その19「変態VS変態」
「櫻宮薫子、です。昔……この病院で勤めていました」
コールドスリープから醒めた女が、俺たちの前で言った。
「……やけに状況把握が早いな? 私がアンドロイドだということを疑わないのか?」
LO-426が首をかしげた。
「ええと、なんとなく聞いていたんです。眠っている間に」
「聞いていた? 眠っていた間?」
「そう、そちらの方に」
櫻宮先生が俺を見て言った。小っ恥ずかしくなり、目をそらす、幼女クオンのイタズラ顔が目に飛び込んできた。
「ふうん? へえ? ほう?」
「なんだその目は……俺は別にやましいことはしていないぞ?」
「ほほーん?」
クオンのニヤケ顔が崩れない。
「それで、あなたは何というお名前なのですか」
「へ? 俺?」
櫻宮先生に急に話を戻され、俺はまごついてしまった。
そういえば、プライベートでの自己紹介なんていつぶりだ?
「ええと、トキワ、といいます」
「その隣のあなたは?」
話題がすぐクオンに移った。なぜだろう、少しだけがっかりした。
「クオンだよ! これからあなたをさぽうとすることにーー」
櫻宮先生が、大きな目を見開いてクオンに顔を寄せた。
「な、なに?」
「先ほど、にやけた顔をしていましたよね?」
「え、うん」
「それというのは、いやらしい想像をしたからですか? 私とトキワさんが『そういう大人の関係』だと思ったから?」
「なっ……違うぞ?! 違うからな?!」
何を言い出すんだこの女!
「え、ええと、あの、私何もそこまでは……」
「そこまで? そこまでってどこまで? ねえもしかしてあなたーー」
「そこまでと言ったらそこまでですわ! それ以上変なことを幼女に吹き込むのは許しませんわよ!」
トゥインクルがクオンにかぶさるよう抱きついて、乱入してきた。
「なんですかあなた。今、私はクオンさんと話しているんです」
「離せー! 変態離せー!」
「これ以上の狼藉は、世界の幼女をあまねく守る! 奇跡のスーパーアンドロイド、トゥインクル=トゥインクル 1stが阻止しますわ!」
「狼藉やめろー! 離せー!」
クオンの悲鳴、変態に届かず……。トゥインクルと櫻宮、二人の変態がにらみ合った。
「邪魔をするならご自由に。この子の中には『醜さ』がある。私は必ず暴いてみせます」
「そんなものはありませんわ! 幼女はつるつるですべすべで美しいんです! 私は必ず、あなたの魔の手から幼女を守ります!」
「そ の 手 を は な せ ーーーーーーーーー!!」




