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わたしの夢は冒険士 〜冒険者がエリート職だったなんて〜  作者: 蒼空ふわり
すくすく魔力増量中

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16/26

16. 角のお花屋さん


 次の日、約束通りにハルトが遊びに来た。お父さんは作業場にいるから、わたしが出迎える。


「レティちゃん、来たよー! おはよう」

「おはよう! いらっしゃーい」


 テーブルまで案内して、横に並んで座った。テーブルの上には、薄い黄色の紙と、普通の紙を並べてある。

 昨日持っていってた折り鶴を元に戻しておいたから、それを使って説明していく。何枚も使うともったいないからね。


「これ、昨日の鳥を広げたものだから、ちょっとぐちゃぐちゃだけど気にしないでね。じゃあ、わたしが折ってみるね。まずは、こっちとこっちを揃えてから半分に折って――」


 順番に説明しながら、一度折って見せると、ハルトは感心したように、じっくり見ている。


「ただ折ってるだけなのに、鳥になるなんて面白いね!」

「でしょ。折る順番とか、どう折るかっていうのが大事なんだけどね」

「うんうん。そしたら、僕も折ってみたい。一応、紙を持ってきてみたんだけど、これで作れる?」


 ハルトが持ってきたのは、薄くない普通の厚さの紙だった。でも、練習するだけなら問題なさそう。


「うん。それを練習用にして、本番は黄色の紙で折ればいいと思うよ」

「なるほど。たしかに、今見ただけじゃよく分からなかったもんね。うん、練習する」

「そしたら、まずはきっちりとした四角の紙にするんだけど、こことここを合わせて斜めに折ったら、こっちの余分なところを切るんだよ」


 普通の紙は長方形だから、まずは正方形にする。折り鶴も、最初は斜めに折るからね。これでもいいよね。


「できたね。そしたら、わたしが折るのを真似して、ハルトも折ってみてね」

「うん、やってみる」


 わたしが1回折ったらハルトも折って、説明しながらまた折って……そうやって繰り返しながら、ハルトの折り鶴も完成した。ちょっと不格好だけど、ちゃんと鶴に見える。


「わぁ、僕も作れたよ!」

「うんうん。ちゃんと折れたね! 折り方を覚えたら、簡単に折れるようになるよ」

「そうだね。もっと上手に折れるようになりたいし、練習してみる」


 そうして、ハルトは折った鶴を広げては、何度も折り直している。ハルトってば、すっごく一生懸命に黙々と折ってるんだよね。だから、わたしは横で見ているだけになっちゃった。

 何度も何度も折る練習をして、ちょっと自信がついたのか、今度は黄色の紙で折ってみるみたい。きれいに仕上げたいから、ものすごく丁寧に折っている。


「できた!」

「やったね!」


 わたしが、パチパチ手を叩いていると、ハルトも嬉しそうに笑う。ちょっと緊張してたのか、ふぅっと息を吐いている。


「今作ってみて、ちょっと思ったんだけどね。こうやって紙を折って何かの形を作るなんて、そんなの考えたこともなかったけど、これならほかの形も作れそうだよね」

「うん、作れると思う!」

「僕、いろいろ試してみようかな」

「何かできたら、わたしにも見せてね!」

「もちろん!」


 そのあとは、念のために、羽を広げるところも教えてあげた。ここで広げずに、家でやったほうがいいからね。

 今日の目的は達成できたから、お茶を入れて、ちょっと休憩する。お父さんが、少しだけどお菓子を置いておいてくれたから、それも一緒に食べながらね。


「そういえば、昨日のお別れ会のあとに、エラにお礼を言いに行ってたんだけどね。エラも、もうそろそろ教室をやめるんだって」

「そっか。エラも長く通ってるみたいだもんね」

「うん。寂しくなるけど、しょうがないよね。エラにも鳥を作ろうと思うんだけど、何色がいいんだろう?」

「そうだなぁ。アデルの色はどうやって決めたの?」

「アデルは髪色に合わせて、オレンジ色のお花を使ったんだよ。染めたら、薄い黄色になっちゃったけどね。でも、アデルは目の色が黄色だから、それもいいかなと思って、そのまま使ったの」

