような顔をしている。

 でも、俺に来ているのは魔物退治という指令だしね。

 俺は魔物を退治する、その後に十兵衛さん率いる公儀衆でキリシタン残党を駆除する。

 それだけのことです。


 遠慮なく湖にドラゴンブレスかまして湖を煮えあがらせます。

 水蒸気濛々、お魚さんもいい塩梅に煮あがって浮かんで来ました。

 ムササビも上手く煮えたかな?


 ギャーという悲鳴をあげつつムササビは浮上。


 まだ元気が残っている。

 湖丸ごと水蒸気にして消滅させるくらいじゃないと駄目だったかな。農業用水だと無くなると困るだろうから遠慮したのが失敗か。


 ムササビが上陸して付近の山に登ろうとしたところで、ドラゴンは帰還させて25m埴輪を30体召喚します。

 行く手を阻んで、後ろも塞いで。次いで上方も包囲。


 ここから先は埴輪の雷撃と矛でタコ殴りを狙います。


 針の山で包まれているムササビは普通に矛の攻撃は通用せず。

 雷撃も足から地面に逃がすみたいだ。針で雷撃を受けると、そのまま足元に雷撃が消えて行く感じに見える。

 埴輪の火炎だと打撃力が足りない感じ。


 埴輪を諦めて、再度ドラゴン召喚。

 今度は氷雪系ドラゴンブレスで一気に凍らせてしまう。

 煮上がりかかって、逃げ足が落ちていたムササビはこれを避けられずに全身丸ごと氷に閉ざされる。


 正しくは山ひとつが丸ごと氷漬けなんですけれどね。

 田畑が丸焼けよりも良いでしょう。

 何年かかるか知らんけれど、山の草木もそのうち回復するだろうしさ。


 一端解氷させてムササビの死体を確保。

 俺の任務完了の証拠品として確保。

 後は公儀衆動員して隠れキリシタンの捕縛だね。

 そちらは俺の範疇外なので、同行していた十兵衛さんに後を託してしまいます。


 牛鬼の方も気にかかるから、俺はそっちへ移動したいのです。

 領主と子供が何か言いたげな顔してます。


「領主殿、窮地から救われてようございましたな。これで領民共も安心して暮らせましょうな?」

 嫌味でも言ってやろ。お前が解決せんのが悪いのよ。


「ははっ、二位様には誠にご厚情を賜り・・・」

 慌てて跪いて礼を言う。

 ふんっと、最初から身の程を知りなさいって。ガキにケツ拭きしてもらうようじゃダメダメじゃんか。


 なんか緊張感のない領主だ。生徒の2名の必死の顔が脳裏に浮かんだ。

 駄目領主でも領主は領主。

 生徒達は魔法師ならなんとか良い役職を得ないと家門の名折れと笑われる。なまじ魔法師だから妙に期待度が上がってしまってマズイ。魔法師でなければ、二人とも無理な期待などされずに平凡な暮らしで済むものを。

 魔法師なら簡単に出世して当たり前という風潮を作ったのは他ならぬ俺。

 何か馬鹿らしい気分になって来た。


 駄目領主でも周囲の家臣がしっかりしてれば領地経営は何とかなる。

 領地の無い貴族だと軍役に就いて戦功挙げるか、文官として重用されるかは実力次第。

 ご先祖の功績次第でこの地位が決まっている訳で、本人には責任無いけれど・・・。

 運だけで実力を貰った俺なんてほんと偶然だけだもの。


「出雲殿、この地の後始末は某にお任せ下され。

 御身は児雷也殿の援軍をせねばなりませぬ故」


 十兵衛さんが気を使ってくれた。チト暗い顔してたかな俺。

 もっとも両面作戦という面倒を押し付けたのはオヤジの但馬さんだけどね。


 勝った筈なのに一向に嬉しい気分のしないままに次ぎの戦場に行きましょうか。

 次行ってみよう、次だ!


 勝った後なのに勝鬨の一つも上げなかったなと気が付いたのは、児雷也と合流した後だった。


 来た先は人吉藩で領主は相良氏。

 先の戦では出兵して奮戦した家になる。2万石くらいだから周辺の大大名に挟まって普段は苦労していることだろう。

 反乱鎮圧に目一杯の軍勢を引き連れて出たら、留守中に九州に集まった浪人どもが徒党を組んで悪事を始めたらしい。


 迷惑千万な話だけれど、始末に悪いのは古い祠を壊してくれたこと。お宝の一つもあるかもしれないと散々に荒らしたらしい。


 それで出て来たのが牛の頭に蜘蛛の体。

 全長40m位はたっぷりありそうな巨体だ。

 それが何体もウロウロしている・・・。

 次回は巨大牛鬼vs大ガマ、大鷹、大猿。ついでに、vsドラゴンのオマケ付き。



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