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新・ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
第3節-転
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その35「ANTI-LOLI⑧交換条件」

 男は言う。

「こうしよう。君たちを近くの人間居住地まで、このヘリコプターで連れて行ってあげようじゃないか」

「……友好的になるのなら、せめてトキワさんの拘束をといてからにしてくれませんか?」

 櫻宮薫子が冷ややかに言った。もちろん彼女も、この男のことを一切信用していないようだった。

「おっと、これは失礼。ペタバイト娘々(ニャンニャン)、彼を放してやりたまえ」

「はいニャー」

 不意に手が緩む。俺はすぐ距離を取り、彼らとクオンの間に立つ。

 男は不敵な笑みを絶やさない。ペタバイト娘々(ニャンニャン)と呼ばれた少女型のアンドロイドもだ。自分たちの圧倒的な有利を確信しているのだ。

「……そろいもそろって、信用してないって目だね」

「当然だろ……『乗ってきたパイロットたちがいなかった理由』、察しがついていないとでも?」

「ははは、誤解があるようだ」

 男は笑う。

「あの連中は君たち人類にとっても害をなす存在だった。ANTI-LOLI、だったけ、いつまでたっても『幼女』の存在を受け入れない時代錯誤な連中……まああの程度の連中に『幼女』をどうこうできるはずもないが……まあ死ぬよね、人間は、ミサイルで。これでも助けてあげたつもりなんだが」

「冗談はやめて。あなたたちがわざわざおびき寄せたんでしょ?」

 クオンが言った。

「それも病院に! 『助けてあげた』だなんて、自作自演もいいとこだよ!」

「『助けてあげた』というのは人類に対しての話さ……もちろん僕だって個人個人を救うつもりがないでもないが……物事には『重み付け』というものがある。優先順位さ。わかるだろう? ANTI-LOLIがここでいなくなることは、これからの人類とアンドロイドにとって大変有益だったんだ。彼らが求めた世界の滅亡は……僕の未来像とは決して相容れない。世界は決して滅びに向かっているわけではない。人類が生み出した『アンドロイド』という種族が、これからの新たな世界を生きて行く……そのときにミサイルで荒廃した地球を渡されても、ねえ」

 とにかく、と男は言う。

「僕が伝えたいのは、ANTI-LOLI殲滅という目的を達成した以上、君たちを危険に巻き込む理由はなくなったということなのさ。僕を完全に信用しろとは言わないけれど、助ける意思が本当だということはわかってほしいな」

 俺は慎重に言葉を返した。

「……わかった。お前が俺たちを助けようとしてくれていることは……信用する。俺たち3人をヘリコプターにーー」

「待った」

 やはり来たかと思い、男をにらむ。

「ただで乗せるとは言っていないよ。助けるのは人間のほうだけだ。アンドロイドのお嬢さんは僕たちと一緒に来てもらう……」

 俺はかぶりを振った。拳を握りしめた。

「そう言うとは思ったが、答えはもう決まっているんだよ。NOだ」

 俺は言った。だがどう逃げる? この状況は男が現れた時から予想できていた。だが切り抜ける方法が、まったく頭に浮かんでくれない。せめて何か注意がひければいいのだが。

「わかっていないなあ。僕が交渉しているのは、そちらのお嬢さんだよ……」

「私っ?!」

「クオンちゃん……これは交換条件なんだ。2人を助けるために……君に協力してもらいたい。僕は君がどういう風に造られたのか……非常に興味があってね」

「そんなの交換条件じゃありません! ただの脅しじゃないですか!」

 薫子が叫んだ。俺も怒りに歯が震えた。

「良心的な条件だと思うけどね。3人とも死ぬか、2人は生き残るかだ。迷うまでもないだろう?」

「そ、そんなの……」

 クオンが震えはじめた。クオンの肩を寄せる。こいつは何のつもりなんだ。クオンを破壊するためだけなら、こんなことをする必要はないはずだ。俺たちを無視してクオンを狙えばそれでおしまいだ。何か……狙いが別にある?

「……そんな回りくどいことをする必要は不要ですわ、お父様」

 後ろから不意に声がした。横っ腹に衝撃が走り、俺は吹き飛ばされた。

「トキワくん! やだっ、離してよトゥインクルさん!」

 見ると、クオンがトゥインクルにはがいじめにされていた。

「トゥインクル! 崩壊に巻き込まれたんじゃなかったのか?!」

「崩壊プロセス? ああ、それならば私が止めたんですわ。やり方を教わりましてね」

「教わった……?」

「LO-426、彼女の記憶データをまるごといただいたんですわ。ダウンロードに少しだけ手間取りましたけれど」

 そんなことができたのか?! 

「と、いうわけで今の私は1階の異空間も自在……クオンさんのデータも大量……あんなデータやこんなデータも……むふふ……でなくて、もう情報収集は十分ですわよね? 壊してしまって、かまわないのではないですの?」

 ……違和感があった。トゥインクルの言動。

 俺の脳裏に、トゥインクルの言葉が蘇る。あの時は耳を傾けなかったトゥインクルの言葉。


「私は私ですわ」


「人間、あなたもそこをどいてください。"そのアンドロイドと運命をともに"したくないのであれば……」


 LO-426と……運命を共にする……。


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