「それなら、エラは黒い髪に緑の目だから……緑かな? 黒の鳥より緑のほうが、エラの雰囲気にも合ってるしね」

「そうだね。そしたら、緑の草で染められるかな」

「色は合ってそうだよね」

「でも、どんな草を使えばいいんだろう? 今回はエラに相談せずに作りたいんだけどな」

「うーん。それなら、角のお花屋さんで聞いてみるとか?」

「角のお花屋さん? わたし行ったことないかも」

「僕もだけど、とりあえず行ってみて、聞けなかったらまた考えればいいんじゃない?」

「そうだね。行ってみないと分からないもんね」

「じゃあ、今から行ってみる?」

「うん、行こー!」


 エラがいつやめるかは分からないけど、準備はしておいたほうがいいもんね。お父さんに、お花屋さんに行ってくるって声をかけたら出発だ。


「角のお花屋さんって、いつも前は通ってるけど、入ったことないから、ちょっと緊張するね」

「普段はお花を買うことなんてないもんね。でも、今後も紙の鳥を作るんなら、お花を買うこともあるかもしれないよね」

「たしかに。今回のアデルの分は、エラがお花をくれたから、お金がかからなかったけど、次からは自分で用意しないといけないもんね」

「そうだね。できれば、庭に生えてるのが使えればいいんだけど」

「お花っていくらくらいするんだろう? あんまり高いと買えないよね」

「そうだね。お花を買うなら、お手伝いを頑張って、お小遣いをもらうしかないね」

「うん、紙も買わないといけないしね。今回はお父さんに買ってもらったけど、毎回買ってもらうのもよくない気がするもん」

「じゃあさ、僕と一緒に作るっていうのはどう? そしたら、2人で半分こできるよ」

「いいの?」

「もちろん。レティちゃんがアデルにあげてるのを見て、僕もみんなに何かあげたいって思ったんだ。それに、作るのも楽しかったしね」

「そっか。うん、それなら2人で作ろう! 染めるのも面白かったんだよ」

「それは楽しみだね」


 やっぱりハルトと一緒だと、なんだか楽しいことが増えるね。ひとりでも楽しかったけど、2人ならもっと楽しいもん。今度からの折り鶴作りも楽しみだな。


 そんなことを話していたら、あっという間にお花屋さんに着いた。扉を開けてお店に入ると、いろんな色のお花がたくさん置いてあった。

 わたしがお花に目を奪われていると、カウンターにいた女の人が声をかけてきた。たぶん、お父さんと同じくらいの歳な気がする。


「いらっしゃい」

「こんにちは」


 挨拶をして、ハルトと一緒に固まってしまう。勢いでここまで来ちゃったけど、2人とも何て言うか考えてなかったもんね。すると、お店の人がまた声をかけてきて、それにハルトが答えてくれた。


「どんなお花を買いに来たの?」

「えっと、お花を買いに来たんじゃなくて、聞きたいことがあって……」

「そうなの? どんなことかしら」

「実は僕たち、友だちのプレゼント用に、草やお花で紙を染めようと思ってて。でも、どんなのを使えばいいのか分からなかったから、聞きに来たんです。お花を買うお客さんじゃなくて、すみません」

「あら、いいのよ。お友だちのためだなんて、優しい子たちね。それじゃあ、何色に染めたいの?」


 今度は、わたしが答える。


「今回は緑色なんですけど、今後は別の色にするかもしれなくて。できれば、お庭に生えてるものが使えないかなと思ってるんですけど……」

「そうねぇ。毒性のあるものじゃなければ、大丈夫なんだけど、そう言っても分からないわよね」


 それは見ただけじゃ、分からないよね。どうしたらいいんだろう。ハルトを見てみたけど、ハルトも分からなさそう。


「そうだわ。売れ残って捨てないといけないものって、わりとあるの。それならあげられるわよ。毎日必ず出るってわけではないから、お花は選べないけどね。それに、渡せるものがあるかは、来てもらってからになるんだけど……それでよければ、どう?」

「えっ、いいんですか? わたしたちは嬉しいんですけど……その、そんなにお金がないので」

「ふふっ。捨てるものだからいいのよ。でも、そうね。そのうちに、お花を買いに来てくれると嬉しいわ」

「あ、ありがとうございます。自分のお金ができたら、絶対に買いに来ますね!」

「よろしくね。それじゃあ、必要なときがあれば、2と真ん中の鐘くらいまでに来てね。それより後だと、捨てちゃうから」

「分かりました。ありがとうございます!」

「ありがとうございます。僕も、自分のお金ができたら、買いに来ます!」

「わたしはアメリって言うの。2人は?」

「レティです」

「ハルトです」

「レティとハルトね。お友だちも喜んでくれるといいわね」


 アメリさんは、にこやかに笑って言ってくれた。エラも捨てるからってお花をくれたけど、ここでももらえるなんて思いもしなかったな。お金がないから、本当にありがたいよね。


 わたしたちは、もう一度お礼を言ってお店を出た。ちょっとだけ歩いたら、立ち止まって2人で顔を見合わせる。


「ちょっと聞きに来たつもりだったのに、お花をもらえることになっちゃったね」

「ね、本当にびっくりだよね」

「きっと、ハルトが上手に説明してくれたおかげだね」

「そんなことないよ。アメリさんが親切だったおかげだよ」

「もちろんそうだけど、わたし1人じゃ上手く説明できなかったと思うもん。ありがとう、ハルト」

「ふふっ。レティちゃん、固まってたもんね」

「えー! ハルトだって最初は固まってたし」


 その場面を思い出して、2人とも思わず吹き出した。大人の人と話すのなんて慣れてないから、仕方ないもんね。


「もうそろそろ、お昼ごはんだね。ハルトはこのまま帰る?」

「うん、そうする。今日は、紙の鳥を一緒に作ってくれて、ありがとう。これから、みんなの分を作るのも楽しみになったし」

「ね! どんな色にするかとか、染めたりするのも楽しみだよね」


 そんな話をしながら、来た道を戻っていく。うちの前に着いたら、ハルトとお別れだ。


「じゃあね。今日はお花屋さんに付き合ってくれて、ありがとね」

「こちらこそ。また次の神殿教室でね」


 家に入ると、お父さんがお昼ごはんの用意をしていた。


「おかえり。お花屋に行ってくるって言ってたけど、お花を買いに行ったのかい?」

「ううん。草とかお花で紙を染める相談に行ってきたの」

「え? お花屋さんって知り合いじゃなかったよね」

「うん。でもね、ちゃんと相談に乗ってくれたよ。しかも、必要なときがあれば、お店で売れ残ったものをあげるって言ってくれたんだ」

「えぇっ。それはすごいね。でもいいのかな」

「わたしもそう思って聞いたらね。捨てるものだからいいんだって。だから、自分のお金ができたら、お花を買いに行くって約束したの」

「そうなのか。それじゃあ今度、お母さんのお墓参りに行くときに、そこでお花を買って行こうか」

「うん! ありがとう、お父さん」


 お母さんが亡くなったのは春だったから、もうすぐお墓参りなんだよね。お墓はちょっと離れたところにあるから、馬車に乗って行くんだよ。

 晴れてたら、お弁当を持って行って、お母さんのお墓の近くで食べるんだけど、今年は晴れるかな? ――晴れてくれるといいな。


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