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虐げられた令嬢は冷徹と言われる軍人と優しい夢を見る  作者: おつかれナス


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二十四 清子の力 ニ

 前の日に凪へ式を送り章子(あきこ)様に時間を作って貰えるよう頼んだ。

 式は直ぐに戻って来て、本日御目通りが叶った。


「琉生、面を上げよ」


 章子様のお声がかかり顔を上げると、今日も、金の髪をなびかせた美しい顔をした皇女が私を見下ろしている。

 その斜め後ろには妹の凪が控えていた。


「で、(わらわ)に話があると凪から聞いたが」

「はい・・浦部の力が何なのか分かりました」


 私は敢えて清子の事は控えた。

 章子様に限って清子を利用しようとは思っていないと思うが、まだ話す時では無いと判断したからだ。


「ほう、良く調べたな」

「野上清子の乳母から聞き出しました」

「・・そうか。で?浦部の力とは?」


 私はヨシから聞いた清子の母、千代の力を話した。章子様はその力に感心し興味を持たれた。

 それもそうだ。千代の力だけでも欲しい力だ。

 相手の感情が色で診えるのなら、会話をせずとも判断できるしその後の対応も可能だ。


「本来ならばその力は天皇家のものになったのにな・・惜しい事をしたものだ。まぁ過ぎた事を咎める必要もあるまい。それで、その娘である清子の力とは何なのだ?」

「それが・・」


 話すか話すまいか悩んでいると凪から言葉がかかる。


「火ノ川のご当主。皇女様の質問に嘘偽りなく話されよ」

「クク、凪は兄には厳しいのう。良い、琉生が話したくなった時に話せ。何か理由あって話さぬのだろう。なぁ、琉生よ」


 私は章子様の言葉に礼を尽くすよう頭を深く下げた。凪は納得のいかない顔をしていたが章子様の言葉には逆らえず黙った。


 清子の力は言えない。

 言えば章子様の元へ送らなければならなくなる。

 (強制の力)

 まだ清子本人が使った事は無いが、もしその力を人前で使ってしまえば、今度は清子本人が狙われる。

 それだけは避けなければならない・・


「そのような力があるのですね。まだ清子さまは覚醒されていない様ですが、何かのきっかけで覚醒するのでしょうか?」


 昨夜、清子が寝たのを確認したフミが私の部屋へ来た。ヨシとの対面が気になったのだろう。

 私にとっても、清子にとってもフミは頼れる存在だ。だから包み隠さず話した。

 フミはとても驚いていたが、こうして火ノ川の屋敷に来てくれた事が嬉しいと涙ながらに言った。


「いつ覚醒するのか、しているのかは本人も分かっていない。清子の母の封印がどこまで耐えられるのかも・・いっそ覚醒などしなくても良いのだが」


 思わず本音がこぼれる。

 このまま静かに三人で暮らせたならどんなに良いだろう。もし清子の力が周りに知られ狙われたら、今の生活は壊されてしまう・・


「琉生様。お一人で抱え込まないでくださいね。私も一緒に清子さまをお守りしますから」

「!そうだな・・フミが清子を守ってくれたらそれだけで安心だ」


 そう、この生活を続ける為に清子を守らなければ・・



「おはようございます旦那様。その、昨日は本当にありがとうございました」


 朝食の支度が整ったとフミに声を掛けられ居間に行けば、朝から頭を下げる清子がいた。

 

「昨夜はちゃんとお礼も言えず、申し訳ありませんでした。まさか本当にヨシと会えるなんて思ってもいなくて・・」

「ああ、分かったから頭を上げなさい」


 頭を下げながらお礼を言う清子に声を掛けると、そろそろと頭を上げた。

 昨夜は良く眠れた様で顔色も良い。


「これからは好きな時に会いに行けばいい。誰も何も言わないから。ただ黙って行かない様に、行く時は必ずフミに・・」

「まぁまぁ琉生様ったら、朝からお説教ですか?それとも子供を心配する父親ですか?」


 お(ひつ)を運んで来たフミに注意をされ言いかけた言葉を飲み込んだ。

 清子は フミさんすみません!と言って台所へと戻って行った。汁物を取りに行ったのだろう。

 清子を甘やかしたいと思っても上手く言葉に出来ないもどかしさがある。


「難しいものだな」


 私の独り言を聞いたフミがクスッと笑い、私が何を思って言ったのかがバレてしまった。


「女性に全く興味が無かった琉生様にもそんな感情があった事を嬉しく思いますわ」

「べ、別に興味が無かった訳では・・」


 そう、興味が無い訳ではない。

 そう想える女性と出会って無かっただけで・・


「頑張ってくださいませ旦那様!火ノ川家の存続の為にも!!」

 ゴフッ!

「旦那様大丈夫ですか!」


 私はフミが淹れてくれたお茶を吹き出すとちょうど汁物を運んで来た清子に驚かれてしまった。

 手拭いを差し出す清子に 大丈夫だ。 と伝えながらフミを見れば、フミは知らぬ顔で茶碗にご飯をよそっていた。


 藤の花の見頃が終わると気温も上がり、やがて梅雨入りだ。

 火を操る私にとって梅雨時は一番厄介な季節になる。なぜなら私の力が一番弱まる時期だからだ。

 逆に水を操る家はその力が強まる・・


 どうか何事も起きませんように・・


 私は清子から汁物を受け取ると、楽しい食卓と美味しい食事を食べられる事に感謝した。


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