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02話 二度目の生と邂逅

死ぬというのは、こういう感覚なのだろうか。


すべてが暗転し、まるで終わりのない静かな墨の海に沈んでいくような感覚。アスファルトの冷たさも、頭の傷の痛みも、もう感じない。自分の体の重みさえもが蒸発して消えてしまったようだ。ただ……虚無だけがある。


(クソッ、俺、本当に死んだのか? 早すぎるだろ。今日の夕方のこと、親父にもお袋にもまだ謝ってないのに……)


泣こうとした。後悔で押しつぶされそうなこの胸の痛みを吐き出したかった。暴れて、叫んで、この18年間いかに自分が出来損ないの息子だったか、その悔しさをたった一滴の涙でもいいから示したかった。


だが、できなかった。涙も、声も、嗚咽するための筋肉さえも動かない。目に見えない壁のような、あるいは真空のような何かが、俺の感情を内側に閉じ込めている。俺は、自分自身の純粋な意識の中に閉じ込められていた。


(なんで泣けないんだ? 死ぬ時でさえ、俺は自分の感情さえ出せない意気地なしのままなのか?)


意識は、この虚無の中を漂う自分自身に集中していく。親父の工房の木のざらついた質感、母さんが淹れる朝のコーヒーの香り、遅刻しそうになって不機関そうにしている妹の顔。そのすべてが、いつも大事に抱えていた「怠惰」なんかよりも、ずっと、ずっと大切に思えた。


(もし、もう一度だけチャンスがあるなら。たった一度でいい……俺は、別の「天川平田」になる。起こされても文句は言わない。仕事からも逃げない。誓うよ……)


その時、静寂の中で引き寄せられるような感覚を覚えた。魂がどこかへ吸い込まれていく。静寂がひび割れ、耳鳴りのような低い音が次第に大きくなっていく。


(なんだ? まだ終わりじゃないのか?)


その引きは強くなり、まるで巨大な磁石が俺の魂の欠片を一つ残らず奪い去ろうとしているようだった。凄まじい圧力がかかり、狭い穴の中に無理やり押し込められるような感覚に変わる。


(待て、どこへ連れて行くんだ? 審判の時か?)


突然、絶対的な闇が弾けた。遠くに小さな光の点が見えたかと思うと、それは一瞬で広がり、残りの闇をすべて飲み込んだ。視界が真っ白に染まる。あまりに清浄で、あまりに純粋な白。眼球が焼けるような――今の俺に肉体的な目があるかはわからないが――そんな錯覚を覚えるほどの眩しさだ。


(眩しすぎる……何も見えない!)


白一色の世界の中で、唸るような音は未知の旋律へと変わった。数千もの声が同時に囁いているような、だが一つとして理解できない不思議な響き。そして、魂の器となった俺の体に、再び「重み」が戻ってくるのを感じた。


(ここは天国か? それとも、病院なのか?)


指先を動かそうとすると、冷たくて……有機的な感触が伝わってきた。


(あの誓いは……まだ覚えている。もし本当に生き返れるなら、二度と無駄にはしない)


光が引き、目の前の色彩が形を成していく。漂ってきたのは薬の匂いでも木屑の匂いでもない。濡れた土、新鮮な草、そして日本では見たこともないような甘い花の香りだった。


(ここは、どこなんだ?)


だが、その期待はすぐに打ち砕かれた。光が消えた後に広がっていたのは、どこまでも続く「無」の空間だった。鳥の声も風の音もない。耳が痛くなるほどの静寂。右を見ても左を見ても、ただ清潔で空虚な白があるだけだ。


(なんだよこれ……なんで何もないんだ? 俺、ここで永遠に一人きりなのか?)


凄まじい恐怖が這い上がり、事故の痛みよりも強く胸を締め付ける。こんな終わりのない場所で独りきりなんて、どんな拷問よりも残酷だ。俺は叫ぼうとした。誰でもいいから呼びたかった。母さん、親父、誰か。


(助けてくれ! 誰か……助けて! 一人は嫌だ!)


頭の中で声が激しく震えるが、この白い世界では喉から音一つ漏れない。永遠の静寂に溺れていくような感覚。俺は膝をつき、絶望に打ちひしがれた。


しかし、発狂しそうになったその時、静寂を切り裂く声が響いた。


「怖がることはありません、天川平田」


声は背後からした。威厳がありながらも、ハープの旋律のように優雅で落ち着いた、透き通るような女性の声。俺は弾かれたように振り向いた。そこには、空虚な世界に彩りを与えるかのような、一人の女性が立っていた。


(誰だ……? あんたが神様なのか?)


