↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が遺してくれたもの〜運命の番を亡くした医師とΩの心臓を移植された少年〜  作者: さくら優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/24

それぞれの気持ち ①

俺の家から安全な場所へ移動した翌日、朝斗と買い物に出掛けることにした。


「出かけて大丈夫なの?」

「こんなとこまでは副院長たちも来ないし、大丈夫だ」


一応、軽く変装はする。


買い物くらいは行かないと、なにせ朝斗はほぼ身一つで来てしまったので、着替えなどもほとんどない状態だった。


「って言っても、そんな頻繁には出かけられないだろうし。買い物の後、どこか行きたいところあるか?」


せっかくなので、少しくらい遊びに行ってもいいだろう。


そう言うと、朝斗は途端目を輝かせる。


「この辺何があるの?」

「そうだな⋯⋯」


スマホで検索すると、隣から画面を覗き込んでくる。


ショッピングモールで買い物をして、そのままモールの中ででも、結構色んなことが出来そうだ。


「あっ、これ行きたい」


スクロールしていた画面を止めて、朝斗が指差した店をタップする。


「ここか?」

「うん。いい?」

「いいよ」

「やった!」


嬉しそうな顔をする朝斗を見ていると、俺は少しだけ、胸が熱くなった。



   ✦✦✦


朝斗が行きたいと言った場所は、スイーツビュッフェの店だった。


買い物を済ませてから店に入る。結構あちこち回ったから、休憩するにもちょうどいい。


「聖一さんはケーキとか好き?」

「まあ、嫌いじゃないけど」


好き好んでスイーツビュッフェに行くほどではないな。今回は朝斗のリクエストがあったからだ。


朝斗は、手術をする前は甘いものはあまり食べられなかった。心臓に負担がかかるからだ。ショートケーキ1切れすら食べきれない。


だから、今こうして好きなだけ食べられるようになったことが、俺もすごく嬉しい。


「とりあえず1個ずつ取ってこうかな~」

「あんまり食べ過ぎるなよ」

「はーい。あ、パスタとかもあるよ」


ちゃんと聞いているのか謎な返しに、俺は苦笑した。


皿いっぱいにケーキを乗せて席に戻ると、朝斗はスマホで写真を撮る。


俺もそんな朝斗を写真に収めた。


それにしても、なんか、こういうことしてるとデートみたいだな。周りを見ても、カップルらしき2人組が多い。


「どうかした?」


俺が周囲に気を取られていると、ふと、朝斗が首を傾げてじっとこっちを見てくる。


朝斗はこの状況をどう思っているのだろう。


「いや、なんか、デートみたいだなと思って」

「えっ⋯⋯」


そんな気はなかったのか、朝斗は僅かに動揺した様子で視線を逸らした。頬が赤くなっている。


「デートなら、もっとちゃんとお洒落とかしたかったな」

「じゃあ、今日のはノーカンか?」

「⋯⋯うん」


頷きながらも、朝斗は満更でもなさそうだ。今日は服を選ぶ余地もなかったので仕方がない。また今度、落ち着いたらリベンジしよう。


スイーツビュッフェの後は特に予定は決めていなかったのだが、ぶらぶら散歩でもしながらのんびりすればいいだろう。


もう少しこうしていたくて、隣を歩く朝斗にそう提案しようとしたところで、ふと、人混みの中に見知った顔を見つけた気がした。


「朝斗、こっち」

「?」


咄嗟に朝斗の腕を掴み、すぐさま近くの通路に身を隠す。観葉植物の鉢が置かれていて、いい感じに隠れることが出来た。


緊迫した空気が伝わったのか、朝斗も緊張した様子で見上げてくる。


俺は植物の葉の影から、人混みの様子を伺った。けれど、知り合いだと思った人物は人違いで、その他も特段怪しい人はいない。


俺はほっと息を吐いた。


「悪い、気のせいだった」

「もう平気?」

「ああ」


心配ないと笑みを向けると、朝斗もほっとした様子で肩の力を抜いた。密着したところから、まるで全てを預けるかのように、安堵が伝わってくる。


俺は抱き締める腕に僅かに力を込めた。


「ぁ⋯⋯、聖一さん?」


手の平で頬に触れると、戸惑ったような目を向けてくるが、嫌がる素振りはなかった。


その唇にそっとキスを落とす。


今日のはデートではない、ノーカウントだとさっき話したばかりだったのに。


軽く啄んでから唇を離す。無意識なんだろうが、吐き出された吐息が頬にかかり、1度で止めるのに理性を総動員しなければならなかった。


「帰るか」

「⋯⋯うん」


朝斗は、赤くなった頬を隠すように俯く。俺はその手に、そっと自分の指を絡めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。