その18「アンドロイドの仕事」
「ロリを愛し、ロリに愛される究極のロリコンを選ぶコンテスト……それこそが、ロリ人間コンテストなんですわ」
トゥインクルが言ったが、なるほど、わからない。
「ロリを愛し……ロリに愛される……?」
426が復唱した。
「そうですわ。優勝者には、なんと幼女が1年分あたえられるんですわ!」
「なんだって! 1年分?!」
1日分の量がそもそもわからない。そもそも量で測っていいものなのか?
「で、あなたはこのコンテストに参加するために、遠路はるばるきたってわけ?」
クオンがたずねた。トゥインクルが頷いた。
「その通りですわー!」
「抱きつかないで! トキワくん、この人なんとかしてよー!」
「わ、わかった」
俺はトゥインクルをクオンから引き剥がそうとした。だが、トゥインクルの力は強くびくともしなかった。
「ふふん、人間風情の力で私を引きはがせるものですか! 幼女力が違いますのよ!」
「なんだ幼女力って?!」
「説明しますわ!」
「いやしなくていい!」
幼女力とは、その名の通り幼女と触れ合うことによって発生するエネルギーで、あらゆる知的生命体が持ちうる精神エネルギーなのですわ。それは直接的な接触によって、あるいは幼女の姿を目にすることによって、幼女の芳しい香りによって、芳醇な肌の味わいによって、励起されるのですわ!
「説明しなくていいと言った!」
「あなたたち人間には、良心のくびきがあります! あるいは反感のくびきが! ためらいや敵意が、幼女力の発動をさまたげているのです! このトゥインクルにそれはありません! 幼女を堪能することに何のためらいもなし!」
「やぁっ、服の上からだってダメな場所はダメなんだからーーー!!」
このままではクオンが変態の犠牲に……!
「ストップ、ストップだ、トゥインクル」
意外にも426が助け舟を出した。
「なぜあなたが止めるのです?! あなたもアンドロイドでしょうに!」
「クオンは私の仕事仲間なんだ。あまり手荒いことはよしてほしい」
「しごと……なかま……?」
トゥインクルがいぶかしげにクオンから離れた。
「仕事って何ですの? あなたもアンドロイドですわよね?」
「そうとも。人間のためにつくられ、人間のために働く。それが我々アンドロイドの本懐だろう? 確かに幼女は私も好きだが、優先すべきは人間、違うか?」
「本懐? 何を言っているのか……今ひとつわかりませんけど……」
426が首をかしげた。アンドロイド同士だが、話が噛み合っていない?
「君にも仕事があるのだろう? それはいったい何なんだい?」
「私に『仕事』? そんな人間のようなものーー」
トゥインクルは口ごもった。
「どうした、トゥインクル?」
「……いえ、なんでもありませんわ。おそらく何かのエラーでしょう……私に仕事など、あるはずはありませんもの……」
トゥインクルは満面の笑みになった。
「コンテストまで1週間! しばらくお世話になりますわ!」
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幼女たちの、無邪気で中身のない笑い声が聞こえていた。
病棟には、もはや人間がいなくなっていた。私は、夢でも見ているのだろうか。記憶が曖昧だ。夢の中だからなのか。窓の外に目を向ける。夢であることを証明するかのように、見慣れた街並みは水に沈んでいた。
その街並みの水平線の果てにーー
「あんた……」
私の後ろから、小さな声がした。振り向くと、廊下の向こうに割烹着の青年が立っていた。私より、少し若い世代なのではないだろうか。見慣れない顔だった。
いや、どうだろう……。どこかで会ったような気もする……でもどこで?
「あんた、起きてたのか……」
「? 私は寝ていたんですか?」
ふと自分の服に目を落とすと、手術の患者が着るような院服を着ていた。私は何か病気を? それとも怪我ーー
「あっ……」
思い出した。思い出してしまった。まさか。この病院の屋上から? よりにもよってこの私が自分から……? そんなバカな……。
体が震え始めた。立っていられなくなり、うずくまった。
「わ、わたしは……」
青年が私のそばに駆け寄って着てしゃがみこんだ。私の震える肩に手をさしのべた。
「よかった……あんたが死んでなくて、本当によかった……」
青年はかぶりをふった。
「いや、そんなに単純によかった……って言っていいのかはわからないんだ。でも……あんたが生きていてくれて……俺はうれしい……」
この声。聞き覚えがある。夢うつつの中でーー
青年が、窓の外を見やった。
「なあ、立てるか?」
私は、年甲斐もなくこくこくと頷いた。肩を貸してきた青年に寄りかかるようにして、立ち上がった。
彼方の水面に太陽がおちていく。水平線は紅、天の蓋は深い紫。
ああ、これか。これが君が言っていたことなのか。ロマンチストな男だ、わざわざこれを見せるために……。
鼻の奥が、すんとつらい。
くやしいけれど、君が言っていた通りの眩しさだった。
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燃えるような夕日は、すっかり沈んでいた。
白髪の青年は地平線の彼方の、まだ見ぬ街に想いを馳せていた。
「もう根回しは充分だろう? 1週間後が楽しみだね。なあペタバイト娘々」
呼ばれて少女が飛び出した。満面の笑みのその少女は、露出度の高い服を着て、猫耳で、尻尾が生えていた。
「お父様の計画は完璧ニャ! 一網打尽だニャ〜!」
喜ぶ猫耳少女に満足げに目をやって、再びお父様と呼ばれた青年は彼方を見た。
「さあ、きちんと君の仕事をしてくれよ、トゥインクル」




