第152話
ようやく話しに進展が……!?
オレの発言に一瞬黙り込む花妖精(?)。あ、言葉を間違えた。
「言い方を変えるよ。ここの鉱山をある国に渡したくないんだ。だからそいつらが入ってこれないようにしたいんだ」
オレの言葉に震えながら小首をかしげ、そして発した言葉は。
『んん。ニ、ニンゲンさんわぁ、ここを壊すつもり、なんですかぁ?』
「待て待て、どこをどう取ったらそういう発想になるんだ!?」
『だってぇ、渡さないんならぁ 壊すしかないでしょおぉ? うわぁ~ん!』
またまたおっきな涙をボロボロこぼし、両手を頭上で振り回す。羽根までもがピピピピピと上下左右に残像が出るほど大きくはためいて体を揺らし続けている。
『おばちゃんを壊さないでぇ! わらしを壊さないでぇぇ!』
……なるほど、こいつは極端な発想に走りやすい奴なんだな。右から左へゲージが一気に振れるタイプだ。こういう奴は周りの言うことなど聞きゃしない。ひたすら自分の中で妄想を繰り広げてはトンデモない未来を描き出し、それが真実だと思い込んでしまう。
さて、どう止めるのがいいのか。
オーリィを真似て一発殴るか?
話の進まなさにイラッとしてやや物騒な考えに傾きかけた時。
『ユーディ。暴走しテはいけまセンと何度教えマしたカ』
穏やかな抑揚をつけた声が響いた。そして、
ズッ ズズズズッ
後ろの繁みの中から石柱が地中からせりあがってくる。
『おばちゃん! 出たらだめ、壊されるよぉっ!』
ズビズビ泣きながら花妖精(?)が石柱にしがみつく。その手、吸盤か何かついているのかなあ?
『いイ加減泣き止みなサい。行儀が悪いデすよユーディ』
『でもでもぅっ!』
『誰も壊スなどと言ってイないでしょう。アなたの思い込みでスよ』
『えぇ? わらしが悪いのぉ?』
ぼたぼたと涙を落としながら花妖精(?)いや、ユーディがオレの方を見る。
こういう奴にあいまいな言い方をするとヤバいなんてもんじゃない。
「壊さないよ」
まずは断言しておこう。
「そんなことしたら元には戻せない。一番悪い方法だ。要はそいつらにここがわからなくなればいいだけなんだよ」
『ね、そう言ったデショ、ユーディ』
『見つからなくするだけぇ? ホントに?』
ちょっと落ち着いたのか、涙が止まっている。
さて、自己紹介といこうか。
「あー、オレは冒険者のケインだ。よろしく」
『わたクしは魔石発掘鉱山前ノ門番ORT209QCSと申しマス。
この子はわたクしの補助ヲしてクれるユーディです。』
ああ、やっと話の通じる存在が出てきたな。ほっとしたよ。
「それでだな、門番ORT……いや、まどろっこしいから名前つけよう。えーと……『イシス』でいいか?」
クイ(Q)シ(C)ス(S)、最初の音をとって『イシス』にしよう。本人(?)はどうだろう。
『イシス……それはわたクしの、名前?』
『わーぁ、おばちゃんを名前で呼べるの? イシスって素敵ィ!』
誰よりも先にユーディが喜んでいる。石柱に抱きついたままピルピルと羽根を震わせ、光の粒をあちこちにまき散らしながら頬ずりする様は微笑ましい。
対して『門番』イシスは。
『イシス、イシス……わたくシが、イシス……?』
ちょっと呆然としているようだ。まあそうだろうな。今まで呼ばれたこともないんだから当然の反応だ。
元の世界じゃ神話の中の豊穣をつかさどる女神だし、ここの状況を見る限り、それで合ってると思う。
「気に入ってくれたならそう呼ぼうと思うんだがどうだろうか」
『……はい。わたくシにはもったいナイような気がしまスが、いただきマス』
よかった、受け入れてくれたようだ。
「それで、だな。さっきの話なんだが、多分そいつらはゴラン山脈を目指してくるはずだ」
『この山をぉ、ニンゲンさんが越えるのわぁ無理よぉ』
その考えにいち早く反応したのはユーディだ。なるほど、頭は悪くないな。
