閑話23~ 集都の恋バナ・・・?(後) ~
本日2話目の投稿です。
長くお休みしていたお詫びに・・・^^;
差別発言及び不穏当な言葉遣いがあります。
ご注意ください。
「……でね、今日はセシル姉さんとお昼のランチを食べたの! 美味しかった~」
「そっか、よかったっすねフィリー」
冒険者ギルドを出てからもふたりの話は続いている。今日は何をしただの、誰それが冒険者と角付き合っただの、セシルの話はとりとめがない。その声を聴いているだけでレックルは幸せだ。
だけどフィリーが好意を抱いているような相手の話にはちょっとイライラする。
自分だけを見ていてほしいと思う心は止められないのだ。
「あ、でも」
フィリーには知られたくないと思っている時、彼女の口調が微妙に変わる。
「やっぱり私、レックルと一緒に食べる夕食が一番好き! なんだか心がほっこりして、すっごく気持ちいいの」
「え、そうっすか? お、オイラも好きっすよ」
吃りながらもなんとか言い終えると、フィリーの顔が輝く。
そしてつないだ手を胸の前に持っていて両手で握った。
「フィ、フィリー?」
「レックルもおんなじだったなんて嬉しいっ! 一緒の気持ちが持てるってステキなのね!」
「おおお、落ち着くっすよフィリー!」
だいぶ改善できたとはいえ、まだプチ暴走を起こすフィリーに手を焼きながらもレックルは幸せだった。
だが、そのふたりの前に人影が出現する。
「おーお、見せつけてくれるじゃないか、エテ公。獣人のくせに可愛い子ちゃんを独占しやがって」
それはさっきセシルが監視を言いつけた冒険者だった。
「大丈夫っすよフィリー、必ず守るっす」
「逃がしゃしねぇよ、観念するんだな!」
見れば後ろにもふたり、嫌な笑みを張り付けて迫ってくる。
壁にフィリーを押し付け、レックルはその前に立つ。
「ふん、力もないくせに俺たちと張り合おうってか? 不相応な真似は命取りだぜ」
「そうそう、大人しくその娘を寄越しな。なぁに、酷い事なんてしねぇよ、可愛がるだけさぁね」
「男の魅力ってやつをたっぷり味合わせてやるさ」
そう言って濁った笑いを上げる冒険者たちにフィリーは叫ぶ。
「レックルに何かしたら許さないんだから!」
「気の強い女は好きだぜ、屈服させるまでが楽しみだぁな」
「お前はホント趣味が悪いよ」
「女を見る目は確かだがな」
そう言いつつ、レックルの前に立って拳を振り上げる。
「そういうわけだ、優男は消えなっ!」
「レックル!」
唸りを上げて振り下ろされる拳を見据えたままレックルは動かない。
そのまま殴り飛ばす……寸前で拳は止められていた。
「は?」
「一般獣人への暴言と暴力行為及び嘱託職員への暴言、記録しました。拘束します」
その後一瞬で男は鎖にからめとられ、転がっていた。他のふたりも似たり寄ったり。
「な、なんだ、何が起こった?」
戸惑う彼らの前に立つのはセシリーだ。
「以前から警告をしていたはずです。今度違反行為を起したら最後だと、ね。サブギルドマスター、セシリー・ウッドマイルの名において、あなた達を獣人国から追放、入国禁止とします」
「「「そ、そんな!」」」
「異議は認めません。さ、みなさん。そのゴミを放り出してきてください」
「「「「「ハイ、直ぐに」」」」」
魔珠が消えた認識票をむしり取られ、ぐるぐる巻きにされた冒険者たちが職員に引きずられていった。
「終わったっすよフィリー」
レックルの声にフィリーが出てくる。その顔に怯えは見られない。
「ありがとうレックル。また守ってくれて!」
「いや、オイラは前に立っていただけだし」
こういう時レックルはいつも無力感に襲われる。弱い自分に腹が立ってくる。
「そんなことないよ」
俯くレックルの手を取るフィリー。
「私を庇ってくれるレックルって、とってもかっこいいんだよ? それに、すっごく安心できるから……」
そこまで言って、レックルの頬にチュッと口づける。
「大好きだよレックル!」
「フィ、フィリー!」
「あーはいはい、ラブラブはそこまでにして。ちょっと刺激が強すぎるから」
見ていられないとばかりに手を振るセシル。
「今回も助かったわレックル、フィリー。怖い思いをさせて悪かったわね」
「そんなことないっすよ、皆さんが居てくれてるってわかってっすから!」
「私も! ギルドの皆さんに感謝してます!」
「……そう。ありがとう。もうそろそろ夕食の時間でしょう? 超過勤務は御法度よ。じゃあね」
「「はい! 失礼します(っす)!」
ふたりして頭を下げ、仲良く手を繋いで帰っていく。
その、何気ない仕草にギルド職員の罪悪感が拭われることを、ふたりは知らない。
「あのふたり、本当に仲がいいですよね」
後始末に残っていた職員が思わずといった感じでこぼす。
「ええ。だから、横やりが入らないように注意していたいのよ」
「そうですね……」
嘱託職員として勤務しているフィリーには、魔珠を作る事ともうひとつ仕事があった。
それは、今の様な不良冒険者をつり出すための囮となること。
集都へ来てからのフィリーは、生来の可愛さの上に愛嬌が加わり、まさに癒しの存在となった。そんな彼女の横にはレックルがいて、二人がイチャイチャするのは当然の事と街の皆には受け止められていた。
だが、それでは収まらないのが冒険者。
何故あの娘があんな獣人と一緒に居るんだ。
あんな可愛い娘に獣人なんて似合わない!
