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[04.首都の街(Part2)]

 リリィに連れられて、中に入ったのは大きな木造りの家屋。出入り口には扉はなく、常に開けっ広げにされている状態で、何人かの冒険者とすれ違っても十分なほどの横幅に開いていた。

 そんな入り口をくぐり中へと足を踏み入れると、俺は独特の空気に当てられる。日の光のみで室内が充分に照らされるように工夫された内部には、冒険者と思われる顔ぶれが個々に集まりたむろしていた。

 少し場違いな気がするが、リリィはそのなかを平然と歩いて行く。俺もその後に続くと、周りの大人たちがはっきりとこちらに視線を向けているのが感じられた。

(なんだ……?)

 人が入ってきただけにしては、やたら目立っているような気がする。

「なぁ、リリィ。ここには結構来るのか?」

「うん。一応、僕も冒険者登録はしてるから。迷宮も入ったことはあるよ」

「へぇ―――そう、か」

 なんとなくだが、注目している理由がわかった。仮想世界で俺も、これと似た視線を向けられたことがあるので。

 意外と有名なんだな、リリィさんは。

「色々ここについて説明したいけど、とにかく登録を澄ませちゃおうか。すみませーん」 

「はーい、ただいま……て、あれ? り、リリィさん?」

 駆け寄ってきた受付嬢は小柄な少女。亜麻色の髪に、ひょっこり顔を出すもふもふとした垂れ耳、そばかすが特徴的なかわいらしい顔だち。年は十代中頃といった感じの女の子は、リリィを見るなり戸惑っていた。

「た、たしか、任務でしばらくこれないハズじゃなかったんですか………?」

「うん、予想以上に早く片がついたんだ」

「そ、そうなんですか。怪我はしませんでしたか……?」

「ニーナは心配性だね。見ての通り大丈夫だよ」

「……そうですか」

 ほっと胸を撫で下ろす少女。そんな彼女の微笑ましい姿を見て俺は、彼女の挙動不審がどういうものか悟った。

「やるな、この色男」

 リリィだけに聞こえるように俺は耳打ちすると、彼女は訳が分からないといった表情をする。

「……? 君は何を言ってるの?」

 どうやら本人は無自覚らしい。受付嬢の思いは届きそうにない。

 ―――そもそも、本当の性別は女だしなぁ……と思いつつ、俺はリリィのことをあまり女とみてないことに気がついて、あれ、このままでいいのかな? と、一抹の不安を覚える。

 そんな最中、話から外れていた受付嬢がおずおずとリリィに切り出した。

「あ、あの。本日はどういったご用件で……」

「ああ、そうだった。今日は彼の新規登録しに来たんだ。紹介するよ、こちらの彼はヤクモ君。で、こっちがニーナちゃんね?」

「りょーかい。よろしくニーナ……ちゃんでいいのかな?」

「え―――あ、はい。大丈夫です。よろしく、なのです……えっと、ヤクモ、さん?」

 軽く手を上げて挨拶する俺に対し、少々ぎこちない笑みを浮かべるニーナ。

 場慣れしていないのか、そんな姿も初々しくて、俺にはかわいらしく思えた。

「それじゃあ僕は少し換金所に用があるから、ヤクモは彼女に登録の手続きをしてもらって」

「ん? 行っちゃうのか?」

「……不安なの?」

「別にそういうわけじゃないが……」

 どこか試すような目で見ているリリィさんに対し、俺は横目で盗み見た。そこには捨て犬みたいな表情で、朴念仁なリリィを見上げる受付嬢(しょうじょ)の姿が。

「………ま、なんでもないわ」

「……?」

 まったくわからないと言いたげにリリィは首を傾げた。


 リリィを見送った後、二人きりになった俺たち。

「それじゃあ、登録の手続き頼むわ」

「はい。では、こちらの必要事項に記入してもらえますか?」

 差し出された用紙を見て、俺は思わず顔をしかめる。

 はっきりいって、読めない。一体これは何語だ……?

