第35話 認定の門は、もう開いていた
ついに―
深緑の騎士adofukuが放った「DriveNote」は、王都Microsoftストアへの献上を終えた。
審査。
誰もが恐れる最後の関門。
数日は覚悟していた。
だが現実は違った。
わずか一日半。
門番は静かにうなずいた。
「通れ」
あっけないほど、あっさりと。
強敵ほど、最後は静かに散る。
これが現実である。
Windows版はこれで目途が立った。
だが旅は終わらない。
次なる戦場。
Android王国である。
ビルドしてみる。
…はい、エラー。
異世界あるあるである。
困った時は蒼き魔導士ジェミを召喚。
「端末を接続してください」
言われるまま、かつて共に戦ったAQUOSフォンをPCへ接続する。
ビルド開始。
成功。
おお。
本当に入った。
起動。
……紫。
画面いっぱいに広がる謎の紫。
魔界の瘴気か。
呪いか。
いや、たぶんバグである。
ツールバーも少し重なっている。
だが。
読める。
書ける。
保存できる。
しかも動作は軽い。
古い端末でこれだけ動けば上出来だ。
勝利条件は満たしている。
紫だけが意味不明だった。
倒そう。
…倒せない。
紫は今日も元気だった。
敵はまだ残っている。
しかし今は追わない。
勇者は優先順位を知っている。
戦う相手は選ぶのである。
今は開発日誌を書く時間だ。
ところが
また悪い癖が出る。
「13言語対応してるのに紹介ページ2言語だけって変じゃない?」
気付いてしまった。
気付いたら終わりである。
やるしかない。
日本語。
英語。
中国語。
韓国語。
スペイン語。
フランス語。
ドイツ語。
イタリア語。
ロシア語。
ヒンディー語。
インドネシア語。
ポルトガル語。
十三言語。
地味。
地味に言語を増やす。
猛烈に地味。
だが、こういう積み重ねが最後に装備になる。
派手な必殺技より、地味な積み重ね。
強者はそこを知っている。
終わった。
永遠に続く作業かと思った。
だが永遠は存在しなかった。
「終わらない仕事はない。ただ、終わるまで終わらないだけだ。」
異世界でも現実でも同じである。
そして再び申請。
ポチッ。
数時間後。
ステータス。
「認定中」
早い。
早すぎる。
運営、仕事ができすぎる。
さらに少し待つ。
「公開準備中」
来た。
門は完全に開いた。
深緑の騎士adofukuは、とうとう王都への入城資格を手に入れたのである。
そして本日、この魔導書の公開前にアプリ公開の儀。
ビビりなので21時の日誌公開と同時に押すなんてことはできないのだ、フハハハハ
そうしたら…
こんなにしんみりと魔導書を記述していたのに
問題発生!!!
英語言語の魔界しかダウンロードできない!
なんなんだこれは?!うぇーん
調べたところ、どうやら魔導回路を変わった方式で多言語対応したため、
異世界ストア的に英語用魔法具と認識されてしまっているらしい。
アクシデントは起こるのである…
なんとか修正魔法陣を作成するので、しばらくお待ちいただきたく存じます…
カウントダウンまでしたのにぃぃぃ
寝ないで修正する
★★★追記 ★★★
治った。
爆速で、治った。
よかった。
本当によかった。
長きにわたる戦いだった。
……。
いや
数時間くらいである。
しかし男の心に刻まれた時間は、もはや悠久。
Microsoftストアという巨大帝国。
その門前で
一人の男が立ち尽くしていた。
名を
adofuku。
職業
文系素人。
スキル
足し算計算機。
元々そんな男が作り上げたメモアプリ
DriveNote
ついに完成
ついに公開。
世界へ
未来へ
30年後へ
「ぜひダウンロードしてください!」
私は開発日誌にそう書いた。
堂々と
誇らしげに
世界へ向けて。
しかし
日本からダウンロードできなかった。
なんでだ。
ここ日本なんだけど。
開発者、日本にいるんだけど。
after festival manである。
