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レアってマジ!?~巻き込まれて異世界探訪~  作者: 晶良 香奈
エルフ救出!・・・その前に 編
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第179話

 更新が遅くなりました~っ!

 

 オレの言葉に反応して睨みつけるディー君。


 甘いよ、そんなのじゃオレには響きもしない。

 ブラック企業で溢れんばかりの嫌味と叱責の波の中を泳ぎ切ってきたんだ、メンタルの鍛え方が段違いに違うんだぞ。


「わかってる、今のままじゃいけないってことぐらいは!」 

「へぇー。そこは分かるんだな。で?」


「……この宿場町へはモナンザを迎えに来たんだ」

 一転して声のトーンを落とすディー君。


「何もなければ、モナを連れてそのまま出発するつもりだった。なのに、あの男は!」

 テーブルの上に置いた拳が震えている。


「妻にすると公言して、我が物顔にモナをそばから離さないんだっ! 前から僕の妻にすると言っていたのをわかっていたはずなのに!」

「え、結婚することを知っていたんだ、商会長は。そのうえでモナンザさんを?」


「そうなんですの。ですからわたくし、辞表を部屋に置いて抜け出してきましたわ。もうあんなところ、居たくないんですもの」

 そう言って笑うモナンザさん、たくましいな。


 でもそうすると……?


 その時、オレの『索敵』に赤いマーカーが点いた。誰であれ、何らかの悪意を持っている存在が出てきたってことだ。


(キュルキュルキュ(あの人、さっきの馬車に居た護衛だっちゃ))


 影から(ささや)くオーリィの言葉に覚悟を決める。ここはうまくやり過ごさないと誰にとってもマイナスになっちまうな。


「そこのふたり、茶器を持って向こうの隅へ移動してくれ。今から『認識阻害』をかける。声を出さずに静かにしていてほしい」


「え、何をケインさん……?」

「ディー、言われたとおりにしましょう。さ、早く」

「う、うん、分かった」


 ディー君は戸惑い顔で、それでも茶器を手にして動く。その後を追うモナンザは何かを感づいたのか顔色が悪い。


 とにもかくにも奥の隅に座った二人へ『認識阻害』をかけ、そっと『防音』も追加する。これも念のためだ。残ったオレはドアを目の前にして悠然と見えるように座っている。


 廊下の方から騒がしい声が聞こえてきた。


「いけません、そちらにはお客様がおいでに……!」

「その客に用があるんだ、通してもらう」

「ではせめて了解をとってから!……きゃあ!」

「うるさい、邪魔だ」


 揉みあうような音の後、何かが倒れたような振動が……乱暴だな、従業員を突きのけたか。


 重い足音が響き、ノックもなしにドアが開かれる。

 ぬっとばかりに現れたのは、確かに見覚えのある顔だ。その目がぎょろりと部屋を一瞥して訝し気にする。


「おい、ここにオーマイン商会の秘書が来ていなかったか?」

 見込みが外れたんだろう。男から殺気が漏れる。


 そんな奴の前でカップを手に取り一口すする。やや冷めてしまったが、これはこれでうまい。


「答えろ! 来たんだろうが!」

「声が大きすぎるよアンタ。それと無作法だ」


「なんだと!」


「断りもなく部屋に押し入り謝罪も挨拶もない野蛮人は話にならん。出ていけ」

「このっ、たかが冒険者風情が俺様を馬鹿にするのかっ!」


「ああ、名乗る名前もないのか、気の毒に」

 鼻で笑ってやると男の顔が怒気で真っ赤になる。


「『悪鬼』と呼ばれた俺様に良い度胸だ、食らえっ!」

 いきなり腰のブロードソードをオレの頭上へ叩きつけてくる!


