第5話 覚醒
黒い召喚書が脈動し、レンの掌が焼けるように熱くなった。
《条件達成》
《第二召喚枠を解放します》
「第二召喚枠……?」
理解する間もなく、レッドオーガが鉄棍棒を振り上げる。
「グオォォォッ!!」
轟音と共に振り下ろされた一撃を、レンは横へ転がって回避した。床が砕け、石片が飛び散る。
「一発でも食らったら終わりだろ……!」
息を荒げながら召喚書を開く。空白だったページに、新たなカードが浮かび上がった。
《シャドウゴブリン》
《特性:奇襲》
「新しいカード……!」
レンは迷わず魔力を流し込む。
黒い魔法陣が展開され、影のような小柄なゴブリンが飛び出した。全身が揺らぎ、赤い目だけが不気味に光る。
「ギィッ!」
次の瞬間、シャドウゴブリンの姿が消えた。
「え?」
気づけばレッドオーガの背後に回り込んでいる。
ザシュッ!!
鋭い斬撃が走り、レッドオーガの肩から血が噴き出した。
「グオォッ!?」
初めて通った攻撃に、レンは目を見開く。
(いける……!)
だがレッドオーガも黙っていない。怒り狂ったように腕を振り回し、シャドウゴブリンを吹き飛ばした。
「ギャッ!」
影の身体が壁へ叩きつけられ、崩れ落ちる。
「くそっ!」
レンは駆け出した。共有された敏捷強化のおかげで、身体が軽い。
《シャドウゴブリン》
《急所感知を共有》
その瞬間、レッドオーガの身体に赤い光点が浮かび上がった。
(首……!)
レンは迷わず跳ぶ。
「うおおおっ!!」
短剣を全力で突き刺した。
ズブッ!!
「グオォォォォッ!!」
巨体がよろめき、血飛沫が舞う。
《解析進行中》
《カード化成功率:21%》
(上がった……!)
だがレッドオーガはまだ倒れない。血走った目で睨みつけ、再び鉄棍棒を構える。
「まだ来るのかよ……!」
魔力も体力も限界に近い。それでもレンは召喚書を握り締めた。
その時、倒れていたシャドウゴブリンがゆっくり立ち上がる。
「ギィ……!」
「……やれるか?」
小さな召喚獣は短剣を構えた。
レッドオーガが咆哮し、一直線に突っ込んでくる。
レンとシャドウゴブリンは同時に地面を蹴った。
黒い召喚書が、これまでで最も強く輝いていた。
「グオォォォォッ!!」
レッドオーガが咆哮し、鉄棍棒を振り下ろす。レンは紙一重で横へ跳び、直後に床が砕け散った。
だが――見える。
《急所感知を共有中》
赤い光点が、レッドオーガの首元で脈動していた。
「シャドウ!」
「ギィッ!!」
影の召喚獣が霧のように消え、次の瞬間には背後へ。
ザシュッ!
短剣が脚を裂く。
「グオォッ!?」
巨体がわずかによろめく。
(今だ――!)
レンは地を蹴った。
「うおおおっ!!」
レッドオーガが横薙ぎに鉄棍棒を振るう。レンは滑り込むように懐へ入り、風圧が頬を裂いた。
そして――。
短剣を、赤い光点へ突き刺す。
ズドッ!!
「グ、ォ……」
巨体が止まった。時間が凍りついたような静寂。
直後――。
「グオォォォォォォォッ!!」
断末魔がダンジョンを揺らす。レッドオーガは膝をつき、そのまま崩れ落ちた。
「はぁ……っ、はぁ……」
レンも膝をつく。腕が震え、呼吸が荒い。
《レッドオーガの討伐を確認》
《条件達成》
《カード化を開始します》
黒い粒子がレッドオーガを包み、召喚書へ吸い込まれていく。
《異界カード【レッドオーガ】を取得しました》
《高位カードを確認》
《召喚書の性能が上昇します》
ドクン――。
召喚書が脈動する。
《カード容量:3→5》
《同時召喚数:1→2》
さらに。
《身体能力補正を獲得》
《筋力微上昇》
《耐久微上昇》
「これが……覚醒……?」
その時――。




