↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が遺してくれたもの〜運命の番を亡くした医師とΩの心臓を移植された少年〜  作者: さくら優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/24

ずっと一緒に ③

校門の前に行くと、ちらほらと生徒が出て来るところだった。ちょうど卒業式が終わって帰るところのようだ。


朝斗にはついさっき、校門に来ていることを連絡した。もし会えるなら会いたいと。すでに先約があれば仕方がないが。


「聖一さん!」


そんなことを考えていると、中から朝斗が出て来た。


「朝斗。悪いな、突然来て」

「いいけど、急にどうしたの?」

「うん。会いたくなったから。卒業おめでとう」

「あ、ありがとう⋯⋯」


朝斗は、照れくさそうに頬を染めた。


「少し、歩けるか?」

「うん」


駅とは反対方向へ向かって歩き始める。こっちは人通りが少なくて、話をするにはちょうど良かった。


「今日、親御さんは?」

「式には来てたよ。もう帰ったけど」

「そうか。相変わらずだな」

「俺は気楽でいいけどね~」


朝斗は心底そう思っている感じだった。それなら俺が言うことは何もない。


「そうだ、卒業祝いあげないとな。何がいい?」

「え、いいよそんなの」

「いや、良くない。大学の合格祝いもあげられてないし」

「俺、聖一さんに色々買ってもらっちゃって、その分も全然返せてないのに」


一緒に住んでいた間に、服や参考書なんかを揃えた時の話をしているのだろう。いつかちゃんと返すと言われている。


「その分は、大人になって働いて返してくれるって言ってただろ。卒業祝いは俺があげるものだから別物だ」

「うーん。考えとく」


こういう、なんてことのない、ちょっと先の未来の話を出来ることが、すごく嬉しかった。


きっと、ほぼ確実に現実になる未来。


真澄とはもう出来ない話。朝斗とも、手術の前はどこか現実味よりも希望が強かった話。


「そうだ、俺、これ渡そうと思ってて」

「ん?」


ふと、朝斗はバッグの中から折り畳んだ紙を取り出した。広げて見てみると、それは、文化祭の時に俺が欲しいと言った、朝斗が描いた絵だった。


「覚えててくれたんだな」

「まあ、ね。なんでそんなに気に入ってくれたのかわかんないけど」

「ありがとう。大事にする」


丁寧に折り畳んで胸ポケットにしまいながらそう言うと、朝斗はまた、照れた様子で顔を赤くした。照れるとすぐ顔に出るところも、すごく可愛く思えてしまう。


「今日、夢に真澄が出て来た」


この歳になって、他人に夢の話を語るなんてと思ったけれど、朝斗は馬鹿にするでもなく、穏やかに微笑んで訊いてきた。


「真澄さん、なんて?」

「無事に解決して良かったって」

「そっか」

「それから⋯、ドナーになったのは、俺の側にいるためとかじゃないって言われた」


朝斗がどの程度気にしているのか、はっきりとは俺にはわからないが、少なくとも、真澄ではなく自分が側にいることに対して、罪悪感を抱いているように思えた。


真澄が死んでしまった原因に朝斗は無関係で、仮に朝斗が移植を拒否したら、別の患者に真澄の心臓が渡っていただけで、真澄が生き続けられたわけでもない。


頭ではわかっていても、ふとした瞬間に感じる罪悪感のようなものを、なくしてしまうことは難しいだろう。だからこそ、ドナーのことは本人には伏せられているのだ。


「ごめんな。俺が規定を破って、真澄のことを話したから」

「⋯⋯聖一さんのせいじゃない。聞かなくても、わかってたし」

「それでも⋯⋯。朝斗は、何も気にしなくていいから。二人分の人生を背負う必要もない」


きっと、そんなことは真澄も望んでいない。俺の人生は俺だけのものだから。あいつならそう言うだろう。


そして俺も、あいつに一生囚われる、なんてことはないから。


「朝斗」

「――はい」

「好きだ」


朝斗は、一拍おいて大きく目を瞠った。


「多分、真澄のことを忘れることは出来ないし、こんなこと言ったら二股だって幻滅されるかもしれないけど、真澄が生きていた時も朝斗のことはずっと気にかかってて、」


はっきりと恋愛感情に変わったのは、真澄と同じΩのフェロモンがきっかけだったかもしれない。それでも――


「これからも、ずっと⋯⋯。一緒に生きていきたいと思ってる」

「ッ――、うん⋯⋯っ」


はっきりと頷いた後、朝斗は涙を隠すように両手で顔を覆った。


そっと肩に触れた後、腕を背中に回して強く抱き締める。


暖かい春の陽射しが差し込む下で、俺たちはそっと唇を触れ合わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。