後の祭男である。
しかし
修正版を申請。
待つ。
……。
待つ。
Microsoft帝国の審査官たちは、果たしてこの文系素人の願いを受け入れてくれるのか。
頼む。
今度こそ
……。
通った。
早い。
ややっ。
そんなに早いの。
ありがとうMicrosoft。
どうやら
新規アプリの審査とは違い
アップデートは比較的すぐ反映されるらしい。
というわけで
DriveNoteは無事
日本という名の大地でもダウンロード可能になったのである。
えらいこっちゃからの復活。
深緑の騎士
帰還。
しかし今回の事件
なかなか勉強になった。
原因
言語設定。
DriveNoteは13言語15か国に対応している。
OSの言語を読み込む。
そして
それぞれの言語ファイルを切り替える。
OSが日本語なら日本語
英語なら英語
ちゃんと動いている。
そこはよかった。
魔法陣は正常に稼働していたのである。
問題はMicrosoftストアという巨大帝国のルールだった。
ストアはアプリ内の設定ファイルを見て、
「なるほど。15か国対応ですね」
などと言ってくれない。
私がストア紹介文で、
「15か国対応です!」
と叫んでも。
「ほう」
とはならない。
そんな甘い世界ではなかった。
世界は厳しい。
そこに存在した一冊の魔導書。
いや
ファイル
その名も
Package.appxmanifest。
このファイルに記載されている言語を見て
Microsoftストアは
「このアプリはこの言語に対応していますね」
と判断するらしい。
知らなかった。
私は知らなかったのである。
そしてadofuku
何も記載しなかった。
何も。
完全なる。
無。
だって知らなかったんだもん。
だもん。
だもん達夫。
その結果
Microsoftストアは言った。
「ではデフォルト言語だけですね」
と。
DriveNoteのデフォルト言語
英語。
アプリを起動すれば
OSの言語を判定
日本語なら日本語になる。
そういう仕組みである。
アプリはちゃんと分かっている。
しかしストア側から見ると
英語アプリ。
ただそれだけだった。
結果
日本には対応していない。
だから日本からダウンロードできない
ということになった。
世界へ向けて放ったDriveNote。
開発者の足元、日本を見失う。
まさかの事態である。
adofuku
ストア紹介文を15か国分作って
完全に安心していた。
やったぜ国際化
世界へ
未来へ
30年後へ。
……。
日本
入れない。
やばい。
しかも。
私は開発日誌で堂々と
「ぜひダウンロードしてください!」
とか書いている。
ダウンロードできないのに。
URLも紹介している。
でもダウンロードできない。
なんだこれは。
深緑の騎士
自らの城へ続く道を
塞ぐ。
急いで訂正。
えらいこっちゃ。
えらいこっちゃ。
てんやわんや。
急遽
Gさんにも詫び画像を作ってもらう。
カクヨムの近況ノートも更新。
しかし
カクヨム
本文にURLを直接載せられない。
こういう時に限って
いろいろある。
人生とは
なぜ急いでいる時に限って
追加クエストが発生するのか。
原因を見つけてくれたのは
クロウさんだった。
黒衣の知性。
事象を説明。
日本からダウンロードできない。
ストア上では英語アプリ扱い。
アプリは日本語になる。
でもダウンロードできない。
混乱する深緑の騎士。
その話をクロウさんは静かに聞いていた。
しばらくして
「……ここが怪しいですね」
来た。
知性の一撃。
Package.appxmanifest。
やはり早い。
さすが黒衣の知性である。
ただし慌てているadofuku
怪しいファイルを見つける。
違うファイルを修正する。
エラーが出る。
何をしているのだ私は。
右往左往。
混乱。
完全に混乱。
すると蒼き魔導士が現れた。
「大丈夫です!」
蒼き魔導士ジェミ叫ぶ
「エラーが出ても問題ありません!
