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緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第8話 龍の玉

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08-05

 

 

「キリ星人と合成? 新たな……地球人だって?」


 次々と飛び出す衝撃的な言葉に、わたしの頭が混乱する。



「そうです。キリ星の科学技術を駆使(くし)し、地球人のDNA(遺伝子)と我らキリ星人のDNAを組み合わせました。彼らは地球人でありながらキリ星人の血を引いている。そうすることで、我らキリ星人も、彼らの一部として生き残ることができたのです!」



 銀河連合では、大昔にDNA操作を禁忌(きんき)の技術として封じている。ましてや別々の星の生物をかけ合わせるなど正気(しょうき)沙汰(さた)とは思えない。


 ステネコの話は(みょう)に具体的だが、どうにも突拍子(とっぴょうし)がなさすぎる。



「ステネコ、きみの話を信じないわけじゃないが、五千年も昔の話だ。きみが伝え聞いた歴史も真実かどうか……」


「本当です!」


  間髪(かんぱつ)()れずに、ステネコが叫んだ。



「わたしが証人です。わたしこそがキリ星最後の王子、キリル・ラー・キリ! 肉体を焼かれ、魂だけの存在になりながらも、こうして地球の生物に憑依(ひょうい)しながら、生き続けているのです」


「まさか! きみは五千年も生き続けていると言うのか?」


「すべては、我がキリ星人の血を受け継ぐ地球人を見守るため! そしてキリ星人の魂が眠る、この神殿を守るため!」


 ステネコは前足を地につけ、深々と頭を下げた。



「もうおわかりでしょう博士? 絶対平和主義をうたう銀河連合は、銀河的に有名な生物博士のあなたと、宇宙生物保護法を利用して、()(きら)うキリ星人の血を引く地球人を、地球の外来生物として根絶(ねだ)やしにしようと企んでいるのです! 

 おねがいです博士、銀河連合に、地球人はこの星の在来(ざいらい)生物(せいぶつ)であると報告してください! あなたがそう言えば、銀河連合も地球人には手が出せない!」



「わたしだってそうしたい。だがステネコ……。いえ、キリル王子。残念ですが、地球人のDNAを調査すれば、いつかはわかってしまうはずです」


「ならば博士、宇宙船を修理できるメカニックを、こっそり連れて来てください。わたしはこのプロメテスを修理し、できるだけ多くの地球人を乗せて逃げます。この銀河を離れ、別の銀河に新たな故郷を求めて旅に出ます」



 キリル王子の言った通りなら、わたしはつねに銀河連合に見張られていることになる。そんな状況で、こっそりメカニックを連れて来ることなど、どう考えても不可能だ。


 返答に困っているわたしに、キリル王子は、すくっと二本足で立ちあがり、するどい視線を向けた。



「すべては博士にかかっている。もしできないと言うなら、銀河連合の手にかかるまえに、わたしがこの手で地球人を絶滅させる!

 博士、プロメテスは飛ぶことはできないが、攻撃能力は失われていないのです。ほんの数百年前、僧侶(そうりょ)に憑依したわたしの忠告(ちゅうこく)を無視して、この神殿の上に城を建てた者がいます。わたしはその一族を一瞬にして、地下から城ごと焼き払ったことがあるのです」


 とつぜん(あた)りが暗闇に包まれた。

 闇の中にキリル王子の言葉だけがこだまする。


 「この街くらいなら、この神殿にいながら簡単に焼きつくせる。あなたの友人であるトモミもアユムも、一瞬にして灰になるでしょう!」


「……キリル王子、わたしを脅す気か!」


 暗闇のなか、わたしは何処(どこ)にいるかもわからないキリル王子に向かって叫んだ。



「すべては博士、あなたの判断にかかっているのです……」



 キリル王子の言葉が終わると同時に、わたしの体はふわりと軽くなった。

 まるで宙に浮かんでいるような感覚のあと、わたしは地下の泉のほとりに立っていた。




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