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第8話 地下二階への招待

「ユニーク個体……?」


レンの小さな呟きに、ユイが怪訝そうな視線を向けた。


「何か言った?」


「……いえ、独り言です」


即座に誤魔化す。しかし、腰の召喚書は脈動を止めない。


ドクン。

ドクン。


まるで地下二階へ来いと呼びかけているようだった。


(高位カード反応……ユニーク個体……。なんなんだよ、これ)


意味は分からない。だが、召喚書がここまで強く反応するのは初めてだ。


その時、医療室の扉が勢いよく開いた。


「失礼します!」


黒い制服を着た男女が入ってくる。胸元には銀色の紋章。


――魔力監視局。


空気が一瞬で張り詰めた。


「対象は?」


短髪の男がレンを鋭く見据える。普通の局員とは明らかに違う圧。


ユイは小さくため息をついた。


「まだ安静中。事情聴取は後にして」


「上からの命令です」


「現場対応してたのは私なんだけど?」


二人の間に火花が散る。


レンは黙って様子を窺った。すると、女性局員が淡々と告げる。


「レッドオーガ討伐時、現場で異常魔力を観測。数値は一時340を記録」


やはり完全に把握されている。


「F級でこの数値は前例がありません」


「覚醒型能力の可能性が高いって話でしょ」


ユイが遮る。しかし短髪の男は冷たく言い放った。


「それを判断するのは特別監察班です」


その名を聞いた瞬間、部屋の空気がさらに重くなる。


(特別監察班……)


レンでも知っている。

危険能力者、違法覚醒者、制御不能の探索者――そういった存在を調査・拘束する部署。


つまり今、自分は“危険側”に分類されている。


男がレンに近づく。


「君、レッドオーガをどう倒した?」


「……覚えてません」


半分は本当だ。気づけば戦っていて、気づけば勝っていた。

もちろん、召喚書の存在は言えない。


「覚えていない?」


男の目が細くなる。


「極限状態でしたので」


ユイが代わりに答えた。


「精神負荷も大きい。無理に聞き出す必要はない」


数秒の沈黙。やがて男は舌打ち混じりに息を吐く。


「……分かりました。だが監視対象指定は継続します」


監視対象――その言葉が胃に重くのしかかる。


「なお、地下区域は現在閉鎖中。特別許可なしでの侵入は禁止だ」


その瞬間。


ドクン――!


召喚書がさらに強く脈動した。


《地下二階への到達を推奨》

《ユニーク個体の活動領域を確認》

《適合率上昇中》


レンは反射的に腰を押さえる。


(なんなんだよ……!)


だが同時に、不思議な感覚があった。


怖い。

なのに――行かなければならない気がする。


地下二階に“何か”がある。

召喚書は、最初からそれを知っていたかのように。


その時だった。


――ビィィィィ!!


施設全体に警報が鳴り響いた。局員たちの表情が一斉に変わる。


「何事だ!?」


直後、館内放送が流れた。


『緊急通達。地下ゲートにて異常反応を確認』

『封鎖区域内部で魔力暴走が発生』

『全探索者は待機してください』


ユイが舌打ちする。


「最悪……」


さらに放送は続く。


『地下二階封鎖ゲート、一部破損』

『未確認個体が移動中――』


その瞬間、召喚書に新たな文字が浮かんだ。


《ユニーク個体、接近中》


そして医療室の扉の向こうから――


ズン……。


重い足音が響いた。

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