11-04
顔に『メロン』の皮のような切り傷がある大男。
その背後には、アユムの肩をつかんで睨みをきかせる、『パイナップル』の葉のような髪型をした細身の男。
『メロン』と『パイナップル』の組み合わせ。
どこかで聞いた記憶が……。
「……おじさん、本当は誰ですか?」
すると突然、大男は大声で笑いだした。
「ハッハッハ! 子どもだと思って油断したなぁ。バレたら仕方ねえ、おれたちは、本当はただの借金取りさ。ここの父親がえらい借金残したままトンズラしちまってな。かわりに母親に返済させようと思ってきたら、すでに母親の姿もねえ。
仕方なく、近所に聞き込みして回ったら、なんとこいつら、不法滞在の外国人一家だって言うじゃねえか! 当局に捕まって強制送還されるまえに、さっさとおれたちが探し出して、貸した金をキッチリ回収しないとな。それがおれたちのルール。わかるだろう?」
「こいつは人質だぜ! 返して欲しけりゃ、さっさとあの娘を連れて来い!」
細身の男が、アユムの肩をつかみながら叫ぶ。
ふたりの男で、出口はすっかりふさがれてしまった。
わたしは覚悟を決めると、ゆっくりと深呼吸をして身がまえた。
「パワーオン」
小脇に抱えた『全宇宙生物図鑑』が、腕のなかで宙に浮く。
「行けっ!」
図鑑は、わたしの腕から飛び出し、大男のわきをすり抜け、細身の男の顔面に命中した。
細身の男が、うめきながら床に転がる。
「アユム逃げろ! いつものあの場所で待て!」
アユムは小さくうなずき、走っていった。
その様子を見ていた大男が、わたしに向き直り、にやりと笑う。
「その、いつもの場所ってのを、おじさんにも教えろよ。そこにあの娘もいるんだろう?」
「借金はトモミに関係ないだろ! トモミはまだ子どもなんだ、どうしろって言うんだ!」
大男は、わたしの胸ぐらをつかんで、天井に頭がぶつかるほど高く持ち上げた。
「力づくで母親が行きそうな場所を吐かせる。もし知らなかったとしても……」
大男が不気味に笑った。
「子どもだろうが容赦はしねえ。母親のかわりに、あの娘に金を稼いでもらうまでだ!」
わたしはその言葉を聞いて、自分の心がすっと冷たくなるのを感じた。
妙なほど冷静に、目の前の生物を観察していた。
トモミとアユム以外に初めて接触した地球人。
これが地球人の正体か――。
わたしが命がけで救おうとしていた、生物か――。
「擬態スーツ……オフ」
わたしの顔を見る大男の顔が、みるみるうちに青ざめていく。
わたしの顔は中心からきりきりとひび割れ、中から青白い光を発していた。
「我らアルーア星人は、キリ星人との銀河大戦で、最後まで一歩も引かずに戦った戦士の一族だ。あんまりわたしを怒らせるな……」
擬態スーツが左右に割れて、床に落ちる。
大男はわたしから手を離すと、その場にへたり込んで後ずさりした。
うしろで見ていた細身の男は、声も出さずに逃げていた。
擬態スーツのなかに隠されていた三本目の腕を、へたり込んだ大男にのばす。
そ向けた顔を強引にこちらに向かせて、わたしは言った。
「これ以上トモミにかかわるな。おまえらを駆除するのは、わたしたちには簡単なことだ」
ごぽごぽと口から泡を吹いて失神する大男。
その姿を見て、わたしは我に返った。
おどしとはいえ、つまらないことを言ってしまった。結局、最後は力にたよった解決方法しか思いつかない。所詮は理解し合えぬ者と、怒りにまかせて排除しようとしてしまう。
ならば貴族院の老人たちと、わたしは何も変わらないではないか。
「ああリリル、すべての生物の共存など……」
ふとよぎった思いをふり払うように、わたしは頭を強くふると、再び擬態スーツを着込んで、緑が丘へ走った。