「あー……、これって代筆頼めない?」

「あ、はい。大丈夫ですよ。では、名前と年齢、できれば出身地と特技も申し出てください」

「名前はヤクモで、年は十五………で、特技って具体的には?」

「そうですねぇ……使える魔法とか、専門知識と言ったところでしょうか」

「そういうのは特に無いわー」

「では、名前と年齢だけでよろしいですか?」

「うん」

 頷くと、ニーナは羽ペンを用紙に滑らせて、独特な文字を書き込んでいく。

 そして、少女が羽ペンを筆立てに置くと同時に、俺は彼女に尋ねた。

「登録ってこれだけ?」

「あ、いえ。あと一つります。ギフトカードお持ちですか」

「ぎふとかーど……?」

 聞き慣れない言葉に俺は聞き直す。

「はい。自分の個人情報(ステータス)を閲覧できる特殊な札なんですが……その様子だとお持ちではない、ですよね?」

「ああ、持ってないな。それって、所持しているのは当たり前なのか?」

「当たり前ではないですが、持っていない方は珍しいですね。この国の人間だったら、生まれたときにつくることを義務づけられますし、持っていない方々でも、身分証明書として使えますので発行する方が多いです」

「ふーん……持っていないと色々不都合なのか? それって」

「そうですね。持っていないと、不審がられちゃいますし、依頼を受けるのにも一々書類手続きが必用になっちゃいます。できるならつくる方をお勧めします」

「なるほど………で、いくら?」

「小粒銀貨一枚ですね。支払えない場合、後払いでも大丈夫ですが、お作りになりますか?」

「むぅ……」

 正直、この世界の金銭感覚が分からないので、唸るしかない。

「どうしたの? 難しい顔して」

 ちょうどリリィが用事を済ませて帰ってきたので、俺は早速聞いてみた。

「ん、リリィか。いや、ちょっとギフトカードを造るか造らないかで迷ってるんだけど……小粒銀貨一枚っていくらぐらいだ?」

「え……? ギフトカードそんなにするの? 白銅貨じゃなくて?」

 驚いた顔をしたリリィがニーナを見返すと、彼女は申し訳なさそうな顔をする。

「すみません……。ヤクモ様はこの国の人ではないので、それくらい掛かっちゃいます。国民でしたら、援助金が下りるんですけど………」

「そっか。俺って身元不明だからな」

 俺が納得した様子で頷くと、リリィは俺に向けて呆れた視線を向けた。

「言っておくけど、小粒銀貨もあればそれなりの剣は買えるよ?」

「なんですと!?」

 確かめるためニーナに振り返ると、彼女も頷いていた。

「……むぅ」

 俺は思わず唸らずにはいられなかった。後払いにしても、ちょっとそれは厳しい。

 まるで名工も武器でも吟味したときのように俺が悩んでいると、机に硬貨が置かれる音がする。横を見ると、リリィがカウンターに四角い銀色の硬貨を置いていた。

「ニーナ、これで作って上げて」

「いや、ちょっと……それは……」

 申し訳なさそうに振る舞う俺に、リリィは気にした様子もなく余裕を見せる態度で振り向いた。

「別に気にすることはないよ。これはほんのお礼みたいなものだから」

「いや、どちらかというと俺的にはそのお金で剣を買って貰って方が―――」

「ニーナ、これのいうことは無視して作っちゃって」

「え? あ、はいです」

 俺の言い分は、リリィに華麗とした態度にスルーされた。

 小粒銀貨を持って、カウンターの奥に行ってしまうニーナの後ろ姿を名残惜しく眺めていると、リリィから憮然とした視線を向けられる。

「そういうの……みっともないよ。それと、はい」

「……? なんだ?」

 手渡されたのは二つの革袋。

 受け取り、中を覗いてみると俺は困惑する。

「おい、これって………」

「盗賊退治の報酬だよ。一応、一部を細かく換金して置いたけど、迷惑だった?」

「いや、正直助かる」

 リリィから受け取った革袋―――大きな方には銅貨や青銅貨といった小銭が入っており、逆に小さな方には銀貨や小粒銀貨が入っていた。

「なぁ、ちょっと聞きたいんだけど、この国の貨幣価値ってどういう仕組みしてるんだ? そういうのよく分からないんだけど」

「小粒銀貨の価値も知らなかったみたいだしね……君に貨幣価値を教えておかないと騙されそうだ」

