第137話
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「……さて、どうしたものか……」
箱から取り出したものを前に、オレは固まってる。そりゃそうだろう、出てきた物がチート過ぎる。
普通は初期装備だろう、こういう時は!
初めて挑むんだぞ、魔(?)のゴラン山脈に。
それなのに、嗚呼それなのに。
全て蹴散らせ! と言わんばかりのこの装備。
これ造ったの、ド心配性な奴なのか。過保護も度が過ぎるぞ、いー加減にしろ、と言いたい。
……無理か。はるか時の彼方、だもんな。
頬に手をやり天井を見上げ、首を振る。
まあいいや、せっかくだ。使わせてもらおう。
古代王朝から何年たってるんだ、これらの装備よりあの山の魔獣の方が強くなってるかもしれないじゃないか。
そうだ、そうに決まってる。
心の平和のためにオレはそう決めつけた。
「何やらおかしな決めつけをしたようじゃが、無駄ではないか、のうケイン?」
「ん、なんでだよ爺さん?」
出てきた装備を一部は身に着け、残りは『ストレージ』へ押し込んでいるオレにむかって一言。
「お前さんが規格外じゃ」
「ちょ、なにそれ、酷いぞ!」
「事実を言うてなぁにが悪い。お前さんのステータスなら何が出てこようとも敵わぬよ。たとえドラゴンでもな」
ほっほっほ、と乾いた笑いを響かせて爺さんは机に向かうと、紙とペンを取り出して何やら書きだした。
あれ、そのペンって確か、魔法が込められた奴なんじゃ……?
何枚か書き上げた紙を複雑に折りたたみ、折り目に封蝋すると、それをオレの前に突き出してきた。全部で3通、ある?
「爺さん?」
「今のお前さんには儂の薬よりこれの方がいいじゃろ。上から順にだな…
ウーランダ公国魔法省錬金術師協会長ヤッケルニーダ・プラムリン、ラッテンヒル王国魔道具制作の鍛冶師総元締めドーガ・バハム、ノイレマ・コット魔王国の魔法省管轄、魔法研究所所長マインスタン・ノウン・ムラティリオ。
この3名に当てた紹介状じゃ」
「え、なにそれ。一度じゃ覚えきれないぞ」
「ああ、心配いらん。それぞれの国に行ったら、城の門番にこの封筒を見せるがいい。封筒の表に相手の名が浮き上がるでの、それで案内してもらうんじゃな」
「城ぉっ!? どうしてそんなところへ行かなきゃいけないんだよ!?」
「こ奴らが居るところじゃから、な」
呆れた。そんなお偉いさんと知り合いたくないね、オレは。
「まあそう言うな。こ奴らは儂がこの大陸をめぐっている時に知り合うたんじゃ。その時はそんな役職に就いとらんかったんじゃがな、首都へ住まいを移してから連絡を取って初めて知ったんじゃよ。薄々その兆候は感じておったがの」
何というても光るところを持っておったからのう、などど懐かしげに語ってるけど。爺さん、オレに何をやらそうってんだ?
「し、城なんかに行ったらオレみたいな冒険者は相手にしてもらえないんじゃ?」
受け取らずに済むような理屈を必死に探しながらオレは声を出す。
「最悪、封筒を取り上げられて追い払われるだけだと思うぞ?」
だから無駄になるんじゃないか、と続けようとしたら。
「あ、それは心配いらん。たとえ取り上げられても問題ないぞい。むしろ、そんなことをした本人が最敬礼でお前さんを案内してくれるじゃろ」
この封筒は記名された本人にしか開けられんでの、となぜかそこで含み笑いをこぼす爺さん。
うわ、なんか嫌な予感がする!
「……もしかして、それ…呪い付き…?」
「こらこら、不穏なことを言うでない。そんなもんくっつけたら危なっかしいだけじゃぞ」
にこやかに笑う爺さんだが。その、唇の端を上げる笑いはろくでもないことを仕掛けるときだろ!?
