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呪われた公爵令嬢は初恋の王子様に真逆のことしか言えない  作者: 柑橘眼鏡


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第27話 行方不明の伯爵令嬢

 セヴリードの言う通りにゆっくり寝たりしたものの、気持ちが晴れることは無く、シャルロットは溜息ばかりついていた。唯一明るい気持ちになれるのはセヴリードの横にいられる授業中だけ。

 このままではよくないと思い、シャルロットは聖女や祝福について改めて調べることにした。何か他のことに集中したかったのと、せっかく祈りの日に神殿に呼ばれているのだからしっかり勉強したいという気持ちがあった。

 まずは簡単に出来ることからと思い、図書室で聖女について書かれた本を借りることにした。聖女について書かれた本は膨大な数で、選ぶだけで日が暮れてしまいそうだった。悩む時間が勿体ないので、とりあえず一番古い本をシャルロットは選んだ。


 ボロボロの本を抱えながら寮へ向かう。その時だった――――フィンに声をかけられたのは。


「シャル様、グレトーナさんを見かけていませんか?」


 不安そうに茶色の瞳が揺れる。声は落ち着いているが冷静さを保とうとするあまり言葉の端がわずかに硬い。

 図書室からここに来るまでを振り返ってみるがグレトーナの姿に覚えはない。


「いいえ、見てないわ。……どうかしたの?」


「グレトーナさんと中庭の東屋でお茶の約束をしていたのですが、時間になっても来なくて……。お湯を貰いに食堂へ寄ってから来るとグレトーナさんから言われていたのですが、それにしては来るのが遅くて。今、探しているところなんです」


 グレトーナが約束を守らないだなんて珍しい。フィンの動揺の理由がよく分かる。

 シャルロットは自分も何か出来ることはないかという気持ちに駆り立てられた。


「食堂はもちろん見たのよね?」


「はい。職員の方に確認したら放課後にお湯を貰いにきた生徒はいないと言われてしまって。何かあったのではないかと心配に……」


「それは心配になるわね。もしかしたら体調が優れなくて寮で休んでいる可能性もあるわ。私、見てくるわね。フィンは約束していた場所に戻っているといいわ。もしかしたら事情があって遅れているだけかもしれないし」


「ありがとうございます、シャル様」


 フィンのお礼に微笑みで返すと早速シャルロットは寮へと向かった。

 令嬢としての許容範囲内の速さで足を動かしていくと、あっという間に寮へ辿り着く。道中、視界にグレトーナが入らないか注意しながら歩いたが、姿は見当たらなかった。

 寮に入り、グレトーナの部屋を目指す。

 扉の前に辿り着いたシャルロットは控えめにノックをしたが特に反応は返って来なかった。


「グレトーナ、いるかしら」


 声をかけてみるも、扉の向こうから物音はしなかった。恐らく不在だろう。

 本を持ったままでは邪魔なので、一度シャルロットは自室に寄ったが、すぐに退室をした。胸の奥が、はっきりした理由もないままざわめいていた。

 念のため、シャルロットは女子寮の管理人にも声をかけた。授業中に寮へ戻ってきた生徒は誰もいないとのことだった。放課後以降戻ってきている生徒は流石に把握していないようで、シャルロットは一通り女子寮を探し、途中で会う生徒に声をかけたりした。

 その中に第二クラスの生徒がいたので話を聞くと、グレトーナは普段と同じように授業を受けており、特段変わったところはなかったそうだ。丁度その生徒は授業終了後にグレトーナと少しだけ談笑をしたそうで、この後のお茶会が楽しみだとグレトーナは言っていたらしい。簡単なやり取りの後、グレトーナは教室を出て行ったとのことなので、少なくともその時点で待ち合わせの時間に遅れるようなことは起きていなかった。

 何かが起きている。そうシャルロットは思わずにはいられなかった。


 フィンが待っている中庭の東屋にシャルロットは辿り着く。残念ながら人影は一人しか確認できなかった。


「フィン、ダメだわ。女子寮にもいなかったの」


 シャルロットが女子寮で確認できた情報を共有していくと、フィンはどんどん顔を曇らせていった。


「考えたくありませんでしたが、グレトーナさんの身に何か起きていますね」


「可能性は非常に高いわ。早く見つけたいけれど、どこにいるのかしら。せめて目撃情報でもあれば……」


 放課後の生徒の行動は基本自由。色々な場所に生徒はいるが、それ故にどう探せばいいのか悩ましい。学園は建物こそそこまで多くはないが、庭や畑、魔石を安全に使用するための広場などがあり、とても広い。むやみやたらに探していては時間だけが過ぎてしまうだろう。

 何か案は無いかと二人で考え込むが、どちらも声に出すことは無かった。やはり情報が少なすぎた。

 どちらにしろ、ここにとどまっていても意味はない。せめて自分だけでも歩いて探そう。そう思ったシャルロットがフィンに声をかけようとすると、遠くから声が聞こえた。


「あっ、フィンくん! シャル様!」


 ロニカが小走りでこちらに近づいてくる。


「さっき変なの見ちゃったんです! グレトーナ様がマチアスのお兄ちゃんに横抱きされてて! 何か知ってます?」


 ロニカの口から出てきた言葉に理解が追いつかない。それはシャルロットだけでなくフィンも同じようで唖然としていた。


「ロニカさん、申し訳ないのですが、もう一度教えてくれませんか」


「うん、もちろん。グレトーナ様がね、マチアスのお兄ちゃんに横抱きされてたの! 一瞬のことでよく分からなかったんだけど、でも横抱きされていた女子生徒は間違いなくグレトーナ様だったし、抱えてたのはマチアスのお兄ちゃんのブリュノ様だったよ。すぐどこかに行っちゃったけど」


 グレトーナが横抱きにされ、ブリュノにどこかへ連れてかれた。

 思いもよらぬ展開だったが、ようやく事態を飲み込めた二人はお互いの顔を見合わせた。


「どの方向へ向かったか分かりますか」


 フィンの声が低く響いた。

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