十 職場にて
私の職場は皇居内の一角にある建物。
[特別任務攻撃隊]
その名の通り皇族や貴族を護衛する隊とは違い、特別な力を持つ人や妖を相手にする部隊。
基本は護衛隊と共に出動する事が多いが、清の時のように相手が特殊な能力を持っている場合は我々が主になり動く。
そして私はその隊の
「小隊長おはようございます!」
「土守は夜勤だったか、ご苦労」
俺の部下である土守久元はその名の通り土や地面、土壁を介して情報を得る力がある。
時には土の中から人型や動物、武器なども繰り出すほどの力の持ち主で、主に情報提供に特化している。
「それで、昨夜頼んでおいた件はどうなった」
「野上家の件ですね」
俺は土守を連れて自身の部屋へ移動した。土守は俺が席に座ると同時に何枚かの紙を机の上に置き、話し始めた。
「この間の清子さんは野上家当主 野上正治氏の実子です。ただ現当主夫人の娘では無く、前夫人との娘でした」
「野上氏は再婚か・・」
「どうやら前夫人と結婚する前からの関係の様ですね。前夫人が亡くなってから一年もしない間に迎え入れていますから」
「・・・」
前妻との間の娘か・・よくある継子イジメというやつか。
「ですが横から入り込んだのは清子さんのお母様の方みたいですね」
「えっ?そうなのか?」
土守は頷くと別の資料を渡してきた。
「もともと現夫人の野上花の実家、鈴木家との縁組が先だった様ですね。まぁ野上も鈴木も力としては弱く、同格。どちらかの力を持った子が産まれれば・・と言う思いがあったようです。幸いにも二人の気持ちも同じ様で、とても仲の良い間だったと聞きました」
「ではなぜ清の母と?」
私の質問に土守は答えにくそうな顔をした。そして・・
「分からないんです。いくら調べても清子さんのお母様の出自が掴めないのです」
「!?」
そんなバカな・・この国で産まれて生活している以上出生届は必要で、当然両親の事も記載される。
「清子さんのお母様は千代様と呼ばれており、旧姓は浦部千代」
「浦部?」
「はい、浦部です」
「確かに聞いた事が無い苗字だな」
土守は頷くと続きを話し始めた。
「それで野上家ですが、現当主は風使い。現夫人は水の使い手のようです。そして二人の間に産まれた一人娘の野上春子は、父親と同じ風を使う力を持ったようです。残念ながら力は弱いと報告を受けています」
だから清の顔に傷が付いていたのか・・
あれの力は人を簡単に傷を付けるカマイタチの力だったか・・
恐らくその力を使い清に痛い思いをさせていたのだろう・・
その母親もきっと娘と同じ事を清に行い、自分たちの捌け口にしていたのだろうな。
「気持ち悪い母娘だな」
無意識に口から言葉が出ていたようで土守は驚いた顔をしていた。
「おそらく野上家に力が弱まっている事に焦りを感じているのでしょう。最近では少しでも力のある家門に声を掛けている様ですよ」
「・・どんな・・」
聞きたいような、聞きたくないような・・想像が付くから更に気持ち悪い。
「一人娘の春子への婿探しですよ!清子さんは外へ出しましたからね、野上家を継ぐのは春子しかいないので。もしかしたら小隊長の元にも釣書が届いているかも知れませんよー」
「それは無いだろう、俺も嫡男だからな。・・もし来ていたとしても、フミの目にふれた瞬間に竈門の中へ放り込まれるだろう」
俺と土守は想像すると ぷっ と吹き出してしまったあと、土守は清の実家の方をもう少し調べると言って部屋から出て行った。
そこでもう一度調べられた紙を手に取り読み始める。
なぜ鈴木家との婚約を解消してまでも清の母と結婚したのか?
普通なら家同士の事が気にならない程の大恋愛しての結婚ならば、一年も立つか立たないかで再婚などしないだろうし、しかもその再婚相手が解消した女だったら・・
「何か気になるな・・まぁ後は土守が調べてくるだろう。それまで待つか」
俺は土守から受け取った資料を机の引き出しにしまうと、机の上に山積みになった報告書に目を通した。
「小隊長失礼します」
「・・風見?」
昼を少し過ぎた頃、土守と同僚で部下の風見がやって来た。風見は確か轟隊長に付き従って第二内親王殿下の護衛に着いていた筈だが・・
風見は部屋に入るなり懐から一枚の紙を取り出し渡してきた。俺はその紙を受け取ると静かに目を通す。
「これは本当の事か?」
「はい・・隊長も気のせいかと思われたようですが・・小隊長の元に清子さんがいるので一応報告をと。関係無いと良いのですが・・」
「・・関係は無いだろう。だが気になるな」
紙の内容は第二内親王殿下の領地訪問へ随行途中、何やら不穏な気配を感じた隊長は密かに風見へ探らせた。風見は風を操る家系の嫡男で自身の気配を消す事も出来る。
そこで見た光景が
「野上の当主と鈴木の当主。それと・・陛下の配下が一緒にいたのか・・」
「・・はい。皇居内にも入れない格下のニ家の、それも当主がなぜ陛下の狗と・・」
「何かあるな・・だが清子は何も知らないだろう。もし何かあればフミが気付く筈だしな」
「!それも・・そうですね」
フミは清子からは何も感じないと言った。
だからこそ野上の家から出されたのだから・・
「暫くは監視が必要だな・・!」
「!!」
俺と風見は同時に外へと視線を外した。
「気付いたか?」
「・・はい。式ですか?」
「ああ、朝から付けられていたが・・ここまでハッキリしたのは」
「おそらくこれ、ですね」
風見が持ってきた紙に反応したのだろう。
フミには伝えたが念のため清子にも俺の式を持たせるか・・




