16-02
「地球人はキリ星人の血を引いております」
「お、おお……。そうだろう。博士、よくぞ真実を報告してくれた!」
ジランダ議長がゴツい顔をほころばせながら、質問を続ける。
「では博士、宇宙生物保護法において、彼らは駆除するに値するな?」
「それはなりません」
「な……なんと?」
ハトが豆鉄砲を喰らったように、目をぱちぱちさせるジランダ議長。
わたしは大議事堂の星々の代表たちに向かって声を張り上げた。
「地球に降り立ったキリ星人は、地球の環境になじめず、そのほとんどが死滅しています。
かろうじて生き残ったキリ星人は、在来生物である原始の地球人と合成し、新たな地球人となることで、なんとか命をつなぐことができたのです。彼らの半分は地球の生物そのものであり、まったくの外来生物とは認められません!」
すると、ズメイ参謀があわてたように席を立ち、わたしを見おろして叫んだ。
「博士、以前にも言っただろう? 貴族院はきみとは別に地球人を調査しているのだ!
銀河連合の同志のみなさま、聞いてください。キリ星人は地球へ逃げたとき、この母船をも半壊させた、あの攻撃船プロメテスを使って、すでに文明を築き始めていた原始の地球人を滅ぼしたのです!
さらに生き残った地球人のDNAにキリ星人のDNAを組み合わるという、忌まわしくも禁じられた技術を使い、地球の生態系を狂わせたのです! これが宇宙生物保護法に反していないと、誰が言えましょうか?」
「それは銀河連合に追いつめられ、生きるために犯した罪です!」
わたしの叫びに、大議事堂がざわめいた。
「博士、嘘はいかんぞ。キリ星人は自らの炎に焼かれて滅んだ。神罰を受けたのだ!」
ジランダ議長が大きなこぶしをぎりぎりと握りしめながら、わたしを睨みつけた。
わたしはその目を、まっすぐに見つめ返して言った。
「ではなぜ、こんな銀河の果てにキリ星人の子孫がいるのですか? 銀河の果ての未開の星に隠れるようにしてまで、彼らは生きたいと願ったのです! 仲間のほとんどが死んでいくなか、生きたいと願って地球人となったのです! そんな彼らを銀河連合はまだ追いつめるのですか! いらないと! 必要ないと! 彼らを殺すのですか!!」
「きさまぁ、侮辱は許さんぞ! 銀河連合の歴史を冒涜……」
そこまで言って、ジランダ議長は気がついた。
さきほどまでざわめいていた大議事堂は、水を打ったように静まり返っていた。千を越える銀河連合の代表たちが、みな顔をふせ、その場にひざまついている。
ただひとり顔を上げている、わたしの視線のさきを見たとき、ジランダ議長は腰を抜かすようにその場にくずれ、ひれふした。
議長のすぐとなりに、その女性は立っていた。
子どものような幼い顔にサファイヤのようなブルーの瞳を輝かせ、背中には七色に透きとおる大きな蝶の羽根をゆらりとゆらしていた。白いドレスの胸元には、渦巻きの紋章が刺繍されている。
絶対に姿を見せないはずの、女王がそこにいたのだ。