「そうだな、オレもそう思う」
最初はできるかもと思っていたんだが、ここの積雪量を見て無理だと思ったんだ。
でもな。
「『空間転送』って知ってるか? ガルマン帝国…そこのある男がこの魔法を使って、この鉱山を自分の支配下に置こうとしているんじゃないかと思われるんだ」
『『空間転送』デすか。確かにアれなら』
古代魔法『虚空』の下位魔法で設定したポイントへ対象物を送り込む魔法。あの特性を知っているなら、この場所へいつ何時攻め込んできてもおかしくないことをイシスは理解したようだ。
何せ、向こうの鉱山はそろそろ枯渇しそうだからな。魔道具を作るなら魔石は絶対に必要となる。次に狙うとしたらここになる可能性が高い。
こうしている間にも、あいつはここを狙い定めて発動しているかもしれない。
そうなったら先行きどうなるか、火を見るより明らかだ。この穏やかな箱庭世界は間違いなく消滅するだろう。
オレの中で焦燥がじわじわと広がっていく。どうすればここを守れるのか。
だが。
『なぁにそれ? 知らないよぉ。魔法なのぉ?』
……おぉいユーディ! ここでその発言はあり得ない~!……
その瞬間、オレとイシスの心の声が一致した、と思う。
一気に力が抜けた。背後でカラスが鳴いている気がする。
なんだこの脱力感は。また最初に戻るんかい~!
何とかの〇ーチの曲が耳鳴りみたいに響いているな。3歩進んで2歩下がる~♪
『ねぇねぇその魔法ってどんなの?』
「あ~……『虚空』ってゆー魔法の仲間になるんだが」
無邪気に聞いてくるユーディに気力を振り絞ってこたえる。
『『虚空』は知ってるぅ! ちょー強い魔法でしょぉ!』
それは知ってるのか。
『その魔法見たい! 見せて見せて見せてぇっ!』
『……ユーディ……無理ヲ言ってはダメ、ですヨ……』
宥めるイシスの声も力がない。オレ同様がっくり来たってところか。親近感を覚えるな。
ユーディの方は、何も聞こえないって感じだ。
……言動だけだとまるで幼稚園児みたいだ。勘弁してくれよ、オレは保育士なんてやってないぞ?
と。
『見たい見せて見たい見せ……ひぅっ!』
不自然に言葉が切れたユーディを見れば、その頭の上にはオーリィが居る。
がしっとばかりに花びらをつかんでいる背後には何やら黒いオーラがめらめらと……。
「キュイイィ~?(もう一度齧られたいっちゃ~?)」
低めの声での問いかけがやたらと凄みを帯びている。
羽根がビビビッと硬直したため、ゆっくりと地面へ。今度は無事に軟着陸したな。
『いっいええぇっ! か、齧られたく、ないですぅぅ…』
「キュキュイイィ~?(我が儘も大概にするっちゃよ~?)」
『はいぃぃ~~……』
オーリィにしっかり睨まれて萎縮したユーディ。
おとなしくはなったが、う~ん。
ユーディの所為だとは言いたくないが、話の焦点がぼやけるんだよ、いつも。
どうすりゃいいんだまったく。
思わず腕をこまねいてしまった時。
『『虚空』を発動してどうするつもりだ?』
怒りを含んだ声とともに、圧倒的な存在がすぐ横に現れた。
うわ、誰だ! 今まで何も感知しなかったのにどういうこと!?
慌てて振り向いた先に居たのは。
「バイコーン……」
真っ白というより白銀の鬣を靡かせ、額にある二本の角から雪の結晶に見紛う力のかけらを振りまいている、大いなる存在がオレを睨んできた。
その足元で消えかけているのは『瞬転』の魔方陣だ。そっか、この魔法が使えるのなら移動は簡単だろうな。
問題は、バイコーンがここを知っている、てこと。
何故だ?
行きつ戻りつ、の会話にケインがイラついてます。
実は作者も(苦笑)
次はもう少し早く………できるかなぁ……?
頑張って進めますので、今しばらくお待ちください!
それでもおいでいただき、ありがとうございます。




