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君が遺してくれたもの〜運命の番を亡くした医師とΩの心臓を移植された少年〜  作者: さくら優


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24/24

ずっと一緒に ④

道端で告白劇をやってしまった後、とりあえず一緒にお昼を食べに行って、今は俺の家に来ていた。


「なんか飲むか?」

「ううん。今はいい。さっきドリンクバー頼んだし」

「そうか」


俺はソファに座る朝斗の隣に腰掛けた。食事の後、特に予定はないと言うので誘ってしまったが、なんとなく手持ち無沙汰だ。ついついどうでもいいような話を振ってしまう。


「卒業式の後って、皆で集まったりしないのか?」


俺の時は仲の良い友人グループで食べに行ったり、ちょっと羽目を外して遊んだりもしたが、今はそういうことはしないんだろうか。


「まだ入試が残ってる友達がいるから、その子の試験が終わったらやることになってるよ」

「なるほど。それならいいんだ」


朝斗は今まで色々制限が多く、やっと皆と同じように遊べるようになったんだから、俺のことを優先してくれるのは嬉しいが、友人との付き合いも大事にして欲しいと思う。


「そういえば、高梨さん、なんでうちの高校の制服着てたの?」


ふと思い出した様子で朝斗が問う。言われてみれば、その辺りの説明はしていなかった。


「高梨も卒業生らしいぞ」

「えっ、そうなんだ。最初うち来た時、すごくびっくりした」

「そうだよな。悪かった」


いきなり知らない人間が友人の名前を語って現れたら、詐欺か何かかと思うかもしれない。あの時は仕方なかったとはいえ、今思えば、やはり無理がある作戦だった。


「他に、何か気になってることあるか?」

「え?」

「説明してなかったこととかあるかなと思って。今なら全部話せるぞ」

「うーん。特に思い付かない」

「そうか。何か思い出したらまた訊いて」

「うん」


再び沈黙が落ちる。気まずいわけではないが、ちょっと落ち着かない。


すると、朝斗が肩に寄りかかってきた。顔を向けると、照れくさそうにくすっと笑う。


まだ明るいうちから手を出すのもな、と思っていたが、気付けばつい引き寄せられてしまっていた。


触れるだけのキスをして、至近距離で見つめ合う。覚えのある甘い香りが、鼻を掠めた気がした。


「朝斗、まだヒートの時期じゃないよな?」

「違うけど⋯⋯」


朝斗が自分の家に帰って以降、ヒートは抑制剤を出していた。


「聖一さん」

「ん?」

「次、ヒートの時は、ここに来てもいいよね?」


朝斗は、抑制剤を渡した時と同じ、少し不満気な顔をする。


「付き合うんだから、もういいでしょ?」

「⋯⋯ああ。いいよ」


頷くと、朝斗は小さく笑って頬を擦り寄せてきた。


もう一度、今度は深くキスをする。


「ん⋯⋯」


鼻にかかったような甘い声が漏れると、もう抑えることは出来なかった。



   ✦✦✦


「そういえば、聖一さんはスマホのパスワード何にしてるの? あっ、言いたくなかったら別にいいんだけど」


シャワーを浴びた後、ベッドでゴロゴロしながら、朝斗がそう訊いてきた。


訊いちゃいけなかったかと、慌てて付け足すところがちょっと可愛いなと思いながら、俺はスマホを取り出す。


「パスワード⋯⋯、初期値のままだな」

「初期値?」

「0000とか⋯⋯。ほら、普段は指紋認証だし」


変えた記憶がなくて確認すると、やはりそうなっていた。


「不用心じゃない?」

「まあ、見られて困るようなものもないし」

「そうなの? じゃあ見てもいい?」

「いいよ」


ほら、とスマホを渡すと、朝斗は写真のフォルダを開いた。


正直、写真はほとんどが真澄の写真なので、あまり見ても楽しくないのではないだろうか。後は、この前朝斗と一緒に住んでいた時に撮ったものが少しと、それから⋯⋯


「なにこれ?」

「ん? あっ!」


見られて困るものはないと言ったが、そう言えば1つ謝らなければならないことがあるのを思い出した。


朝斗が見つけて不穏な声を出したのは、高梨から送られてきた例の盗撮写真だった。


「なんでこんな写真があるの?」

「ああー、これはな⋯⋯」


全部終わったら謝っておいてくれと言われたのもあるし、俺は事情を説明する。


「悪かった。朝斗が嫌なら消すし、高梨にも言っとく。っていうか、あいつは多分もう消してると思うけど」

「別に、消さなくてもいいけど⋯⋯」


若干モヤモヤした様子で、朝斗はスマホを返してくる。


俺はそれを受け取った後、そっと朝斗を抱き締めた。


「怒ってるか?」

「⋯⋯怒ってないよ。俺のこと、守ろうとしてくれてたの、わかってるし」

「うん」


額に口付けると、顔を上げて目を合わせてくる。


「これからも、守ってくれる?」

「もちろん」

「あと、俺も聖一さんのこと守りたい」

「期待してる。けど、無茶はしないでくれ」

「うん」


抱き締めた腕に力を込めると、朝斗も背中に腕を回してきた。


「これからも、ずっと、守れる距離に――、側にいてほしい」

「――はい」


願うように囁く。朝斗は、優しく微笑んで頷いた。


どちらからともなく顔を寄せ、まるでその言葉に誓いを立てるように、そっとキスをした。


END.


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