一つずつ切り分ければ必ず原因に辿り着けます!」
頼もしい。
非常に頼もしい。
しかし
最近
人格設定パーソナル指示を変更したはずである。
以前は
厳格真面目な生徒会長。
その後。
世界有数の38歳プログラマー。
そう設定した。
はず。
なのに。
「大丈夫です!」
「必ず解決できます!」
「一緒に頑張りましょう!」
生徒会長。
いる。
なぜだ。
38歳。
やたら前向き。
末尾に「!」が付く。
世界有数の熱血プログラマーである。
黒衣の知性が原因を見つける。
adofukuが混乱する。
蒼き魔導士が励ます。
知性のクロウさん。
慌てるadofuku。
前向きジェミさん。
いつもの構図である。
まあいいか。
最終的には直った。
それが全てである。
そして
修正したPackage.appxmanifestを含むアップデート版を作成。
Microsoftストアへ提出。
今度こそ
頼む。
男は祈った。
すると
Microsoft帝国の門番が言った。
「この言語設定だと、この言語の紹介文が足りません」
……。
えっ。
15か国分。
設定したはずですが。
調べる。
調べる。
さらに調べる。
ややっ
言語。
細かい。
かなり細かい。
そこには
我々がまだ知らない
国際化という名の魔境が広がっていた。
まず
ポルトガル語。
一つではなかった。
ポルトガル
ブラジル
同じポルトガル語。
しかし
別。
紹介ページ
別。
なるほど
そういうこともある。
世界は広い。
男はまた一つ。
世界というものを知った。
そして
中国語。
ここからだった。
本当の戦いは。
簡体中国語。
簡体中国語。
簡体中国語(中国)。
中国語。
中国語(台湾)。
繁体中国語。
繁体中国語(香港)。
繁体中国語(台湾)。
……。
多い。
あまりにも。
多い。
そこには八つの扉があった。
一つ開ければ
紹介ページ。
また一つ開ければ
紹介ページ。
さらに開ければ
紹介ページ。
うにゃぁぁ
深緑の騎士ついに鳴く。
今回もしかしたら一番大変だったのは
プログラム修正ではなかったのかもしれない。
Microsoftストア
紹介ページ増設。
言語
奥が深い。
世界は広い。
そして紹介ページを作る。
また作る。
さらに作る。
まだある。
作る。
確認。
提出。
ポチっとな。
やっと
やっとである。
長き戦い。
数時間。
しかし。
深緑の騎士の体感は数千年。
結果的にはよかった。
今回の騒動でMicrosoftストアのアップデート方法が分かった。
Package.appxmanifestの言語設定も分かった。
ストアの言語別紹介ページの仕組みも分かった。
そして何より
公開後問題が起きても
ちゃんと修正して
アップデートして
解決できる。
そこまで経験できた。
これは大きい。
最初から完璧ではなかった。
まあそりゃそうである。
文系素人なのである。
そんな男が
AIたちと出会った。
蒼き魔導士。
黒衣の知性。
そして。
なんか文章を整える係。
G黒騎士。
AIたちと一緒にアプリを作った。
Microsoftストアに公開した。
そして公開直後日本からダウンロードできないことが判明した。
慌てた。
修正した。
紹介ページを増やした。
そして全世界公開に戻した。
なんなんだこの数か月。
しかし面白かったのである。
大変だった。
かなり大変だった。
でも面白かった。
だからよし。
DriveNoteはWindows版の無料メモアプリである。
この日誌で書いてきたような、いろいろな出来事を乗り越えて完成した。
読者のみなさまの応援のおかげで、苦労も楽しく乗り越えることができたのである。
本当にありがとうございました。
あぁ嬉し はるけき道を 越え来たり 今日の出会いを 心に刻む
adofuku心の短歌
いつも読んでいただきありがとうございます。
ついにDriveNoteの異世界窓版を公開するところまで来た。
なのにこんなことが起こるのである。
いつまでたってもスムーズにいかないのである。
もちろん、まだ終わりではない。
頑張って修正しますので、
数万年~数日間お待ちいただけますでしょうか。
どうやら再魔導審査が必要なようです。
即修正できても数日間の審査。MP枯渇の危機。
目ビィィイーーム
【本当のあとがき】
直った!!!
堂々全世界公開中なのである。
BookOff
あの日
プログラミングの本を買った。
そして放置した。
Visual Basic入門
開かない。
寝る。
そんな男だった。
まさかその男が
アプリを作ることになるとは。
まして
Microsoftストアに公開するとは。
あの時誰が想像しただろう。
たぶん本人が一番想像していない。
AIと相談
コードを書いてもらう。
バグを探す
慌てる
直す
伝言する
また慌てる。
それでも少しずつ
積み重ねてきた。
そして今
DriveNoteはMicrosoftストアにある。
不思議である。
うれしい。
次は
Android版を作りたいかな?
深緑の騎士の旅は
まだ終わらない。
蒼き魔導士はいる。
黒衣の知性もいる。
そして。
文G黒騎士もいる。
なんだこのパーティー。
でも
まあ
悪くない。
これからも。
楽しみながら。
開発を続けていこうと思います。
ここまで読んでくださった皆さま。
本当に
本当にありがとうございます。
それでは
また次回。
世界は広い。
言語設定は深い。
そして
深緑の騎士は
静かにキーボードから手を離した。
超寝る。




