ユリウスの心
ユリウスと共にサーシャは騎士団詰所を訪問した。
ユリウスを見かけると、騎士団員達が皆、ユリウスに群がって、
「ユリウス様。帰ってきてくれますよね?」
「ハリス団長も、ユリウス様がいないと寂しいと言っておられます」
ハリスは副団長から騎士団長へ昇格した男で、
ハリス現団長が現れて、
「ユリウスっ。戻って来てくれっーーー。お前がいないと士気があがらん。おっっと、これは皇女様っ」
騎士団員がサーシャに気が付いて、皆、跪く。
サーシャは困ってしまった。
婚約する事を報告に来たのに……
ユリウスが、
「私はサーシャ皇女様と婚約することになった。だから、もう戻る事は出来ない。だが、私がいなくても、栄えある帝国の騎士団員の諸君なら、帝国の為に熱く熱く燃え上がって、頑張ってくれると信じている。さぁ、空を見ろ。日の光がお前達を祝福しているっ」
騎士団員達が、
「これがないとなぁ」
「ユリウス様のこれがないと、いつも物足りなくて」
サーシャは一言、
「詰所の中で空は見えないわよね」
ユリウスは頷いて、
「その時はダッシュで外に出て空を見て、皆で、吠える。それが騎士団の日常だ」
ああ、相変わらず熱いわ。
まだ夏ではないわよね。
結局、騎士団員達が皆で祝ってくれた。
「おめでとうございます。我らが騎士団員。皆、ユリウス様と皇女様の味方ですぞ」
「何かあったらいつでも声をかけて下さいっ」
嬉しかった。
皆が口々に祝ってくれて。
そして見送りの時は、騎士団員全員が、二人に向かって、頭を下げて、ハリス騎士団長が、
「我が帝国騎士団。これから先も帝国の為に、デルト皇帝陛下の為に、そしてサーシャ皇女殿下の為にも、励んで参ります。どうか、ユリウス様とお幸せに」
と祝福の言葉を述べてくれた。
ユリウスが微笑んで、
「有難う。ハリス」
サーシャもとても幸せを感じて、
「とても嬉しいわ。皆様。有難うございます」
皆に、祝福されて幸せだった。
祝福された後、馬車に乗り込んだ。
ユリウスの帝都にある伯爵家に挨拶に訪れた。
ライド伯爵夫妻が恐縮して、
「これは皇女様。突然にっ」
「さぁ客間にっ」
客間に通されて、ユリウスが、
「私はサーシャ皇女様と婚約を結ぶ事になった」
ライド伯爵夫妻は驚いて、
「騎士団を辞めて、護衛になったと聞いたが、皇女様と婚約かっ」
「まぁよかったわねぇ。有難いわっ」
ドアを開けて、10人の子供達が飛び込んで来た。
「ユリウス兄さまっ。婚約っ決まったんだ」
「良かったわねぇ」
「おめでとうっ」
「皇女様っ。綺麗っ」
歳はバラバラ。しかしこの子供達は??
サーシャが子供達に囲まれて驚いていると、
ユリウスが、
「皆、引き取った養子だ。教育を施して、帝国に役立つ人間に育てる。それがわが家の方針だ」
ライド伯爵も頷いて、
「さぁ、お前達。今日も気持ちを引き上げて燃え上がれ。良く学び、良く遊び、良く寝て、すくすくと育て。帝国の為に」
公爵夫人も、
「そうよ。貴方達。燃えるのよ。燃え上がるのよ。帝国の為に」
子供達も手を振り上げて、
「燃えろ燃え上がれ」
「未来は明るい。根性で燃え上がれ」
「今日もご飯が美味い。沢山、食べて燃え上がれっ」
サーシャは思った。
ユリウスの性格って家風だったのね……
ユリウスが皆の前で宣言した。
「さぁ、皇女様の為に。私は一生を捧げて頑張るぞ。皆、応援してくれ」
「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」
「有難うございます。わたくし、頑張りますわ」
サーシャも燃え上がる事にした。
そしてユリウス一家のこの前向きな心を大切にしていきたい。
そう思えた。
その日は伯爵家の客室に泊めて貰った。
夜中、廊下で子供の泣き声が聞こえて来た。
サーシャが廊下に出ると、5歳くらいの男の子が廊下で泣いている。
ユリウスが慰めていた。
「どうした?」
「お母さんに会いたいよう。お母さん。お母さんっ」
ぎゅっとユリウスは男の子を抱き締めて、
「ああ、辛いな。悲しいな」
サーシャがそっと声をかけた。
「この子のお母様は?」
「食べていけなくなったのだろうな。この子を捨てて、いなくなった。この子は5歳で孤児になったんだ」
ユリウスは辛そうな顔をして、
「子供が泣いているのは見ているのが辛い。一人でも、こういう悲しい子を無くすためにも、我が伯爵家では子供を引き取って育てたり、領地に孤児院を増設して、教育を施したりしているが、限度がある。私はサーシャと結婚したら、皇妃様の推し進める福祉をサーシャと共に協力してこういう子供達がいなくなるように努力するつもりだ」
泣き病んだ子供のを抱き上げて、ユリウスはベッドに運んで、子供を寝かして来た。
子供は泣き疲れて寝てしまったようだ。
ユリウスはサーシャに向かって、
「私も家族もテンションが高くて、いつも燃え上がっていて馬鹿みたいだろう?でも、人生どうにもならない事も多い。そんな中、少しでも気持ちを明るく持ってほしくて。我が家の家風はいつも上向きに突き進めなんだ。でも、どうしようもない事があると、さすがの私も落ち込んで……なかなかうまくいかないものだな」
珍しいユリウスの弱音に、サーシャが拳を振り上げて、
「こういう時は空を見ろでしょう。まぁ今は夜だから星しか見えないけれども。ほら、空を見上げて。帝国の未来は明るいわ。わたくしは皇族として、良い国をつくる為に努力するわ。貴方も共に走ってくれるでしょう。ね?ユリウス」
ユリウスは笑って、
「ああ、私の役目を取り上げられたな。皇妃様が私を貴方の婚約者候補に選んだというのもあるが、皇帝陛下が出来るだけ傍にいて、テンションをあげてやれと私に命じたんだ」
「皇帝陛下が?」
「あの方はあの方なりに、サーシャの事を心配しているんだな」
ああ、お父様。お父様って呼んだ事がないわ。
でも、皇帝陛下の愛情が感じられてとても嬉しく思うサーシャであった。




