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虐げられた令嬢は冷徹と言われる軍人と優しい夢を見る  作者: おつかれナス


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十六 違和感 二

 (目覚めなさい、目覚めなさい)


 誰?


 (貴女の力を目覚めさせなさい)


 私の力?そんなもの無いわ!だから野上の家でも居ない者として扱われたのだもの。


 (貴女の力は私の力。貴女が解放しなければ私も力の解放ができない・・)


 力の・・解放・・?



「・・・さま」


 誰かが呼んでる?


「・・きよ・・さま」


 誰?・・でも、心地良い声・・


「・・さま!清子さま?お目覚めですか?」

「・・!!」


 フミさんの声で目を覚ますとすでに部屋の中は明るく、気温も上がっていた。

 私は急いで起き上がると襖を開け


「すみませんフミさん。寝過ごしてしまいました」

「ああ良かった。何かうなされている様子でしたので心配しておりました。朝の支度はほとんど済んでおりますので、ゆっくり着替えてください」


 フミさんはそう言い終わると襖を閉めた。

 私は鏡に写る自分の姿を見るとため息を漏らした。


「ひどい顔・・」


 旦那様が居なくて良かった・・朝からこんな顔、とても見せられないわ。

 昨日町へ買い物へ出た際春子と会った。いや違う、春子は私の居場所を突き止めたのだ。

 幸いにも旦那様のおかげで風見さんに助けられたから良かったけれど、もしいなかったら私は野上の家に連れ戻されたのだろうか。

 それとも無理矢理この屋敷に来て、私の事を旦那様やフミさんに話したのだろうか・・


 あの夜会で私が火ノ川家と繋がりがある事を春子は知った。

 爵位も上、実力も上、そして・・天皇家からの信頼もある。野上家の再興を望んでいる春子からしたら、旦那様ほどピッタリな方はいない。


「私はどこへ行っても迷惑な人間なのね・・」


 平民で使える力も無く、できる事と言えば家事くらいのもので・・もう少し器量が良ければまだ使い道もあったのかしら・・


 私は急いで着替えると台所へ向かった。

 風見さんは今朝早くに帰ったとフミさんに言われ、また頭を下げた。

 風見さんが屋敷から出て行った事にも気付かず、全てをフミさんにさせてしまった事を詫びると、


「そんな事気にしないでください。昨夜風見さんに言われていましたし、清子さまは義妹さんと会って気苦労もありましたでしょう?」

「・・はい、言われてみれば・・」


 フミさんに言われ精神的にも肉体的にも疲れたのは本当だった。特に久しぶりに春子の技をこの身で受けたから、だから変な夢を見たのかしら?


 正直、夢の内容は忘れてしまったが夢の中の声は耳に残っていた。

 とても優しい女性の声で、私の事を心配しているのが伝わって来たから。

 私の顔色が悪くなったからなのか、フミさんはそうそうと明るく言い始めた。


「この先の山に藤の花がとても綺麗に咲いたと聞きました。琉生さまは今夜も帰って来られないので気晴らしに見に行きませんか?」

「藤の花ですか?」


 言われてみれば藤の花が咲き始める頃。もうそんな時期になるのか・・

 私は笑顔で頷くとフミさんは安心したように食事を始めた。私もフミさんの優しさに安堵し食事を摂り始めた。





「小隊長、風見から連絡が来ました!」

「!」


 都から離れた村に妖が出る。と報告を受けた本部は、状況を確認し我ら[特攻]に指令が出た。

 始めは人が人を襲っている。そんな報告で近くの騎士隊が駆け付けたがその正体は人の姿をした妖で騎士達では手に負えなかった。


 人の姿をした妖はどこからとも無く現れ人を襲った。村から町へ妖は増え続ける。

 

「原因を突き止め妖を滅して来い!」


 隊長である轟は本部から離れられないため、今回は私が隊長代理となり指揮をとっていた。


「風見から?都で何かあったのか?」

「いえ、私用で小隊長宛に・・」


 俺は風見の式を受け取ると自分のテントへと向かう。風見には清子の護衛を頼んでいたからきっと屋敷で何か起きたのだろう。

 私はテントに入ると風見の式を操ると、式から風見の声が再生される。


[小隊長の命を受け清子さんに式を付けていました。小隊長の狙い通り野上の娘 春子 が清子さんに近付き、事もあろうか攻撃を・・」


 私は風見の報告を最後まで聞く前に式を握り潰していた。予想はしていた、だか自分の留守の時に接触して来るとは・・

 側にはフミがいる。常に風見の式も見張っている。最悪凪にも駆け付けるよう頼んではいたが・・

 調べによれば春子の操る力は相手に傷を付ける。力自体はそれ程では無いが、力の無い清子からすれば抵抗出来ないのだ。

 風見からは攻撃されたと言っていたが、どれほどの力で攻撃されたのだろう・・

 怪我はしていないだろうか。


「姿が見えないのがこんなにも不安な気持ちになるとはな・・」


 今まで感じた事の無い感情に戸惑いもあったが、感情の原因を知るとそれはそれで違う気持ちが込み上げる・・

 

「早く清の手料理が食べたいな・・」


 そんな甘い気持ちが自分の中にあった事に驚く。


 まだ妖の原因が掴めない。

 妖の動きも不自然過ぎる・・

 焦る気持ちが態度に出てしまい、何度も部下である土守や木柴に注意を受ける。

 そして今も突然襲ってきた妖に後ろを取られてしまい、咄嗟に出した術が危うく部下に当たる所だった。


「小隊長!心ここに有らずでは困ります!」

「すまん・・」

「小波はまだ入ったばかりの新人です!小隊長の術をまともに受けたら死んでしまいます!!」

「・・それは困るな・・気をつける・・」


 木柴に注意を受けていた時


「小隊長殿!!こちらへ来てください!怪しい男を捕らえました!!」

「「!」」


 慌てて私の名を呼ぶ部下の声に木柴と二人急いで声の方へと走った。




 



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