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第189話

 

 門をくぐってすぐ、オレは街の様子に目を奪われた。


(オーリィ、ここって「帝国民区」だよな、一般民の住む…)

(キュルキュルキュッ(その認識で合ってるっちゃよ))

(えー……ホントかよ……)


 俺が何に驚いているかというと。

 道行く人々の様子なんだよ。


 誰も彼もがギャザーをたっぷりとったレースの胸飾りを首に巻き、糊の効いたシャツの上に金糸銀糸の縁取りがある服を来てさっそうと歩いているんだ。


 ……こんな中、入ってきた商人や冒険者が歩いていたら目立って仕方がない。


 事実、そいつらからはゴミを見るような視線を向けられたが、こそこそするのはおかしな話だ。何も悪いことしてないしな。


 視線を無視して堂々と歩いていくオレに気押され、そのうちだれもがオレを無視するようになった。


(何だ、こんなところは辺境にある村と変わりないじゃないか)


 ああいうところはよそ者を極端に嫌う。最初は敵視して嫌がらせをしてくるが、無視する奴も出てくる。邪魔な存在を居ないものとして扱う、いわば『村八分』にすることだ。


 まぁそんな輩は何処にでもいるんだろうが、いやな感じだ。

 ここには長くいたくないな。さっさと退散するか。


 見えてきた冒険者ギルドへと足を運びながら、オレは抱えている問題の解決が容易ではないことに溜息をつきたくなった。







 ギルドへ入ると複数の視線が俺に突き刺さった。


 その半分が同じ冒険者から来るのは当然だ。自分より強いかそうでないか、あるいは敵対関係になるかどうか。


 この見極めも必要になる。たとえ『鑑定』を持っていなくとも、ある程度の力を持つものならできる技術でもある。


 勿論オレはガンガンに『鑑定』を使ってるさ。ここはいわば敵地。信じられるのは己独りと心得て動かないとな。


(でも、このレベルの低さは異常だな)

 まるで初心者の集まりだ。


 だが、それも壁に張り出してある依頼表を見て納得できた。どぶ掃除とか薬草集め(それも初期ポーション用の)くらいしかないんだ。


(これならあいつらでもできるってか)


 日々の暮らしができるのならば、口出しする必要もない。オレはそう結論付けた。


 だが、奥のテーブルに居る一団はこの中でもレベルが高く、入ってきた時からオレを注視している。


 要注意だな。


 そんなそぶりを見せることなく、オレはギルドのカウンターへと近づいた。

 ここにいる受付は男性だ。


「帝都オールマスのギルドへようこそ。新人かい?」

「いや、到着のあいさつに来た。確認を」


「それは失礼した。見たことのない顔だったんでね。じゃ、ギルドカードを出してくれ」

 そしてカードを水晶にかざす。


「名まえは『ゼオン』。ほう、かなりレベルを上げてるな」

「この稼業を始めてそこそこ経ってるからな」


「結構なことだ。簡単にいなくなることもないから安心だよ。ちなみにここへ来た理由は?」

「獣人国の依頼を受けてきただけだ。目的が達せられれば移動する」


「依頼内容は話せるかな? なんなら追加で情報を渡すこともできるが」


「いや。情報は十分得られている。それよりここでは他のギルドで受けた依頼の内容を話さないといけないのか? 聞いたことないんだが」


 ホントにこいつギルド職員か? 依頼の中には秘密厳守のものだってあるんだぞ?


 オレの質問に焦ったような表情が浮かぶ。


「あ~、そうだな。秘密なら話すことはない、よ。じゃ、ここでの活動は短期間、てことで」

「そうだ。短い間だがよろしく。じゃ」


 そう言ってカウンターを離れる。言い忘れていたが、視線の半数はここのギルド職員全員のものだ。

 いくら見慣れないからって、全員が注目するかぁ?