「これはの、着信確認なんじゃ」
「へっ? 着信、確認?」
「頼んだ配達人から宛名の相手へと確実に届くよう組み上げた術じゃ。ほぅれ、よっと、な」
「わわわっ、いきなり放り投げるなよ手紙を!」
手首のスナップで軽くオレに向かって投げられた手紙。慌てて受け取った瞬間、手紙が淡く光った。
「よしよし、それで配達人が決定したの。あとはそれをお前さんが直接手渡せば完了じゃ。なに、お前さんをよろしく頼むとしか書いておらんぞい。心配しなさんな」
かかか、と高笑いをする爺さんを横目に、オレは封筒を見詰めた。確かに国名と相手の官職、名前が浮き出ている。触っても何も感じない、が。
「……ただの嫌がらせに思える……」
「何ちゅうことを言うんじゃ。見知らぬ場所へ行く若人のために、ほんのちょっぴり助力をしてやろうという親切心の塊じゃというのに!」
ちょっぴり、ねぇ? 額に手を当てて嘆くようにうつむいているけど、その顔には騙されねぇぞぉ!
この悪戯ジジイ!
それにしても、だ。
「爺さん……何気に凄い肩書の相手ばっかりに思えるけど!?」
「そんなん知らん。ま、よろしく言っといてくれ。あとはそうじゃの。儂は当分引き籠ると伝えてくれればええ。気をつけてな」
さてさて、材料を確認せんとな~、などと鼻歌混じりにいそいそと片隅に置いた大きな薬棚を開ける爺さん。あ、それ、あの家にあったヤバい奴じゃないか。持ってきたんかい……
ああなったら何を言おうが喚こうが爺さんには聞こえないし聞く気がない。オレはため息ひとつこぼして背を向けた。
何処へって? もちろん……新しい冒険にさ!
で。
今、オレが居るのはココ、ホーンラビットの丘近くにある街道の脇。レベルアップした内容を確認していた場所だ。ほぼほぼ始まりの場所だな、うん。
…………何をやってる、と言われるかもだけど、ここくらいしか思いつかないんだよ、『瞬転』先が。
ホントはゴラン山脈のふもとへ飛べるといいんだけど、知らないところなんだよな。それに、いきなり街道に出現するわけにもいかない。この道、結構人通りが多いんだ。びっくりさせちゃうだろうしねぇ。
かといって首都に現れる、なんてやりたくない。爺さんが店を閉めた事で魔法薬が入手できなくなったギルドや商人たちが血眼で探してるはずだ。
ひとつずつ消していって、最終的に残ったのがこの場所だ。ここから分岐点まで行って北へ曲がればいい。途中に野営地もあるようだが、早駆けモードでふもとまで突っ走ろう。そこにも宿はあるらしいからな。
「キュルキュ~♪(やった、外だ~♪)」
甲高い声とともに、小さな影がオレの肩によじ登ってきた。後ろ脚で立ち上がり、前足を上へと突き出す。尻尾もピーンとまっすぐに上を指していた。
「おう、おはよう寝坊助。随分と久しぶりだな」
「キュ~~ウゥゥ…キュルッ!(ふわわあ~~ぁぁ…良く寝たっちゃ!)」
グルギュルギュウゥゥゥ~~
さわやかな念話とは裏腹の音があたりに響く。オレは前以て買っておいたレーション(ベントー)の中からおにぎりをひとつつまんで渡した。
「早速メシの要求とはな。けど今から早駆けモードでゴラン山脈のふもとを目指すから、これをもって引っ込んでろよ」
「キュルルキュ~!(食べながらでもアチシは落ちないっちゃよ~!)モグモグ」
文句を言いつつもかじりついている様子に笑いが込み上げる。
「そうは言うけどな、前にそれやったら抗議してただろ、眼が回るって。おとなしく潜ってな」
「キュルッキュ~……キュルキュルッ!(確かに言ったけど~……そうだ、こうすりゃいいっちゃ!)」
言った途端、肩から滑り降りて懐へもぐりこんできた。
「お、おいおい、何してるんだ?」
「キュルキュルキュル~♪(ここなら安全っちゃよ~♪)モグモグ」
「お前なぁ……はぁもういいから動くなよ?」
鼻先だけを突き出しながらおにぎりを齧る姿にあきれつつも、オレは早駆けモードに入る。こんなところで言い合いをしていたら、いつまでたっても目的地に着けないよ。
見る見るうちに景色は早送りのようになってオレの両脇を流れていく。もう少しで分岐点に差し掛かるだろう。オレは分岐を示す石柱を見逃さないようにして街道を進んでいった。
遅くなって申し訳ありません(汗、汗っ)
急に体調が悪くなって病院へ駈け込んで……そのまま一晩入院してました。
我ながら体力に自信が持てなくなってきましたね、こりゃ。
情けない…………(トホホ)
それでも待っていてくださった方全員に感謝申し上げます(最敬礼)
これからも頑張って更新します!




