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虐げられた令嬢は冷徹と言われる軍人と優しい夢を見る  作者: おつかれナス


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二十一 ヨシと言う名の女

「ヨシ・・」

 

 清は予め呼び寄せておいた元野上家の女中で、清の乳母だった女を見て驚いた。

 それもそうだろう、この事は内緒にして部下に探すように命じたから。最近帰りが遅くなったのもヨシ探しもあった。


「お嬢様・・」

「ヨシなの?本当に?」


 ヨシは立ち上がり清の近くまで寄ってくると両手を清の手に被せた。


「お元気で・・いらっしゃいましたか・・?」


 清は一瞬言葉を詰まらせるが直ぐに


「それは私のことばよ!」


 そう言いながらヨシに抱きついた。



「旦那様ありがとうございます。まさか本当にヨシを探していただけるとは思っておりませんでした」

「本当に・・辺境伯様が屋敷にお見えになられた時は驚きました。実家に戻ったとは言え既に代替わりしており、今は姉と二人で離れに住んでおりましたので」


 ヨシは野上の家から強制的に実家へ戻された。戻った当時は家を継いだ姉夫婦の元、家業を手伝っていたと。だが姉の夫が亡くなり息子が家業を継いだ瞬間、姉と共に離れに移されたと語った。


 清はヨシの話を聞きながら自身の話を始めた。その話は私も始めて聞く事ばかりで、実の娘に良くそこまで出来たと驚いた。

 確かにこの世は力。力のある者が家督を継ぎ次代へと繋ぐ事が必須。だからといって力の無い者を粗末に扱っても良い訳ではない。


「私は奥様、清子様のお母様である千代様が野上の家に輿入れされる際に、浦部の家から付き従いました。もともと千代様の専属であった事も理由ですが・・」


 言葉を詰まらせたヨシに清は背中を摩る。


「千代様はお生まれになる娘、清子様にある術を掛けられました。その術の継続維持の為に私は付き従ったのです」

「私の力?私には何の力も無いわ」


 ヨシは清の顔を見ながら頭を横に振る。


「お嬢様にはあります。千代様が命をかけて術をかける程の力をお持ちなのです」

「裏辺」


 私は紙に書いた字を二人の前に出した。

 ヨシは驚いた顔をしながら私を見て、それと同時に安心したような顔を見せた。

 一方清は何のことか分からない顔をしていた。


「辺境伯様はどこまで知っておられますか?」

「・・裏辺の力は相手の思考を読み取る・・とか」

「それ故に占い師とも呼ばれておりました。が、本来の力は違います。そして、その力を一番強くお持ちなのがお嬢様、清子様なのです」

「!なぜお母様は私の力を封じたの?!そのせいで私は・・」


 野上家の事を言いたいのだろう。清は悲しそうにヨシに詰め寄った。ヨシも同じように顔を伏せている。そして落ち着きを取り戻した頃また話し始めた。


「お嬢様の力は今から百年ほど前に存在した女性、あやめ様と同じ力を持っておられます。なぜそれを知る事が出来たのかと言えば千代様の力も関係しておりました」

「あやめ・・」


 清はなぜか あやめ と言う名の女性を、気にしていた。

 が、ヨシはそんな清の様子に気付かず話続ける。


「どこからお話したら良いのか・・もともと浦部家はそれほど力を持つ家では無かったそうです。それが百年ほど前に一人の女性が生まれ、そこから力を持つようになったと聞いております」

「浦部家は女中にも家内の事を話すのか?」


 主の内情を軽々しく話す家は無い。

 だがこの女は浦部家の中の事を知っている様子に驚いた。その家の令嬢付きと言えそこまで聞けるとは思えない。


「私はもともと浦部の分家出でして・・祖母が本家筋でございましたからその縁で私は千代様の専属となれたのです」


 ヨシは一呼吸つくとまた話し始める。


「祖母から聞いた話によりますと、その娘はあやめ様と言って小さな頃はそれ程の力は無かったと言います。それが十五の年、急に強い力を発したと」

「・・浦部の力とは何だ?そもそも何故浦部家の事が表に出てこないのだ?」

「それは・・」


 ヨシが口籠る。

 おそらく代々口止めされてきた事なのだろう・・


「浦部の娘は、いや力を持って生まれた娘は後宮に入ると決められていると聞いたが、関係があるのか?」


 ヨシは驚いた顔をしながらもどこか安心した様な顔つきになり


「・・辺境伯様はそこまで掴んでいらっしゃるのですか・・。浦部の娘とはいえ皆があやめ様と同じ力を持って生まれるとは限りません。実際には清子様を除いて一人しか・・ただその方は陛下の子を宿した瞬間に力を失い、また生まれた子には力が受け継がれなかったと聞いております」


 ヨシは清の顔を見つめながら優しく微笑んだ。その顔は清に対してでは無く、清の母に対してのようで・・


「千代様には前兆がありました。辺境伯様はご存知でしょうか?清子様のような力を持つ娘を産む女に現れる力。それは、色 でございます」

「「色?」」


 私と清の言葉が重なる。


「千代様は仰っておられました。人を見るとその周りに色が出ると。橙色は温かい、青色は冷たいと、色でその相手の人柄や感情が分かったそうです。もともと浦部の女には相手の考えを読む力があります。私にも少し・・その力は相手の目をしっかり見ないと分かりません。ですが千代様には常に色で相手の感情を知る事が出来たそうです・・」


 おそらく浦部の人間から利用されていたのだろう。常に側で清の母を見ていた女だ。その母の苦悩もまた聞いていたのだろう・・




 


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