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わたしの夢は冒険士 〜冒険者がエリート職だったなんて〜  作者: 蒼空ふわり
すくすく魔力増量中

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21. 夏のひととき


 それから、次の神殿教室の日。いつもの通り、ハルトと並んで歩く。もうすっかり日差しも強くなってきたから、お気に入りの帽子を被ってるんだ。


 夏に入る前に、お父さんに買ってもらったんだけどね。この前、マリーちゃんに見せに行ったら、ピンク色のリボンを出してきてくれてね。それを帽子に着けてくれたんだよ。そしたら、買ったときは普通の帽子だったのに、すっごく可愛い帽子に変身したの。


 前世の記憶でいうと、麦わら帽子みたいな感じで、草みたいな素材で編んであるんだけどね。これを被ると、顔や首に陰ができるし、風も通してくれるんだよね。

 夏の短い間しか被れないから、いっぱいお出かけしたいんだけど、あんまり暑いと出たくなくなるし、難しいところだね。


「あれっ、レティちゃんの帽子、可愛くなってるね!」

「でしょでしょ。マリーちゃんがリボンを着けてくれたんだよ」

「そうなんだ。リボンが着いてるだけで、全然違う帽子みたいになるんだねー」

「ねーすごいよねー」


 被ってるだけでも満足だったけど、ハルトが気づいてくれたから、すっごく嬉しくなった。気分も上がって、スキップしちゃいそうなくらい。


「そういえばね。この前集まったときに、ライトをどれくらい出せたか分かるといいよねって話してたじゃない?」

「うん。……あっ、たしかレティちゃん、何か思いついてたよね?」

「そう! お父さんに相談して作ってもらったの。それで、試作品として3つ作ってくれたから、ハルトとアレクにも渡そうと思ってるんだよね」

「えっ、もうできたの?」

「うん。わたしはイメージを伝えただけだから、あんまり分かってないんだけど、造りが簡単だからすぐ作れたんだって」

「そうなんだ。おじさん、すごいね!……でも、僕たちももらっちゃっていいの?」

「もちろん! なんかね、ほかのことにも使えるかもしれないから、試したいこともあったみたい。だから気にしなくても大丈夫だよ。それに、魔道具じゃないから、材料費もそんなにかからないんだって」

「それならよかった。どんなものができたの?」

「ふふっ。それは見てのお楽しみ!」

「えー気になるなぁ」


 それはそうだよね。わたしでも絶対気になるもん。でも、どんなものって説明するより、見せたほうが早いもんね。


「それでね。教室のみんなの分はないから、今度アレクも一緒に、うちで集まるのはどうかなと思って」

「僕はいいよ。そしたら、あとでアレクにも聞いてみようよ」

「うん。ちょっと遠いかもしれないけど、アレクなら来てくれそうだしね」

「無理そうなら広場で渡すとして……どっちにしても、広場に迎えに行ったほうがいいよね」

「そうだね。なんだか、2人が家に来てくれるのも楽しみになってきた!」

「ははっ。レティちゃんらしいや」


 そんなことを話してるうちに、神殿教室に着いた。前は、アデルやエラ、テオの3人が先に来てたんだけど、今はわたしたちが一番乗りなんだよね。

 それで気づいたんだけど、みんなが使う石板は、早く来た人が棚から出してたみたい。だから今は、わたしとハルトでテーブルに並べてるんだよ。こういうのも、お姉さんぽくていいよね。ふふん。


 その日の終わり。裏庭の洗い場で、石板を拭いた布を洗っていると、アレクが裏庭の木に登っているのが見えた。

 あとで聞いたら、神殿の洗濯物が風で飛んでいって、木に引っかかってたんだって。するする降りてたんだけど、木に登れるなんてすごいよね。


 洗濯が終わって、ハルトとアレクに集まってもらう。アレクに、うちに来れるか聞いてみなきゃね。

 ライトを出せる時間が分かる道具ができたこと、それを渡したいってことも伝えると、アレクもびっくりしたみたい。


「もうできたのか?」

「うん。それでね、ちょっと遠いかもしれないんだけど、よかったらうちに遊びに来ない?」

「いいけど、その道具もらってもいいのか?」

「もちろん。お父さんの試作品だから、遠慮しなくていいよ」

「そっか。いつもありがとな」

「こちらこそ。そしたら明日にする?」

「僕は大丈夫だよ」

「俺も」

「よし、決まり! じゃあ、いつも通りに広場で待ち合わせね」

「わかった。よろしく」

「レティちゃん、よろしくね」


 明日は、はじめてアレクが来てくれるんだもん。ハルトも一緒だし、今から楽しみだな。

 そうだ! せっかく2人が来てくれるんだから、この前作ったナッツのキャラメリゼも出そうっと。多めに作って、お父さんに収納かばんに入れてもらっておいたんだよね。喜んでくれるといいな。


 そして翌日。ハルトと2人で広場に行って、帰りは3人で。いつもと違って、アレクがいるからか、なんだかそわそわしちゃう。心なしか、ハルトもいつもよりニコニコしてる気がする。


