表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第10話 御前会議

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/61

10-06

 

 

 親衛隊長の号令と同時に、緊張からとかれた会議室が大きなため息に包まれた。

 みな深くイスにもたれかかるなか、ジランダ議長だけが大きな体をゆさぶり、わたしに詰め寄ってくる。



「きさまが地球人と親しくしているのは報告済みだ。だが、私情(しじょう)をはさむな! これは銀河全体の命運がかかっているのだ!」



 わたしの眉間(みけん)に指を突きつけながらそう怒鳴ると、どすどすと大きな足音で会議室から出ていった。ほかの貴族院たちも議長の態度にならうように、きびしい視線をわたしに向けながら退室していく。



 もし地球人の体にキリ星人のDNAが見つかったら、彼らは間違いなく地球人の駆除(くじょ)を女王に進言(しんげん)するだろう。そうなれば銀河連合議会の裁決(さいけつ)を待つまでもなく、地球人への攻撃は決まったも同然だ。

 なぜなら、銀河連合議会は民主的な議会とはいえ、女王や貴族院の考えに強く影響されているからだ。



 誰もいなくなった会議室で、わたしはひとり天井を見つめ、自分の心に問いかけた。

 


 地球人が外来生物と認定されたら、わたしはどうする?

 生物博士として、駆除することに賛成するのか?

 トモミやアユムを、見捨てるのか……?


 そうだ。


 キリル王子の言った通り。

 これはわたし自身の問題なのだ。



 銀河連合がどうするかではなく、わたしがまず、どうするかの問題なのだ。





         *






 宇宙船の発着ドックにもどると、細長い足をかさかさと動かしながら隊員が走ってきた。



「博士、アラクネ星の仲間に地球のクモのことを話したんです。地球に我々の祖先が住んでいると知って、みんな大興奮でしたよ!」



 隊員は細長い手で、発着ドッグをぐるりと指さした。

 いままで気がつかなかったが、発着ドックにはアラクネ星人がたくさんいた。みんな作業をしながらも、ちらちらと、こちらを盗み見ている。



「指令を受けました。博士をまた地球に送ります。さあ、乗ってください」



 隊員はわたしをつまみ上げて、小型宇宙船の中へ放り込んだ。そして自分も乗り込み、コクピットのスクリーンに向かいながら管制室とやり取りを始めた。


 その背中に、わたしはそっと話しかけた。



「隊員……」


「隊員はやめてください。いまは仲間からクモと呼ばれているんです」


「ではクモ。発着ドックには、アラクネ星人がたくさん働いているんだね」


「我らアラクネ星人は、宇宙一のメカニックです! この細長い手足を駆使(くし)して、どんな宇宙船でも修理できますよ!」


 クモは細長い手足を、ゆらゆらと得意げに動かしてみせた。



「では、一応聞くんだが……。クモ、きみもメカニックの経験が?」


 クモが体を上下させた。アラクネ星人がうなづくときのポーズだ。



 わたしの(ひたい)から一筋、冷たい汗が流れた。

 進むべき道は見えていた。

 クモのこたえが、わたしの背中を押してくれた。



 やはりわたしは、どんな生物だろうと絶滅させられるのを見逃すわけにはいかないのだ。




 手続きを終えたクモが小型宇宙船を発進させる。

 母船から音もなく飛び出した小型宇宙船は、暗い宇宙空間のなか、ひときわ青く輝く地球へ、吸い込まれるように降下していった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