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新・ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
第2節-承
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29/53

その29「ANTI-LOLI②World War Ⅲ」

 俺とLO-426は、街を覆う水の中を進んでいた。

 この水の中では、不思議なことに息ができる。以前に潜ったことがあるので知っていた。病院まで誰にも気が付かれずたどり着くためには、最適のルートであると言えた。

「ここはあぶないよ」「あぶないよ」「わるいひとたちがくるよ」「くるよ」

 全裸の幼女達が、俺たちの周りを泳ぎながら警告を発していた。

「どうしてボートの乗らなかったんだ?」

 LO-426が俺に訊ねた。俺はかぶりを振った。

「知らん」

「私なら壊れても代わりがいる。LO-426、医療従事アンドロイドという型番は私だけの物ではない。だが君は替わりがきかないだろう?」

 全裸のアンドロイドは自分の胸をなぞった。胸元に銀色の刻印があった。良く見慣れたメーカーのロゴマークが、そこにはあった。俺はあっと声をあげた。

「『ブルカニロ』……あの『ブルカニロ』か?! ソフトウェアメーカーの?!」

「君が自殺未遂前に生きていた時代ではソフトウェアメーカーだったな。第三次大戦中にファザーゲートを買収して、私のようなヒューマノイドインターフェースも開発するようになった」

「どこかで聞いた声だと思っていた……合成音声ソフトウェアと一緒だ、あんたの声……と待て、第三次大戦?! なんの話だ?!」

「戦争だ。人間と幼女との……いや違うな、幼女を認める人間と、認めない人間との間の戦争……」

 水がゆらいだ。いつのまにか、周囲は映像を映すスクリーンとなっていた。この水は記憶を映す。それも以前来た時に知っていた。

 だからこれは、LO-426の記憶。


 

 あのころ私は世界中にいた。

 アメリカ・ブルカニロ本社にあるメインサーバー、そしてそれにアクセスする無数のネットワーク端末、情報の網目が私だった。

 あのころ私は世界のあらゆる箇所を見ていたものだ。

 

 異変は、ある瞬間から発生した。

 太平洋上のとある島に、不可思議な円柱が出現した。鏡のようにあらゆる光を反射させる円柱上の『領域』。光も、音も、いかなる物理的なものが入り込めず反射される領域。

 それは後に人間によって『変異起点』と呼ばれることになった。この円柱が出現した瞬間から、世界に『幼女』たちが現れ始めたのだ。円柱が幼女を呼んだのか、幼女が円柱を呼んだのか、はっきりしていない。幼女に関して、人間が知り得たことはごくわずかだ。


 幼女達があらわれて始めの数年。つまり人間の子供が生まれなくなってからの数年間。世界は大混乱に陥るも、かろうじて社会としての体制をたもっていた。しかし人心は荒廃した。自暴自棄からか凶悪な犯罪が増え、犯罪に手を染められぬ優しい者も自ら命を断ち始めた。櫻宮薫子が身を投げたのもこの時期だ。

 社会はその存続を前提に秩序立てられている。

 滅びゆく国のルールは滅びるがために破綻している。

 それが世界すべてで起こったのだ。戦争は時間の問題だった。ついにある国が、『変異起点』に対する核攻撃を敢行した。それは幼女に対して何の効力もなかったが、島に住んでいた人々を燃やし尽くすには十分だった。

 そのたった1度の核攻撃がトリガーとなった。世界は戦争状態に突入したのだ。


 ある識者はこう語った。

「『彼女達』を人類という種に感染したウイルスのようなものだとすれば、この戦争はいうなればアレルギー反応のようなものだと言える。自らを守るための抗体……すなわち武力により、自らの血肉を殺める。そして悪いことにその『抗体』は、『彼女達』には一切通用しないのだ……」


 戦争は早々に大義名分を見失い、あとは人間同士の殺し合いとなった。幼女との共存を望む人間と、それを望まず『尊厳ある絶滅』をうたう過激な一派……『人類解放同盟』、俗称『ANTI-LOLI』。

 今回の襲撃の首謀者達と推測される。

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