第185話
更新日、間違えてました~!
なんだかんだあったものの、割とすんなり事は収まった、かな。
爺さんは新しい弟子に何を仕込もうかとご機嫌で書物をひっくり返しているし、フリントはカトーサンから渡された革ひもを使って、徴を首から下げてニヤニヤしているし。
これならガルマン帝国の内情を訊いても大丈夫かな。
フリントに近づき、
「良かったなフリント。弟子になれて」
「ああ、ありがとうケイン! 感激だ、憧れの人の弟子になって精進できるとは思ってもみなかった!」
フリント君、まだ興奮が収まっていないようだ。
「ところでさ。今度ガルマン帝国へ行こうと思ってるんだけど、色々教えてくれないか」
そう切り出すと、
「えっ、ケインはあそこへ行く気かっ?」
凄く驚かれてしまった。
「あんまり行きたくはないんだが、事情があってね、帝都へ行かなきゃいけなくなったんだ」
「その事情ってやつを無視できないのか?……って、ケインがそう言うなら、仕方がないんだろうな」
難しい顔をして俯いていたが、すぐに頷く。
「わかった。俺にわかる限りの事を話そう。と言っても、俺も魔道具製作省からはあまり出なかったから帝都にはそう詳しくないけどな」
「それでもいい。教えてくれ」
そして帝都のあれこれを聞き出したんだが……
まずもって、帝都は5つの区画に分かれている。
帝都の中心に建つ王城とそれを囲むように立っている貴族連中の住まいのある区画。『貴賓区』だそうだ。
その外側、西と東に分かれて固まっているのが軍属の住む場所。『西軍属』『東軍属』が正式名称だが、誰もそう呼ばないらしい。西側を『モルティー派』または『回帰派』、東側を『ディザルト派』もしくは『変革派』と呼ぶものが多いと聞いた。
そして軍属に囲まれた真ん中に『帝国民区』がある。『平民』とも『魔力無し』とも呼ばれている、通常の人々が住む区画だ。
そして最後が『スラム』。文字通り、掃きだめだ。
酷いのは『帝国民区』と『スラム』の間に仕切りが無い事。
『貴賓区』『西軍属』『東軍属』はそれぞれ入り口に門番が立ち、中に入るものをチェックしている。
一般人は『西軍属』『東軍属』に入ることができない。何らかの理由、例えば軍属の屋敷に呼びつけられたりしたときは別だが。
ましてや『貴賓区』なんて雲の上、仰ぎ見るだけでもどうかすると咎められて鞭を食らうこともあるとかないとか。
「もうひとつ、ケインに言っておきたいことがある」
「ん、なんだ?」
「今帝都オールマスには『魔力狩り』が横行している。ケインは特に多そうだから気を付けてくれ」
「『魔力狩り』? なんだそれ」
「最初はそんな呼び方をされていなかったんだ。でも……」
フリントの顔がゆがむ。後悔と嫌悪がにじみ出ているな。
「魔力が多い貴族を呼び出すだけでは足りなくなってきて……今は普通の一般人からも連れてきている。しかもそのやり方が強引なんだ」
この世界では誰もが魔力を持っている。でも、普通の平民では生活魔法が精いっぱい。攻撃やら防御やらにできるくらい多くの魔力を有するのは王侯貴族なのが当然だ。
稀に大きな魔力を持つ平民がいるそうだが……調査していくと、たいていは貴族の落とし胤であるらしい。
そういうのはお家騒動の元になるのが定番なんだが、ガルマン帝国ではちょっと違うそうだ。
貴族の魔力を引き継いだ平民を自分の元に引き取って『教育』ならぬ『洗脳』を施し、自分の駒とするらしい。
その者が誰か有力者と繋がりがあるのなら、自分の有利になるようちらつかせてみるとか。
分からなければそのまま『魔力』の補充役とするとか。
どちらにしても気分の悪い扱い方だな、おい。
「俺が帝都に呼び出されたのもその一環なんだとさ」
「てことは……タケル・マティスがやってるって事か?」
あいつ、何てことしてやがるんだ!
「『魔力狩り』も、どうやらグラドールがチーフに提案したと同僚から聞いた。魔道具製作省は魔力を常に求めてるからな」
「どうしてそんなに必要なんだ?」
「……根本の原因はチーフの魔力不足、だな。アイデアは凄いんだが、完成させるための魔力が悲しいくらいに無い。それを補うのが、魔道具製作省に配置された俺たちの様な魔力保持者の役目だったんだ」
つまり、ヒトの魔力をあてにした魔道具造りをしている、と。
「チーフは……あいつは人を魔力量でしか見ていない。いや、人だけじゃなく、周りのなにもかもを、そんな眼でしか見ていないんだと、思う」
聞けば聞くほど腹が立ってくるな! ヒトをモノのように扱うとは!