人間には人間が合ってるんだ、そうに決まってる!!
サルの獣人なんかには勿体ねぇっ!!
などと、よくわからない脳内会議で一方的に決めつけてくるのだ。フィリーがだれを選ぼうと、自由なのに。
最初はただ行きかえりの監視をつけるだけだったのが、人間の冒険者がフィリーに向ける視線の多さを逆手にとってふたりに相談したのだった。
『虫のいい話だし、危ない目に合うかもしれないわ。
断ってくれてもいいのよ?』
言いにくそうに告げるセシリーに、二人は顔を見合わせ。
『引き受けますよ、ね、フィリー?』
『うん!』
『危ない目に合うかもしれないのよ? それでも?』
『大丈夫っす。セシリー姉さんやギルドの人達も居るんですよね』
『皆さんが居てくれるのなら私、やります!』
快諾したふたりにちょっと罪悪感を覚えたセシリーだが……
『うんとね、レックルも居てくれるんだよね?』
『当ったり前っす! オイラ弱いけど、フィリーを守るっすよ!』
『レックル大好きっ』
二人のイチャイチャにあてられただけだった。
こうして不良冒険者を排除する有効な手段となった『囮作戦』。それは思った以上の力を発揮することとなった。
今まで獣人国で暴言を吐いたり乱暴するニンゲンが多数いることは分かっていたが、その場にいないと証明できなかったため何度悔しい思いをしたことか。
それが、フィリーの作る魔珠によって、アブないニンゲンを特定できるようになった。違反行為を繰り返す人間に張り付いて最後の一線を踏み外した冒険者を取り押さえ、国の外へと放逐することで獣人国の治安が格段に上がったのだ。
これには総括夫婦もご満悦であり、フィリーとレックルがお気に入りだ。そして、その端緒へ導く情報をもたらしてくれたケインに対しても感謝している。
(もっとも、それだけではないのでしょうけれど)
どこにも所属せず、それでいて実績を上げている冒険者ケイン。飄々としていてどこにでもいる、でも温かい心と優しさを持つ不思議なニンゲン。
職業柄いろんな冒険者を見てきたセシルから見ても、奇跡としか思えない存在だった。
あちこちを流れ歩く冒険者にとって、この世界は厳しい。ギルドで依頼を受け、魔獣を駆除し、護衛業務で物流を支える彼らだが、一般の人からは、力を持つならず者と言う認識で見られている。そういう行いに及ぶものが多いことも事実だ。
(誰だって最初からそんなのではなかったはず、よねぇ)
色眼鏡で見られ、社会でもまれるうちにやさぐれてしまったり、それ以上に根無し草ということで信用されないこともあるに違いない。たとえギルドという組織に囲われても、それは変わらないだろう。
そんな殺伐とした職業に身を置きながらも、優しさを忘れずにいられるのは一握りしかいない。確固とした自我を持ち、他者の意見に流されない。ある程度の地位を持つか、冒険者として卓越した技能を持つものぐらいしかできないことだ。
(あの人はどちらでもなさそうなんだけど……)
それでも、とセシリーは心で頷く。その手はイヤリングに触れている。
(ふふっ、逃がしませんわよ)
口元に浮かんだ笑みがすべてを語っていた。
な、なんか、怖い結びになってしまいました。
自分でつけておいていまさらなんですがこれ、恋バナで
良いんでしょうか・・・?