「お、お客様っ!」


 後ろで悲鳴を上げたのは従業員かな。隅の方でも悲鳴を上げたようだが、『防音』張っといて正解だったか。


「……っ!? うっ!」


 ブロードソードはオレの頭上でその動きを止めている。

 当然だろ、オレの『バリア』が壊せるもんか。


「行儀も何もなっていないんだな。ここは食事を楽しむところだ。物騒なものを振り回すんじゃない」

 ポットから2杯目を注ぎながら、オレは冷めた目を向けた。


 一方、『悪鬼』君は真っ赤になってブロードソードを押し込もうとしているが、1ミリたりとも動かない。


「こ、こんな、はずはっ……ぐううぅぅっ!」


 押し込めないとわかると剣を手元に引き寄せにかかる。そうはさせるか。


「『バインド』」

「うおっ! う、動けん!」


 『バリア』にくっつく形でかけてやったからな、わっはっは。


 さて……そろそろ頃合いだろう。


 廊下から武具の触れ合う音が近づいてきている。


「騎士様、こちらです!」

 さっきの従業員が連絡してくれたようだ。


 部屋に入ってきた自警団……いや騎士団かな?……は、オレと男を見て呆然としている。

 どう見ても空中で止まったままの剣と綱引きをしているようにしか見えないしな。


「えーと。これはどういう状況で?」

 おお、問いただしてくるだけの猛者がいた。


「どうもこうもない。ここで食事をしていたらこの男がいきなり押し入ってきたんだ。そこの従業員が止めるのを振り払ってな」

 そうだよな? と目で確認すると、


「お客様の仰るとおりです! 何の連絡もなくこちらへいらしたうえに、お客様の承諾を得ることなく乱入されましたから!」


 止めに入った者へ暴力を奮ったんです! と、鼻息荒く訴える。当たり前だ、ここでしっかり現状を伝えておかないと、この店の品位にもかかわる。


 その従業員に頷き、いまだ綱引きをしている男に目を向ける自警団員たち。


「ここへ入った時までは了解した。で、その続きを」

「訳の分からんことを喚き散らした挙句に剣を抜いてきた。振り下ろしてきたから自衛のために魔法で剣と手を固めた。以上だ」


「なるほど。なら、後の面倒はこちらで片づけよう。解除してくれるか?」

 オレは男の呼吸に合わせて解除する。引き抜こうと頑張っていた『悪鬼』は……


「うおっっ!?」


 力余って尻餅をついたところを自警団員たちに拘束され、部屋の外に引きずり出されていく。


「協力を感謝する。では」


 話していた自警団員は軽く会釈をして出ていった。何も聞いてはいないが、多分、隊長クラスだな。


 その後を追って従業員が出ていったタイミングを見計らい、『防音』と『認識阻害』を解除する。


 あっけにとられた二人の姿がそこにあった。ふたりとも口に手を当てているのは、声を上げまいとしていたのか?


「終わったからもう話しても大丈夫だ」

 声をかけると。


「ケインさん、凄いな! あいつは護衛の中でも特に強い奴なのに、まるで赤子をあしらっているみたいだ!」

「本当にそうですわ。でも、かえって恨まれそうですけど」

 興奮したディー君と心配そうなモナンザに詰め寄られてしまった。


「ま、何とかなるだろう。それよりあんたたちは一刻も早くここを出ていった方がいい」

 あの様子だと、商会長の追手がかかりそうだ。


「そうですわね。ディー、直ぐに出発しましょう」

「ああ。荷馬車は門の近くに待機させてあるんだ、いつでも出られる」


 そしてオレに向き直り、

「ケインさん、僕たちを庇ってくれて感謝する。もし、ガルマン帝国に来ることがあったら訪ねてくれ。とは言ってもあとひと月余りで居なくなるけどね」


「居なくなる、とは?」


「僕はオーマインの名を捨てる。モナと一緒に別の仕事を始めるつもりなんだ」


 何だろう、さっきからディー君がやたらに頼もしく見える。しかもガルマン帝国の支店を飛び出すようだ。


 ここはひとつ、貸しを作っておくか。


「その意気に免じてここからの脱出を手伝おう。もう一度『認識阻害』をかけるから、オレの後について店を出るんだ。その後、適当なところで別れたら良い」


 そう言って再び『認識阻害』をかけてから従業員を呼んで清算した。しきりに謝ってくるのを災難だったなと労いつつ、店を出る。


 こちらを窺うような視線が飛んでくるのは商会長絡みかな。


(キュルッキュキュ!(あのおっちゃん、相当執念深いっちゃ!))

 そのくらいじゃないと成功できなかったのかもしれないな。なにせ、商人同士の駆け引きも相当えげつないものが有ると聞いてるし。


 視線を感じながらゆっくりと進む。一区画ほど動いた時点で視線が途切れたのを見計らい、脇道を指し示す。


「もういいぞ、気をつけてな」

(ケインさん、また会いましょう!)

(お気遣いありがたくいただきますわ。では)


 小声であいさつを交わし、ふたりの気配が遠ざかる。ある程度離れたところで『認識阻害』をゆっくり解除した。


 だってさ、いきなり現れたら騒ぎになるじゃないか。周りの気をひかない程度に段階を踏んでいかないとね。


 さて、と。これでガルマン帝国での足がかりがひとつ出来た。全く知らない国で、なおかつ敵対者がいるからこそ、この繋がりが役に立つかもしれない。






 何とか商会長の眼を逃れられたようですが。

この後はどうなるんでしょう!?

『貸しを作った』とケインは鼻高々ですが。

ガルマン帝国、手ごわそうです。

更新時間が遅くなり申し訳ありませんでした。

来ていただいた方皆様に感謝申し上げます。

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