さっきフリントの言った『廃棄物』の意味がようやく腑に落ちた。
「最近は冒険者にまで誘いがかかっている、らしい」
「ギルドに所属しているのにか?」
「そうなんだ。今までそういった人間が引っ張って行かれたとは聞いていないんだが、だんだん過熱してきているようで、そのうちどこかで騒動が起きると俺は睨んでる」
そんなことあるのか、おい。
「『魔力狩り』の騒動を皇帝は知っているのか? 自分の臣民を守る必要があるだろうが」
そう言うと、フリント君は苦い顔になる。
「当然知っているはずだ。でも貴族だけじゃなくて軍属も加わっているから止めようがないんじゃないかな」
「止めようが…ない?」
「王侯貴族と軍属の間にある蟠りが面倒の元になってるんだ」
そう言って話してくれたのが、建国したその後の情勢だった。
建国王は史実通りの剛毅なお方だったようだ。物事にこだわらず、良いことは認め可笑しなことはとことん追求して解明し、何もなかった不毛の大地に見事な街並みと農地を創り上げた。
彼を慕う民と貴族をそのおおらかな気性とカリスマでまとめ上げガルマン帝国を樹立したんだが、彼を追い出したフォルカイス王国は相当癇に障ったようだ。
ガルマン帝国を『祖国に仇なす逆賊が造った国』と罵り、周辺各国に絶縁するよう通達を回したという。
「フォルカイス王国はかなり力があった。けど、それ以上に王族の独断専横が過ぎることも知られていて、周辺国は様子見をしていたんだと。そのうち、帝国の魔道具が優れものだとわかって」
「フォルカイス王国の通達を無視したんだな」
そりゃ、あの大地を潤した魔法使いやら魔道具士が居るんだ、彼らが造る魔導具だって、そんじょそこらの品では太刀打ちできるはずがない。
あっという間に各国の間に販路を作り、ガルマン帝国は順調に発展していった。フォルカイス王国は指をくわえて見ていることしかできなかったんだろう。
そのガルマン帝国も、剣国王がお隠れになってからはじり貧の一途をたどった。理由はもちろん、後継者が凡庸だったから。
そこでグィード爺さんが口をはさんでくる。
「それでも5代目辺りからおかしくなってきての。やたらと軍備に力を入れ始め、次々に開発してきおった。高度魔法の開発に魔道具を発展させた武器防具、大型の攻城専用武器と魔法防御特化の戦略型波動砲までもな」
「それが魔族との戦いに投入されたんだな?」
「そうじゃ。当時は呆れて笑う者もいただろうが、結局それらがなかったなら、儂らヒト族はとうの昔に家畜並みの扱いをされておったじゃろうの」
「流石わが師です! 他国の歴史にも造詣が深いのですね!」
フリントが笑顔でグィード爺さんを讃える。爺さんは爺さんで胸を張って満更でもないようだ。やれやれ。
「知っての通り魔族との争いは、ここラッテンサンド高原を最後に終息へ向かったんじゃ。どの国も戦いに疲れて国力が下がり、青息吐息の状態じゃった。そんななか、徹底抗戦を主張していたのがガルマン帝国での」
「開発した武器防具が役に立ったことで、帝国の発言権が増し、強気の姿勢となったんだろう。それと……」
「ん? まだ何かあるのか?」
「……そのあたりから、ヒト族至上主義が台頭してきているんだ」
出た、至上主義のお化け!
「建国当時はそんなことなかったんだけどな。『ヒト族以外は何を考えているか分からん』から始まって『いつか裏切られる』なんて考えに至った一部の人間がヒト族以外を敵視しだしたんだよ」
しかもその連中のほとんどが高官や貴族でね、影響が半端じゃないくらい大きかったんだ。
そうぼやいたフリント君、眼のハイライトが消えていた。
「そう言った連中がやっちゃいけないことに手を出してしまった」
グィード爺さんの顔がゆがむ。
「ふん、そいつらの事じゃ、歴史の改竄でもやらかしおったんじゃろう」
「流石師匠! 先読みの力も有らせられるとは!」
お~い、フリント君。あんまり調子にのせてくれるなよ。
「当然じゃ。あの後の資料を読み込めばこれくらいは子供でも判断できるぞい」
爺さんの鼻の孔、通常の2倍くらいになってるな。
でも,オレには何のことかわかる訳ないだろうが!
「歴史の改竄って何やったんだ?」
「建国王があそこに来たのは祖国フォルカイス王国での醜い覇権争いを嫌ったからなんだが、それを『祖国を追い出された悲劇の王族』なんてものにしちまったんだ。
『無能な王侯貴族どもから冤罪を着せられ』『お前なんぞ無用だと嫌味をぶつけられたうえ』『どこぞで野垂れ死ねとばかりに追い出された』孤高の存在が一念発起して造り上げたのがここ、『尊く麗しき我らが帝国』なんだと」
なんだって!
読み返していてどうも繋がりが気になり、あわてて
書き直していたら……しまったぁ~~!
すっかり忘れてました……すいません。
待ってくださった皆様に再度お詫び申し上げます。




