その21「黒と白の幼女団」
その日目を覚ますと、すでにクオンの姿はなく、にぎやかな楽器の音が聞こえていた。それは外からだった。
なんだと思い窓に近づく。水平線のかなたより、仰々しい海賊船の艦隊が
近づいてきていた。ラッパの幼女達が、ビルの上屋根の上で歓迎のパレードを開いていた。
「はじまりましたわね」
「ああ……いこう」
窓の外を一瞥したトゥインクルとLO-426が、足早に去って行った。嫌な予感しかしない。俺はあわてて後を追った。
「おい! なんだ、あの船? 何か知っているのか?」
「あら、あなたは感じませんの?」
「感じる? 何をだ」
「あの船から放たれる途方も無い幼女力! 間違いない、あれはロリ人間コンテストの本隊ですわ」
海賊船は形こそ立派であったが、ずいぶんと小ぶりであった。街を覆う水の水深は浅かったが、船団は問題なく病院前までたどり着いた。
「われわれはバイキング船団! 一定の料金で、食べ放題の海賊だよ!」
幼女船団長が言った。意味がわからなかった。
「海賊コス幼女ですわね。ブカブカの帽子に服がなかなかキュートですわ」
「いやいやトゥインクル、船団長ばかりでなく一般海賊幼女にも目を向けなくては。ボロのTシャツからのぞく脇の下もなかなかおつなものだよ」
「はぅ、私としたことが……メインディッシュにばかり目が向くとは……」
で、お前らはお前らで何をやっているんだ。
「のりこめー!」「せいあつしろー!」
船を病院に接岸させて、幼女海賊達が2階の窓から乗り込んできた。なんて数だ。約2名、興奮したロリコンが巻き込まれて見えなくなってしまったが俺からコメントすることは何もない。
「はははー! 駄菓子を食い散らかしてやる!」
「やめてー! おかたづけしたばかりなのにー!」
海賊幼女達は見かけに恥じない粗暴さで病院内を荒らしていく。荒らす先は主に食べ物にまつわる場所ばかりだった。食べ放題だから?
ちなみに『お片付け』したのは俺とクオンであって、今悲鳴をあげていたナース幼女ではない。
【やめなさい! やめるのだ!】
声が響いた。それはまるで心に直接呼びかけてくるかのごとく、あらゆる方向から均等に聞こえた。
「上から来ますわ!」
いつから戻っていたトゥインクル。トゥインクルが天井を指差した。俺は窓から身を乗り出し、空を見た。のっぺりとした円盤状の飛行体が多数浮かんでいた。声の主が光とともに海賊船のマストの上に降り立った。それは幼女だった。知ってた。
【我々はロリ人間コンテスト実行委員会。委員長のカレルレンである。明日の夜明けとともに、ロリ人間コンテストの開催をここに宣言する】
お下げ髪に純白の服を身にまとった幼女・カレルレンが宣言した。
【……降りられない。高い】
マストの上で、カレルレンが途方にくれたように言った。




