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第190話

 更新、大幅に遅れました~っ!

 

 色々考えてみたが、街の様子からどうにもかみ合わない。窓から見える風景も、着飾った人間が闊歩するだけで変わりがない。


 そのままあちこちを眺めていると。


(あれ、店がないぞ。どうなってる?)


 普通、こういった大通りにはきちんとした店があるはずなんだが。


(仕方ない、宿の亭主に訊いてみよう)


 ドアに鍵をかけ(中には何も置いていないが念のため)、一階に降りる。


「ご主人、済まないが良いだろうか」

「ああなんだね。このままでいいなら何でも聞いとくれ」


 夕食の支度をしているのか、忙しそうに手を動かしながら亭主が答えてくる。


「この通りに店は無いのか? その、冒険者が使うような武器とか防具とかの店なんだが」

「そういうのは裏手の道沿いだぁね。けど注意しなよ。スラムが近いから何が起こるか分からんし」


 この亭主にも『鑑定』をかけてある。言葉は荒いが、裏表がなく親切な男だと出ている。

 信用しても大丈夫だろう。


「今見てると、この通りには店もないようだが、どうしてなんだ?」


「そりゃお前さん……」

 手を止めて顔を近づけてくる。


「陛下をはじめ、お貴族様や軍属やらが自分の所に高級店を囲い込んじまったからだぁね。唯一残っているのは、『回帰派』の門近くにあるオーマイン商会くらいさぁ。ま、あそこは何でも売ってるから俺たちも重宝してるけどなっ」


 顔を離して大笑する。最初の方が大声で言えない情報なんだろう。それにしても囲い込むとはまた……。


「じゃ、もしかして、それぞれの区画に同じ店があるとか?」

 こちらも声を潜めて聞き返す。


「いや、それはできないみたいだ」

 そこで急に声を潜める。

「噂だけどよ、皇帝陛下がお触れを出したんだってよ。『同じ店を帝都にいくつも造ることはならぬ』ってさぁ。まぁ、お貴族様と軍属は好みが違うけどよ、奥方やお嬢様はそうじゃないから、結構行き来してるみたいだな」


 ああそうか。お貴族様の奥様やお嬢様は『貴族』『回帰派』『変革派』の区別なんてないのかもしれない。


「じゃあ、そういう人達は店に行くときどうするんだ?わざわざ城を回って行き来してる……なんてことはないよな。自分の所へ呼びつけりゃいいんだから」


 貴族ならそうするだろうとご主人に水を向けると、途端に顔が渋くなる。

「普通ならな。けど、そこに軍属様の見栄ってのが入り込んでくるんだぁね」


『回帰派』と『変革派』、どちらが上か見せつけるために、無駄に着飾った奥様お嬢様方がわざわざ門を使っていくのだとか。

 

「あいつらときたら!」


 やや粗い口調と強まった怒気が混ざり、少々声が大きくなってきている。

 オレがそっと唇に指を立てると、さすがに気が付いて「すまん」と謝ってくる。だが、まだまだ言いたいことがありそうだ。


「なんだか大変そうだな?」

 そう水を向ければ。


「大変なんてもんじゃない。通行のたんびたんびに街のみんなが呼び出されてよぉ、門の前の清掃をさせられたんだ。『奥様に不浄のものを見せることは許されん!』なんて言って、その癖自分たちは動かずに腕を組んで俺たちの行動を見てるだけなんだぜ。


 ここを掃け、こっちを磨けなんて命令ばかりしやがる。それもな、前の馬車が通った直ぐ後でだぜ? どぉこが汚れてるんだ、とこそこそ話してたら、いきなり鞭が飛んでくることもあったんだから」