女性は測りかねるような眼差しで俺を見つめていた。それは慈愛に満ちた、まるで俺が18年間抱えてきた後悔と罪悪感のすべてを見透かしているような目だった。彼女は裁こうとしているのではなく、この虚無の中で震える俺の魂を哀れんでいるように見えた。


「天川平田」彼女は再び口を開いた。「もし、あなたに新しい機会を与えたとしたら……あなたは本当に、すべての後悔を償えますか? 以前とは違う人生を歩むと言えますか?」


心臓が跳ね上がった。これこそが、あの路上で俺が最後に願ったことだ。俺は確信を持って、持てる限りの力で叫ぼうとした。


(ああ! 約束する! もう荷物息子になんかならない! 必死で働いて、今まで蔑ろにしてきたこと全部やり直すんだ! お願いだ、チャンスをくれ!)


全力を振り絞って答えたつもりだったが、女性は沈黙したままだった。彼女はただ少し首を傾げ、痛いくらいの静寂の中で俺を待っている。その表情は優雅だが、どこか空虚な眼差しは、俺の心の中の叫びが全く届いていないかのようだった。


「もう一度問います、後悔に満ちた魂よ」彼女は先ほどと同じ調子で言った。「その機会が目の前にあるのなら、あなたは怠惰を捨て、過去の過ちを贖う覚悟がありますか?」


(なんで……なんで聞こえないんだ!? 答えただろ! やるって! 本当にやるんだってば!)


パニックになった。喉がロックされたように固まっているのを無理やりこじ開けようと、唇を必死に動かす。声が出ないというだけで、このチャンスを逃したくはなかった。この白の世界で、俺は女神を前に叫ぼうとしている小さな虫のような気分だった。


(頼む、聞いてくれ……天川平田の名にかけて誓う……俺は変わるんだ!)


「答えなさい!」


突然、彼女の声が轟いた。先ほどまでの優雅さは消え、空間を揺るがすような怒声。俺は転びそうになるほど圧倒された。彼女の顔には、はっきりとした苛立ちが浮かんでいた。


「返事もできないほど、あなたは怠惰なのですか!?」


俺は呆然とし、口を大きく開けたが、漏れるのは虚しい空気だけだった。俺は必死に自分の喉を指差し、全力で訴えていることをジェスチャーで伝えた。


女性はしばらく沈黙した後、少し決まり悪そうに自分の額を叩いた。


「ああ……忘れていました。狭間の空間で、あなたの声の封印を解いていませんでしたね」

彼女が指をパチンと鳴らすと、首筋に熱い感覚が走った。


「今度こそ、話しなさい」命令するように彼女が言った。


「やります! 本当に全部、やり直したいんです!」


思わず叫んでいた。自分の耳に届いた声は少し枯れていたが、感情が爆発していた。


女性は満足げに頷いた。「よろしい。その機会を与えましょう。ただし、一つ覚えておきなさい。あなたは元の世界には戻れません。私が送るのは新しい世界。あなたがよく読んでいた小説のような、魔法が現実となる世界です」


俺は絶句した。新しい世界? 魔法? 小説? その言葉は巨大なハンマーのように俺を打ちのめした。それはつまり、もう親父やお袋、妹には二度と会えないということだ。あの埃っぽい木工所に、直接謝りに行くこともできない。このチャンスの代償は、あまりにも大きかった。


混乱する頭の中で、ふと馬鹿げた疑問が浮かんだ。


(ちょっと待て……この女神だか何だか知らないけど、小説なんて知ってるのか? こんな場所に本屋とかネットがあるのか?)


「ちょっと! もちろん知っていますよ!」

彼女は眉を吊り上げ、鋭い視線で俺を睨みつけた。


「次元の管理者の知識を舐めないでください! あなたの考えていることなんてすべてお見通しです。心の中で失礼なことを呟くのはやめなさい!」


俺は飛び上がり、慌てて口を閉じた。


(思考を読んでる!? これ、マジでヤバいな……)


「まだ聞こえていますよ、天川平田!」


彼女は腰に手を当てて再び叫んだ。


「さあ、呆けている暇はありません。マナと奇跡に満ちたあの世界で、贖罪を始める準備ができたなら言いなさい。もう後戻りはできませんよ」

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