その32「ANTI-LOLI⑤トゥインクルの仕事」
「しっかりしろ……死ぬなっ!」
銃声が響いていた。何発も。男達が何かを叫んでいるのが聞こえていた。だから俺は声をはりあげざるを得なかった。
「……あまり大声を出すべきではない。君まで撃たれるぞ……」
LO-426が言った。
「……厳しい場所を射たれた。どうやら連中は、アンドロイドの破壊に慣れているらしいな……」
「いいから逃げるぞ……ここから」
「患者を置いて行けと?」
「そうだ!」
なりふり構ってはいられなかった。
「このまま戦えば、確実に殺されるんだろう?!」
「……いや」
LO-426は小さくかぶりを振った。
「殺されることはない、機能が止まるだけだ。私はアンドーー」
「それがむかつくんだよ! 自分は生きていないだとか、代わりはいくらでもいるだとか、仕事が優先だとか! そんなの、悲しすぎるだろ!」
「……変わったな……君も……君がそんなことを言うとは……」
LO-426が俺の額に手を当てた。冷たい、機械の腕だった。
「覚えているか? 君が目覚めた最初の日に、私はこうして君の額に手を伸ばした。君はそのとき私から逃げたな、『人間じゃない』と言って」
LO-426が微笑んだ。それがあまりにも優しいものだから、俺は嗚咽が止まらなくなりつつあった。
「変わったなぁ……」
俺はLO-426の手を握りしめた。
「確かにあんたは機械だ。役目を持って生まれて来たのかもしれない。でも代わりなんていないだろ?! 俺の前にいてくれたのはあんたじゃないか……あんただって! そうだあんただって! 幼女が好きなんだろう?! 幼女が好きなLO-426が、あんた以外にいるのかよ?!」
「ああ……そうだな、それは確かに……私だけかも……」
じっとLO-426が俺を見た。透明なレンズは、しかしどうしても、俺を見ているようには思えなかった。俺は答えを待った。彼女がまたいつものように、幼女幼女と妄言を吐くのを待った。
しかしもういつまでも、彼女が答えることはなかった。
「……もう、終わっていますわ」
「……言うな」
「LO-426は、もう……」
「わかりきったことを、わざわざ聞きたくない!!」
霊安室に、3人が来ていた。トゥインクルに、クオン、櫻宮薫子。静かだった。俺は顔を上げた。かぶりを振った。
「トゥインクル……その血……」
俺は受け止められなかった。だが静かだった。先ほどまでの男達の喧騒がなかった。
「……トゥインクルさんは、私たちを守ってくれたんです……連中、クオンさんすら撃とうとしてましたから……」
トゥインクルが、ゆっくりと俺たちに歩み寄って来た。LO-426のそばにひざまずき、その顔をなでた。
「……私のせいですわ」
俺はかぶりを振った。
「違うだろ……ここに戻ることを選んだのは……彼女自身なんだから……」
「違いますわ……違うんです……そうではなく、思い出してしまったんです……」
「……なんの話だ……?」
「いつかLO-426が私に聞きました。『君にも仕事があるだろう』と。そのときの私は忘れていました……いえ、忘れるようにプログラムされていた……」
トゥインクルが苦しげに目を閉じた。
「さきほど思い出したのです。私がここに来た理由……」
「理由って……自分で言ってただろう? ロリ人間コンテストのために……」
「ロリ人間コンテストのチラシを、この病院付近にばらまいたのは、私です」
「……は?」
「この場所に幼女が集まるように仕向けたのも、その情報をANTI-LOLIにリークしてここを攻撃するように仕向けたのも……すべて私です……」
俺はかぶりを振った。何を言っているんだ、何かの間違いだ、こいつに限ってありえない……。
「待て、それ以上言うな……」
「私のっ……私の仕事は……ここに集まるANTI-LOLIを殲滅すること……それがひとつ。もうひとつは……お父様以外が造ったアンドロイドを……抹消すること……! 任務、完了ですわ……」