 いつの間にか準備をおっぽり出してカウンターに手を突き、オレに愚痴るオヤジ。

 よっぽど不満が溜まってたんだろうな。


「今も同じなのか?」

「それがさ」

 言葉とともに、ドン! と目の前にジョッキが置かれた。


「ご主人?」

 ふたつ置かれた片方を手に取ってニンマリ笑うご主人。


「俺っちのおごりだぁよ。長年胸に溜まってた愚痴をぶちまける相手がいたんだ、付き合ってもらうためのサービスさぁ」


 その横にジャーキーらしきものを入れた小皿も並べば、まさしく飲み会だ。

 オヤジの目線に促されてオレもジャッキを手に取り、ひと口含む。『鑑定』で無毒と出ているから安心だ。


 うん、いい味の黒ビールだな。おっと、こっちでは黒エールだったか。


「よし、その飲み会に参加しよう。乾杯!」

 掲げたジョッキにもうひとつのジョッキがぶつかる。


「ノリのいい兄ちゃんだぜ、これなら話も弾むってもんだ!」







 暫くののち、オレは大通りを歩いていた。


 無愛想だった宿屋のおやじが笑顔全開で『気ィ付けろよゼオン!』と送り出してくれたんだ。まずはその軍属の門と中立派の位置関係を確かめないとな。


 それよりも『ゼオン』て誰だ? と思うだろ。オレは「ケイン」で間違いないし、ケインの冒険者カードも持っている。


 通常なら許されないことだと思う、全力で。


 でもな……獣人国で出来ちゃったんだ。


 冒険者ギルドのサブマス、セシルの笑顔が蘇る。


   『こういう事態もありうるとお考えになった総轄と副総括のお二人が、

   『特別の事情がある者』としてギルドに命令を下されたのです。

    万全の体制を敷いてお待ちしていたのですよ?』


 うふふと笑うセシルの向こうにあの甘々バカップルの姿が透けて見えたのは……いや、やめとこう。


 とにかく今のオレはケインではなくゼオンだ。髪は砂色で瞳は茶色、でも奥底に緑色を潜ませている。

 顔の造作も微妙に位置をずらした結果、知人に出会っても気づかれないだろう。


 瞳の色が違うのは魔法の素養があると思わせるためだ。この世界では魔力が瞳に出やすい。その事も合わせてある。冒険者だからな、侮られてはいけない。


 オレの今のステータスは以下の通りだ。


   名前  ゼオン (本名:ケイン)

   職業  冒険者 


   POW 158 

   STR 154 

   VIT 231 

   DEF 172 

   MGP 229 

   MGR 276 

   INT 183 

   LUK 147 

   EXP  62 


   スキル 刺突 剣術 体術 水魔法




 普通の冒険者としてはちょぉっと数値が高い……と抗議したが。


   『あら、お気に召しませんでしたか? でも、南へ行かれる方なら

   これくらいの数値でなくては、送り出す側も心配ですもの。どうし

   てもとおっしゃるなら、総轄と副総轄様へ直々にお願いしますわ』


 というセシルの言葉と流し目に震えあがり、断念した。


 綺麗な耳の片方に着けた小さなイヤリングが金色の光をこぼすのを『綺麗だな……』と現実逃避気味に見ながら満身創痍でオレは、ガルマン帝国へ向かったんだよな。


 何でオレ、獣人国でへとへとになるんだろう……???






 そんな事を思い返しつつ、ゆっくりと大通りを進み、適当な場所で街灯に寄り掛かる。待ち合わせを装いながら軍属の門と正面の屋敷を眺めた。


 オレから見て路の向こう側が『変革派』、オレの居る側が『回帰派』となるのか。


 どちらにも門番がふたり、偉そうな格好で立っている。長い槍やハルバードと言われる武器を手にし、腰に帯剣して睨むような感じだ。


(いや、あれは実際に睨んでるよな)


 その相手は、向かい側。

 その相手もまた、同じような装備で睨み返している。


(要するに対立が上から下まで行ってるってことか……)

(キュルキュルッ(馬鹿馬鹿しいっちゃないよ))

(ホントだな)


 囁いてきたオーリィも呆れている。まったく同意見だな。


 通りの左右を見回して空を見上げ、肩を落として横の路地へ入る。約束した相手に振られたような演出をしたのは、どこからかオレを窺うような視線を感じたからだ。


(どこのどいつだ、この視線は……)


 一番に思い浮かべたのは『暁の騎士団』を率いるロッティことローマンド・モルティ子息。


 あいつは、オレがただの魔力持ちであり、搾り取れるカモとしか見ていないだろう。

 そんな手に引っ掛かるかよ! 出して来たら盛大に噛みついてやる!


 イラッとしながら視線を探ってみて……


(え、何こいつ? どういうことだよ!?)


 無表情を維持しながらも、オレは首を傾げざるを得なかった。





 前のお話のあとがきがフライングしてました(苦笑)

今回のお話で回収できてます。

…一部不明な部分もありますが。

これからの展開で補っていくつもりです。

こんなテキトーな作者ですが、おいでいただいて感謝、感激です!

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