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第9話 創世神の真実

巨大な黄金の門の向こう。


そこはレンが想像していた場所とは、まったく違っていた。


創世神が住む領域。

世界を生み出す神の玉座。

もっと荘厳で、もっと神々しい場所だと思っていた。


だが――。


広がっていたのは、静かな庭園だった。


青い空。

どこまでも続く白い草原。

透き通る湖。

風に揺れる花々。


争いも破壊も存在しない、穏やかな世界。

まるで理想郷。


ユイが思わず呟く。


「綺麗……」


ヴァルゼルでさえ目を細めた。


「これが創世領域か」


その中心に、創世神は立っていた。


長い銀髪。

黄金の瞳。

人間離れした美しさを持ちながらも、その表情は不思議なほど穏やかだった。


レンは剣を握る。

警戒は解かない。


目の前にいるのは世界を創った存在。

そしてレオンを絶望へ追い込んだ存在でもある。


創世神は静かに言った。


「そんなに警戒しなくてもいい。今のお前達を消すつもりはない」


ユイが小声でぼそり。


「今のお前達って何よ……」


レンは一歩前へ出る。


「聞きたいことがある」


「レオンのことだな」


即答だった。


レンの表情が僅かに動く。


創世神は空を見上げた。

その横顔は、どこか寂しげだった。


「長い時間が経った。だがあいつはまだ私を憎んでいるか」


レンは答える。


「当然だ。何千もの世界を救ったのに、全部滅んだ。お前が壊したからだ」


静寂が落ちる。

ユイもヴァルゼルも黙っていた。


創世神は否定しない。

数秒後、小さく頷いた。


「事実だ」


レンは驚く。

言い訳をすると思っていた。

だが創世神は違った。


「確かに私は世界を消した。数え切れないほど。レオンが救った世界もな」


ユイが怒りを露わにする。


「じゃあ何で! 何でそんなことをしたの!?」


創世神は振り返る。

黄金の瞳が静かに揺れた。


そして――。


「守るためだ」


レン達は言葉を失う。


「守る?」


創世神は頷く。


「お前達は真実を知らない」


その瞬間、空間が変化した。


創世領域の景色が消え、代わりに無数の光景が現れる。


星々。

宇宙。

世界。


そして――黒い闇。


ネメシスだった。


だがレン達が知るネメシスとは違う。

巨大。圧倒的。比較にならない。


一つの宇宙より大きな存在。

その姿だけで世界が崩壊していく。


創世神が説明する。


「これは遥か昔のネメシス。全盛期の姿だ」


ユイの顔が青ざめる。


「こんなの……勝てるわけない……」


創世神も否定しない。


「実際に勝てなかった」


レンは息を呑む。

創世神ほどの存在が負けた――。


創世神は続ける。


「ネメシスは終焉そのものだ。存在するだけで世界を壊す。放置すれば全てが消える」


映像の中で、無数の宇宙が飲み込まれていく。

何兆、何京、数え切れない生命、文明、歴史。

全てが闇に消えていった。


創世神は静かに言う。


「だから私は対抗策を作った」


映像が変わる。

新しい世界。

また新しい世界。

さらに新しい世界。


創世神が次々と世界を生み出していく。


レンは気付く。


「まさか……」


創世神が頷く。


「世界そのものが封印だった」


衝撃が走る。


ユイも目を見開いた。


「封印?」


「そうだ。無数の世界を重ねることでネメシスを封じた。世界が増えるほど封印は強くなる。逆に封印が弱くなればネメシスは復活する」


レンは理解し始める。

そして同時に嫌な予感もした。


「じゃあ……」


創世神は静かに続ける。


「封印が弱くなった世界は、消さなければならない」


沈黙。


答えは明白だった。


レオンが救った世界。

創世神が壊した世界。


その正体。

全て――ネメシスを封じるための犠牲。


ユイが震える声で言う。


「そんなの……そんなの間違ってる」


創世神は目を閉じる。


「分かっている。だから私は憎まれている」


その声には後悔があった。

神らしくない感情。


レンは創世神を見る。

レオンの記憶で見た存在とは違う。

冷酷なだけの神ではない。

苦しんでいる。

ずっと、誰にも理解されず、何万年も。


レンは尋ねた。


「レオンをどう思っている」


創世神は少し驚いた顔をし、そして――初めて微笑んだ。


「誇りに思っている」


レン達は固まる。


創世神は続ける。


「あいつだけだった。私に真正面から怒ったのは。私を殺そうとしたのも。世界を守ろうとしたのも」


黄金の瞳が遠くを見る。


「だから期待していた。いつか真実へ辿り着くと」


あまりにもすれ違っていた。


その瞬間――。


創世領域全体が激しく揺れた。


轟音。

空が割れる。

警告が鳴り響く。


【超高次元反応接近】

【終焉神権能確認】

【侵入者出現】


創世神の表情が変わる。

初めてだった。余裕が消えた。


レンが振り返る。


空間が裂けている。

巨大な亀裂。

そこから黒い闇が溢れ出していた。


創世神が低く呟く。


「早すぎる……」


闇の中から足音が響く。


一歩。

また一歩。


そして現れた。


黒い翼。

赤い瞳。

銀髪の少女――エリシア。


だが様子がおかしい。

身体の半分が闇に侵食されている。

まるで何かに乗っ取られているようだった。


エリシアは苦しそうに顔を歪める。


「逃げて……」


かすれた声。


だが次の瞬間、赤い瞳が完全な漆黒へ変わる。


空気が凍りつく。

世界が震える。


創世神が剣を出現させる。


レンも本能で理解した。

今ここにいるのはエリシアではない。


闇の中から声が響く。


『見つけたぞ』


その声は忘れられない。


終焉神ネメシス。


『創世神。長い鬼ごっこも終わりだ』


創世神の瞳が細くなる。


「来ると思っていた」


ネメシスは笑う。

その笑いだけで空間が崩壊を始める。


『なら始めよう。最後の戦いを』


終焉神。

創世神。

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