ずっと一緒に ④
道端で告白劇をやってしまった後、とりあえず一緒にお昼を食べに行って、今は俺の家に来ていた。
「なんか飲むか?」
「ううん。今はいい。さっきドリンクバー頼んだし」
「そうか」
俺はソファに座る朝斗の隣に腰掛けた。食事の後、特に予定はないと言うので誘ってしまったが、なんとなく手持ち無沙汰だ。ついついどうでもいいような話を振ってしまう。
「卒業式の後って、皆で集まったりしないのか?」
俺の時は仲の良い友人グループで食べに行ったり、ちょっと羽目を外して遊んだりもしたが、今はそういうことはしないんだろうか。
「まだ入試が残ってる友達がいるから、その子の試験が終わったらやることになってるよ」
「なるほど。それならいいんだ」
朝斗は今まで色々制限が多く、やっと皆と同じように遊べるようになったんだから、俺のことを優先してくれるのは嬉しいが、友人との付き合いも大事にして欲しいと思う。
「そういえば、高梨さん、なんでうちの高校の制服着てたの?」
ふと思い出した様子で朝斗が問う。言われてみれば、その辺りの説明はしていなかった。
「高梨も卒業生らしいぞ」
「えっ、そうなんだ。最初うち来た時、すごくびっくりした」
「そうだよな。悪かった」
いきなり知らない人間が友人の名前を語って現れたら、詐欺か何かかと思うかもしれない。あの時は仕方なかったとはいえ、今思えば、やはり無理がある作戦だった。
「他に、何か気になってることあるか?」
「え?」
「説明してなかったこととかあるかなと思って。今なら全部話せるぞ」
「うーん。特に思い付かない」
「そうか。何か思い出したらまた訊いて」
「うん」
再び沈黙が落ちる。気まずいわけではないが、ちょっと落ち着かない。
すると、朝斗が肩に寄りかかってきた。顔を向けると、照れくさそうにくすっと笑う。
まだ明るいうちから手を出すのもな、と思っていたが、気付けばつい引き寄せられてしまっていた。
触れるだけのキスをして、至近距離で見つめ合う。覚えのある甘い香りが、鼻を掠めた気がした。
「朝斗、まだヒートの時期じゃないよな?」
「違うけど⋯⋯」
朝斗が自分の家に帰って以降、ヒートは抑制剤を出していた。
「聖一さん」
「ん?」
「次、ヒートの時は、ここに来てもいいよね?」
朝斗は、抑制剤を渡した時と同じ、少し不満気な顔をする。
「付き合うんだから、もういいでしょ?」
「⋯⋯ああ。いいよ」
頷くと、朝斗は小さく笑って頬を擦り寄せてきた。
もう一度、今度は深くキスをする。
「ん⋯⋯」
鼻にかかったような甘い声が漏れると、もう抑えることは出来なかった。
✦✦✦
「そういえば、聖一さんはスマホのパスワード何にしてるの? あっ、言いたくなかったら別にいいんだけど」
シャワーを浴びた後、ベッドでゴロゴロしながら、朝斗がそう訊いてきた。
訊いちゃいけなかったかと、慌てて付け足すところがちょっと可愛いなと思いながら、俺はスマホを取り出す。
「パスワード⋯⋯、初期値のままだな」
「初期値?」
「0000とか⋯⋯。ほら、普段は指紋認証だし」
変えた記憶がなくて確認すると、やはりそうなっていた。
「不用心じゃない?」
「まあ、見られて困るようなものもないし」
「そうなの? じゃあ見てもいい?」
「いいよ」
ほら、とスマホを渡すと、朝斗は写真のフォルダを開いた。
正直、写真はほとんどが真澄の写真なので、あまり見ても楽しくないのではないだろうか。後は、この前朝斗と一緒に住んでいた時に撮ったものが少しと、それから⋯⋯
「なにこれ?」
「ん? あっ!」
見られて困るものはないと言ったが、そう言えば1つ謝らなければならないことがあるのを思い出した。
朝斗が見つけて不穏な声を出したのは、高梨から送られてきた例の盗撮写真だった。
「なんでこんな写真があるの?」
「ああー、これはな⋯⋯」
全部終わったら謝っておいてくれと言われたのもあるし、俺は事情を説明する。
「悪かった。朝斗が嫌なら消すし、高梨にも言っとく。っていうか、あいつは多分もう消してると思うけど」
「別に、消さなくてもいいけど⋯⋯」
若干モヤモヤした様子で、朝斗はスマホを返してくる。
俺はそれを受け取った後、そっと朝斗を抱き締めた。
「怒ってるか?」
「⋯⋯怒ってないよ。俺のこと、守ろうとしてくれてたの、わかってるし」
「うん」
額に口付けると、顔を上げて目を合わせてくる。
「これからも、守ってくれる?」
「もちろん」
「あと、俺も聖一さんのこと守りたい」
「期待してる。けど、無茶はしないでくれ」
「うん」
抱き締めた腕に力を込めると、朝斗も背中に腕を回してきた。
「これからも、ずっと、守れる距離に――、側にいてほしい」
「――はい」
願うように囁く。朝斗は、優しく微笑んで頷いた。
どちらからともなく顔を寄せ、まるでその言葉に誓いを立てるように、そっとキスをした。
END.




