10-02
「こちら地球生物調査隊。着艦許可を願います」
小型宇宙船が母船の底面へ吸い込まれていく。そのままスライド式のゲートをくぐり、無数の宇宙船が停泊している、広大な発着ドッグの一角に着陸した。
あらためて見まわすと、まわりの宇宙船のほとんどが攻撃船であることに気がつき、わたしは軽くめまいを覚えた。銀河連合は初めから、地球人への攻撃を準備していたのだ。
「博士、貴族院の方々がお待ちです。最上階の会議室へどうぞ」
小型宇宙船のタラップを降りるやいなや、かけつけた船員に声をかけられた。
「最上階の会議室だって? 女王陛下がいらしているのか」
「はい。さきほど到着されました。お急ぎを」
案内されるまま、普段は貴族院しか使用が許可されていない、中央エレベータに乗り込む。エレベータは音もなく数千のフロアを通過し、最上階へ到着した。
扉が開いた瞬間、わたしは息をのんだ。
そこは空に満面の星が輝く、緑豊かな庭園だった。
四方を大きなガラスにかこまれた四角錐の広大な空間は、ピラミッド型母船の最上部にあたる。
「こちらです」
エレベータの出口で迎えてくれた、真っ赤な制服に身を包んだ女性が、たいまつ型のトーチを掲げながら案内をしてくれた。
彼女たちは女王親衛隊という、女王の身辺を警護するものたちだ。
親衛隊員のあとについて、石畳の敷かれた並木道を歩いていくと、やがて星明かりの下にたたずむ、小さな古城が見えてきた。
別邸とはいえ、銀河連合の女王の城にしては奥ゆかしい、ごくごく小さな石造りの古城。
堀にかけられた橋を渡り、城門をくぐる。
目の前にひろがる噴水広場の中央には、蝶の羽根をたたえた天使像がライトアップされ、天に向かって掲げた手のひらから水が噴き出していた。
光を受け宝石のようにきらきらと輝く水玉ひとつひとつが、満面の星空に溶け込んでいくさまは、まるで銀河の星々が、この天使の手のひらから産まれ出ているようだ。
城の入り口に着くと、わたしを案内した親衛隊員と、城の扉の前で警備している親衛隊員が、互いに片手を額にかざして敬礼をした。すると観音開きの扉が、ぎりぎりと音をたてながら左右に開いた。
「どうぞ中へ。つき当たりの会議室で、貴族院の方々がお待ちです」
親衛隊にうながされるまま、わたしはひとり城の中へ入った。
しんと静まり返った城内に、からん、からん……と、ゲタの音だけが響きわたる。
エントランスホールの両脇には、上階へとつづく階段があった。
女王の間は、この階段の先にあるのだろうか……。
そう思って、ふと吹き抜けから上階を見上げたとき、白い人影がさっと柱のかげに隠れるのが見えた。きらきらとした光の粒が、人影のあったところに漂っている。
監視されているのか? 親衛隊の制服には見えなかったが……。
首を傾げながらも、わたしはつき当たりにあるドアの前に立った。貴族院しか入ることが許されていない、女王の御前で会議をするときにだけ使われる部屋。
「オラキルです」わたしの名前だ。
「入れ」いかつい声が返ってきた。




