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辺境伯に嫁ぐはずだった令嬢、皇帝陛下に助けを求めたら皇女になりました。  作者: ユミヨシ


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3/6

ジルド皇太子の本音

サーシャがいくら頑張っても、ジルド皇太子から皇太子位を奪えない。

ジルド皇太子はプリメシアという婚約者を得て、やる気になったようで、最近ではデルト皇帝が中心となる政治の集まりにも積極的に出席し、意見を言い、さすがベリス帝国の未来の皇帝にふさわしいと、貴族達からの評判も上々だ。


それに比べて、サーシャは政治の集まりに呼ばれるより先に、教師による厳しい勉強が終わらず、それを学ぶことが精いっぱいで、女帝を目指すなんて遠い夢。


イリア皇妃からとある日、部屋に呼ばれて、


「貴方には失望しました。ジルドを追い落とすために、良い教師を集めて徹底的に貴方を教育させたのに。ジルドは優秀よ。婚約者を得てから、貴方を意識して、政治の場にも積極的に参加している。貴方との差は開くばかりだわ」


イリア皇妃に向かってサーシャは頭を下げる。


「ご期待に添えなくて申し訳ございません」


「皇帝陛下はまだまだ現役だから、ジルドの傍で学びなさい。自分に何が足りないか、解ると思うわ」


「承知しました」


義弟の傍で学べと言われた。


以前は遊び呆けていたと言われている義弟。

しかし、皇立学園での成績は優秀だったと聞く。

プリメシアと婚約をしてから、人が変わったように、政治の場にも顔出しするようになった。


サーシャはジルド皇太子の元を訪ねた。


二人きりで話したいとユリウスには遠慮してもらう。

使用人に頼み、取り次いで貰えば、会ってくれるという。

自室に招き入れられた。


「義姉上が私に用だとは。どのような?」


「皇帝陛下に貴方の傍で学べと言われました。わたくしに足りないものを」


「義姉上は女帝を目指しているのでしょう。しかし、私が皇帝になる。必ずだ。父上はなにを考えているのか。まぁ、いいでしょう。で?義姉上は私の何を学びたいのです?」


「貴方はどのように政治に参加しているの?わたくしはまだ参加資格すらないわ」


「色々な政務の責任者に会って話を聞いて、私の意見も聞いてもらう。勿論、最終決定は父上が決定するけれども。私が間違っていることもある。まだ時間がある。一つ一つ、学んでより帝国が発展するように良い判断が出来るように努力していくつもりだ。私は義姉上と違って、幼い頃から教育を受けているから義姉上に勝ち目はありませんよ」


「わたくしは皇妃様の為にも勝たなければなりません。わたくしが生まれて来た罪を償うためにも」


「そこから間違っていると思わないのですか?皇妃様の為に勝つ?それが義姉上の基本の考えなら、違うと言わざるを得ない。甘いな」


甘いと言われた。

ああ、でも甘いのは貴方も同じなのよ。

昨日、侍女のリアナから情報を貰っていたのだ。

リアナは、イリア皇妃がサーシャの世話をするために遣わした侍女である。


そのリアナの情報を元に、ジルドを揺さぶってみることにした。


「そういう、ジルド。貴方だって、今までやる気を見せなかったでしょう」


「皇位継承者が私しかいなかったから、黙っていても、私が皇帝になれるはずだった。だが、義姉上が現れた。有能な所を見せねばならない。だから、本気を出している」


「それだけかしら。貴方、プリメシアの事を愛しているわよね?」


ジルドがフンと鼻で笑って、


「愛している?そんな情報、どこで?彼女が必要だから婚約を結んだ。エルドレッドだって解ってくれて。ベリス帝国の皇妃にふさわしいのはプリメシアしかいない。だからエルドレッドが身を引いて、プリメシアが私の婚約者になった。それだけだ」


「幼い頃、エルドレッドの婚約者だったのにも関わらず、何度も愛を告白したそうね」


「10歳の頃の話だ。幼い頃の過ちだ」


「初恋だったって、聞いたわ。貴方、ずっとプリメシアの事が好きだったんじゃないの?」



ジルドはキっとサーシャの顔を睨みつけて、


「そ、そんな事はない。あくまで、私の伴侶にふさわしいと思ったから。エルドレッドが身を引いたから」


「プリメシアの気持ちはどうなのかしら?」


「プリメシアだって解ってくれている。私と結婚することが帝国の為に最良だって」


「エルドレッドとプリメシアは仲が良かったと聞いているわ。長年の婚約者だったんですもの。ああ、プリメシアがわたくしの事を敵視してくるのはきっと。わたくしがエルドレッドと婚約する可能性があるからだと思うわ。彼女はエルドレッドの事を愛しているのね。まだ……」


