二十三 千代の力 清子の力
「お母様の力は分かったわ。私はどんな力なの?」
天皇家も望む力とはいったい・・
「清子様はあやめ様と繋がられたのですね。気配が・・」
「繋がる?夢には出て来たわ、藤花さまも一緒に」
「とうか・・」
ヨシは初めて聞いた名のようで少し考える仕草をしたが、聞いたことの無い名前だったのかそれ以上何も聞いてはこなかった。
「清子様が二歳頃でしたか・・先ずは動物たちが清子様の指示に従っておられました。最初は幼い子の言う事に動物たちが聞いていると思っていました。指示を出す清子様も、言うことを聞く動物たちもとても愛らしくて・・ですが千代様だけが違う反応をしておられました。そして、清子様の力を封印すると言い出したのです」
「なぜ?ただ動物と遊んでいただけなのでしょう?」
動物と遊んでいただけなのに・・なぜ力の封印になるのか分からなかった。
「言うことを聞いていた。のではなく、従わせていた。のだろう」
「えっ?」
突然旦那様が口を開いたと思ったら私が従わせていた?無理矢理?強制的に?
「辺境伯さまの仰られるとおりです。清子様の力は強制です。相手の目から情報を得て指示を出す。その指示は絶対で従ってしまうのです。清子様の力を持つ者が三人しかいないため正確な力は分かっておりません。が、強制的に従うと文献にもかかれています」
「強制・・」
「・・確かに誰もが欲しい力だな。一歩間違えれば陛下ですら動かせる」
私が自分の力の事を考えていると旦那様が私の心の中を読んだように口にした。
そう、もし本当に私の力が強制ならば・・
「千代様は恐れたのです。清子様の力が周りに知られ奪われる事を。清子様の人生が・・清子様がダメになってしまうと・・」
「・・だからお母様は私の力を封印したのね・・」
考えただけで恐ろしくなる。
自分の意思ではなく命令でこの力を使ったなら、私は常に後悔する事になる。
そしていつか、私はその事で悩み・・
「前の、強制の力を持った女性は子を身籠った事で力を失ったと。ならば封印されたままで子を産めば、誰にも利用される事はない・・千代様はそう思われたのです。決して悪意があっての事ではありません、清子様・・」
確かにこの力をお父様が知れば野上家の再興の為に死ぬまで利用されただろう。
でももし封印されていなければ、お父様からは愛されたのではないか?そう思えてしまった・・
でも・・
「ヨシ・・話しにくい事なのに話してくれてありがとう。確かに野上の家では辛い事ばかりだったけれど、でもそのおかげで今はとても幸せに過ごしているわ」
確かに辛かった。
ヨシと離されてからは女中よりも酷い扱いを受けた。
相良元侯爵にお金で身売りされ、危うく玩具にされる所を旦那様に助けられた。
今は旦那様のお屋敷で優しいフミさんと共に楽しくも温かい生活を過ごしている。
だから・・
「お母様を恨んだりはしないわ」
「お嬢様」
ヨシは私の手を握りながら泣いた。
扉が閉まる音が聞こえ見ると、目の前にいたはずの旦那様の姿が無かった。
きっと二人きりにしてくれたのだろう・・旦那様は本当にお優しい方なのだ。
その後もヨシと二人で色々な事を話した。
野上の家での事や、実家に帰された後のヨシの話し、そしてお母様の事・・
「辺境伯様、本日はお嬢様に会わせていただき本当にありがとうございました。度々の失礼をどうかお許しください」
「いや、こちらこそ急に押し掛けてしまい悪かった。そして、清子に話してくれ礼を言う」
「旦那様・・」
私と旦那様の姿を見て勘違いしたのか、ヨシはとても嬉しそうに微笑みながら
「辺境伯様、どうかお嬢様を・・清子様をよろしくお願いします。千代様が命をかけて守ららた方です。どうか、もっと幸せにしてくださいませ」
旦那様に深く頭を下げた。
私はヨシが勘違いしている事に気づき訂正しようと思ったとき
「ああ、お母君の分も幸せにすると誓おう」
と言った。
私の顔を真っ直ぐに見つめながら、優しい眼差しで・・
私は美しい旦那様の顔に一瞬見惚れてしまい声を失った。
(聞き間違い・・では無いわよね?いえ、勘違いしてはダメよ!旦那様はヨシを安心させる為に仰ったのだから・・)
「では風見頼んだ」
「はい小隊長!」
「風見さま、今日は本当にありがとうございました。どうかヨシをよろしくお願いします」
「大丈夫ですよ清子さん。お礼なら小隊長から頂いておりますので」
そう言い終わると風見さまは車を走らせた。
ヨシは窓から頭を出し、見えなくなるまで手を振り続けた。私もヨシの姿が見えなくなるまで手を振り続ける。
「また会いに行けばいい。これからは誰にも邪魔されず堂々と会えるのだから」
「・・はい、旦那様。今日は本当にありがとうございました。ヨシとは本当に会えるなんて思ってもいなかったので、とても嬉しかったです」
旦那様に深く頭を下げると そんな他人行儀な事はよせ。と、止められた。
「それに、清子の力の事を調べないとな・・」
最後の言葉は聞き取れなかったが、旦那様に差し出された手に戸惑いを感じながらも取ると車に乗り込んだ。
フミさんが待つ温かいお屋敷へと向かって・・
なかなか琉生と甘々になれません・・