 中に入っていた細かい貨幣をいじりながら尋ねると、そんなを俺をリリィは呆れながら一瞥する。

「今、君が手に持ってるのが青銅貨。それ十枚で銅貨になって、一回り小さくて真ん中に穴が空いているのが半銅貨。銅貨の半分の価値だよ」

「ふむふむ……」

「白銅貨は銅貨五枚分の、小粒銀貨は十五枚分の貨幣価値があるんだ。銀貨の場合は五十枚必用だけど」

「……やけに小粒銀貨と銀貨の差があるんだな」

「純度が違うからね。銀貨はかなりの高純度だけど、小粒銀貨には混ぜ物してあるから輝き具合も違うでしょ?」

「言われてみれば、そうだな」

 小さな袋を覗き込み、銀貨と小粒銀貨の金属光沢を見比べて納得する。銀貨が銀らしい眩しい輝きを放っているのに対し、小粒銀貨はくすんだ光沢を放つ。

 俺がまじまじと観察していると、リリィに肩を小突かれる。顔を上げると、彼女の顔が耳元に近づいて囁く。

「あまりここ確認しなほうがいいよ。人の目もあるから。やっかいな人種に目をつけられるかも知れないし」

 言われ、ギルドホールを横目に見渡すと、何人かがこちらにさりげなく視線を投げ掛けている。

「ん、りょーかい」

 俺は頷き、貨幣の入った袋を懐にしまった。

 と、ちょうどそこで何かを抱えたニーナが奥から出て来て、二人してそちらに向く。

「と、お待たせしました~。こちらが『契約』のための石板(スレート)です」

 コトンっと音を立て、置かれたのは何やら独特な文字が刻まれた石板。

「なぁなぁ、リリィ。……これなんだ?」

「それは『契約』のために使う石板(スレート)。見えざる神の審議によって、契約内容に対する一切の嘘がつけない代物だよ。………一応これも常識なんだけど」

「すいませんね、常識知らずで」

「あはは………」

 呆れ返っているリリィに、皮肉に返す俺。それに対して、ニーナは作り笑いを浮かべた。

「とにかく、この石板に利き手を置いて。そうすれば、事が済むから」

「こうか?」

 何気なく、石板の上に手を重ねる。すると、手の内を重ねたところから不思議な波紋が広がり、読めないけど見覚えのある文字が波に揺れて四散した。

「………」

 不思議な感じはするが、こういうものなら他のVRMMOで慣れてる。そのため、俺の感動は低かった。

「なんか呆気な―――」


 瞬間―――ゾワリとした感触が駆け回り、自分の中の何かが読まれた(、、、、)


「―――ッ」

 一瞬にして手を引く。手を引いた―――なのに嫌な汗が止まらない。


 ナンダ今ノハ。ナンダッタンダ。 


 震える片手を押さえながら、俺はもう一度石板を見た。

 そこには変わらない石板がカウンターの上に鎮座しているだけ―――なのに何かの視線を感じるかのように錯覚してしまう。実際、今は見られている感覚はないのだが、見られた感触がねっとりと今もなおはっきり残っている。それゆえ、幻覚にも似た感覚が俺の脳裏にまとわりつく。

「………」

「ヤクモ……?」

 俺が目を見開いて、置かれた何の変哲も無い石板を凝視していると、リリィが心配そうに顔を覗かせた。

「………なんでもない」

 自分でも消えそうな声で呟き―――そこで俺が周りに注目されていることに気がついた。挙動不審なことをしていれば当たり前といえば当たり前。少し慌てながら普通に取り繕う。

「あー……それで、登録の方はちゃんとできてる?」

「うぇえ!? ―――あ、大丈夫です! 登録できていました、はい!!」

 差し出された淡く水色の、仄かに輝くカードを差し出され、俺はそれを受け取った。

 まるで水の上に文字が浮かび上がってるように表示されている不思議なカード。それをまじまじと眺めつつ、俺は書かれた文字を読み取った。

――――――――――――――――――――――――――

【name】:『ヤクモ』

【class】:『愚者(プレイヤー)Lv■』

【skill】:─

【synthesis status】評価『F-』

――――――――――――――――――――――――――

「……『愚者』?」

 表示された文章の意味が分からず眉をひそめる。

 すると、【class】以外の欄が消え、新たな追加情報が更新された。

――――――――――――――――――――――――――

【class】:『愚者(プレイヤー)

