第154話
『『『ええええええぇぇぇっっっ~~~!!!』』』
三者三様のびっくり声がドームの中に響き渡った。その後しばらく、オレの手元を見たまま固まっていたんだよ。それくらい信じられなかったんだろうな。
オレはオレで、普通の魔石から魔虹石ができるのかぁ? と半信半疑だったね。
そんな中で真っ先に動いたのがユーディだったのには驚いた。
ピルピルピル、羽根の音を響かせてオレに近づき、持っている石をじっと眺め出した。
『きれい、素敵。本物の魔虹石って、内側から光ってるんだぁ!』
「雷光石って名前なんだけど、他の古代遺跡の『門番』さんに聞いたらこれでいいんだってさ。だからイシスにって」
『そうなんだ! じゃ、今から渡してもいいかなぁ? 駄目?』
ヲイ、そのでっかい眼で上目遣いするな、反則だろ!
そう思いながら、石をユーディに渡すと、両手でしっかりと握りしめ、頭上に掲げながらイシスの前へ飛んでいく。その様子があまりに必死で、時間が残り少なかったことが想像できた。
『イシス、魔虹石だよ! 早く使ってみて!』
『エ、ええ、ここへ入レてくレルかしら』
石柱の一部に穴があく。確か、カルト平原の魔器開発研究所もそうだったな。
ユーディがそっと中へ落とし込む。
するすると穴が閉じ、やがて……石柱から光が漏れ出してまばゆく輝きだした。あれ、こんな現象は見たことなかったよな……?
その光景に一番取り乱したのはユーディだ。
『イシス! どうしたの、死んじゃいや! イシスイシスイシスぅ!!』
石柱にしがみつき、何度も何度も叫ぶ。オレもサテュールも声をかけられず、ただ見守る。
やがて光が収まると。
『……ユーディ? 相変わらず泣き虫さんですね、アナタは』
『イシス! 戻ったんだねイシスぅ! よかったよぅ!!』
またおっきな目からドバドバと涙を垂れ流しながらユーディが石柱の周りを飛び回る。
おかげでそのあたりがびしょ濡れだ。
『ケイン、ありがとうございます。おかげで生き延びることができました。』
穏やかな声がオレに礼を言う。その響きが前より滑らかなのがオレもうれしかった。
「間に合ったようでよかった。その石を渡すことも織り込んでいたんだが、随分とぎりぎりだったようだな」
『…はい。本来ならばもうとっくに機能停止していたはずです。
でも、ユーディが嫌がって……魔虹石の模造品を作ってくれました。』
「模造品!? そんなの造れるのか?」
『魔石を大量に使って錬金した、とか。先ほどアーミンの長が
咎めていた大規模な採掘の原因です。』
『済まない。ここの生態系を考えると危険ではあるのだが、イシスを失うことの方が問題だったのだ』
サティールもすまなそうに言葉を挟んできた。
「キュキュッ! キュイキュルッ!(ダメだっちゃ! ちゃんと連絡するだっちゃ!)」
『う、うむ。申し訳ない。これは全面的に吾輩が悪いと承知している』
『いえ、もとはと言えばわたくしなのです。あまり怒らないでください、
アーミンの長さま』
「オーリィ、確かに連絡なしはいただけないが、それだけ切羽詰まってたって事なんだ。事情が事情だけに急いでたんだよ。怒る気はわかるがもういい加減にしてやれ」
聖獣と『門番』の声があまりにも済まなそうなので、つい肩入れをしてしまった。『ストレージ』からクッキーを出してオーリィの目の前に持って行ってやる。
「キュル~ィィ~(し、仕方ないっちゃね~~)」
渋々のような声を出してるけど、お前、しっかりクッキーを握ってるじゃないか。この食いしん坊が。
『イシスぅ、これでだいじょぶなら、『ドーム』の設定変更
やっちゃってもいいかな』
顔をふきふきしたユーディがピルピルピル、と飛んできた。こいつ、俺たちの会話聞いてなかったな。
でも、それで今の現状に立ち返ることができたんだから良しとするか。
『お、おお、そうであったな。頼むぞユーディ』
『そうですね。すぐに始めてくださいな』
『あ~いっ! やりま~すぅぅ!!』
ピルピルピルと光をこぼしつつイシスの元に向かうユーディ。石柱がパカリ、と割れてできた入り口から地下へと入っていく。
暫くののち、ユーディが戻ってきた。でも、何も持ってないぞ?
