三十二 挨拶
旦那様と想いが通じ合ったあと、私は旦那様に支えられながらリュウの背で寝てしまった。らしい・・
気付けば皇宮の一部屋に寝かされており目覚めた。人の気配がして顔を向けるとそこにはフミさんがいて
「清子さま!大丈夫でございますか?痛むところは?琉生さま!琉生さまー!!」
と大騒ぎした。
何と私は丸二日眠っていた様で、フミさんには心配ばかりかけてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
本来なら直接皇女様に謁見しなければいけないのに、私が目覚めないから日にちを延期してもらう事になった。そうで・・次の日にお見舞いに来てくれた凪様にも謝った。
「凪様からも皇女様に謝っていただけますか?私ごときのせいでお忙しい皇女様のお時間を・・」
「落ち着いて清子さん。章子様はお優しいお方だから大丈夫よ!清子さんの方が大変だったのだから、今はしっかり休ませる様に言って下さったくらいよ!」
私はベッドの中から頭を下げた。
「本当に大変だったわね」
「・・・」
凪様は私の出生の事も知っているのだろうが、何も聞いてこない。この方も旦那様と一緒で優しいお方だ。
「お兄様とはどうかなった?あれからフミと屋敷を片付けてるみたいで、ずっと隊もお休みしているのよ!」
「・・・えっ?」
屋敷を片付けてる?私の帰る場所は?
旦那様を疑う訳では無いけれど、自分のいない間に片付けられると不安になる。
それに私の中で一番の心配事を旦那様と相談したいのに・・
「そんな顔をしないで。今日の夕方にはお兄様はこちらに来るから。その時に二人でちゃんと話し合ってね」
凪様はそう言い終わると部屋から出て行った。
そして凪様の言う通りその日の夕方に旦那様は私の部屋へとやって来た。
「旦那様!」
私はまだベッドから出る事を許されていない為、ベッドの上から旦那様の訪問を喜んだ。
「すっかり元気になったな」
「はい、明日お医者様に診ていただいて、異常が無ければベッドから出られます」
「そうか、もう少しの辛抱だな」
旦那様は嬉しそうにイスヘ腰掛けた。
私は自分の不安を旦那様に伝えようか悩んでいると
「清子に伝えたい事があるんだ」
と、旦那様の方から話しかけてくれた。
「はい、何でしょう」
「・・急で悪いが私の両親に会ってもらいたいんだ」
「!」
「その、結婚となると両親の承諾が必要だろう?これでも一応は次期辺境伯なのだから」
「そ、そうですね。もちろんです!私も旦那様のご両親様とお会いしてご挨拶したいと思っておりましたから!」
「そうか、良かった」
旦那様もちゃんと考えてくれていた事に安堵した。たとえ旦那様が私を望んでくれたとしても私は子爵令嬢だ。辺境伯夫人となると伯爵家以上の令嬢が一般的だから。
「では早速あってもらおう!」
「・・!えっ、今からですか!」
旦那様は私の言葉を聞いてか聞かずか、扉の方へと向かった。
私の手は宙でブラブラしてしまったが、扉が開くか開かないかの瞬間 バンッッ! と、大きく開いた。
扉に立っていたのは旦那様と同じくらいの体格の、旦那様と同じ髪色と瞳をした男性と、凪様より小さな可愛らしい女性が並んでだっている。
「父上、私が開ける前に開けたら清子が驚くでしょう?」
「将来の娘に会いに来たのになぜ開けてはダメなんだ?なあ母さん」
「貴方の言う事もわかりますが、お相手は私たちと初めて会うのですからそこは気を使ってあげないと」
扉の前で親子で揉めている。
私は声を掛けて良いのか悩んでいると
「入るのか入らないのかハッキリなさってください!清子さまが困っていらっしゃいますわ!」
フミさんの言葉に三人が一斉にこちらを見た。
その三人の顔があまりにもそっくりで・・
「清子?何がそんなに可笑しいんだ?」
声を出して笑ってしまった。
「お初にお目にかかります。野上子爵が長女、清子と申します。火ノ川辺境伯様、並びに奥様にご挨拶致します」
ベッドの上からなど失礼でしか無いが、まだ主治医から許可がおりていないため許してもらった。
「話は琉生から聞いているよ。琉生の相手がやっと決まって私たちとしても喜んでいるんだ」
「初めまして清子さん。琉生の母です。この子はずっと相手は自分で探すと言って聞かなかったの。だからとても嬉しいのよ」
「ありがとうございます」
祝福してもらえると思わなくて涙が溢れる。
そんな私を見たフミさんはハンカチを手渡してくれると
「清子さまが心配される事は何一つありませんよ。このフミが全身全霊をかけて清子さまをお守りしますからね」
「フミさん・・ありがとうございます」
私がふふふと笑うとフミさんも笑った。
「辺境伯様、夫人。よろしくお願い致します」
私が深く頭を下げると
堅苦しい挨拶はやめて〜!とお義母様も笑う。
旦那様まも嬉しそうに笑っている。
私はこの方達と家族になるんだ・・
そう思えたら胸の辺りがとても暖かくなった。
お母様が生きていたら一緒に喜んでくれたかな?
当たり前じゃ、お主も千代も妾の娘じゃからな
「!!」
「!清子?」
藤花様の声が突然聞こえてきて、思わず振り向いた。
そして旦那様たちの方を向けば私を見て驚く三人の顔が・・
「あっ・・」
見れば髪の色が変わっていた。どうやら藤花様の声に私の中のあやめ様が反応してしまったらしい。
この姿になると相手の心の声が聞こえてきてしまう・・
そう思い耳を塞ぐも間に合わず、私の耳に届いた言葉は・・
(あら、琉生様が仰られていたお姿?可愛らしい)
(まぁまぁ、章子様から聞いていたけど、実際に見ると可愛らしい姿ねぇ)
(これはまた・・不思議な髪色だなぁ。これは他家に知られたらまずいな、琉生にはしっかり守るように言い聞かせないとな!)
と、きみ悪がられると思っていたのに逆に好印象だった。
そして旦那様と言えば・・
(・・・・)
心の声が聞こえてこない。
不安になりながら旦那様を見れば・・
「お前、何顔を赤くしているんだ?」
「う、うるさい父上」
私を見て顔を赤くする旦那様がいた。
旦那様は私の目を見て何か訴えているようで・・
そっと心の声を聞いてみたい。
(どの姿でも清子は清子だ。とても、可愛いよ)
と、旦那様の声が直接耳に入り私はその場で倒れてしまった。
次回最終話となります!