「義姉上。何が言いたい」


「いいの?このままプリメシアと結婚してしまっていいの?」


思い切り揺さぶってみた。

ジルドは両手で顔を覆って、


「帝国の為に最良だから。プリメシアも解っているから、だから婚約は解消しない」


「プリメシアの心に傷が残るわ。一生、深くえぐられるような傷が」



リアナが話してくれた。


デルト皇帝陛下と過ちを犯した母レティア。


イリア皇妃と婚約を結んでいたデルト皇帝、しかし、愛していたのはレティアだった。

婚約を解消しようとした。だが、当時の皇帝陛下とブルデ公爵が許さなかったのだ。イリアの方が優秀だから皇妃になるにふさわしいと。


レティアはリヘル伯爵の元へ嫁ぐこととなった。

愛する二人は引き裂かれたのだ。


二人は互いを忘れられなくて、一夜の過ちを犯した。



ジルドに向かって、


「わたくしの母は皇帝陛下と愛し合っていたの。お互いに別の伴侶がいながら、一夜の過ちを犯した。それは本当に良くないことだわ。もし、プリメシアがエルドレッドと過ちを犯したら?一生、ジルドの事を恨んでプリメシアが愛してくれなかったら?そんな寂しい事はないわ」


ジルドはフンと鼻で笑いながら、


「政略結婚とはそういうものだろう」


「でも、貴方は愛しているプリメシアの幸せは考えないの?」


「プリメシアの幸せ?私が考えるのはベリス帝国民の幸せだ」


「プリメシアを手に入れた貴方自身の幸せしか考えていないでしょう」


ジルドはふぅと息を吐いて、立ち上がった。

窓の外を眺めながら、


「義姉上。プリメシアが微笑んでくれない。プリメシアの心が遠いんだ。彼女の笑顔が好きだったのに。夜会でエルドレッドと共に踊るプリメシアを見て、エルドレッドに嫉妬をしていた。それと同時に幸せそうなプリメシアを見て、ああ、私に向かってああいう風に微笑んで欲しいとどんなに思ったことか。もう、二度と、あの微笑みは見られないのだな。きっと」


ジルドの傍に行き、後ろからそっと抱き着いた。


「婚約を解消してあげて。プリメシアとエルドレッドの幸せの為に。お願い」


ジルドは振り返って、


「婚約を解消しよう。改めて私の婚約者を探す事にする。義姉上。私を説得してくれて有難う」


揺さぶりをかけるはずが……婚約解消の話になってしまったわ。

でも、ジルドが寂しそうな顔をするのは嫌だとサーシャは思った。


たった一人の義弟ですもの。



プリメシアは婚約解消後、再びエルドレッドと婚約を結んだ。


エルドレッドとプリメシアが揃って、サーシャの元へ来て、


エルドレッドが、


「貴方が皇太子殿下に婚約を解消するようにと、私としては貴方と婚約を結んで、アーバン公爵派閥に取り込む必要があったのですが」


プリメシアはエルドレッドの腕に手を添えて、


「わたくしは、エルドレッドと再び婚約が結べて嬉しいわ。有難う。わたくし、ずっとエルドレッドと結婚する為に生きてきたの。だから、婚約を解消された時は絶望したわ。ベリス帝国の為に皇太子殿下の婚約者になって欲しいと、エルドレッドに言われて。

泣いたの。その場で承知したけれども、悲しくて悲しくて。でも、こうしてエルドレッドと再び婚約を結ぶことが出来た。有難うございます。サーシャ皇女様。わたくし、エルドレッドと共に幸せになるわ」


微笑むプリメシアが美しくて。

思わず見惚れてしまった。


「いえ、わたくしは大した事はしていません。どうか、お二人とも仲良く過ごして下さいね」



ユリウスが近くで護衛をしていて、サーシャに話しかけて来た。


「サーシャの婚約者はどうするんだ?」


ユリウスの顔を下から見上げて、


「さぁどうしようかしら。勉強の時間よ。行くわよ」


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