エピローグ
一週間後の夜会で、ユリウスにエスコートされて、出席する。
デルト皇帝陛下とイリア皇妃の許可は既に貰ってある。
ジルド皇太子は新しい婚約者レティシアをエスコートして出席し、
エルドレッドはプリメシアと共に出席していた。
大勢の貴族達が見守る中、サーシャはユリウスの隣で宣言する。
「わたくしはユリウス・ライドと婚約致します。皆様、祝って下さいませ」
貴族達が拍手をし、皆で祝ってくれる。
そこへ、育ての父リヘル伯爵が顔に傷がある中年の大男と共に現れた。
リヘル伯爵はサーシャに向かって、
「お前の婚約者はこちらにいらっしゃるバラス辺境伯だ」
バラス辺境伯は、サーシャを睨みつけながら、
「わしの元へ嫁いでくる約束だった。それを逃げ出すとは。ユリウス・ライドとの婚約は認めん。お前はわしの元へ嫁いでくるがいい」
サーシャは金のドレスを翻し、
「わたくしは、サーシャ。ベリス帝国の皇女です。皇帝陛下と皇妃殿下の許可を頂いて、ユリウス・ライドと婚約いたしました。貴方の元へ嫁ぐ事はありません」
ユリウスも、
「辺境伯閣下。私はサーシャ皇女様と婚約いたしました。誠に申し訳ありませんが、お引き取りを願いたい」
バラス辺境伯が何か言おうとしたのを遮ったのは、イリア皇妃だ。
「バラス辺境伯。ベリス帝国の皇帝と皇妃が決めた婚約に、ケチをつけるつもりか?不敬であろう」
「しかし、皇妃殿下」
ジルド皇太子も、
「そもそも、リヘル伯爵家の借金のかたに、義姉上を嫁がせると言う話だと聞いている。リヘル伯爵家の借金はリヘル伯爵自身が責任を取るべきであろう」
リヘル伯爵も、バラス辺境伯も悔し気に顔を歪めて、
バラス辺境伯は、
「我が軍勢を持って、皇女様をお出迎えしてもよいのですぞ」
デルト皇帝が、
「戦をしたいと見える。いいだろう。帝国軍総力を持って、辺境伯軍を迎え撃つが」
リヘル伯爵が喚いた。
「私の娘として育った女です。私がどうしようと勝手でしょう」
イリア皇妃が宣言した。
「サーシャ皇女は、皇帝陛下の血を引く皇女です。それを無理やり、連れていくというのなら、我が帝国軍が全力で迎え撃ちますわ。覚悟するがいい」
嬉しかった。自分は罪の子なのに、デルト皇帝も、イリア皇妃も、そしてジルド皇太子も守ってくれる。
ユリウスがサーシャの手をしっかりと握り締めてくれた。
何も怖くない。
二人を睨みつける。
リヘル伯爵もバラス辺境伯も、
「仕方が無い。今日の所は」
「そうじゃのう。いくらなんでも帝国軍を相手に戦いたくないわ」
二人はすごすごと去っていった。
サーシャはデルト皇帝と、イリア皇妃、ジルド皇太子に礼を言う。
「有難うございます。わたくしを守って下さって感謝致します」
デルト皇帝は頷いて、
「サーシャは我が娘だからな」
イリア皇妃も、
「しっかりと帝国の為に働いてもらわねばなりませんから」
ジルド皇太子も頷いて、
「義姉上。私の補佐をこれから先、頼みましたよ」
サーシャはカーテシーをし、三人に優雅に礼をした。
リヘル伯爵は借金が膨らんで、爵位を手放し、夜逃げした。
愛人であったエリーネはとっくのとうに姿をくらましていて、伯爵家の屋敷は壊されて、後は何も残らなかった。
バラス辺境伯はさすがに帝国を敵に回すのは嫌だったのか、あれから何も言ってこない。
マリー側妃の兄アーバン公爵と、イリア皇妃の兄ブルデ公爵は、互いに長年の派閥闘争に終止符を打ち、ジルド皇太子殿下とレティシア・パレント公爵令嬢との婚姻を持って、両派閥闘争は終結した。
そこにはジルド皇太子殿下がレティシアと一緒に、両公爵家に対して、派閥闘争を終結させるために手を結んだ事によって得られる利益を熱弁し、色々な貴族達に働きかけて動いた事が大きかったようである。
それにはエルドレッドやプリメシアも協力したようだ。
結局、若者たちの熱意にイリア皇妃も、マリー側妃も折れた形となった。
サーシャにはまだ、他の貴族達に対する影響を与える力がない。
でも、派閥闘争が終わった事に対して、帝国の未来は明るいと安堵したのであった。
サーシャはユリウスと、ジルド皇太子、レティシアと、エルドレッド、プリメシアと6人でテラスでお茶を飲んだ。
これからのベリス帝国を担う若者達の集まりだ。
皆で、これからの帝国について意見を交わし合う。
楽しかった。
春の日差しが若者たちを優しく照らし、日の暮れるまで熱い討論は続くのであった。
その夜、再び、ユリウスに抱き締められて、帝都を空から眺めた。
帝都の灯りはとてもキラキラして綺麗で、
サーシャはユリウスに向かって、
「わたくしの居場所はユリウス、貴方の腕の中ね」
ユリウスは微笑んで、
「そうだな。そして、皇宮の中で、サーシャは居場所を見つけた訳だ」
「綺麗な夜景ね」
「これから私達が良くしていく帝都だ。ベリス帝国だ」
ユリウスの腕の中で見つめるベリス帝国を、この帝都の景色を一生、覚えておこう。
彼に空に連れて行って、熱く語られて、わたくしは、生きる力を貰ったのだから。
「愛しているわ。ユリウス。ずっと傍にいて頂戴」
「私がずっと傍にいるのは当然だろう。さぁ熱く熱く燃え上がろう」
そうだったわ。ロマンティックから遠かった。
愛しているわ。ユリウス。愛しているわ。わたくしの家族。
愛しているわ。ベリス帝国。
わたくしは帝国の為に輝いて見せる。
ユリウスの腕の中で決意を新たにするサーシャであった。




