10-01 御前会議
地球に降下するときには、あれほどおしゃべりだった隊員が、ひと言もしゃべることなく黙々と宇宙船を操縦している。不用意な発言をしないよう、貴族院から忠告されているのだろう。
わたしはあえて、話しかけてみた。
「隊員、貴族院はわたしが外来生物を発見したと思っているのかね?」
「……」
「発見したと思っているのだろうね。だから迎えが来たのだ」
「……」
「発見したよ。『全宇宙生物図鑑』に捕らえてある。パワーオン!」
わたしの声に反応して『全宇宙生物図鑑』が宙に浮いた。
「や、やめてください! わたしは博士の調査結果を、見たり聞いたりするなと、命令を受けているのです!」
隊員は黒くて丸い体をくるりと縦に回転させ、八つの赤い目をこちらに向けて叫んだ。
「いや、ぜひきみに見てもらいたいんだ。オープン!」
図鑑がぱたりと開く。
「アラクネ星人の祖先のページへ!」
その言葉に、隊員が反応した。
わたしは宙に浮いた図鑑を、ふわふわと隊員の目の前に移動させた。
「わかるかね? きみの古い古い祖先。きみらの起源だ。地球ではクモと呼ばれ、このように原始の姿のままに生きているんだ」
食い入るように見つめる隊員の八つの目から、ぽろぽろと涙が流れ落ちる。
「これがぼくたちのご先祖さま……。子どものころに教科書のイラストで見たのと同じです。しかもこれは、生きているように見えます」
「もちろん生きている。地球のいたるところに、きみたちアラクネ星人の祖先が数百種に枝わかれして存在すると、わたしは推測している。
きみも学んで知っていると思うが、三億年前、惑星アラクネに彗星が衝突した。そのときに飛び散った地表の岩石が、遠く離れたこの地球にまで飛来したのだろう。きみら祖先のDNAを乗せたままね……」
隊員はいとおしそうに、クモのページに頬ずりをしている。
「生命とは歴史だ。どんな生物も紆余曲折しながら、いまを生きているんだ……。地球人も同じなんだよ。わたしは銀河連合に地球人を攻撃させることなど、絶対に許さない」
*
白銀の月が正面のスクリーンを埋めつくす。
月の裏側にまわると、深い暗闇のなかに銀河連合の母船があった。
真珠色に輝くピラミッド型の母船は、月の四半分はあろうかというほど巨大で、銀河連合の船のなかでも最大をほこる。




