表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/40

第25話「人類最後の希望」

世界が静止したように見えた。


――いや、違う。


止まったように“感じるほど”の圧倒的な存在が現れたのだ。


砕けかけた黄金の結界。

絶望に沈む世界。

その中心で、一筋の光が天へと昇る。


黄金と黒炎。

相反する二つの力が螺旋を描き、空を貫いた。


アザト=ゼルの第二撃が放たれる寸前――。


『……何だ』


無数の瞳が空を見上げた。


あの怪物が、初めて警戒を見せた。


次の瞬間。


ドォォォォォォォン!!


光柱が爆発し、砕けた結界の破片が黄金の粒子となって舞い散る。


そして――その中心から、一人の男が現れた。


「レン……?」


ユイが震える声で呟く。

白峰も言葉を失った。


誰もが知っている姿。

だが同時に、誰も知らない姿でもあった。


銀と黒が混ざり合う髪。

右目は黄金、左目は漆黒。

身体を覆う竜鎧には神々の文字が刻まれ、背中には黒炎と黄金の六枚翼。


人でも神でも竜でもない。

その全てを超越した存在。


――レン・クロガネ。


「レンなのか……?」


白峰の呟きに、レンはゆっくり振り返り、微笑んだ。


「心配かけたな」


その声は確かにレンだった。


だが次の瞬間、世界中の探索者たちが息を呑む。


レンの身体から漏れ出す魔力。


海より深く、空より広い。

まるで“世界そのもの”が意志を持って立っているかのような存在感。


『なるほど』


アザト=ゼルが口を開く。


『神核を継承したか』


レンは空へ視線を向けた。


「ああ」


静かな返答。

だがその一言だけで空間が震える。


神王アルディウスの力。

黒竜王バハムートの力。


二つが完全に融合した結果だった。


『面白い。実に面白い』


アザト=ゼルの巨大な口が歪む。


『三千年前にも現れなかった存在だ。神と竜を同時に宿す者』


レンは拳を握る。


力が溢れていた。

今なら分かる。

今まで見えていなかったものが全て見える。


アザト=ゼルの魔力の流れ。

空間構造。

次元の歪み。

未来の分岐。


その全てが理解できる。


だが――それでも勝てるとは思わなかった。


「強すぎるな……」


苦笑が漏れる。


神核を得ても分かる。

アザト=ゼルは異常だ。

存在そのものが災厄であり、宇宙の終焉。


だからこそ。


レンは笑った。


「でも――やるしかない」


その瞬間、レンの姿が消えた。


ドンッ!!


衝撃音が世界を揺らす。


誰も見えなかった。

白峰ですら。

S級探索者たちですら。


次に見えた時、レンはアザト=ゼルの眼前にいた。


「神竜王拳」


拳を放つ。

黄金と黒炎が混ざり合い、太陽を超えるエネルギーが迸る。


轟ッ!!


アザト=ゼルの顔面が吹き飛んだ。


世界中が静まり返る。


今まで無傷だった怪物が――初めて傷ついた。


『ほう』


アザト=ゼルが後退する。

吹き飛んだ顔面が再生する。


だが確かにダメージは入った。


『素晴らしい。やはり貴様は面白い』


次の瞬間、空間が崩壊した。


何兆もの黒い槍。

何兆もの呪い。

何兆もの終焉。


世界そのものを消し飛ばす攻撃が降り注ぐ。


だがレンは動かなかった。


「神竜結界」


パァァァァァァン!!


黄金と黒炎の障壁が広がり、全ての攻撃が消滅する。


防御ではない。

分解。

存在そのものを書き換えたのだ。


『……』


アザト=ゼルが沈黙した。


初めてだった。

奴が完全に無言になったのは。


レンは理解する。


今なら戦える。

今なら届く。

今なら――。


『だが、まだ足りぬ』


アザト=ゼルの声が響いた瞬間、世界が暗転した。


ゾクリ。


レンの本能が警鐘を鳴らす。

圧倒的危険。


アザト=ゼルの背後に巨大な扉が現れた。


黒い扉。

果てのない闇。

見るだけで精神が削られる。


『見せてやろう』


扉が開く。


その向こうを見て、レンは凍り付いた。


「……何だよ」


そこには――


滅ぼされた世界。

消滅した文明。

死んだ神々。

砕けた宇宙。


何万。

何億。

何兆。


数え切れないほどの“世界の残骸”。


アザト=ゼルは、それら全てを喰らってきた。


『私は終焉。生と死の外側に存在するもの。神も竜も関係ない。全ては終わる』


闇が広がる。

世界中が震える。


人類は理解した。


これは敵ではない。

災害でもない。


――終わりそのもの。


概念の具現。


ユイが拳を握る。


「負けないで……」


小さな声。

だが確かに届いた。


レンは振り返らない。

ただ前を見る。


仲間がいる。

守りたい世界がある。


だから負けられない。


「バハムート」


『何だ』


「最後まで付き合えよ」


一瞬の沈黙。

そして黒竜王は笑った。


『当然だ』


黒炎が噴き上がる。

神核の黄金が重なる。


二つの力が完全に共鳴する。


レンの背後に巨大な竜の幻影。

その上空には神王の紋章。


神と竜。

二つの頂点が、一人の人間へ力を託す。


アザト=ゼルが笑う。


『来い』


レンも笑う。


「ああ」


その瞬間、二人の姿が消えた。


激突。


世界が白く染まる。


神々すら到達できなかった戦い。


人類最後の希望と、宇宙最古の終焉。


その決戦が――ついに始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