そのユーディがくるりと後ろを向いて。
『さ~ぁみんな! 準備に入って~ぇ!』
『『『『『『『『よぅ~そろ~っっ!!』』』』』』』』
同じ声が同じトーンで返事をし、そして出てくる。
「え、うぇっ? ユ、ユーディが分裂、した?」
そう思うほどみんなユーディにはそっくりなんだけど、すぐに違いが目についた。
彼女(?)たちには羽根がない。そしてそこにはユーディと同じ手があった。その手にはひとつずつ魔石が握られている。素早く動く彼女(?)たちには緑色の足が二本生えている。
呆けているオレにサテュールが声をかけてきた。
『何を言うておるケイン。あ奴らはユーディの子分であるぞ』
「こ、子分~?」
言われてみれば納得できる動きではある。それでも、
(仲間、とか同僚っていうくくりではないんだ……)
目の前ではユーディが指示を出している。
『ヤンちゃん1号2号3号4号! 北から順に位置について~!』
『『『『らじゃ~っ!!』』』』
『マーくん1号2号3号4号も! わらしの後ろから順に並んで~!』
『『『『おKおK~~!』』』』
どっかで聞いたような返事だな。オレは半ば意識を飛ばしながら彼ら彼女らの配置を見ていた。
「子分……確かに子分だね」
し・か・も! ヤンちゃんにマー君だと? その元ネタはひょっとして……?
微妙に違ってるけど、あれ……いや、もうやめよう。
横道に入りかけた思考を振り払い顔を上げれば、ユーディたちは次の準備に入っている。よく見ると、等間隔で立っているヤンちゃんマー君たちは正八角形の頂点になっているようだ。
「なるほど、きちんとしてるな」
『あれらの言動はちと特殊であるが、やる事はやるからな』
「キキュルキキ~!!(単なる錬金バカだっちゃ~!)」
オーリィ、そんな言い方は……あるか。
ま、まぁ。特化し過ぎたんだよ、多分。
どこか現実逃避しながらオレたちは作業を見守るしかない。
『じゃ行っくよ~~っ!!
魔道具『おばちゃんの箱庭ドーム』設定変更~!
おばちゃん改めイシスの許可ない者の侵入を不可とする!
但し、ここに居る者の同意があれば招致可能!
変更内容は以上! 開始せよ~~っ!!』
『『『『『『『『イエ~~イッ!!』』』』』』』』
ユーディの命令に対して一斉に答える子分たち。その手に持つ魔石から光が発せられ、緩く弧を描きながら天頂へと昇っていく。
八か所からの光が天頂でひとつとなって弾け、大きな魔方陣を描き出す。その中でいくつかの文字やら線が書き換えられては嵌め込まれ、そして周辺の文字へと波及していく。
優秀なオレの『INT(知性)』さんがその魔方陣を解析して、『ドーム』の造りと変換方法を見せてくれた。かなり複雑な内容だったが、『ドーム』の仕組みは理解できた。
ま、オレにはモノづくりの才能がないから作れないけどな、ははっ。
やがて魔法陣が「ドーム」に覆いかぶさる形で姿を消していく。それとともに魔石から発する光も細くなって消えていった。
『設定変更は無事終了~~っ!!
みんなお疲れ様でしたぁぁっ~~!!』
『『『『『『『『バッチぐぅ~~!!』』』』』』』』
黒くなった魔石を抱えて地下へと戻っていくヤンちゃんマー君たち。誰もが片手の親指を立ててユーディに突き出している。あの仕草、こっちの世界にもあるんだな~(現実逃避)。
章が長くなりそうなので分けました。
最初は続きのメンバーですが、あっという間に変わっていく…予定。
その変化はこれからのお楽しみ、とさせていただきます。
正月休みの中でいろいろこねくり回したストーリーです。
楽しんでいただけたなら作者冥利につきますね。
ここへおいでいただきありがとうございます。