・【加護】や【恩恵】を得ることができない。

・外的要因でのスキル習得不可。

――――――――――――――――――――――――――

 ………………何やら、不穏な気がする。

「どうしたの? ヤクモ」

 横からリリィが上目遣いで覗き込んできた。

「ん……、ちょっとわからないんだけど、【class】に『【加護】や【恩恵】を得ることができない』って書かれてるんだど、これって?」

「………………………はぇ?」

 リリィが、間の抜けた顔ような顔をした。

「……ちょっと、そのギフトカード見せて」

「あ、うん」

 渡そうとして、リリィから奪い取るように乱暴に取られた。そのまま、彼女は食い入るように俺のカードを見つめ、一言。

「………何これ」

「リリィ……?」

 横から覗き込んできたリリィの顔つきが険しい。

「何かまずいか……?」

「……すっごく」

 彼女は言葉数少なく応え、会話を続けた。

「この『愚者』っていう【class(クラス)】は初めて見るけど……。【加護】ならまだしも【恩恵】が得られないって…………いくら【経験値】を得ても【恩恵】を得られないんじゃ、【class(クラス)】が成長しないよ……」

 彼女の言ってることはよくわからないが、なんとなく良くないことは身に纏う剣呑さで感じられた。

「……つまり?」

「君はいつまでたっても『最弱』ってこと」

 真摯に見つめて、はっきりと言い切る。

 それから、詳しく説明して貰ったのだが、この世界ではいわゆるレベルが物言う世界であるらしい。

 戦って、敵を倒せば【経験値】が手に入り、その分【恩恵】によってレベルが上がって(つよくなって)いく。

 当然、レベルが高いものは強く、低いものは弱い。

 ―――まるでゲームのような世界だな、と俺は思った。

 そして、俺はその世界でレベルが上がらない。

 ―――つまり一生『最弱』。

「……なるほど」

「君、思ったほど取り乱さないね」

「はっきり言って、今更みたいな感じだからな」

 裸で(※比喩表現)戦場に突貫なんてよくやることだし、そんな無茶振り程度、俺は何度も経験したことがあるのでほんと今更だ。

「…………そっか、そうだよね」

 なぜか納得したように頷くリリィ。俺はそれを訝しんでいると、顔を上げた彼女と目が合った。

「君の能力値は一般人と大差ない……いや、劣ってると言ってもいい。だけど、君にはそれすら覆す実力がある。いや、そもそもそのおかげで、その強さが身についたのかな……」

 とりあえず、間違った方向に納得しっちゃているけど、俺はあえてそのことを訂正しないことにした。説明求められても困るの俺だし。

「それでも、一応忠告しておくよ」

 ずいっと近づいてきて、彼女の顔が数センチという所まで迫った。吐息を肌で感じる距離。

「いくら君の実力が確かでも、それは対人戦であって、迷宮での戦いじゃない。それに、迷宮で命を落すのは何も戦闘だけじゃないことを肝に銘じて」

「…………あ、あの、リリィさん……」

「……? どうしたの?」

「顔、近い」

 お分かりであろうが、俺と彼女の顔の距離は、まさに恋人の接吻(キスシーン)のように間近だ。

 さすがに、周りには男同士で通っていたとしても、俺はリリィが可愛らしい少女ということを知っているため、けして異性として意識しているわけではないが……この距離は少し近すぎる気がするのは俺だけだろうか?

 そして、なんのことか悟ったリリィは一瞬呆け、

「えっ―――うぇえええ!?」

 慌てて後ろに飛び退く彼女。そのまま赤面した顔つきで、ギッっと鋭い眼光で睨み付けられた。

「…………変態」

 ぽそっと呟かれた言葉は少し俺の心に来たのが、胸の内に止めて置いた。

 ちなみに、すぐ横で恋する受付嬢のことニーナが、

「ら、らいばるっ!? い、いえ、これはもしかして、もしかしての展開なのでは―――ッ」

 と、何やら不穏なことを呟いていたのも聞かなかったことにしておく。

……おぅ、これ書くのに丸々一週間かかったぜぃ。書き直すこと三回ほど消去(デリート)……あたりまえだし。

そんなに時間をかけても、全体的にぎこちない。話もおもしろくしようと頑張ってるけど、今だ試行錯誤の域を出ず迷走中………。

誰か助言をください……。

話は変わって、やっぱり軽めの小説のほうが受けがいいのかな?

実際、そっちの方が何倍も早くかけるんだけど―――書いて喰ってくには色々と将来不安が……。

読者を欲求不満させているようで、書き手として不甲斐ないです……。焦らすつもりはほんとに無いんです。序盤だと思って、気長に待ってください。


うちもがんばんなきゃなぁ……。


【追伸】

・また一週間ほど掲載しないかも……。今度は二週間の可能性ありですよ。

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