 つくづく可笑しな街だと実感した。


 出口へ歩いていくと、さっきの一団からひとり立ち上がって近づいてくる。


「初めて見る人だね。ボクはロッティ、『暁の騎士団』を率いている。これからよろしく」

「『ゼオン』だ。短期間になるがよろしく頼む」


「もちろんさ。同じ冒険者だ、歓迎するよ。どうだい。これからみんなで一杯やらないか?」

「お誘いはありがたいが、これから依頼のための下見を予定しているのでね。折角だが遠慮するよ」


 断ると微かに表情が変わる。が、すぐに笑顔となった。


「そっかぁ、他のギルドの事や色々聞きたかったけど残念だ。知ってるとは思うけど、ここは大陸でも強い魔獣が多い地域だ。他の所と一緒だと思うと怪我をするよ」


 最後に脅しともとれる言い分をつけてくる。こいつ本当に冒険者か?


「忠告有難う。十分に気を付けるよ」


(『看破』)(こっそり)

 {鑑定』は広くかけていたが、こいつらだけは重ねてかけておく。


 そのまま外へ出て、まずは宿の確保。

 部屋に入って落ち着いてから、『鑑定』と『看破』の結果を見た。


(予想通りか)


 俺は目の前の表示を見つめた。




  名前  ロッティ (本名:ローマンド・モルティ)

  職業  冒険者 (軍属『回帰派』モルティ家の第一子)


   POW 120 

   STR 151 

   VIT 198 

   DEF 112 

   MGP 282 

   MGR 187 

   INT  88 

   LUK  72 

   EXP   5 


   スキル 人心掌握(レベル2) 威圧 剣術(レイピア、短剣、

   両手剣) 格闘術 ダンス 礼儀 

   ※ 注意事項…『暁の騎士団』は護衛騎士たちです。

         『()()』には絶対忠誠を誓っています。


(これだもんなぁ)  

   

 POW(体力)もSTR(力の強さ)も平均だし、DEF(防御力)もそこそこ。これでは剣術スキルなんてさぼってるとしか思えない。


(あ、でもMGP(魔法攻撃力)は高いな。MGR(魔法防御力)が低いのはINT(知性)が高くないからか……?)


 要するに甘ったれのボンボン貴族か~。情けない。

 その代わりに、護衛騎士たちの力は凄い。


 その中でも群を抜いているのは。

(あれだな、奥に座ってオレを睨んでた奴)


 

  名前  キリオ・バルドラード

  職業  冒険者 (騎士 現在はローマンド・モルティの護衛任務中) 


   POW  381

   STR  289

   VIT  237

   DEF  361

   MGP  116 

   MGR  109

   INT  292

   LUK  154

   EXP  194


   スキル 剣術(短剣・両手剣・片手剣すべてレベル4) 

   槍術 格闘術 捕縄術 回復(小)(中)


   特殊スキル 武神の加護    

   ※ 注意事項…普段は穏やかな人格者。ただ現在は

        『()()』の子息を守るためにハリネズミ状態。

        要注意。


 何なんだよ、この数値の差は! こいつ独りでそこらの盗賊は薙ぎ払えちゃうぞ!?

 おまけに『ハリネズミ状態』なんて、知り合いになりたくない……ん、待てよ?

 

 オレは『注意事項』を睨んだ。そして他の護衛達の情報も併せて見る。


(この『()()』てのは誰を指している……?)


 素直に見るなら護衛対象だろう。でも、わざわざ傍点まで振ってあるのは。


(そうか。この場合はモルティ当主に捧げられた忠誠なんだ。その当主からの依頼でああしている、と)


 この人としては不本意な任務なのかもしれないな。


(いや、主人に忠誠を誓っているなら、嫡男であるこいつを守ることも当然、か)


 それにしても『ハリネズミ状態』にならざるを得ない状況ってなんなんだ? ここ、そんなに危なっかしいところなのか?







 やっと『ゼオン』の伏線を回収できました!

……もっと早くしたかったんですが、話しの流れで

ここまで来ちゃいました。

セシル姐御のイヤリング、意味深です(笑)

そして次には新たな人物登場!

ここまでおいでいただき、ありがとうございます。

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