 うちに着いたら、2人には座ってもらって、お茶とお菓子を準備する。ハルトは慣れた感じだけど、アレクはきょろきょろしてて、ちょっと面白くて、なんだか不思議な感じ。


「おまたせ」

「ありがとう! あ、これこの前のお菓子だ」

「あのときに、多めに作っておいたの。マリーちゃんと一緒に作ったんだけど、なかなか美味しかったよね」

「うん。甘くてカリってしてて、美味しかったの覚えてるよ」

「あぁ、俺も覚えてる。レティ、ありがとう」

「へへっ。遠慮しないで、たくさん食べてね」


 2人がお茶を飲んでる間に、棚に隠しておいた砂時計を持ってくる。テーブルの上に置くと、2人の目がこちらに向いた。それぞれに渡しながら、使い方を説明する。


「話してた道具が、これなんだけどね。“砂時計” っていうの。これをひっくり返すとね、こうして砂が落ちていくんだけど、それでだいたいの時間が計れるんだよ」


 わたしの真似をして、2人も砂時計をひっくり返している。


「へぇー、これだけで時間が分かるなんて簡単だね。すごいや」

「そうでしょ。だいたい、時計の数字ひとつ分の時間なんだけど、目で見えるから分かりやすくない?」

「そうだね。それに、なんだか砂が落ちるところを見ちゃうから、集中できそう」

「そうなの! それにね、もっと長くできるようになったら、また砂時計をひっくり返せばいいんだよ」

「なるほどね。この前は、アレクが数字ひとつ分くらいで、僕とレティちゃんが少し短めだったもんね。長く出せるようになっても、これなら使いやすいね」

「その通り!……アレクはどう?」

「これ1つで時間の長さが分かるなんて、すごく便利だと思う。レティはすごいな」

「へへっ。実際に作ったのは、お父さんだけどね」

「それでも、レティちゃんの思いつきがなかったら、こうして作れなかったんだし、やっぱりすごいよ」

「2人ともありがとう」


 2人に褒められたから、ちょっと照れちゃうね。そんなことを思っていたら、アレクが困ったような顔をしているのが目に入った。


「アレクどうしたの?」

「いや、この道具もだけど、魔法も教えてもらったからさ。俺、もらってばっかりだなと思って」

「そうかな? わたしは、アレクも一緒にやってくれて心強いから、ありがとうって思ってるよ」

「うんうん、僕もだよ。それに僕だって、レティちゃんがいなかったら魔法は使えなかったからね。アレクと同じだよ」

「そうなんだけど……俺も2人に何かしたい」


 アレクは、そんなふうに思ってたんだね。たしかに、わたしがアレクだったら、もらってばっかりって思っちゃうかも。


――あ、そういえば!


「この前、アレクって木に登ってたじゃない? わたしも登ってみたいんだけど、教えてくれる?」

「あー! それ僕も思ってたんだよね。僕も教えてほしいな」

「……そんなことでいいのか?」

「そんなことじゃないよ。だって登れないんだもん!」

「そうそう。登り方も分からないしね」

「わかった。次のときに、広場で教える」

「ありがとう! わたし冒険者になりたいから、体を動かしたり、あとは体力もつけたいんだよね」

「……冒険者?」

「そう、冒険者。魔物を倒して、お金をもらうの。それで世界を旅したいんだよね」


 冒険者って知らないのかな? そういえば、わたしの周りには冒険者っていないし、教室でも親が冒険者の子っていないよね。


「そんな職業があるのか。魔物は、兵士でも倒すことがあるって、父さんが言ってたけど」

「へぇーそれは知らなかったな」

「少しなら兵士だけでも倒せるけど、一度にたくさん来たら、騎士が魔法を使ったりして倒すらしいんだ。だから、俺は騎士を目指してるんだ」

「そうなんだ。騎士ってかっこいいね」


 ハルトも、わたしの横で大きく頷いている。思いがけず、アレクが騎士になりたい理由を聞いたけど、そう思うアレクもかっこいいね。

 わたしも、魔法を使って冒険できるように、もっと頑張らなくっちゃ!


「じゃあ、次に広場で集まるときは、木登りの練習だね!」

「レティが登るんなら、低い木を探さないとな」

「2人に比べると、背が低いもんね。わたしでも登れる木があるといいんだけどなぁ」


 そう、ハルトもわたしより背が高いんだよね。アレクはもっと高いんだけど。


「俺も支えるし、ハルトもいるから大丈夫」

「うん、ありがとう。そういえば、アレクって背が高いけど、いつお誕生日なの?」

「俺? 今月だけど、もう終わったんだ」

「えぇっ。……あ、おめでとう! お菓子、これだけしかないけど、ちょっとだけお誕生日会っぽいよね?」

「ははっ、そうだね。アレク、お誕生日おめでとう!」

「あ、ありがとな」


 珍しく、アレクが照れている。一緒にいる時間が長くなってきたからか、いろんな顔を見られるようになってきたよね。嬉しいな。


 お茶を淹れなおして、みんなでお菓子を頬張っていると、真ん中の鐘が聞こえてきた。


「もうそろそろ帰らないと、お昼ごはんに間に合わなくなりそうだね」

「そうだね。ここからだと、アレクは遠いもんね」

「あぁ」

「それじゃあ、僕が広場まで送っていくよ」

「帰り道なら、何となく覚えたから大丈夫。ハルト、ありがとな」

「そう? それじゃ、僕の家も通り道だから、一緒に出ようか」

「そうだな。レティも、道具とお菓子、ありがとう」

「どういたしまして。また遊びに来てね!」

「あぁ」


 そうして、2人は帰って行って、部屋に1人きりになった。いつもの日常に戻っただけなんだけど、さっきまでワイワイ楽しかったから、ちょっと寂しくなっちゃった。しょうがないんだけどね。

 ……カップとお皿を洗ってこようっと。


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